エミルとマルタが再開して数ヶ月後。
マルタは自分の父が犯してしまった罪を償うために様々な活動を行っていた。
パルマコスタでの血の粛清、ルインでの暴動、アルタミラの征服。
時が経った今では、パルマコスタで起こった騒動の真犯人や、今までの暴動を起こした全ての黒幕を知っているが、知っているのは精霊ラタトスク、ヴァンガード首領の娘、世界再生の英雄達、その他のごく一部の者のみ。
そんな話を人々は信じられる訳がなかった。
今まで普通に暮らしてきた人々にとっては、魔界ニブルヘイムに繋がる扉が開きかけて、世界は魔族達の手により魔界ニブルヘイムの領土となる、という話など持っての他だった。
だが、マルタはそれでも諦めずに自分達の罪から逃げずに戦った。
そのせいか、今ではヴァンガード達による暴動に対する世間の目も穏やかになりつつあった。
リーガルが会長を務めているレザレノカンパニーや、テセアラの神子ゼロスの協力もあって、今ではテセアラ人のシルヴァラント人に対する目も、前のような「野蛮な人種だ」、という認識を止めて、シルヴァラントの文化を取り入れようとしている。
一方では、ハーフエルフに対する差別も殆ど無くなっているという。
世界各国を回っているリフィル、ジーニアス姉弟による説得やハーフエルフの知識を生かした仕事が増え、今ではハーフエルフの知識は新たなる研究を進めていく上では必要不可欠とされている。
世界は、本当の意味で世界再生を迎えようとしていた。
その頃、世界を守るため自分の存在を精霊と認めた少年は・・・。
「はっ!」
ズバッ!
グギャァァァアア!!
「くらえっ!崩蹴脚!」
ドゴッ!
ゴオォォォォォォオ!!
「これで・・・とどめだぁっ!魔神閃光断!!」
ズバァァンッ!
グォォォォォォオオッッ!!
ズゥゥゥゥン・・・。
「ふう、勝ててよかった・・・。」
「おおっ!ありがとう!おかげで助かったよ!」
「いえ、仕事をこなしただけですから。」
「いやいや。こちらとしても予定よりも早く済ませていただいて・・・。」
「(・・・照れるなぁ。)」
「おっと、こちらが今回の報酬です。」
「あっ、はい!ありがとうございます!」
「また魔物が来たときにはお願いしますよ?」
「はい!」
彼こそが、エミル・キャスタニエ。
精霊ラタトスクと呼ばれる存在で、魔物達を統べる存在でもあるが、今それはもう一人の自分に任せている。
数ヶ月前までは、自分の成すべき事に責任を感じていた少年も、今では肩の荷が下りた感じだった。
今彼は、フリーの魔物退治屋を行っている。
リヒターの計らいで人間エミルとしての生を受けたエミルは、マルタと再開した後ルインの叔父、叔母の元へ行き、家族としてお互いにやり直そうとした。叔父・叔母はそれを受け入れて、今は家族として共にいる。
しかし、そこで少し問題ができてしまった。
彼は「これから一緒に暮らすんですから何かお手伝いをさせて下さい」と、彼が提案したが叔父・叔母両名がそれを却下した。彼は昔から家事を手伝わされていたので家事は基本的に得意な部類ではあったが、叔父・叔母からは、「昔に親らしい事もしてやれなかったからお前は何もしなくていい」と、言われていたのだが、なら自分に他に出来る事は何か無いかと探し始めた。
こうして出来た事が魔物退治屋だった。
マルタと共にセンチュリオン・コアを集めようとした旅の一件で、エミルは相当強くなった。エミルは「今の自分にできて、過去に自分にはできなかったこと」を探した。
臆病だったあの時とは違う。
今の自分には旅で培った「強さ」がある。
それを生かせないかと考えた結果、一人の魔物退治屋が誕生した。
だがそれには、彼なりの考えもあった。
彼は「いくら世界が平和になっても、まだまだ根本的な部分では平和になりきれていない。魔物に苦しんでいる人もいるはずだ。それに自分は強くなったが、もし自分より強い敵が現れれば、その時に大切な人を守れない。だから人助け、お金稼ぎ、腕を上げるために魔物退治をしていく」という彼なりの決意もあった。
そして、現在に至るという。
「今日はそこそこ手強かったなぁ・・・。」
と、今日の戦いを振り返っていた。
「・・・そういえば。最近マルタやみんなに会ってないなぁ・・・。」
それはある意味必然だった。
マルタは今、テセアラ人がシルヴァラント人を認めるようにと訴えを続けている。
他の皆は皆で各地で自分の成すべき事を始めている。
手紙こそ来るが、なかなか顔を合わせる機会が無いとも言える。
「久しぶりにみんなに会いたいけど・・・。」
会えないよね・・・と、心の中で呟いた。
と、そうこうしている内にもう自宅の前まで着いていた。
「あれ・・・?もう着いちゃったの?」
自分でも予想外だと驚いていた。
どうやらこんなにまでボーっとしているとのなると少し重症だった。
「(・・・みんな頑張ってるんだ。しっかりしなくちゃ。)」
と、気を引き締め、家へと入っていく。
「ただいまー。」
・・・・・・・・・
「あれ?」
いつもなら「お帰りなさい」と言われたりしてくるはずだ。と、エミルは少し驚いていた。
「(・・・誰もいないのかな?)」
この時間にどこか出かけるところはあったのか、と思いつつ家のリビングへと差し掛かった。
「あ、でも明かりがついてる。それに何か誰かと話しているような声が・・・。」
その話もやけに楽しげだ。
「誰だろう・・・?」
と疑問に思いつつ、楽しげな声のするリビングへと入っていった。そこには・・・。
「あ、エミルーッ!お帰りなさーいっ!」
「マ、マルタ!?」
彼にとってかけがえの無い少女、マルタ・ルアルディがいた。
後書き
TOSRK連載小説第二段!如何でしたか・・・?
この話は前回作ったエンディング後のアフターストーリーです。
なので前回の話はプロローグとでもとっておいてください。
ではではバハハーイ!!
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妄想から始まったこのTOSRK小説ですが・・・。
自分で見てみると「何かこれ続編できそうじゃね?」
という発想が生まれてしました。
高ぶるこの気持ちを抑える事はどうやら不可能っぽいので書いていきます。
ではどうぞ。