北郷は目を閉じて、過去を思い返す。
ここに至るまでに、数々の人々を犠牲にしたこと、沢山の英雄を殺したこと。
でも、それももうすぐ終わる。
蜀を滅ぼせば、すべてが終わる。
―――そして、新たに幸せの未来が。
諸葛亮の策によって、北郷は軍籍を剥奪されてしまう。魏の反逆の意思があるという理由で。
しかし、北郷にとってそれは『歴史』通りの進みだった。
そんな北郷の企みは他所に、蜀軍は諸葛亮を大将に魏に進軍を進める。誰も止めることは出来ず、わずか一か月もたたずに魏陥落の少し手前まで来ていた。
「次の戦いは、私にやらせてください!」
蜀にいる北郷が諸葛亮に直訴する。内容は街亭で陣を取り、魏を迎え撃つこと。
「駄目です。貴方では荷が重すぎます」
しかし、諸葛亮は北郷の直訴を認めない。
その返答に、さらに、北郷は願う。
「なぜですか!? それは私が『北郷』という名前だからですか!?」
北郷。
蜀の間で、噂になっている。『北郷というすべての者が敵だ』という噂。きっと、諸葛亮はそれを危惧してのことだろう。
「そんな些細な噂を気にするようでは、なおさら認めるわけにはいきません」
街亭は大事な要。もし、ここで敗北するようなことがあったなら、この遠征が無駄になってしまうほどの大事なこと。
諸葛亮は北郷を追い出させ、趙雲を呼ぶ。
「星さん。街亭の戦いは貴方に一任してよろしいですか?」
「もちろんだ。朱里」
趙雲は笑顔で微笑む。彼女にとっても諸葛亮にとってもそれが一番の策だと思っていたからだ。
だけど。
それが、原因なのか。
それとも呪いなのか。
その日、趙雲は病死した。
若く、そして諸葛亮にとって今一番の友を。
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第一話『新歴史の微笑み その三』