:森
「夏侯惇様!」
「どうした!」
あれからしばらく時は経ち、華琳の軍は森の奥の方へと来ていた。
捜索を開始し、最初の内は皆が、またあのような事が起きるのではないかと心配していたが、春蘭
がその心配事に気をとられ、捜索に集中していない兵を見つけては、虎の如く叱咤を飛ばすので今で
は全員が盗人の捜索に思考を切り替えられていた。
春蘭の元に報告が入ったのはそんな時だった。
「西方にて、盗賊の物と思われる痕跡を発見しました!」
「そうか、思ったよりも早かったな。それでは私は華琳様を呼ん「それと!」、何だ?」
春蘭は、華琳を呼びに行こうと馬を華琳がいる方へ向けたが、言葉を遮られたことにむっとして再
び兵士を振り帰ると、こちらに差し出した手、その手の中にあるものに目がいった。
「なんだ、それは?」
それは赤黒く染められた布だった。先ほどの爆風で千切れたのか、所々ほつれている。
春蘭達は知らないことだが、それはデブが腰に巻きつけていたものの一部であった。カズトがデブ
を担ぎ上げたときにでも落ちたのだろうか?
「これが、その近くの木に引っ掛かっていました。気になったので手にとって見ると血で濡れてい
て、しばらく進むと、出発前に見せられた人相書きに良く似た、生首が!」
「何だと!?」
「どうかしたの春蘭?」
そこへ報告を聞きに来た華琳がやってきた。
「華琳様!」
「報告を私にも聞かせなさい、春蘭」
春蘭は、兵から受けた報告をそのまま華琳へ伝えた。
「・・・・・・」
「如何いたしましょう?」
「その方、その場へ案内しなさい」
「は!」
「秋蘭、少しばかり軍の指揮を預ける!貴女も、何かあったらすぐに伝令を飛ばしなさい!」
「御意!」
「では行くわよ!」
そう言って、3人は現場へと向かった。
一方この頃、カズトはどうしていたかというと――
:森
「あの野郎、ちょこまかと動きやがって!」
と、愚痴をもらしながら、視界に映し出されるフェイスハガーの痕跡を追っていた。
獲物は、こちらが追っているの事を知っているかのように地面だけでなく、木の幹、枝、つた、岩
などの跡が付きにくい場所を時折通っていた。
恐らくカズトも、ヘルメットに搭載されたこの索敵機能がなければ追跡はさらに困難を深めただろ
う。
「・・・・・・」
先程からカズトはこの点が気になっていた。
カズトは族長や師匠などが自分をこの状況に追いやったと思っているのだが、それにしてはあまり
にも――
(あまりにも装備が整い過ぎている)
一部の者は地球などの文明が発達した星で狩を行うとき、プラズマなどを発して電子機器や銃など
を使用不可能にする道具を持っていくと聞く。
俺を本気で殺す気ならば船が落ちたときに死んでいる筈だし、もしミスで生き残ったのだとしても
、あの師匠がそれを想定出来ないはずがない。しかも装備がいつも通り使えるはずがない。
(だとすると、やつらの目的は俺を殺す事ではなく、俺をここへ送り込む事なのか?・・・む?)
いったい何のために、と次の論題に移ろうとしたところである異変に気付いた。
(地震?にしちゃ弱いな。これは・・・足音か)
地面にうつ伏せになり、感覚を研ぎ澄ませてさらに詳細な情報を探る。
(数は1500、いや2000か。駆動音が無い、風も穏やかだし完全に歩兵だけか・・・いや、
馬もいるな。50から70って所か)
次々と明確になる相手に、最初は遊牧民の移動かと思ったカズトであったが、
(並び方がおかしいな。横に広がってる?何か探しているのか?)
その移動の仕方、並び方に疑問を持って立ち上がった。
(見つかったらまずいし、フェイスハガーがこいつらを襲わないとも限らない。急ごう)ダンッ
結論を出すと、カズトは先程よりも速いスピードで駆け出した。
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今回は前のプラスという感じで書かせてもらいました。
それでは、どうぞ