No.568375

〜貴方の笑顔のために〜 最終幕 第三話  貴方の笑顔のために

白雷さん

第三話です。  多くの人によんでもらえれば、うれしいです!!

2013-04-21 11:38:02 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:11270   閲覧ユーザー数:8115

(一刀視点)

 

 

 

「だから、ここは俺に任せてくれ、華琳」

 

敵の数は聞いていた。 しかし、こう目の前にすると、言葉がでてこない。

正直、これで華琳たちが生きていてくれただけでも俺はうれしかった。

そして、なによりこうしてまた、会うことができてうれしかった。

 

「は?、なにいってるの一刀??」

 

「は?はないだろう華琳。」

 

「だって、あなた自分が言ってることわかっているの? ここを任せろって・・」

 

「言葉通りの意味だよ。」

 

「だって、あなた・・・武の才能なんてまったくないじゃないの? なにか策でも??」

 

「いや、違うよ。 華琳。  俺だって、君たちと離れていた時間、

 なにもしていなかったわけじゃないさ。

 しっかり、君のいう天で、修行していたんだ。」

 

「修行って、あなた・・」

 

「それに、こっちにきても、ちゃんと戦いをこなしてきた。

 呂白として、ね」

 

「え・・・ちょっと、一刀。 言っていることがよくわからないのだけれど・・」

 

「俺は1年前、この世界にかえってきていたんだ。」

 

「なんですって!」

 

「ああ、本当だ」

 

「じゃあ、なんで、すぐに私たちのもとに帰ってこなかったのよ!」

 

「帰ってこれなかったんだ。華琳たちがあまりにも、輝きすぎていて。

 俺は、自分のことしか考えていられなくて。弱くて、何もできなくて・・

 そんな自分が情けなくて、俺はいやで、逃げ出したんだ。」

 

「そう・・・」

 

そんな理由をいうと、華琳はすべてを見通したかのようにそんな一言を残した。

 

「その、後は呂白という名を名乗り、三国を旅していた。」

 

「そう、って・・・なんで恋の兄になっているのよ!」

 

「まあ、いろいろあったんだ・・」

 

「いろいろって・・まあ、一刀のことだからそれはあるでしょうよ。」

 

「う・・そんな風にみるなよ、何も俺はしてないぞ」

 

「まあ、その話は後でするとして・・、

 随分と、強くなったのね」

 

「なさけないまま、かえってこれなかったからな」

 

「そうね・・」

 

「ああ」

 

「それで、そのたびの先に何かあったのかしら。 得たものはあったのかしら」

 

やっぱり、華琳だ・・・そう思う。

俺のことをまるですべて見透かしているかのように、そう彼女は聞いてきた。

 

「ああ、たくさんのことを学んだよ、華琳。

 俺は、数え切れない死をみ、数え切れないほどの生をみた。」

 

「そう、ね」

 

「だから、気づいたんだ。 自分がしなくてはいけないことに。

 自分が守らなくてはいけないものに」

 

「一刀・・」

 

「俺は、気づいたんだ。君がこれまで背負ってきていたものの重さを。

 君が王としてその肩に背負っていたものの、大切さを、

 そして、なにより、君は、そのことを大変だと、何も言わなかった。」

 

「あたりまえじゃない、私を誰だと思っているの?」

 

「大陸の王・・・いや、違うな。 君は、華琳だ。」

 

「かず・・・と」

 

「これまで、俺はつらいことがあったって、絶対にあきらめなかった。

 それは、君のそばにいたかったから。

 君の横で、胸を張っていたかったからなんだ。

 君が、どこまでも、君だったから。  俺はそんな華琳のそばにいたかったんだ」

 

「一刀・・・」

 

「だから、華琳、 君が背負っているものを、俺に少し分けてくれないか?」

 

そういって俺は彼女の手を握った。 

その手は俺の手で包み込めるくらいに小さくて・・

俺はなぜかこぶしに力が入ってしまった。

 

「華琳、ここは退くんだ。  洛陽へ、そして援軍を待つんだ。 きっと

 きみが退くころには呉も、蜀も決着をつけていることだろう。

 だから、ここは退いてくれ。」

 

「何を言っているの、なに言っているのよ! 一刀!・・」

 

「ここは、俺に任せて、洛陽まで退くんだ。」

 

「あなたにって、 あなた一人にってこと?」

 

「ああ、そうだ。」

 

「そんなの無理に決まっているじゃない。 相手は今、減ったとはいっても30万は

 いるでしょう。そんな状態であなたをここにおいていけるわけないじゃない。」

 

「華琳、じゃあ、ここで君たちはどうする、ここに残って、どうするんだ!

 ただ死をまつのか!そんなことは俺が許さないぞ華琳。

 君は王だ。ここで、なにをするのかくらいわかるだろう・・」

 

「ええ、わかっている!わかっているわよ!けど、やっと・・、

 やっとまたこうやって、会えたのに・・・

 なんで、なんでなのよ!一刀!」

 

「わかっているんだろう、華琳・・・俺はいかなくちゃいけない。」

 

「一刀・・・」

 

「だから、いってくれ。華琳。 これが、俺のさいごのわがままだ。」

 

「なんでよ・・・なんで、こんなときまであなたはそんな風に笑っているのよ!」

 

「だって、こうしないと、俺は今にも泣きそうだから!

 こうしてないと俺は正気を保てそうにもないから!

 こうしていないと、今にも君を抱きしめたくなるから!!!」

 

そういうと、華琳はぎゅっと俺のことを抱きしめた。

 

「か、りん・・・」

 

「泣けばいいじゃない、」

 

そういいながら彼女が抱きしめる腕には力が入っていた。

 

「ここにいればいいじゃない、ずっと・・・」

 

「そんなこと、できないことくらい、華琳はしっているだろう?」

 

「一刀・・」

 

「ありがとうな、華琳。」

 

「あなたがどうしてもいくというなら・・・私も!」

 

「私も、戦う・・とか、言わないでくれよ、華琳・・」

 

そういいながら、俺は華琳の肩に手をかけ、彼女から距離をおく。

 

「一刀っ、  でもっ!」

 

「そろそろ、時間だ・・・華琳・・・桂花!、そこにいるんだろう!」

 

 

 

 

 

 

しばらくの、静寂があったが、俺が彼女の答えをまっていると、桂花は、

やっと、壁の後ろからでてきた。

 

「げっ、なんで気づいたのよ・・・」

 

「おいおい、最初にあった言葉がげっ、かよ・・」

 

「別に、私は盗み聞きとかしていないからっ、というかあんたの話なんて興味

 ないし・・ただ、華琳様に改めて情報確認をしようとしたら、あんたが・・」

 

「ああ、それは悪かったな・・・、んでも、聞いていたんだろう。

 だったら、もう一度話す必要もない、な。

 たのむぞ、桂花・・・」

 

「別に、あんたに言われなくても、華琳様が助かるなら私はそれでいいから・・」

 

「ははっ、それでこそ、桂花だ。」

 

「あたりまえじゃない。」

 

「そうだな。」

 

「けど・・・あんたは、それで、いいの?」

 

「桂、花?」

 

意外だった・・彼女が今、そんな風に下を向きながら俺のことを心配してくれている。

正直にうれしかった。

 

「ああ・・これで、いい。」

 

だから、俺も、笑顔でそんな風に彼女に答えた。

 

 

「それと、春蘭、そこにいるんだろう!」

 

「げっ、あんた・・気づいていたの・・・まあ、私があんたがあんたの策を聞いてから、

 彼女を呼んだのよ。 」

 

「ありがとうな、桂花。」

 

「べっ・・別にあんたのためじゃ・・・」

 

そういった会話をしていると春蘭も、壁の陰からこそこそと出てきた。

 

「本当に、一刀・・・なのか・・」

 

「ああ、久しぶりだな、春蘭」

 

「でいやーー!」

 

「んなっ!」

 

俺が握手を求めようとすると、いつものように彼女は俺に切りかかったってきた。

 

「ちょっ、春蘭、なにすんだよ。」

 

「すまん、お前かどうか確かめたかっただけだ・・・」

 

「春蘭、春蘭も、話をきいていたから、何も言わなくても、わかってくれるよな・・」

 

「わからん!ぜんぜんわからん! お前が呂白だと!そんなのぜんぜんわからん!」

 

「いや、そこかよ!・」

 

「それで、それで!お前が呂白だとしても、なんで、お前がここに残らなくちゃいけないのか

 まったくわからん・・・」

 

そういいながら、彼女は下をむいた。

 

「わかっているんだろう・・春蘭・・・」

 

「一刀・・・お前・・・」

 

そんな俺の真剣なまなざしに気がついたのか、春蘭もこちらを真剣に見つめる。

 

「わから、ないよ・・一刀、  だって、やっと・・会えたのに・・こうやって、また・・」

 

「ああ、でも、いや、だからこそ俺はいかなくちゃいけない。

 いや、いかせてほしい。

 こうして、君たちにあって改めて気がついたよ、

 俺が守りたいものの大切さを。」

 

「一刀・・・」

 

「春蘭なら、わかるだろう。」

 

「ああ・・・」

 

「春蘭、 お願いを聞いてくれないか・・」

 

「わかった・・・ひとつだけだぞ。」

 

「ああ、ひとつだけだ。   華琳を、よろしく頼む」

 

「わかった、一刀」

 

そうして俺は、かえって来て初めて彼女と握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

(華琳視点)

 

ちょっと、春蘭・・・何言っているのよ・・・

私が一刀をいかせるわけないじゃない・・

あなたたちはそれでいいの!

あんなにないていたじゃない! あれはうそだとでも言うの!

そんなわけない!

だったらなんでよ!!!なんでなのよっ!!!

 

「ちょっと、春蘭!」

 

「すみません、華琳様。 今まで私は、命にそむいたことはありません。

 しかし、今、私はそれを破ります。 こいつの命に、私は従います!」

 

「何をいっているのかわかっているのかしら、春蘭!」

 

「はい、わかっております。 この後でなら、どんな罰にでも耐えてみせます。」

 

「春蘭!!」

 

 

「一刀、心配するな。  お前との約束は、必ず、果たすから。

  だから、いって来い。」

 

「ああ、ありがとう。 春蘭。 

 無事でいろよ。   華琳・・・ごめんな」

 

そういいながら、一刀は、城外へ向かうためにその場から走っていった

 

 

「ちょっと!一刀!!!待ちなさい!」

 

そう私が追いかけようとすると、春蘭が私を止める。

 

「ちょっと!春蘭、離しなさい、 離しなさいってば!」

 

私がもがけばもがくほど、彼女の力は強まり、私は体を動かすこともできなかった。

桂花は撤退の準備を皆に指示している。

 

なんで、なんでなのよ!

一刀をおいていけっていうの!

 

そんなのありえないわ!!!私が許さない!!!

 

 

「春蘭!どきなさいっ!」

 

「ごめんなさい、華琳様。 無理です」

 

「なんでっ!なんでなのよ! あなた、一刀のこと好きではなかったの!」

 

「すきでした!好きでしたよ! あいつがいなくなってやっと気がついた。

 私はあいつが大好きですよ!」

 

「だったら!」

 

「だからなんです、華琳様。 私も、前に残ったように、今、

 一刀も、その意志で私たちを守ろうとしている。

 だったら、いやだからこそ、私はとめることができない!

 やつを、やつの歩く道を誰も邪魔してはいけない!!」

 

「違うのよ!あの時とは違うのよ! あなたのときは一時撤退だった。

 それでも、あなたは死からぎりぎり免れた。

 けれど、今回は完全撤退をしようとしているのよ!

 一刀はしんがりなんかじゃない。

 ただ、その命尽きるまで、私たちが完全に退くための時間を

 稼ごうとしているのよ」

 

「わかっています、わかっていますよ・・華琳様・・」

 

そういって、彼女は涙を流しながら口をつぐんでしまった。

 

「離しなさい!春蘭!これは命令よ!」

 

そうしているうちに一刀がだんだんと遠くに離れていく・・

 

「一刀!一刀!!!!」

 

なんで、なんでなのよっ!ずっと待ってた、ずっとあなたが私は必要だった。

やっと会えたのに!やっとあなたのそばにいられるってそう思ったのに!

なんでなのよ!一刀!

こんなの私は望んでないわ!!

 

「一刀!!待ちなさい、、、待ちなさいよ!!!」

 

離れていく彼の姿を見ながら、私の頭からはあのときの、

彼が消えてしまった日の光景が頭から離れないでいた。

あのとき・・・私は怖くて、振り向けずにいた・・・

何もできずにいた・・・何も言えずにいた・・

でも、今は違う。 今は・・・

 

「一刀!  大好きよ!! 私はあなたのことが大好きだから!!」

 

そうだ、、もうこの気持ちは抑えきれないほどに膨れ上がっていた。

だからこそ、つらい・・こんなのいやだ・・

いやだよ・・・一刀・・・

 

いやだよ・・・・

すきなの、大好きなの! 

 

なんで、なんで・・・

なんで、いつも私は遅いのよ・・・いつだってそうだった。

いつも、自分の外面を気にして何も言えなかった・・・

今も、彼に直接言っていないのに!!!

 

「離しなさい!春蘭!  離せーーーー!!!」

 

私の言葉は届くことなく、彼は離れていく・・・

私の大好きな彼が、離れていく・・私のもとから離れていく・・・

 

 

「いやだーー!一刀!一刀!!! 」

 

なんで・・一刀!!こんなの不条理すぎる、

あなたは私のそばにいるって言ったじゃない!

うそつき・・・うそつきっ!!

 

「離せ!!春蘭!!これは王の命令だ! 離せといっている!!聞こえないのか!!!」

 

 

気がつくと、私の瞳からは、涙が溢れ出していた。

 

 

「一刀!!!」

 

だって、だって・・・やっと自分に素直になれたのに・・

何が間違っていたというの・・

私が間違っていたの・・?

かず・・と・・

何か、答えてよ・・

 

いや・・・・

こんなのいやだ・・・・

 

 

 

 

 

 

「かずとーーー!!!!!!」

 

そんな私の叫びはもう彼の耳に届くこともなく、彼は私の視界からその姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

(一刀視点)

 

 

・・・正直、つらいな・・・

 

俺は、城から飛び出し、敵の前にただ一人、立っていた。

 

毒のせいで、体がふらつく・・正直、目がかすみさえする・・・

でも、それでも、・・・俺は・・

 

 

俺は、そう思いながら・・一歩一歩前に歩いていく。

 

 

「華琳・・・」

 

俺は愛する人の名をつぶやく。

その言葉が何十倍もの力を俺に与えてくれることを信じて

 

 

華琳・・

俺は、きっとまだまだ弱い。

だから、正直、君のことをもう一度見れるかどうかはわからない。

いや、君にもう一度あえたらそれこそまるで夢みたいなのかもしれない。

けれど、俺はこれだけは約束するよ。

俺は君を絶対に死なせたりはしない。

絶対に、君をこの世界から失ったりはしない。

それが、俺が心に決めたことだから。

 

そうだな・・・いままで、いろいろなことがあってたくさん迷惑をかけてしまったな・・

そして、俺は弱かった・・・

でも、やっとだ。やっと、君とともに歩けるくらい、俺は自分に自信が持てるようになった。

命の重みを理解することができた。

 

 

空を見上げ、その瞳を閉じると、華琳と、そして皆とともに過ごした

俺の大切な日々が走馬灯のように頭に流れてきた。

 

楽しかった・・・・・

 

つらかった・・・・

 

うれしかった・・・

 

悲しかった・・・

 

 

そのすべてが俺にはいい思い出だった。

かけがえのない大切な思い出だった。

 

なぁ、華琳、俺は今、ちゃんと笑っていられているか?

ちゃんと、立っていることができているだろうか?

堂々と、君の隣に立つ男らしく一歩一歩を歩いているだろうか?

 

 

 

たぶん・・・違うんだろうな・・

 

だって、足が震えるんだ、

心がいっているんだ、いきたくなんかないって・・・

多分、俺は怖いんだろうな・・・

もう、君たちの笑顔を見ることができないことが、

君たちが永遠にいない世界なんか想像することができないから・・

君たちと、いつまでも笑っていたかったから・・・

 

 

でも、な。華琳。 男にはいかなければいけないときって言うものがある。

それは、きっと今のようなことをいうんだ。

 

 

俺は、幸せだよ。華琳・・・

こうして、君を、俺の愛する人を自分の手で守りことができるのだから。

こうやって、君のために前に進めるのだから・・・

 

だから、俺に守らせてほしい、

君の事を。

 

 

俺は、俺の愛するものを傷つけるやつを絶対に許さない!

もう、絶対に、悲しい思いなんかさせない!

 

 

そう思いながら、俺は空たかく、貂蝉からもらった刀を突き出す。

 

確かに、今の俺には、この剣を振るう覚悟があった。

 

 

 

 

 

 

 

 「きけぃ!!!! 俺の愛する魏国を攻める侵略者どもよ!!!

  俺は天の御使い、北郷一刀である!!!!」

 

 

そう叫ぶと、敵からどよめく声が聞こえる。

 

 

「貴様らのいう、天とは人がつくりし、偽りの天である!!

 大将、司馬懿は本当の天を偽り、貴様らに偽りの天を与えたのだ!!」

 

 

「だからといって、俺が、天であるといっているわけではない!

 かといって、お前らが掲げる天など許せるはずがない!

 天とは、非道な行いによってつくられるものじゃないからだ!

 天とは、人々が、望み、努力し、ともに笑いあい、支えあい、

 ともに人生を生きていく、そんななかに存在する!」

 

 

「俺は、お前らを許さない。この命に代えても!!

 俺の名に怖気づくやつはこの場をたちさるがいい!

 俺に立ち向かってくるやつは俺が相手をしよう。

 30万、40万、 それがどうした!!!

 俺には関係がない! 俺はただ、貴様らを、許しはしない!」

 

 

 

「覚悟しろよ、お前ら・・」

 

 

そういいながら、俺は目が次第にかすんでいくのを感じながらら、

敵のほうへ、ゆっくりと走り始めた。

 

 

 

俺の、たった一つの覚悟とともに。

 

「俺は、俺の魂にかけて! 死んでも、お前らをここから先へはいかせない!!!!」

 

 

 

 


 
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