第二章 『三爸爸†無双』 其の二十五
本城 緑一刀私室前廊下 (時報:桂花二人目 妊娠二ヶ月)
【詠turn】
「諸葛亮様と龐統様がご懐妊されたんですって♪」
「「え?ホント!?」」
ん?この声はメイド隊の子達ね。仕事の合間のおしゃべりか・・・・・月のつわりが始まってからボクは余りしなくなったけど・・・・・ちょっと羨ましいかな。
「次こそは詠様だって思ってたのに・・・」
「だよねぇ。荀彧様の二人目は意外だったし。」
「諸葛亮様と龐統様はとても仲がよろしいし、帝とご一緒に居る事が多いから・・・お二人で・・・だったのかな?」
「まあ、そうでしょうね。」
「それなら詠様も月様と一緒にご懐妊されててもいいのに。」
・・・・・・・なんか声を掛け辛くなったわね・・・・・・。
「そうよねぇ。詠様だって帝とご一緒の時間が多いのに。」
「わたし前に見ちゃったんだけどさ!」
「「なになに♪」」
ちょ!何を見たのよ!!
「詠様、朝に帝を起こされる時に・・・・・」
「「ゴクリ!」」
ワア!ワアーーー!ワアアアァーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!
「帝を足蹴にされてたわ。」
ふううぅ・・・・・・そっちか・・・・・。
「詠様が帝を足蹴にしたり、デコピンしたりするのはよく見るじゃない。何を今更・・・」
「いや、そうじゃなくてさ・・・・・その時の帝のお顔が嬉しそうで・・・」
「え?」
「そう言われてみれば、帝はお三方とも・・・・・帝ってそっちの趣味もあったのね。」
「だから詠様が懐妊されないのは・・・・・」
・・・・・・・・・ボ、ボクってそんな風に見られてたんだ・・・・・・・。
ひと月後
本城 皇帝執務室 (時報:桂花二人目 妊娠三ヶ月)
【緑一刀turn】
「詠の様子がおかしい・・・・・」
俺は赤と紫に向かって呟いた。
「確かに・・・」
「そうだ・・・ここ一ヶ月・・・」
「「「詠に蹴られていない!!」」」
詠には『ボクっ娘』『メガネっ娘』『メイド軍師』と様々なファクターが有るが、何と言っても『ツンデレ』こそが最重要ファクターだ!
現在のツンデレランクNo.2で、そのツンデレ比は9:1。
No.1の桂花の10:0を誇る鬼ツンを、果してツンデレと呼んでいいかは疑問の余地が有るが・・・。
それを言い出したら、ツンデレとは『初めツンツン、後でデレデレ』こそが本当のツンデレだと言う意見も有る。例を上げるなら蓮華がその最たる存在だろう。
まあ、その議論はいずれするとして、今の問題は詠だ!
『蹴られない=デレている』と云うワケでは無い。強いて言うなら・・・反応が薄い?
ひと月ほど前から、詠の蹴りとデコピンが鳴りを潜め、代りに『しょうがないわねぇ』と、少し困った顔で微笑むのだ。
最初の内は、こんな詠もアリだなと思っていたが・・・・・。
これは決して詠のデレでは無い!詠のデレとは憎まれ口を言いつつも、顔を赤くする。『あんたの為じゃないんだからね!』と言う方だ!
極希にしか見れないからこそ!極大の温度差が有るからこそ!
千金の価値が有るのに!!
まさか・・・・・・・・俺たち詠に飽きられて来たっ!?
そんな!俺たちなりに工夫をして色々と・・・・・・・今度朱里から本を借りた方がいいのかな?
「何故お前たちは詠が努力していると思えんのだ?」
「「「冥琳!?そんな!冥琳まで俺たちの心を読むのかっ!?」」」
いつもは朱里が座っている席で冥琳がこめかみを抑えて溜息を吐いた。
「はぁ・・・あのな・・・お前たちは考え事をブツブツ呟く癖がある。普通なら聞こえない程度だが、三人揃って同じ事を呟くので音量が三倍になって聞こえてしまうのだよ。」
「「「そ、そうだったのか・・・・・」」」
「頼むから子供達の前ではやらないでくれ。蓮紅様達が言葉を覚え始めているんだ。変な言葉を覚えたらお前たちの所為だぞ。」
「「「・・・・・・・解りました。」」」
以後気を付けねば・・・ちなみに冥琳がこの部屋に居るのは、朱里と雛里のつわりが今日は重かった為、丞相補佐の冥琳が来てくれたからだ。
今の遣り取りの間も、冥琳は書簡から目を離さずしていた。
「詠と言えば、今日は検診を受けに行っていたな。噂をすれば影が射すと言うから、今日は詠が報告に来るかも知れんぞ。」
「「「あっはっはっは♪幾ら何でもそれは無いだろう。」」」
コンコン
「「「・・・・・・・まさかね。」」」
俺たちは苦笑して扉を見た。
『あの・・・ボクだけど・・・・・入るわよ。』
うそぉ・・・・・。
遠慮がちに開かれた扉から姿を現したのは、やはり詠だった。
顔を赤くして、ややうつむき加減で部屋の中へゆっくり歩いてくる。
詠が緊張しているのが伝わってくる。ここは俺たちもしっかりとしなければ。
俺たちは席を立ち、詠の前まで進み、背筋を伸ばした。
「あ、あの・・・・・ボク・・・じゃない、賈駆文和。懐妊の報告に参りました。」
「「「ああ、ありがとう、詠♪」」」
確かに冥琳の言う通り、詠は努力してるんだな。
なら、俺たちも詠が怒り出さなくて済む、りっぱな父親に成らないと。
「詠も本当は懐妊するなら月と一緒にって言ってたのに・・・・・三ヶ月もズレちゃったね・・・ごめん。」
出来るだけ真摯な顔で言うと、詠は最近お馴染みになった困った様な笑顔になる。
「う、ううん。それは気にしないで。確かにそう思っていた時期も有ったけど、今はこれで良かったと思ってる。だって、月がつわりで大変な時に月を助けてあげられるし、ボクのつわりが始まる頃に月のつわりは終わりそうだしね。」
「そうなったら、今度は月が詠を助けてくれるな。」
「え?・・・あ、それは・・・・・そう・・・だね・・・あはは、そこまで思い付かなかった♪」
「月が守られてるだけの女の子じゃないって、一番知ってるのは詠だろ。辛い時は月を頼るんだぞ。勿論俺たちにもね♪」
「はいはい、その時は頼りにさせてもらうわよ。お父さん♪」
「「「あはは♪」」」
「うふふ♪」
和やかで落ち着いた雰囲気がくすぐったい。
「それじゃあボクは後宮に行くね。月も待ってるし。」
「「「俺たちも一緒に行こう。」」」
「それは駄目。ちゃんと今日の分の仕事を終わらせて頂戴。明日は一日付き合ってもらうんだから、今の内に片付けられる事は片付ける。」
「「「うん、分かったよ。」」」
「それじゃあ、後でね。冥琳も、仕事の邪魔してごめんなさいね。」
「あ・・・ああ・・・・・・いや、それよりも・・・・・懐妊おめでとう・・・詠。」
「ありがとう、冥琳。ボクも冥龍みたいに元気な子供を産めるように頑張るから、色々教えてね。」
詠は執務室を後にし、その足音が遠ざかって行く。
「一刀・・・・・・・・・・・・・・・今のは本当に詠か?」
冥琳は詠の出て行った後の扉を見つめ続けそう言った。
「「「何言ってんだよ、冥琳。間違いなく詠だっただろ。」」」
「いや・・・目の前で見ていても詠に似た誰かかと疑ってしまうくらい態度が違うんだが・・・」
「さっきは冥琳が『詠は努力してる』って言ったばかりじゃないか。」
「それはそうだが・・・・・お前たちに対する態度が余りに変わりすぎていて・・・・・正直背筋が寒くなった・・・・・」
冥琳は自分を掻き抱くようにして震えていて、顔の血の気も引いていた。
「それは幾ら何でも・・・・・まあ、詠が蹴ってくれないってのが、少し寂しくは有るけど・・・・・」
「ふむ・・・・・寂しいのか・・・ならば私が詠の代りに蹴ったり踏んだりしてやろうか?」
「「「は?それは・・・・・」
「想像したら、中々面白そうだ。いずれやってやろう♪」
やばい・・・・・冥琳の中の何かを目覚めさせてしまったか?何か血の気も戻ってるし・・・。
冥琳がそんな事になったら・・・・・・・俺たちの中でも何か目覚めてしまいそうだ・・・。
ひと月後
後宮 詠私室 (時報:桂花二人目 妊娠四ヶ月)
【緑一刀turn】
詠の部屋の扉をノックして声を掛ける。
「おはよう、詠。みんな、詠が部屋から出てこないって心配してるぞ。」
『か、一刀!?入ってきちゃダメっ!!』
「えっ!?」
バチッ!!
「あ痛ぁっ!!」
扉の取手が・・・せ、静電気か?
『ど、どうしたのっ!?大丈ぶっきゃあ!!』
ドカッ!ガシャン!
「え、詠っ!?」
俺は慌てて扉を開けて中に入る!
ゴスッ!
「つおおおおおおおおっ!!な、何だ!?頭に何か落ちて来て・・・・・角材の切れ端?」
「な、何でそんな物が天井から・・・・・」
頭を押さえる俺を、床に座っている詠が驚愕の表情で見ていた。
詠はまだ寝巻き姿だったが、その寝巻きがびしょ濡れだった。
詠の横には倒れた花瓶が転がっている。
どうやら詠が転んだ所に花瓶が倒れてきたみたいだ。
「・・・やっぱり・・・・・アレが始まってる・・・・・」
「アレって!?そんな!詠は妊娠してるじゃないか!華佗が誤診するなんて有り得な」
「馬鹿!そっちじゃ・・・・・すぅ、はぁ・・・そっちじゃなくて・・・・・不幸の方よ・・・」
一瞬、以前の詠に戻ったけど、ここはスルーしてあげよう。
それよりも今は『不幸』の方だ!
前の時の恐ろしい記憶が俺の脳裏に蘇る・・・・・あの時は俺たちが水難に会い、紫苑のお気に入りの服が破け、璃々ちゃんは怒られ、春蘭が桂花の落とし穴に落っこち、桂花はその春蘭に追いかけられ、配達された荷物がひっくり返って星のメンマとその他諸々がダメになり、凪の頭に蛇が降って来た等々。
あれは桃香達が妊娠する前だったから・・・・・あれから三年以上が経過している。
「こ、この後宮には赤ん坊と妊婦が居るのよ・・・・・そんな所に危なくて出て行けないわ・・・・・」
「え、詠・・・・・」
だから詠は部屋に閉じこもったのか。
俺は詠に駆け寄って抱きしめる。
「ちょ、ちょっと!」
「危険なのは詠だって同じだろうっ!詠がみんなから離れてみんなを守るなら、詠を守るのは俺たちの役目だっ!!」
俺は更に力を込めて詠を抱きしめた。
「か、一刀・・・・・・・・・・ぅう・・・・・ぅあ・・ぅああああああぁぁ・・・」
あの詠が涙を流して・・・声を上げて泣き始めた・・・・・どれだけ不安だったんだろう・・・・・・。
「か、一刀どうしたんだ!?」
「しゅ、秋蘭!?来るな!!詠の不幸が始まってるっ!!」
「なっ!?」
秋蘭は部屋に踏み込む手前で足を止めた。
「「緑っ!それは本当かっ!!」」
赤と紫が秋蘭の脇を抜けて部屋に入ってきた。
「詠とお腹の子は俺たちで何としても守るんだっ!!」
俺の叫びに赤と紫が力強く頷く。
こんな時は俺たちの間では細かい説明なんかいらない。
「秋蘭はみんなに伝えてこの部屋に近付けさせないでくれっ!!」
「わ、解かった!武運を祈るぞ!」
秋蘭も妊娠五ヶ月だ。
ここで秋蘭に何かあったら詠は自責で潰れちまう。
だけど・・・武運か・・・。
そうだ!これは戦だ!!
『天の御遣い』は大陸に平和をもたらすんだろ!
詠一人を『不幸』から守れないで、何が『天の御遣い』だ!!
「ぅう・・・ボク・・・・・流産・・・ぅぐ・・したくないよぅ・・・・・・・」
りゅ、流産!?
詠が恐れる最悪の『不幸』・・・・・。
「緑!紫!俺が華佗を連れて来るっ!それまで詠を頼むぞっ!!」
「「解かったっ!!」」
赤が部屋を飛び出して行った。
華佗が来てくれれば安心・・・・・違う!ダメだ!
『不幸』が消える訳じゃない!
華佗にだって影響が出るんだ!どうしたらいい!?
「詠ちゃん!!」
「「月っ!!」」
今度は月が部屋に駆け込んで来た。
「ゆ、ゆえ・・・だ、だめ・・・・・」
詠が涙を流しながら声を絞り出す。
「私は大丈夫だよ!今までだって私には『不幸』の影響が無かったんだから!」
そう言って月は詠に抱きついた。
「こうしていればきっと詠ちゃん自身にも悪いことが起きないよっ!!」
必死にしがみつく月・・・。
更に声を上げて泣く詠・・・。
俺と紫はその二人を守る様に抱きしめる。
しかし、そんな俺たちを嘲笑うかの様に次なる『不幸』が襲いかかる。
振動。
最初に感じたそれは次第に強くなって来る・・・・・。
建物が揺れているだけじゃない、地の底から伝わるエネルギーを間違いなく感じる!
「「じ、地震っ!?」」
「・・・あ・・・・ぁあ・・・」
「詠ちゃん!しっかりして!!」
声も出ない詠に、月は更に強く抱きついた。
「何やってんだ!!早く卓の下に隠れろっ!!」
白蓮!?
「「ば、馬鹿!白蓮こそ・・・・・・あれ?」」
揺れが・・・・・・止まった・・・・・・・。
「ふうぅ・・・間に合った・・・・・」
白蓮は大きくなったお腹を手で守る様にしながら床にヘタリ込んだ。
その手には紙が握られている。
「「・・・間に合ったって・・・・・どういう事だ・・・・・?」」
「はは・・・・・炙叉と天和達がさ・・・・・護符を・・・」
握っていた紙を見せてくれると、そこには複雑な図形が描かれていた。
「なんか私じゃないと効果が無いって事でさ・・・」
白蓮じゃないと効果が無い護符?
でも・・・・・これで『不幸』を押さえ込めたのか・・・・・。
「ん?詠、びしょ濡れじゃないか!それに月も!」
詠と月は驚きの表情で白蓮を見つめたまま固まっていた。
「ほら!一刀たちは一回部屋の外に行く!詠と月を着替えさせるんだから!!」
白蓮は立ち上がると俺と紫を追い立てる。
部屋から締め出された俺たちだが、部屋の外には炙叉が待ち受けていた。
「御子様、怪我はない?」
「「あ、ああ。炙叉、護符をありがとうな・・・・・もっと早くに気付いて炙叉に相談しとけば良かったよ・・・」」
俺たちがそう言うと、炙叉は少し苦笑いをした。
なんだ?てっきり『もっと早くに相談しろ』って怒られるかと思ったのに。
「あの護符ってあんまり意味が無いんだよねぇ・・・」
「「ええ!?」」
「効果をもたらしているのは白蓮自身なのよ・・・」
「「なんだ?どういう事??」」
白蓮が『不幸』を押さえ込んだって言うのか?
「実は・・・・・」
俺たちは炙叉から『
「「白蓮にそんな力が有ったのか・・・・・・」」
炙叉の説明はこうだ。
『存在感殺し』は大きな『幸福』を与えないが、大きな『不幸』も打ち消してしまう。
詠の『不幸』に対し、『存在感殺し』は今も最大の力を発揮しているそうだ。
前回の時は白蓮がたまたま房都を離れていて『不幸』と『存在感殺し』が相対する事は無かった。
そして炙叉も前回の『不幸』の時、白蓮と一緒に居たのでその状況を見てはいなかった。
しかし、炙叉はその話しをみんなから聞いて対策を用意していたのだ。
「地震まで起きた時には流石に驚いたけどね。」
「「地震・・・そうだ!子供達とみんなは!?」」
「後宮の中は貂蝉と卑弥呼の指示で華雄とか猪々子達が守ったわ。」
「「そ、そうか・・・・・良かった・・・」」
貂蝉と卑弥呼にはホント助けられるな。
「一刀!無事か!?」
突然掛けられた声は思春の物だった。
かなり急いで来たんだろう。思春は窓から飛び込んで来た。
「「俺たちは大丈夫だ!それよりも烈夏達と蓮華達は!?」
三王と思春は既に後宮から自室に引っ越している。
「こちらも皆様無事だ。子供達も問題無い。」
「「よかった・・・」」
思春が微笑んでの報告だったので心配いらないだろう。
「それじゃあ思春!済まないが蓮華達に城内と街の状況を」
「そちらも問題無い。既に三王が対応を始めた。こちらは任せて一刀は詠を励ましてくれとの伝言だ。」
さすが秋蘭。あの短時間で華琳に伝えたんだな。
しかも何という素早い対応・・・余程、前回の『不幸』が堪えてたんだな。
前回は俺たち三人が落とし穴の底でずぶ濡れになっている間に、何かトンでもない事が有ったらしい・・・・・未だに俺たち三人に詳しい事を教えて貰えない程の事態が・・・・・。
「了解した。こっちも任せてくれ。あ、それから赤は」
「ここに来る途中で華佗と一緒に走ってくるのを見た。すぐに到着するだろう。私は三王に一刀の無事を伝えに一旦戻るが、連絡役に徹するからまた後で来る。」
思春は小さく手を振って、来た時と同じ様に窓から飛び出して行った。
『一刀、もう入ってもいいぞ。』
扉越しに白蓮の声が聞こえたのとほぼ同時に、赤と華佗が廊下の向こうに現れた。
「「「はあ?詠が俺たちを蹴るのを我慢したのが、今回の原因!?」」」
炙叉が更に説明してくれる。
「怒るって云うのは本来『負の感情』だから、詠の『不幸』を少しずつ削ってたんだと思う。」
「成程、詠が蹴るのを止めたから『不幸』が溜まる一方だったって事か。」
俺たちはなんとなく納得出来たが、白蓮は頭を捻っていた。
「言いたい事はわかる気がするけど・・・そもそも、なんで詠は一刀たちを蹴るのを我慢しようと思ったんだ?」
詠は白蓮の問に逡巡している。
その顔はさっき泣いた所為でまぶたが腫れていた。
十数秒考えてから意を決したようで、小声で話し始める。
「・・・それは・・・・・朱里と雛里が懐妊した頃にメイド隊の子のおしゃべりを聞いて・・・・・ボクが懐妊できないのは・・・・・その・・・・・」
詠が俺たちを蹴るから懐妊出来ない?それで俺たちが詠を遠ざけるって、その子達は思ったのか?
「華琳と桂花の・・・アレを・・・・・ボクと一刀たちに置き換えたみたいな・・・言い方だったから・・・・・」
・・・・・・・・華琳と・・・桂花・・・・・・。
「さ、さすがにこれはまずいと思って!・・・・・我慢する様にしたら・・・本当に懐妊しちゃったし・・・・・子供にボクが父親を蹴ってるのを見せたくないと思ってたから、そのまま頑張って怒らないようにしてた・・・・・」
詠の告白に華佗が唸る。
「う~ん、普通なら良い事なんだが・・・我慢のしすぎで鬱積しては意味が無いし、下手をするとそれが原因で体調不良に成りかねないしな。」
「おまけに『不幸』まで溜め込むんじゃ・・・・・詠、我慢しないで前みたいに蹴っても俺たちは構わないんだぞ。」
そう言ってあげても詠は俯いたままだった。
「・・・だって・・・さ・・・・・・せっかく・・・あんたたちが褒めてくれたのに・・・」
「そ、それはまあ・・・」
「詠が頑張ってるから応援したくてさ・・・」
「でも、詠が怒る時の声も、真剣に生きているって感じがして嫌いじゃないぞ。」
詠が顔を少し上げて俺たちを見てくれた。
その顔には驚きの色が見える。
「なら、こういうのはどうだ?」
白蓮から意見が上がった。
「普段は怒らない努力を続けて、軍の仕事に復帰して声を張り上げる。詠はこの三ヶ月演習にも参加してないだろ。私みたいに馬に乗って剣を振う訳じゃ無いからお腹が大きくなっても危険が少ないし、大声出せば鬱憤も晴れるだろ♪それでも足りなかったら一刀たちにデコピンでもしてやればいいさ♪」
「「「どうだ詠?白蓮の言う方法を試してみないか?」」」
「う、うん!」
詠にようやく笑顔が戻った。
月もそれを見てようやく胸を撫で下ろす。
「でもホント、よく怒るのを我慢したなぁ。霞に癇癪玉とか言われるぐらいだったのに。」
白蓮は感心して頷いていた。
「だ、だからそれは!」
詠が真っ赤になりながら、必死に誤魔化そうとしていた。
「「「そう言えば真桜が癇癪玉の事を文和玉って呼んでたな・・・」」」
「ボクの字を勝手に使うなっ!!」
ズビシッ!!
俺たちの眉間から後頭部に衝撃が走り抜ける。
やっぱり詠はこうじゃなきゃな♪
八ヶ月後
本城 来賓室 (時報:桂花二人目銀桂 生後二ヶ月)
【詠turn】
「おじさま、おばさま。この子がボクの娘の
産まれてから十日目の訓を抱いて、月の両親の董雅様と董陽様にご挨拶をする。
「おお、可愛い赤ん坊だ♪」
「うふふ、本当に♪」
ボクにとってお二人は両親以上と言っても過言ではない人達。
ボクの生みの親は幼い頃に他界している。
「詠ちゃん、抱かせてもらっていいかしら?」
「はい、是非抱いてあげて下さい♪」
両親がいないなんて今の時代では珍しくない。
悪政、盗賊、戦乱、飢饉・・・・・そんな物が続いた後だもの。
ボク以外にも焔耶みたいに桔梗に育てられたとか、仲間達にも似たような境遇の人間は沢山いる。
「むむむ、先を越されてしまった・・・・・月、春姫を抱かせてくれぬか?」
「はい、お父さま♪」
ボクはこんな時代ではとても恵まれた方だ。
月っていう親友・・・妹の様な、姉の様な存在・・・出会えた事に凄く感謝してる。
「次は恋々も抱いてあげて。」
「おうおう♪腕がもっと欲しいくらいだ。そうすれば一度に抱いてあげられるのに。」
「孫達に囲まれて、私達は果報者ですね♪」
でもこれからは・・・・・子供に両親が居るのは当たり前の世を作って行くんだ。
ボク達みんなで。
「太守殿は欲張りです。私も早く孫の顔がみたいですよ・・・・・音々音、あなたも頑張りなさい。」
「は、母上!ねねに何を促しているのです!!」
「「「陳越さん・・・・・すみません、俺たちが至らないから・・・」」」
今回も一刀たちが最初から三人揃っておじさま達と会ってくれている。
「いえいえ!三陛下を責めるなどとんでもない!全ては音々音がチンチクリンなのが悪いのです!」
「は、母上まで霞みたいにねねをチンチクリンと言うのですか!?大体ねねが小さいのは母上の子なのだから仕方ないのですっ!!」
それでも朱里と同じくらいには背が伸びているし、音々さんとねねって一寸(約2.3cm)も違わないと思うけど・・・・・。
「まったく音々音は生意気な口をきいて・・・・・陛下にはご苦労をお掛けします・・・・・」
「「「い、いや、別に」」」
あ~あ、困った顔しちゃって。
「ああ!それから、わたくしの事は『音々』と真名で呼んで頂いて結構ですよ♪」
「「「へ?」」」
は?
「夫に先立たれて十余年。聞けば黄忠将軍も未亡人とか・・・もし宜しければわたくしも・・・」
「「「い、いやあ、その、音々さんは美人で可愛いから」」」
「何鼻の下伸ばしてんのよっ!!」
「何ニヤけてやがるですかああああっ!!」
スパパパパパーーーーーーーーーーーーーン!!
ボクとねねが張り扇でぶっ叩いた。
この張り扇はこいつらが、蹴るよりは周りの印象がマシになるだろうって提案した物。
こいつらも自分が桂花と同じに見られるのが気になったみたい。
「お、おい!二人共・・・・・」
「「「だ、大丈夫ですよ、董雅さん。派手な音ですけどそんなに痛くないですから♪」
「し、しかし・・・・・涙目になっておられますが・・・」
「「「これも大陸の平和を守る為に必要な事なんです!」」」
「は?」
相変わらずバカチOコなんだから!
「フンだっ!」
あとがき
ツンツンツン子じゃない詠
果たしてそれは詠なのか?
ふとそんな事を思いついたので
前からやろうと思っていた『不幸』ネタと合わせてみたら
こんな感じになりました。
『不幸』vs『プレゼンス・ブレイカー』
こう書くとまるでジャンプの対決物みたいですねw
白蓮は自分が大活躍してると分からない所が
いかにも白蓮らしい能力ではないでしょうかw
そして
遂に登場『音々さん』
未亡人設定は前から考えていました。
月回でねねが一刀たちを睨んだのはこうなる事を予測したからですw
果たして一刀たちに供される三っつ目の親子丼となるのか?
そもそも音々さんの次の登場がいつなのか?
何も考えずに話の流れに任せて、雷起も楽しみにしたいと思いますw
《次回のお話&現在の得票数》
☆焔耶 29票
という事で、次回は焔耶に決定しました。
以下、現在の得票数です。
小蓮 28票
ニャン蛮族27票
明命 24票
音々音 24票
猪々子 23票
星 20票
亞莎 19票
春蘭 18票
真桜 18票
斗詩 17票
二喬 17票
華雄 17票
稟 17票
璃々 17票
穏 16票
沙和 15票
霞 12票
季衣 11票
紫苑② 6票
冥琳② 5票
思春② 5票
桂花② 5票
雪蓮② 4票
鈴々② 4票
風② 2票
凪② 1票
※「美以と三猫」「大喬と小喬」は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。
②は二回目を表します。
一刀の妹と息子の登場回は以下の条件のいずれかを満たした場合に書きたいと思います。
1・璃々以外の恋姫全員のメイン話が終了した時
2・璃々のリクエストが一位になった時
3・メイン二回目の恋姫がリクエストの一位になった時
4・華琳のリクエストが一位になった時
※条件に変更があった場合、あとがきにて報告致します。
リクエスト参戦順番→猪々子 穏 亞莎 ニャン蛮族 小蓮 焔耶 明命 斗詩 二喬 春蘭 音々音 華雄 稟 星 璃々 真桜 季衣 冥琳② 霞 沙和 思春② 紫苑② 鈴々② 桂花② 風② 雪蓮② 凪②
過去にメインになったキャラ
【魏】華琳 風 桂花 凪 数え役満☆シスターズ 秋蘭 流琉
【呉】雪蓮 冥琳 祭 思春 美羽 蓮華 七乃
【蜀】桃香 鈴々 愛紗 恋 紫苑 翠 蒲公英 麗羽 桔梗 白蓮 月 朱里 雛里 詠
子供達一覧
1)華琳の長女 曹沖(そうちゅう) 眞琳(まりん)
2)桃香の長女 劉禅(りゅうぜん) 香斗(かと)
3)蓮華の長女 孫登(そんとう) 蓮紅(れんほん)
4)思春の長女 甘述(かんじゅつ) 烈夏(れっか)
5)愛紗の長女 関平(かんぺい) 愛羅(あいら)
6)風の長女 程武(ていぶ) 嵐(らん)
7)桂花の長女 荀惲(じゅんうん)金桂(きんけい)
8)雪蓮の長女 孫紹(そんしょう) 冰蓮(ぴんれん)
9)冥琳の長女 周循(しゅうじゅん) 冥龍(めいろん)
10)祭の長女 黄柄(こうへい) 宴(えん)
11)恋の長女 呂刃(りょじん) 恋々(れんれん)
12)紫苑の次女 黃仁(こうじん) 露柴(ろぜ)
13)紫苑の三女 黃信(こうしん) 崔莉(ちぇり)
14)蒲公英の長女 馬援(ばえん) 向日葵(ひまわり)
15)翠の長女 馬秋(ばしゅう) 疾(しつ)
16)麗羽の長女 袁譚(えんたん) 揚羽(あげは)
17)桔梗の長女 厳逹(げんたつ) 竜胆(りんどう)
18)凪の長女 楽綝(がくりん) 濤(なみ)
19)七乃の長女 張路(ちょうろ)八倻(やや)
20)天和の長女 張甲(ちょうこう) 九蓮(ちゅうれん)
21)地和の長女 張大(ちょうだい) 四喜(すーしー)
22)人和の長女 張吉(ちょうきつ) 一色(いーそー)
23)炙叉の長女 迷当(めいとう) 直(なお)
24)白蓮の長女 公孫続(こうそんしょく) 白煌(ぱいふぁん)
25)秋蘭の長女 夏侯衡(かこうこう) 鈴蘭(すずらん)
26)月の長女 董擢(とうてき) 春姫(るな)
27)桂花の次女 荀俁(じゅんぐ) 銀桂(ぎんけい)
28)朱里の長女 諸葛瞻(しょかつせん) 龍里(るり)
29)雛里の長女 龐宏(ほうこう) 藍里(あいり)
30)詠の長女 賈穆(かぼく) 訓(くん)
桂花の三女 荀詵(じゅんしん) 丹桂(たんけい)
桂花の四女 荀顗(じゅんぎ) 連翹(れんぎょう)
桂花の五女 荀粲(じゅんさい) 黄梅(おうめい)
桂花の六女 荀淑(じゅんしゅく) 來羅(らいら)
春蘭の長女 夏侯充(かこうじゅう) 光琳(こうりん)
A)鈴々の長女 張苞(ちょうほう) 爛々(らんらん)
B)流琉の長女 典満(てんまん) 枦炉(ろろ)
C)美羽の長女 袁燿(えんよう) 優羽(ゆう)
※アルファベットは仮順です
引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。
リクエストに制限は決めてありません。
何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`)
よろしくお願い申し上げます。
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得票数30の詠のお話です。
懐妊前、懐妊直後、妊娠二ヶ月目、出産十日後となります。
今回はおまけがお休みとなります。
代わりといっては何ですが、ねねの母親『音々(おとね)さん』が登場します。
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