No.572132

超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ラステイション編

さん

その12

2013-05-02 17:23:50 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:590   閲覧ユーザー数:571

ふと、大地の水平線に目を向ければ、工場から黒雲が黙々と煙突から上がっている。

自然が大半を占めるリーンボックスでは、こんなに工場が立ち上がり一斉に廃棄物を吐き出しているその光景は、まず見ることが出来ない。

今日は、アヴニールからの依頼でこの先のプラントをアヴニールの代表取締役であるサンジュが視察することなので、周囲のモンスターを一掃してほしいとのことだ。

 

『浮かない顔だね』

 

手の甲の宝玉が声を発する。

俺は、小さくため息を付いて口を開いた。

 

「俺に出来ることを考え中なんだ」

 

手に掴んでいる生命を奪う為の武器である黒曜日を見る。それは重い、重かった。

 

『ふぅん……っで、結論は?』

「……やっぱり、俺にはモンスターという明確な敵がいる。人を敵にすることなんて、俺には出来ないだろうな」

『………クハハハッハハハ』

 

デペアは暫く黙って、声を高く身を捩じるように哄笑した。

 

『青臭いね』

「悪いか?」

『いや、いや、一生悩め若造、それが生きることだからね』

 

そうかと俺は声を漏らして、空を仰いだ。

まるで呪いのように、胸に封印されたこの善意を想いながら流れる雲を見ながら瞳を閉じる。

 

 

 

「---こぅちゃんー!!」

 

安息の時間は、そんな声と共に破壊された。

聞き覚えのある声に、俺は振り向くと同時に腹部に衝撃が走った。

 

「っ……ネプテューヌ…か」

「こんなところで会えるなんて奇遇?いや奇跡だね!ミラクルだよ!」

 

相変わらず、元気な奴だな。

ネプテューヌを追って、アイエフとコンパも小走りに近づいてきた。

 

「こんにちはです。こぅさん」

「紅夜、少し振りね。今日はどうしてここに?」

「依頼だ。お前たちも?」

 

そう返すと、アイエフとコンパは頷いた。

ネプテューヌは何が楽しいのか、俺にしがみ付いて離れようとしない。

 

「ここでに依頼者を待ち合わせているの」

「へー、奇遇だな。俺もここで待てと言われているんだよ」

「ねぷねぷ! うら……、こぅちゃんが嫌がっているです!」

「いやー、コンパも抱き着いてみなよー。こぅちゃんのコートって温かいし、いい匂いがするするよー」

 

それは俺も思っていた。

返しても貰う前に、洗濯でもしてくれたんだろうな。

解明できないが魔法で保護されたこのコートは、汚れても勝手に綺麗になっているし、千切れても自己修復するし良く分からないが、便利なものだ。

だから、あまりこのコートを洗浄することはなく干すだけしていたが、ラステイションはいい洗剤を使っているな。

 

「ぅぅ………えいです!」

 

そんなことを考えていると、コンパは真っ赤で顔をしながら抱き着いてきた。

 

「……お前ら…」

 

迷惑ではないが、鬱陶しい。

あと、左にコンパ、右にネプテューヌと何だかい匂いが鼻孔を刺激して、特に右には未熟な可能性のある柔らかみが、左は豊潤に実った二つの山が……!

 

 

ーーーI☆LOVE☆おっぱいィィィ!!!!

 

 

やめろぉぉ!!

そんな大音量の絶叫を俺の頭の中で叫ぶなぁぁ!!!

少し前まで、ちょっといいこと言ったお前はどこに行ったんだ!!

 

ーーーこの世の中で最も胸が膨らむおっぱい教に入らない?

 

それは宗教と言うよりただの変態団体だろうが!

誰が、常に血走っていて呼吸が荒く同じことを呪祖の如く合唱していそうな集団に混じるか!!

 

ーーー全く、これだからヘタレは

 

それにヘタレは関係あるのか!?

 

「あー、紅夜?依頼者が来たわよ?」

「はっ!?」

 

物凄いどうでもいいことに勧誘してきたデペアの所為(僕の所為なの!?)で意識が完全にそっちに行っていたので、前が見えてなかった。

アイエフの視線の先に顔を向けると、そこには全体的に黒いサラリーマンのような服装をした中年の男性が立っていた。

 

「ネプテューヌ、コンパ、離れろ…!。依頼者の前だぞ…!!」

「「はーい(です)」」

 

意識を切り替え、未だに気持ちよさそうに俺に抱き着いているコンパとネプテューヌを叱ると二人とも、残念そうに顔で離れてくれた。

 

「……こいつが、あの黒閃か?ただの若造ではないか」

「外形で決められていることにはなれている。だが、依頼されている以上、全身全霊でやらせてもらう」

「………ふん」

 

サンジュとか言ったか、絶対に俺のことを信用していない。表情が既に不信感しか出していない。

俺が信じれないじゃない、存在そのものが信じられない。そんな気がする。

 

「あ、あの!はじめまして。アヴニールのサンジュさん、です?モンスターさんをやっつけにきたコンパとねぷねぴとあいちゃんです!」

 

そういえば、依頼された時、流石に一人じゃ心もとないから他にも雇っておいてくれと依頼を承諾した返信を送ると同時に書いていたな。

それが、ネプテューヌ達か……まぁ実力は問題ないだろう。

だが、俺のさきほどサンジュに感じた重いから予想したことは的中して、サンジュは深刻そうな信じられない表情でコンパたちを観察するように、大きくため息を吐く。それにコンパは困り顔になる

 

「……まぁ、社の者が頼んだのだから仕方ない。わたしが市外のプラントを視察している間に周辺のモンスターを一掃してもらいたい。くれぐれも、モンスターを逃して施設に被害を与える様な真似だけはしてくれるな。……では、後を任せる」

 

そう言い残し、サンジュはこちらを見向きもせず、プラントに向かって歩き出す。

コンパは複雑な顔で、口を開いた。

 

「なんか、感じ悪いです……。きっとシアンさんの時と同じで、子供だと思ってあなどっているです。失礼しちゃうです!」

「まぁ、俺でさえ若造扱いだし、コンパとネプテューヌは子供っぽいしな」

「外形で判断するなんて、絶対に人と付き合いが少ない奴だよ!」

 

憤慨するコンパを横目にネプテューヌに文句を言う。

アイエフは、このパーティーが見ためも中身も子供だと分かっているようでヤレヤレとした表情のままネプテューヌ達に今何を言っても火に油を注ぐようなことだと思ったのか黙っていた。

 

「こうなったらギャフンと言われるほど、徹底的にモンスターを倒してみせるよコンパ!」

「はいです!」

「意気込むのはいいことが、怪我だけはするなよ」

 

無駄な緊張感は、ストレスが余計にかかり、肉体的にも精神的にも負担が大きくなるからな。

まぁ、ストッパー役のアイエフがいるし、大丈夫だろうと思い、俺はネプテューヌ達とは逆方向に歩き出したーー

 

 

ガシッ(×2)

 

 

「………なに?」

 

コートの裾をネプテューヌとコンパに掴まれて俺の歩みが止まった。

 

「一緒に」

「行こうよ!」

 

……………はぁ

 

「考えてみろ、今回は討伐じゃなくて、ただの掃討だ。分かれたほうが効率がいい」

 

少なくても、お前らには実力があるので、まとまって移動する必要はない。

あの鬼の様なモンスターや紅いドラゴンがそこらにうようよいたら話は別だがな。

 

「えー、こぅちゃん。私達ってパーティーだよね?折角一緒なんだし…ね?」

「こぅさんがいれば百人力です!みんなで居れば早いです!」

「はい、はい。今回は紅夜の言っていることは正論よ。そっちをよろしくね」

 

二人の掴んで、アイエフはネプテューヌとコンパを引き摺っていく。

まるで、一生の別れの様に二人は手を伸ばすが、俺は後でなーと手を振って、黒曜日を担いで、モンスターの気配がする方向に歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

最後のモンスターに止めを決め、消えていく姿を見ながら息を吐く。

この周辺のモンスターは数は多かったが、それほど強くはなかった。

モンスターを統括者らしき強い奴もいたが、あの紅いドラゴンと比べれば像と蟻のレベルだっだ。

漆黒の皇神鎧(アーリマン・ディメイザスケイルメイル)』を使えば楽勝の楽勝だ。

 

『むしろ、あのモンスターが異常だと思うよ?』

「だよなぁ……」

 

デペアの言葉に思わず呟く。

女神でさえ、苦戦をするモンスターが存在するのは稀と思えば納得するが、あの鬼のようなモンスターといい紅いドラゴンといい、あいつらは本当にこの世界のモンスターなのか?

デペアは空のことを異世界の破壊神と言っていた。

なら、あいつがこの世界を破滅させるために他世界のモンスターを送ってきている?しかし、これも可笑しい。

鬼のようなモンスター、紅いドラゴン、これらは空の手によって造られたシナリオの敵役だ。

まさか、ゲームの様に適当に四天王とかばら撒いてラスボスの様に玉座に座って勇者を待っていた……とか、そんな奴じゃない気がする。

 

『僕もまだあいつの本意は分からないけど……一つだけ言えることがある』

「ゲイムギョウ界の味方……だろ?」

『それが、問題だ』

 

そのデペアの言葉に俺は思わず頭を傾げた。

 

『なんでゲイムギョウ界の一括りなんだ?世界の味方なんて常識的に考えればまずない(・・・・・・・・・・・・)。世界は、善も悪も、正義も不義も、闇も光も、全てを無慈悲に包み込んだ混沌の塊だ。それを完璧に理解している奴が、この世界そのものに味方をするわけがない。汚い場所は嫌い、綺麗な場所は好きだと、正直に言う奴だからね』

 

時たま思うんだが、お前下ネタばっか言うし、口調は子供っぽいところあるのに、いきなり雰囲気が変わるな。

 

『そうかな?別に僕は知らないことは知らないよ。知っているヒントを組み合わせて解明していくだけだよ。』

 

そんなことは、出来る奴と出来ない奴がかなり分けられていると思うぞ。

俺が夜天 空に対して分かっていることはそんなにない。言えるのはあいつは悪い奴でもないが、良い奴でもないそれだけだ。

 

『…………質問いいかな?』

 

神妙な声で、宝玉が光る。

 

『もしもの話、一番信じていた思った人が裏切って、冷静じゃなくなって、家族すら見捨ててしまったバカな奴は、どうすればいいと思う?』

 

俺にはそんな経験はない。

家族すら、いるか、いないのか分からないからからな。ーーーけど、それなら

 

「謝ればいいと思う。精一杯自分の非を認めて、謝ればきっと相手に通じると思うよ」

『自分を許せない。そして相手を許せない場合は?』

「その時は、自分を許すしかないだろう。自分を許せるのは自分だけ何だか」

『当たり前なことだね』

 

ああ、当たり前なことだ。

 

『理屈で分かっていても、人間って奴はそれが出来ないから面倒だなぁ…』

「だから、進歩があるんだろう?」

『……その通りだね。ん、紫ッ子たちの方も終わったみたいだよ』

 

今日のデペアはいつも以上になんていうか、素直だな。

こいつが『キャプテン』と慕っている俺の過去と空との間に一体何が起きたのか、それを全部こいつは知ってい俺に話さないということは、よほどの事情があるんだろうな。

もう一度、周囲にモンスターがいないか調べていないことを確認すると、黒曜日を量子に変えて、ネプテューヌ達と会った場所まで歩く。

そこには、ネプテューヌ達もいた。そして、サンジュもいた。

 

「こぅちゃん!そっちも終わったの?」

「ボスっぽい奴もいたが、お前たちと協力して倒したあのモンスターを比べれば、圧倒的に雑魚だよ」

「こっちも同感よ」

 

見ると、服が多少砂埃で汚れていたが怪我はないみたいだ。

俺も似たような状況だな。サンジュは目を細め、口を開いた

 

 

「視察は終了した。……モンスターの駆除は終わったようだが、全て……倒したんだろうな?」

「大丈夫っ!ボスッぽいのも倒したから、しばらくは怖がって近づいて来ないよ!」

「こっちも、統括者らしきモンスターを退治して、周囲のモンスターも全滅させた」

 

サンジュは考えるように顎に手を当て、半信半疑の表情で顔を上げた。

 

「そうか……しかし、もしまだモンスターが残っていて施設に傷の一つも付ける様があれば……今後一切、君たちに、仕事は頼まん」

 

……気にくわない。声を上げようとしたとき、コンパが焦りながら口を開いた。

 

「そ、そんな大げさですぅ。壊れても、すぐ直せばすむじゃないですか……」

 

確かに、ある物はいつか壊れる。

それは物体である以上、当然な摂理だ。問題はいつどこで、壊れてしまうかだ。

サンジュは、その発言に瞳を大きく開き、額に青筋を立て、コンパを見下ろすように明らかに怒りを込めた顔で口を開いた。

 

「……何も分かっておらんな。大して役にも立たん人間の分際で機械を軽んじるなど、おこがましい……!!」

 

ひっ、とコンパは声を漏らした。

 

「人に機械ほどの精密さがあるか?人に機械ほどの正確さがあるか?」

 

……こいつは、バカか?俺は心底思った。

サンジュの威圧させるような鋭い眼光と怒りの込められた声音にコンパの瞳に涙が溢れそうになる。

 

 

ーーーおい、こいつ殺すか?

 

お前の怒りも分かるが、とりあえずこいつに言いたいことが出来た。

俺はコンパを守るようにコンパとサンジュの間に入り、睨んだ。

 

「貴様もだ。モンスター討伐のプロフェショナルと言われているが、所詮人間だ。人間には限界がある」

「あー、そうだとも……だがな、そのおめでたい頭に聞く。機械に人ほどの発想力があるか(・・・・・・・・・・・・・・)?」

「………なにっ?」

 

サンジュは眉を細めた。こんなことも分からないのか?

 

「機械は単純そうでバカだ。命令されたことしか出来ないからな。それに機械は元々人々の知識と発想で生まれた物だ。失敗に失敗を重ねて生み出される努力の結晶だ……お前は、それを知らないのか?」

「ふっ、失敗を改善しても、人間はいずれまた失敗を別のことで引き起こす。なら私は全てを機械に任す。知識と発想など、AIにも任せてしまえばいい。どんな時に、どんな処置を行えば、最も有効か……人間のように集まって長い時間を話し合うより瞬時に答えを出すからな」

 

 

ーーーあれだね。人間と言う存在を真正面から否定しているね

 

ああ、その通りだ。

俺が黙っていると、サンジュが続いて口を開く。

 

「若造。貴様も不完全な人間だ。いつどこでミスをしてその原因が、大陸中に被害を生む原因となるのだ」

「お前は、諦めているな」

 

拳を強く握りしめ、冷たく声を出す。

 

「何にだ?」

「生物、全てが持つ特権ーーー可能性(・・・)だ」

 

そもそもの話だが。人間が、作る者がいなければ機械は生まれない。

今の世界を見て、少しでも役に立つ者を作ろうと言う意思が、機械を作るんだ。

それは、可能性。自分で考えて、自分で道を歩ける。生まれるその前から、その手に握っている潜在的、力だ。

 

「可能性、可能性か……下らん」

 

鼻で笑い、サンジュは背を向ける。

 

「失敗を前提として考える時点で間違っている。可能性だと?そんな不確かな物に縋れば、身を滅ぼすだけだ。」

 

そう言い残して、サンジュは去っていく。

俺は、その背中を睨んでいたが、後ろで俺のコートを弱弱しく掴む手に意識をそちらに向ける。

 

「うっ……ひっく…わ、わ、わたし、なにか、わるいこと、いったですか?」

 

今にも泣きそうな、嗚咽交じりの声で懺悔するようにコンパは俺のコートを掴んでいた。

 

 

ーーーニヒル、僕……今なら阿修羅になれそうな気がする

 

 

激しく同感だが、抑えろ。

ここで暴れても、何も解決しない。

 

「泣かない泣かない。こんぱは何も悪くないわ。って言うか大人げないわね。女の子をおどすなんて……!」

 

横で、アイエフがコンパを頭を撫でるながらサンジュに対して怒りの言葉を漏らす。

ネプテューヌもサンジュの態度に憤慨している。

 

「わ、わたしが……機械をバカにしたとか思われちゃったんです、きっと……」

「気にするな。コンパ」

 

あんな機械の歴史すら知らないような馬鹿を気にする必要はない。

俺は、コンパと目と目が位置が同じぐらいになるまで腰を落して、肩を掴んで彼女の額と自分と額をくっ付けた。

 

「……大丈夫、お前は悪くない」

 

お前は、いままで会ってきた人の中でも特に優しい奴だ。俺が保証する。

 

「あいつが何と言おうと、あんな人間を真っ先にダメ扱いする奴の言葉なんて気にするな、お前は立派だよ。お前はネプテューヌ達の中でも………ん?」

 

熱い。例で言えば、熱湯を入れた湯沸かしのように、コンパと目が合った。

互いに呼吸が掛かるほどの近距離だった。

 

 

ボンッ

 

 

「…………あぅ」

「コンパ!?」

 

いきなり、全身から力が抜けたように倒れ込むコンパを直ぐに抱き締める。

急いで額に手を当てる物凄い熱だ!風邪でも引いたのか!?

 

「………見た?ねぷねぷ」

「………うん、見た」

「………あれ、卑怯よね」

「………うん、そうだね」

『パルパルパルパルパル』

 

なんで、お前らそんなに冷静なんだ!?

あと、なんでそんなに冷たい目でこちらを見てくるんだ!?

 

 

「「『自分の心に聞け』」」

 

意味が分からない!!

俺は、幸せそうに気絶(?)するコンパが目を覚めるまで絶対零度で見つめてくる二人(+ドラゴン)に冷や汗が流れっぱなしだった。

 


 
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