EP2 過去を打ち払え
キリトSide
新生アインクラッドの実装から数日、既に第1層の迷宮区の攻略が進んでいる。
勿論の事だが、俺達もその攻略に参加しているわけだ。
第1層の雑魚モンスターかと思えば、それは中級や上級クラスのプレイヤーにとってであって、
初心者や下級クラスのプレイヤーにとってはそのステータスはそれなりのものだった。
まぁそれも
しかしながら実装されていた懐かしの第1層のクエストをやってみたり、新造されたサブ迷宮に挑んだりしたのも当然である。
そんな中、1つの報せが俺達の方にもやってきた……第1層迷宮区のボス部屋が発見された、と…。
その報せと共に、俺はALOの全領主達とギルドの代表者が話し合う攻略会議への招集を依頼された。
何故俺なのかと考えたが、取り敢えずその場へと向かい、会議に参加する。
会議を開いた理由は至って単純、これからのボス攻略をどうするかというものであったのだ。
たがそれ自体はいつもの如く、早い者勝ちということで決まった……しかし問題は次のこと、
今回をどうするかということにある。
それについては話し合いが難航しており、最初の攻略なのだから我先に向かいたいと主張する者もいれば、
最初だからこそ各種族から人数を決めて参戦し、あとはギルドからも召集すればいいと主張する者もいる。
だが俺には、どうしてもこの第1層のボス戦を行いたい理由がある。
だからこそ、提案する事にしようと考えた。
「少し良いか?」
「どうぞ、キリト君」
意見を述べる為に挙手をした俺を促すシルフ領主のサクヤ、他の領主達やギルドの代表も意見が無い為か聞き入ろうとしている。
「ボスは斧とバックラーを装備していて名を〈
「そうだ、そして取り巻きには〈
サラマンダー領主のモーティマーと共に会議に参加しているユージーン将軍が答え、俺はやはりやるべきだと決意した。
あの決意の始まりに決着を着ける為にも…。
「そのボス戦、俺1人に任せてもらえないか?」
「ふ、巫山戯るな! お前達に任せるなど「違う、俺は
俺の言葉におそらくALO系ギルドの男が声を上げ、他のギルド関係の者達も非難の声を上げ始める。
そんな中、各領主達は俺に対して心配そうな表情を向けている。
実は各領主達は俺がSAO生還者であることを知っているのだ。
「アイテムやユルドが欲しければ俺はいらないからやるよ。
ただ、この第1層のボスだけは、俺が倒したい……いや、倒さないといけない…」
淡々と話す俺の言葉にさすがのALO上位ギルドの者達も黙っている。
「私は彼に任せてもいいと思う」
「そうだネ、イイと思うヨ~」
サクヤとケットシー領主のアリシャは任せてくれると言ってくれた。
「兄さん、俺も彼ならいいと思うが…」
「そうだな。ALOを救った彼ならば問題無い」
将軍とモーティマーも賛成してくれたし、他の領主達も賛同する言葉や頷きで返してくれる。
各領主が賛成してくれたことでギルドの代表者達もさすがは束ねる者というところか、何か理由があると察してくれたようである。
この後、取り巻きのコボルト達は領主達率いる混成種族による
俺の仲間で対処する事が決まり、加えてボスであるイルファングからのドロップアイテムは競りを行い、
ユルドは俺以外の戦闘に参加した者達に分配される事に決まった。
「俺の勝手な我が儘を聞いてもらい、感謝する。ありがとう…」
俺は全員に頭を下げてからこの場を後にした。
そして翌日、第1層ボスモンスター〈Illfang the Kobold Lord〉の攻略メンバーが集まった。
パーティーとして俺はソロ、俺の仲間達はパーティーを組んでいる。
そして領主が同種族の3人を連れてパーティーを組み、幾つかのギルドも同行する。
現在はボス部屋の前まで移動してきたところだ。
「キリトくん、本気でボス相手に1人で挑むの?」
「ああ…心配するな、武器もちゃんと整えてある。それに、俺がやらなければならない。
あの日、『ビーター』を生み出したのは俺だからな…」
もう何回目かのアスナからの心配の言葉に苦笑してから真面目にそう答える。
SAO第1層ボス攻略の時、俺は自身をビーターと名乗ってその悪名をその身に刻んだ。
新たなアインクラッドの攻略の為にも、ここで過去を打ち払わなければならない。
「行こう…」
その言葉と共に、俺は扉を開いた…。
ボス部屋内部の構造はほとんど変わり映えしないものだった。
唯々広さのあるボスのいるこの広間、俺はルナリオに作ってもらった紅と黒の剣を右手に持ち、
広間の奥へと歩みを進め、他のみんなも後に続く。
広間に灯りが灯り、奴らが現れた…。
〈Ruin Kobold Sentinel〉そして、本命のボスモンスター〈Illfang the Kobold Lord〉
こいつらと戦ったのは2年半程前のことだろう、あの日に俺は『ビーター』の名と共に人の負の感情を背負った。
黒衣衆の仲間達も共にビーターの悪名を背負ってくれた。
力を持つ者としての、知識を持つ者としての責任を果たす為に、ビーターを名乗った。
だが、いまのこの世界はALOである……SAOでビーターとしての責務を果たし、俺はあの世界をクリアした。
ならば何故1人でボスと戦うのか……青髪の青年剣士『ディアベル』。
βテスターだった彼はボスに敗北し、その命を散らした。
誰よりもあのデスゲームのクリアを願っていた彼への、せめてもの手向けにしたい。
新たなアインクラッドの最初のボスにして因縁の敵、俺はコイツを打ち倒し、新たに前へと進む!
「さぁ、殺し合おう!」
俺は覇気を解放し、取り巻きとして現れた10体のモンスターを皆に任せ、ボスへと戦いを挑んだ。
キリトSide Out
アスナSide
キリトくんは宣言通りに1人でボスへと突っ込んでいった。
それに合わせる形で動き出す取り巻きをわたし達が惹きつけて倒していく。
だけど、SAOの時と強さが違う!
「ハァッ!」
「疾っ!」
ハクヤ君とヴァル君が連携してSentinelを攻撃するけれど、他の敵がそれらを防いで反撃をしてくる、ならここは…!
「ハクヤ君と黒猫団はSentinelのAに対応! クラインさんと風林火山の皆さんはBを!
ヴァル君とシリカちゃん、ルナリオ君とリーファちゃん、リズとエギルさんでCに!
わたしとハジメ君、シャインさんとティアさんとカノンさんでDを対応します!
囲んで対応し、キリトくんの元に行かせないように!」
「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」
わたしの指示に全員が動いてくれた。
それぞれでSentinelを取り囲み、行く手を阻みながら倒す。
その指示に反応するように、サクヤさん達も残りの6体であるE~Jを囲んで倒していく。
倒してもリポップする敵にも同じ方法で対処する。
「キリトくん…」
僅かに横目で愛しい彼を見る、その彼は……たった1人で、ボスを相手に乱舞している。
アスナSide Out
To be continued……
後書きです。
少し長くなりましたので2話に分けました、今回は前半ですね。
過去を払うために1人でボスへと挑むキリトさん。
一体どんな戦いになるのか、是非お楽しみに。
それでは・・・。
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EP2です。
アインクラッドの復活から数日後、今回の物語は・・・。
どうぞ・・・。