第25魔 地下からの脱出、央都アルン
アスナSide
トンキーの背中から氷雪の世界ヨツンヘイムを見つめる。
「わぁ~、凄いです…」
「ホントに凄いね…」
ユイちゃんが感動したように目下に広がる世界の感想を言い、わたしもそれに続いて一言漏らした。
そしてわたし達の視界には先程見上げた時に見つけた、世界樹の根によって抱えられた氷柱の迷宮が見えてきた。
「ん? なんだろう、アレ?」
「どうしたの、リーファちゃん」
「いえ、なにかが…あ、そうだ」
リーファちゃんが何かを見つけたようである。彼女がスペルワードを唱えると扁平な水晶が現れた。
「リーファ、その魔法はなんすか?」
「
「どれどれ…」
「ぁ…///」
ルナリオ君がリーファちゃんと頬を合わせるように水晶を覗き込んだ。
あ、リーファちゃん照れてる。しかし気にしないようにしたのか、2人揃って水晶をこれでもかと覗き込み…、
「んなっ!?」
「うぉ、どしたっすか!?」
リーファちゃんが驚愕の声を上げ、それに驚いたルナリオ君が聞きだす。
「前に見たことがある……あれ、『聖剣エクスキャリバー』だよ!?
あのユージーン将軍の使ってた魔剣『グラム』を超える最強の剣!」
「さ、最強の剣…」
「しかもサーバーに1本しかない物なんです」
熱弁するリーファちゃんの言葉にわたしは唾を飲み込んだ。男の子達は驚きの表情を浮かべている。
トンキーの軌道はダンジョンのバルコニーをギリギリ通るというところだ。
そしてその上空には1本の階段、それは地上へと繋がっているもののはず。
ならわたし達は…、
「今度、キリトくんや皆で…一緒に来よう…」
聖剣を諦めることにした。いまはキリトくんの救出が最優先、みんなも文句無しに頷いてくれた。
「それに、最強の剣は最強の剣士であるキリトさんにこそ合いますからね」
「言えてる」
ヴァル君の言葉にハクヤ君が続く、確かにその通りだね。
あの剣が最強の剣だと言うのなら、アレはキリトくんにこそ似合うと思う。
そしてトンキーは天蓋へと到達し、階段付きの根っこに辿り着いた。
わたし達は階段に飛び移り、トンキーが長い鼻をこちらに伸ばしてきた。
「トンキー、また来るから…それまで元気でいてね」
「苛められたらダメっすよ」
「また会いましょうね、トンキーさん」
「ありがとう、トンキー…」
「ありがとうございます」
「元気でな」
「……世話になったな」
リーファちゃん、ルナリオ君、ユイちゃん、わたし、ヴァル君、ハクヤ君、ハジメ君の順番で
トンキーに話しかけながら手で鼻に触れていく。
そしてトンキーは羽を大きく羽ばたかせて輝きを放ってからヨツンヘイムの上空を飛び去って行った。
「……よし、みんな…行こう!」
「「「「「「はい(ああ)!」」」」」」
見送りが終わり、わたしはみんなに声を掛けた。そして長い長い階段を駆け上る。
壁には光るキノコがあり、それに照らされた階段を上る。
10分程駆け抜けた時だっただろうか、視線の先に一筋の小さな光が現れた。
わたし達は顔を見合わせてから頷き、ラストスパートを全速力で走り抜けた……そして…、
「「あ痛っ!?」」
「「「「よっ、と」」」」
わたしとリーファちゃんはうろの中から出て尻餅をつき、男の子達は見事に着地した……ずるい。
痛みはないけれど思わず出た言葉に呟きつつ辺りを見回してみる、そこは…。
「ここ、が…」
「……央都、アルン…」
ハクヤ君とハジメ君が呟く。
石造りの建築物が並び、様々な色の炎が灯った街灯、妖精九種族が入り混じって道の往来を行き来し、
その奥に巨大な樹木が聳え立っている。
「世界樹…っ!」
わたしは思わず、憎しみの篭った声でその樹を睨みつけた。あの上に、キリトくんが…。
「アスナさん」
「っ、な、なに?」
「顔、戻した方がいいっすよ。リーファもユイちゃんもまだ気付いてないっすけど」
ヴァル君に名前を呼ばれて動揺し、ルナリオ君の指摘にしまったと思った。
リーファちゃんとユイちゃんには気付かれてはいけない。
「ごめんね、ありがとう」
わたしが謝りお礼を言うと2人は小さな笑みを浮かべた。
その時、パイプオルガンから発せられるような音楽が鳴り響いた。
午前4時から週一の定期メンテナンスが行われるとのこと、SAOではそんなもの無かったから新鮮だなぁ。
「今回はここまでですね。続きはメンテナンスが終わる午後3時からでどうですか?」
「それがいいっすね」
「そうだね、それじゃあログアウトしようか?」
「一応宿屋でログアウトしましょう」
リーファちゃんの提案にルナリオ君が頷き、わたしが言うとユイちゃんが促してきた。
「それじゃあ近場の宿屋を取ろう。アスナとハジメの分は俺が払う、2人共
「あぅ、お願いします…」
「……頼む」
ハクヤ君の指摘にわたしはユージーン将軍に払ったユルドのことを思い浮かべ、
ハジメ君は特に気にした様子も見せずに一言呟いた。
ユイちゃんの案内を受けて、近場の宿屋へと向かった。
途中、わたしはもう一度世界樹の上を見上げてから……みんなの後に続いた。
わたしはユイちゃんとリーファちゃんと、ルナリオ君はヴァル君と、
ハクヤ君はハジメ君と同じ部屋を取って、各自ログアウトした。
アスナSide Out
明日奈Side
ゲームを終えた後、4時間半程眠り、目を覚ました。
やはり両親は既に仕事に出ており、橘さんの作ってくれた朝食を取る。
身嗜みを整えてから、橘さんにお願いして車を出してもらう。行先は和人くんの眠る病院。
和人くんの病室に入ったわたしは彼のベッドの傍に椅子を置いてそこに座った。
彼の手を握っていつものように祈りを捧げる。
けれどいつものような祈りだけではない、報告も兼ねているのだ。
たった2日で、もしくは2日も掛けて、世界樹のある街へと辿り着くことが出来た。
ようやく、彼の近くへと来ることが出来たのだ。
須郷の
世界樹攻略の為に協力してくれる人達もいる。
「もう少し、もう少しだから……待っててね、和人くん…」
眠る彼の手を握り締めた。そこで、病室の扉が開いた。
「あ、明日奈さん」
「直葉ちゃん」
やって来たのは直葉ちゃんだった。どうやら彼女も和人くんにお見舞いと報告に来たらしい。
「明日奈さん、もう少しですね…」
「うん……頑張ろうね?」
「はい…」
言葉を交わすわたし達。けれど、直葉ちゃんの表情に僅かばかり翳が見えた。
「どうかしたの、直葉ちゃん…」
「ぁ、いや、その………あの、相談に乗ってもらっても、いいですか?」
訊ねてみると相談を持ちかけられた。わたしは微笑んで頷き、2人揃って椅子に座り、話しを始める。
「あの、あたし…刻君が好きです…///」
「そうみたいだね」
「あと、刻君も……あたしの事が、好き…みたいなんです…」
「あ、気付いてたんだ」
最初のカミングアウトは予想が出来、2回目も何となくだけど納得できた。
しかし表情は冴えないようだ。
「でも、本当に…刻君が、あたしの事を好きでいてくれてるのか、分からなくなって…」
「直葉ちゃん…」
彼女は不安なのだ。相手からの好意を感じ取っているものの、
自分も好意を寄せているからそこからの勘違いなのではないかと、思い始めているのだ。
でもこればかりは、当事者達の問題だよね。
「直葉ちゃんは、想いを伝えたの?」
「(ふるふる)まだ、です…」
「伝えなきゃ、分からないこともあるんだよ」
わたしの言葉に直葉ちゃんは何か思うことがあるのだろう、小さく頷いた。
「大丈夫、ちゃんと言葉にして、想いを込めたら、届くよ」
「っ、はぃ…」
小さな涙を溜めながら頷いた彼女の頭を優しく撫でる。
そういえば、SAOではいつもこうやってキリトくんに撫でてもらってたっけ? そんなことを思い出した。
落ち着いた様子の直葉ちゃんと共に病室を出て、わたし達は午後に備える為に自宅へと帰宅した。
明日奈Side Out
To be continued……
後書きです。
「ヨツンヘイム編」が終了し、ついに央都アルンまで辿り着いたアスナ達。
次回からは「最終編」に入りたいと思います、なお残りの3人も合流しますよw
ルナリオとリーファはハクヤとリズの時と似ており、少しばかりヤキモキする感じにしてみました。
ただあの2人と違って、時間が掛かるわけではないので・・・。
それでは次回で・・・・・・あ、キリトさんも登場しますんで♪
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第25魔です。
タイトルの通り、アスナ達は目的地へと辿り着く・・・。
ではどうぞ・・・。