No.572534

リリカルなのはSFIA

たかBさん

第十五話 男なら

2013-05-03 21:27:39 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4845   閲覧ユーザー数:4393

 第十五話 男なら

 

 

 

 高志視点

 

 前回の騒動からしばらくして。

 結局、自分達のスーツやドレスを買った俺達は一週間が経った。そして、ホテル・アグスタでの古物展の監視・警護を行っている。

 午前中はなのはとすずか。俺がホテルの中を担当して、フォワード陣とアリサがホテルの外を。午後は入れ替わる手順になっている。

 残りの六課とゼクシスのメンバーは六課の本部で待機している。

 はやてを含めてヴォルケンリッターの皆は打たれ強いザフィーラさん以外はダメージが大きく全快には至らなかった。

 リニスさんは不調のはやて達の護衛を兼ねて六課で待機している。

 アリシアのラッキースターも修復は終わっても試運転は終えてないので戦場には出せない。一応、六課の施設から情報集めをして指示を出してくれる。

 あの時のはやてはベッドに括り付けられていたストレスを発散したかった。

 発散した後は六課の看護師に引きずられていった。顔には大量の冷や汗を浮かべて…。

 

 「にぃいいいいいっ」

 

 びしりっ。

 

 おお、鏡よ。鏡。鏡さん。

 俺の笑顔は君に亀裂を与えるほどに暑苦しいかい?

 

 「・・・はぁ」

 

 ため息交じりにトイレに設置された鏡の前から離れる。

 お偉いさん達もいる。営業スマイル出来ないとやばい。一応、潜入捜査とはいえ古物展の会場である。関係者と思われるようにしないと…。

 そう思ってスマイルの練習をしていただけなのに…。

 俺の笑顔の練習をトイレの鏡でしていたら、ビシリと鏡に亀裂が入った。

 俺は笑うことも許されんのか?

 

 「そんな顔をしていると周りの人は心配するよ?一応監視役なんでしょ?」

 

 っ!?

 俺が捜査員だと知っている!?

 口には出したり念話も使っていないのに!

 俺は声がした方に振り向きながら大きく距離をとる為にバックステップをすると、声をかけてきた輩に視線を移すと、そこにはハニーブロンドの優男がいた。

 長い髪を首裏で一つにまとめた美形の男性。

 この世界の男は俺を除いて皆、美形か!

 

 「久しぶりだね。タカシ」

 

 「・・・ユーノ?」

 

 

 ユーノ視点。

 

 「驚いたな。なのはから君がはやての作った部隊。機動六課に協力してるって聞いた時は何の冗談かと思ったよ。だけど、こうして君と話せている」

 

 「悪かったよ。急に消えて・・・」

 

 「スティグマ。放浪者。まるで呪いだね。五年前にクロノから聞かされたけど、本当なんだね・・・。まるで強大な力を戒める呪い」

 

 スフィアを巡る戦い。そして、騎士カリムの予言を覆す為にタカシは僕等の所に戻ってきた。だけど、

 

 「…辛くないかい?」

 

 「何がだ?」

 

 「触れられるのに、触れられない。好きな人がすぐ近くにいるのに。好きあっているのに触れられないのは辛くないの?」

 

 「………お前はどうなんだよユーノ?なのはとは上手くいっているのか?」

 

 冷やかしのつもりで言ったのかタカシは妙にニヤニヤとしながら聴いてくるけど…。

 トイレから出てきた僕等は肩を並べて会場へと向かう。その廊下には誰もいないことを確認しながら言葉を交わす。

 今まで会えなかった理由を確認しながらだけど・・・。

 

 「上手くやっているよ。この機動六課の。ジェイル・スカリエティの事件が終わったら、その、プロポーズを…」

 

 「…まじか?」

 

 「マジだよ。どこかの誰かさんみたいに僕は呪われていない。触ることが、触れることが出来るからね」

 

 「…嫌味か」

 

 「嫌味さ。だって君は何度でも何度でも傷ついて立ち上がった。何度でも何度も皆を救ってきた。それなのに君が誰とも結ばれないというのは、僕は個人的に気に喰わないよ」

 

 「…ユーノ?」

 

 「君は誰よりも彼女達の為にあんなに頑張ったじゃないか。それなのに君はその彼女達の誰とも結ばれないなんておかしいよ。…君は幸せにならなきゃいけないんだ。じゃないと、誰も頑張らなくなる。こんなにも傷ついて来た。それが報われないなんて…」

 

 「俺は幸せ者(・・・)だよ。ユーノ。お前みたいに俺の事を思ってくれてさ。だけど、お前も男なら分かるだろ?好きな人ほど巻き込みたくない」

 

 ・・・。

 わからない訳じゃない。僕がタカシの立場だったら同じような事をしていただろう。

 

 「でも!」

 

 だけど、それでも君は!

 

 「ごめん訂正する。俺は幸せじゃない。俺は世界で一番贅沢な人間なんだよ」

 

 幸せじゃなくて贅沢?それも世界一?

 それの意味が分からない。その意味を聴こうとした時だった。

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!

 

 

 僕等のいるホテルに爆音と振動が鳴り響く。

 と、同時にタカシのデバイスに連絡が入る。

 

 『高志君!聞こえるガジェットドローンがホテルの周りに現れたから撃退を』

 

 ギィイイイイイイイインッッ。

 

 高出力の魔力が鳴らす警戒音!

 少しでも魔法に精通する者だと決して無視できないほどの魔力の音が鳴り響く。

 これは…。

 

 「ユーノ!ここのホテルの皆と一緒に逃げてくれ!」

 

 「タカシ!この魔力は…」

 

 忘れたくても忘れられない!

 あの闇の書事件ではヴォルケンリッターの皆を。

 そして、砕け得ぬ闇事件でもエルトリアという世界に渡ったディアーチェ達すらもいなしたタカシの天敵。

 

 「…アサキム」

 

 タカシは銀色の鎧。ブラスタを展開して壁を壊してホテルの外へと向かっていった。

 そして、僕は後に知ることになる。

 

 『知りたがる山羊』の恐ろしさを。

 

 


 
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