「・・・・・・もうこんな時期か、もうすぐ向こうではバレンタインデーだな」
大体の日数を計算するともうすぐ2月14日だった。
「天の国の事は全く分からないけど、“ばれんたいんでー”って何?」
「・・・・・雪蓮、居たの?」
「何その言い方!って言っても、さっき来たばっかりだけどね」
一瞬だけむっとした表情をしていたが、すぐにいつもの顔に戻り一刀の隣に腰をおろした。
「で?“ばれんたいんでー”だっけ?どういう物なの?」
「う~ん、簡単に言えば、女の人が好きな男にお菓子をプレゼントを贈る日って言えばわかるかな?」
「へ~、送るだけなの?不公平じゃない?」
「一応、女の人に貰った男は、贈り物をする日があるけど」
少し思案していたが、いいことを思いついた様に雪蓮は立ち上がると、そのまま走り去って行った。
「一刀、またね~」
だいぶ離れてから、雪蓮の声が聞こえた。
「北郷、雪蓮に何か教えたか?」
「冥琳、どうかしたのか?」
「どうしたでもない、雪蓮がいきなりお菓子を作り始めると言ってな・・・・・」
あとの想像は容易かった、いつぞや一刀に朝飯を作ろうとして調理場を滅茶苦茶にしたことがあったからであった。
「そういえば、バレンタインデーの話をしたぐらいだな」
「なんだ?そのばれんたいんでーとやらは」
「簡単にいえば女の人が、好きな人にお菓子をプレゼントする日」
「そういうことか・・・・・しかし、いいことを聞いた」
最後のほうは小声になり全く聞きとることができなかった。
「ん?どうかした?」
「いや、なんでもない・・・・私はこれで」
「そうか、それじゃ」
何かを考えながら冥琳は調理場のほうへ歩いて行った、きっと雪蓮の後片付けであろう。
「北郷、何やら面白い話をしておったようじゃな?」
突然、背後から声がかかった。
「さ、祭さん!」
「そうかそうか・・・・あの二人だけに話して、儂らには教えてくれないのか?」
「そういう訳じゃ、ないんだけど」
「ほう?それでは、全員に教えておいてよいわけだな」
「それは、別にかまわないけど」
ばれんたいんでーの話を聞くと、ニヤニヤしながら祭は鍛錬場へと歩いて行った。
その後、いつも居る筈の場所に彼女らの姿は確認できず、まるで避けられているようで気分が悪かった。
「なんで皆いないんだろうな」
彼女たちの部屋を訪れても、一向にいる気配がない。
「皆、俺に内緒でどっかお出かけか?・・・・・考えても仕方ない、蓮華の部屋に行ってみるか」
扉をノックしようとすると、中から何か声が聞こえてきた。
「・・・・・・一刀はどんなお菓子をもらったら喜ぶかしら」
「蓮華様が渡すものなら、なんでも喜んで受け取るでしょう、もし、受け取らなかったら・・・・・これで、バッサリと」
雰囲気で手に大刀を持っているのがわかる。
「し、思春、物騒なことを言うな」
「はっ、ですが・・・・・・」
「思春も何か考えているのでしょ?」
「な、何をですか?」
「一刀への“ぷれぜんと”よ」
「なっ!な、なぜ!私があいつに“ぷれぜんと”をしなければいけないのですか!」
「そうやって、焦る所が怪しいわ」
今、部屋に入ってもどういう話ができるか分からないと思ったのか、一刀は部屋へと帰って行った。
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今回は前編ということもありまして、嵐の前の静けさを意識してみました、後編はバレンタインデー当日前後に投稿したいと思います。