No.567302

運・恋姫†無双 第十二話

二郎刀さん

Q:もし一生遊んで暮らせる金があったらどうしますか?

私だったら一生遊んで暮らします。

2013-04-18 12:26:05 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2032   閲覧ユーザー数:1783

「久しぶりね、秋蘭」

 

「はっ、華琳様もお変わりなく」

 

 

夏侯淵の落ち着いた声音と、前髪に隠れ、そこから覗く右目が、どことなく秋を思わせる。

 

――真名の通りだ。

 

そう思うのも何回目だったか。

相も変わらず、美しい眼をしている。

曹操は昔から、この瞳が羨ましい、と思っていた。

自分に自信が無い訳ではないが、それでも隣の芝生は青く見えるものだ。

 

 

「あなたの姉も変わりはないかしら?」

 

「はい。この前は、師を馬鹿にされたと言ってその者を斬り殺しました」

 

 

その様子が脳裏に再生される。

 

――彼女らしい。

 

そう想って、思わず笑みがこぼれた。

 

 

「あの子の手綱はしっかりと握っておきなさい」

 

「それが私の役目です」

 

「仁と洪は?」

 

「彼女たちとは最近会っていません」

 

「会いたいわね」

 

「それは彼女らも同様でしょう」

 

 

それから少し、積もる話に花を咲かせた。

話題に尽きることは無く、時間が許すなら、どこまでも話し続けていられるほどであった。

 

夏侯淵の用事とは、曹操に会う事。

その用事は達成させられた。

今度は曹操がある用事を切り出し始める。

 

 

「あなたに頼みたいことがあるわ」

 

「何なりと」

 

 

夏侯淵は頷く。

今はまだ公式な主従の関係にある訳ではない。

それでも夏侯淵は、彼女こそが主であると幼少の頃から思っていた。

その事は曹操は知らない。

姉と共に交わした約束だ。

 

当時から図抜けた才を持ち、その才に魅了され、すでに彼女の虜となった人物は後を絶つことが無かったほどだ。

大人は、子供の才を認めたがらない人物もいたが、幼い自分にはより近くに居たためか、その異才を身を持って感じていた。

 

そして今日、曹孟徳に会って改めて心から誓う。

 

彼女こそが我が主である。

 

 

「洛陽に居るある人物を探してほしい」

 

「ある人物?」

 

 

曹操の目の、奥の光が輝いた。

 

 

「紗羅。字は竿平と言う人物」

 

 

夏侯淵の目も光った。

 

 

「運び屋、ですね。北門の前で会いました」

 

 

曹操は、心底面白そうに口を開く。

 

 

「彼、私に恋焦がれていたわ。殺してやりたいって位にね」

 

「……殺しますか?」

 

「まさか。ただ話してみたいって思っただけよ」

 

「もしかしたら、殺してしまうかもしれません」

 

「殺したいのかしら?」

 

「少しだけ。新しく弓を試してみたくもあります」

 

「弓?」

 

「はい。その運び屋から酒の礼に貰いました。ですので、それに免じてやろうと思います」

 

「そうしなさい。仕事を増やされたら困るわ」

 

 

軽く笑いあう。

旧知の仲は居心地が良かった。

洛陽では、なかなか味わえない居心地だ。

下手に休むよりずっと良いものだ、と曹操は思った。

 

 

「彼が私に面白い事を言ったのよ」

 

「なんと?」

 

「『臥龍』ですって」

 

 

夏侯淵の目が、少しだけ見開いた。

 

 

「驚いたわね」

 

「驚きました。あの者にそんな慧眼があるとは」

 

「あなたにも【弓】を渡したのでしょう?」

 

 

夏侯淵は思わず、そういえば、と漏らした。

運び屋の積荷は武具だった。

その中で、わざわざ自分の得意の得物の弓を渡してきたのも、彼の慧眼だったのだろうか?

 

 

「彼に興味があるのは私だけじゃないようね」

 

「そのようです。分かりました、運び屋を探しましょう」

 

「その者について何か知っていることは?」

 

「面白い話が。彼は天下無双だとか」

 

 

曹操は吹き出しそうになるのを堪えた。

 

 

「……何よそれ?」

 

「陳宮という少女の言です」

 

「あの子ね。覚えてるわ」

 

 

曹操の目が、より強く光った。

口元が歪んでいるのを、夏侯淵は見逃さない。

 

 

「その様子では……」

 

「可愛かった」

 

「悪い癖です」

 

 

話が終わるのはもう少し先のようだ。

「うむ、なかなか良い」

 

 

カランコロン、と紗羅は履き心地を確かめながら、下駄を鳴らして歩いていた。

服も新しく、地味な色合いの服に、紫紺色の帯。

帯は、趙雲のを真似たものだった。

 

陳宮の服も新しくなっている。

今までの物はみすぼらしく、洛陽に入る時、それを曹操に言われたのだ。

陳宮は特に髪留めを喜んだ。

 

――羽織は、少し大きかったか。

 

その陳宮はと言うと、彼の頭の上ではしゃいでいた。

 

肩車。

陳宮はその高さの新鮮さを驚いていた。

 

 

歩く場所は洛陽。

漢の都。

大陸の中心地と言える場所だ。

しかし紗羅が思った様なものでは無かった。

 

治安は良い。

それは、曹操の功績であるのだが、それだけだった。

活気が無い。

はっきり言って、つまらない。

 

曹操に会えた。

それは僥倖。

夏侯淵にも会えた。

さらに幸運。

 

しかし、呂布には会えない。

ここ洛陽にはいないらしい。

呂布と言う名も、知る人は居なかった。

噂すら出回っていない。

そうなると、呂布の居場所が分からない。

出生地など、紗羅は知る由もない。

 

ならばもうここに居る理由は無いのである。

紗羅は、出来ることならすぐにでも旅へ出たい気持ちに襲われていた。

行先は出来ることなら陳宮に決めさせたかった。

そうすれば、より早く呂布に会えると思ったからである。

しかし陳宮は、

 

「ねねは紗羅殿に付いていくのです!」

 

と元気良く答えるだけだった。

 

 

「そうだ。公台、曹操はどうだった?」

 

「曹操ですか?」

 

「おう。お前の目から見て、どうだった?」

 

 

陳宮は紗羅の頭の上で腕を組んで、曹操の事を思い出した。

 

あの品定めするような目。

城門を通り過ぎる時にただ一言、

 

「へぇ……」

 

と呟いた。

その歪んだ口元を思い出しただけで悪寒が走る。

何か本能的な身の危険を感じたのである。

陳宮は思わず腕を擦っていた。

 

 

「うぅ……紗羅殿があの者に何を感じたかは分かりませんが、ねねはあの者をどうも好きにはなれないのです」

 

「そうか」

 

「紗羅殿は?」

 

「ぬ?」

 

「紗羅殿は何を感じたのですか?」

 

 

紗羅は面白そうに、秘密、とだけ答えた。

 

 

「しかし今日は良い天気だ。こんな日は、使えもしない言葉を使って、詩でも詠いたくなる」

 

 

陳宮も紗羅と同様に空を見上げた。

確かに良い天気だ。

蒼天が際限なく広がり、不思議と心が湧き立ってくる。

 

 

「詩、ですか。どうぞ」

 

「そうだな……」

 

 

紗羅は口を開く。

しかし、そのまま止まってしまった。

 

 

「駄目だ。思い浮かばん」

 

「ですかー」

 

 

苦笑交じりに答えた後、紗羅はまた口を開いた。

 

『幾多の世が天を謳う

 

なれど空は天に非(あら)ず

 

空はただ空である』

 

「……お見事です」

 

「やめろ公台。こういう時は持ち上げるものじゃない」

 

 

溜息が風に流れていく。

紗羅は、あの武具をどうしようか、と考え始めた。

あとがきなるもの

 

久々の投稿の気がする。二郎刀です。見直しって大事だけどさほど見直してないよ!

 

いやなんか最近ねー頭の中の話だけが先行しすぎちゃってねー。早く黄巾の乱を起こしたいんだぜ! だけどその前にやらなくちゃいけない事が色々あるんですよ。もどかしいっす。

 

さて相変わらず未熟な文だぜい。仕方ないんだぜい。投稿する時もういっかーって感じでおります。いいもん早く進めたいし・・・・・・。でも自分っていつもやり終えてからこうすれば良かったって思いつくんですよね。

 

それにしてもやっぱり最初の頃と文が違いすぎる。書き直しちゃおうかしら・・・。それになんか久々すぎて何を書くか思いつかないよ! という訳で今回はここら辺で。

 

今回の話はどうでしたでしょうか? 少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

 


 
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