EP9 奈良修行編・完全始動
和人Side
昨夜のALOダイブから明けて早朝5時、目を覚ました俺は布団から起き上がる。
他の面々がまだ眠っているのは昨日の疲れとALOのせいだと思う。
浴衣から袴に着替えて洗面所へと向かって顔を洗い、道場へと移動する。
中には既に師匠が居り、正座している様子をみると精神統一をしているようだ。
けれど俺には気付いているはず、だからこそ声を掛ける。
「おはようございます、師匠」
「おはようございます、和人」
挨拶を交わしてから師匠の隣に座り、同じく正座して精神統一を行う。
この家が静かな山中にあるお陰か早朝にこれを行うと集中できる。
30分程経過した時、師匠が立ち上がるのを感知したけれど俺はそのまま集中、しかしそこに!
―――ブンッ!
「ふっ!」
「むっ?」
師匠が持つ竹刀が俺に振り下ろされるがそれを白刃取りで受け止め、反撃を行う為に竹刀を押し出す。
それを師匠は回避して後退、俺は即座に接近して回し蹴りを放つ……寸止め。
「寸止めですか、理由は?」
「これ以上続けると修行まで体力が持ちません。それに志郎達も起きてますし、葵さんが朝食の用意を始めている頃ですから」
問うてくる彼に俺は答える。道場の入り口では起きてきた男性陣が真剣にこちらを見ている。
師匠は笑みを浮かべると闘いの気配を解き、俺も足を下げる。
「良い回答です。それにしても戦いに関しては本当に成長していますね。こう言うのも難ですが、SAOのお陰でしょう」
「そうですね」
確かにSAOでの実戦経験のお陰だろう、それに苦笑してから俺達は道場を後にした。
家の方に戻ってみれば明日奈達が起きてきた。
明日奈とスグと雫さんはしっかりと目が覚めているようだが珪子と里香、朝田さんと燐は眠たそうな様子。
明日奈と雫さんは元々起きる時はしっかりと起きるし、スグは剣道の練習の為に早く起きる事がある。
逆に珪子と里香はSAO時代でもそこまで早くに起きる必要のない層にいたし、朝田さんは普通の学生、燐は朝が苦手だからだろう。
葵さんの朝食の準備を手伝おうと思ったが…、
「和人君達は修行があるんですから~、お気遣いは大丈夫ですよ~」
という風にやんわりと断られた。そちらは女性陣が手伝い、俺達は居間でテレビでも見て待っている。
そして出来上がった朝食は白御飯、ワカメの味噌汁、焼き鮭、だし巻卵、漬物という和食。
穏やかだけど少し賑やかな朝食を終えた後、9時までは自由時間となったが、俺達にはやるべき事があった。
「和人くん、この数学の問題はどうすれば解けるの?」
「ここの問題はこの公式を当てはめれば解けるよ」
それはずばり夏休みの課題だ、俺達にもそれなりの量のものが出されている。
ちなみに俺は3割、景一と烈弥は2割、志郎と刻は1割の課題を終わらせてここにきた。
つまりそれ以外の女性陣と九葉は課題に手を付けていない。
というか明日奈、俺はキミよりも学年が下なんだけど…。
他のみんなも端末を使って課題を熟していくが、数学や科学系の問題における公式は俺に聞いてくる…おいっ。
9時前に課題をやめて俺達は準備運動を行い、走り込みを始めた。
スグと燐は2人で同じ距離を走り、俺達は師匠と共に山道を走る。
さて、山道を走っているのだがそれは途中までであり、今度はあまり整えていない獣道に師匠が入り、俺達はそれを追いかける。
山道で体を慣らして獣道で本番というわけだ。
普通に走るのとは違い、倒れている木を避けたり、枝を弾きながら進まなければならない。
師匠は俺達が見失わない程度に距離を開けている、余裕綽々と言ったところか。
「ふっ、はっ…」
僅かに呼吸を吐き出しながら獣道を駆けていく。
志郎と景一と公輝は俺に並ぶように追いつき、烈弥と刻と九葉は5m程離れている。
しかし俺達は全力で走っている訳ではない、あくまでも体力をつける為だからどれほど走っていられるかがメインだ。
師匠はそれを知っていて一定の距離を開け続けている。
その後、合間に10分程の休憩を入れたりしながら10時過ぎまで走り込みを行った。
走り込み終了後、休憩を30分入れて今度は筋トレを始める。
腹筋、背筋、スクワットを200回ずつ、腕立てを100回というもの。
これを11時半までに終わらせること、休憩は4回までだが自分のペースで構わないとのこと。
回数が少ないと思われたりするが別に俺達は筋肉をつけたいわけではない、無駄な筋肉は必要ないからな。
それに加えて2kgのダンベルを両手に持ち、腕に限界が来るまで上げ続けるというもの。
これは内側の筋肉をつける為のものだから外見はあまり変わらないというのが特徴。
それらも全て終わらせることで午前中の鍛練は終わりを迎える。
さて、午後に備えて昼食と休憩を取らなくては…。
家に戻ってきた俺達を迎えたのは明日奈と女性陣、そして彼女らが丹精込めて作ってくれた料理だった。
おにぎりに卵焼き、唐揚げ、バランスを取るためのサラダなどなどがある。
「はい、和人くん。あ~ん///」
「あ~む」
照れながらも彼女がこれをしてくれたのなら勿論期待に応えて口に入れる。
それを見てカップル組である志郎と里香、烈弥と珪子、刻とスグ、そして夫婦である師匠と葵さんも行う。
この光景に景一は嘆息し、朝田さんは赤くなりながらチラチラと視線を投げかけ、
九葉と燐は……遠い目をしながら口を開けている、呆然自失か? なんにせよ美味しかった。
食後はゆっくりと緑茶でも飲みながら休憩し、午後の修行へと意識を傾ける。
食事と休憩を終えたのならば、午後の本格的な修行が始まる。
俺達は道場に立ち、スグは師匠と剣道の稽古を行う。
その間に俺、志郎、景一、烈弥、刻、公輝、九葉、燐の8人で組手を行う、1回毎に相手を変えてだ。
体術と言えるほどのものではないが、神霆流の動きは『柔』にある。
柔道や合気道などの相手の動きや力を利用した攻撃や反撃、それに加えて流れに乗る攻撃、それこそが神霆流の技術。
幾度とみんなと組手を交わしたことで気が付いた、九葉は気配を読み取って先制を行う癖がある。
普通の相手なら気付かないが俺達のような者になれば気が付く、本人は果たして気付いているのか?
試しに気配を業と大きくしてみると、そこに攻撃を仕掛けてきた…やはり気付いていないのかもしれない。
カウンターの一撃を与えて九葉との組手を終える。
「やっぱり、これ癖か…」
「なんだ、気付いてたのか?」
「いや…さっきから妙にみんなから同じ方法で負けると思ったから。
まさかと思って自分の動きを思い返したら、気配察知が癖になってる…直さなきゃな」
そうか、自分で分かることができたか。それならなんとかなるだろう。
「無理に癖を直さなくても、その癖を利用することも考えておけよ」
「そうする。ありがと、和人さん」
なにも癖は直すものじゃない、それを利用して強化することも可能だ。
それを念頭に置いておけばなんとでもなるだろう、とするとそこに…。
「はい、直葉さん。お疲れ様でした、ゆっくりと休んでくださいね」
「あ、ありがとう、ございました」
「それじゃあ僕もここら辺で終わるね」
少しだけ息切れを起こしているスグに対し、師匠は汗1つ流さずにいる…どんだけだよ。
スグは道場から出て家屋の方へと戻って行き、燐も彼女に続いて道場から出ていった。
「それでは少し休憩を挿んでから私との組手を始めましょう」
その師匠の言葉を聞いて壁に凭れ掛かりながら常温のスポーツドリンクを飲用し、タオルで汗を拭く。
休憩に10分程時間を割いてから、鍛練を再開する。
「そろそろ良い頃合いですね……では、組手を再開しましょう。まずは和人、来なさい」
「はい」
志郎と刻、景一と烈弥、公輝と九葉の組み合わせで組手を始めていくなか、俺は師匠の前に立つ。
精々足掻いてやるとしますか!
―――バッ!シュンッ!ドォンッ!
―――ヒュンッ!ダァンッ!
―――ガシッ!バァンッ!
「ぐ、ぐふっ…」
さて、何回投げ飛ばされたことやら(音は3回ですが実際はもっと倒されています)
さすがに掠らせたり、こちらも投げ飛ばしたりは出来るけれど、全て受け身を取られてしまう。
だがそれも仕方の無いこと、ならばせめて…!
「ハァッ!」
「ぬっ!?」
師匠からの強烈な蹴りを少しだけ後退しながら脚を掴みとり、そのまま絞め上げながら脇に挟む。
僅かに苦悶の声を出した師匠に追い打ちをかけるべく、その股間に向けて蹴りを……寸止め。
「……さすがの私も冷や汗が止まりませんよ…」
「一矢報いたり…」
多分だが師匠もワザとギリギリまで放っておいたと思うけれど、冷や汗を見る限りギリギリすぎたか…。
「ま、まぁ動きは洗練されていますし、問題無いでしょう
(キレや感覚が明らかに強化されていますね、SAOの成果というべきか…)」
「ありがとうございます」
そんな評価を受けているとは露知らず、組手の相手が変わる。
「次、志郎」
「はい」
志郎が師匠に呼ばれ、みんなも組手の相手を変えたので俺もそちらに加わる、刻が相手か。
彼と組手を始めてから横目で志郎の様子を見てみると投げ飛ばされている。
俺もさっきはあんな感じだったのか、なんか面白いな(笑)
この後も全員がローテーションで師匠と組手を行ったり、相手を変えたりして鍛練を続けた。
追記、この鍛練内容は1週間行われた。
和人Side Out
To be continued……
後書きです。
修行前半部の様子でした。
1週間同じ内容ということで、一気に1週間飛ぶことになりますw
ですが次回は明日奈視点でお送りします、鍛練中の一方その頃というやつですね。
それでは次回で・・・。
ここで1つ報告させていただきます。
今回の投稿によりついにストックが底を尽いてしまいました。
4月になって忙しくなり、中々執筆が進まなかったのです・・・というのは言い訳にしかなりませんね。
それでも毎日投稿していた自分は頑張った方だと思います! 自分で自分を褒めてもいいはず!
というわけでして、2日に1回の投稿になる可能性があります。
それでも1日1回の投稿を目指して頑張るたいと思いますので、今後ともお付き合いをお願いします。
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EP9です。
今回は修行前半部の様子になります。
では、どうぞ・・・。