No.548209

リリカルなのはSFIA

たかBさん

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した。の続編です。さすがにこのタイトルのままストライカーズを始めるのは無理があったので…。

では、ストライカーズまでの空白期。
悲しみの乙女は俯かない。をどうぞ

2013-02-24 19:06:32 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:8148   閲覧ユーザー数:7218

 悲しみの乙女は俯かない。

 

 

 

 『傷だらけの獅子』。彼の訃報を聞いた時、私の主。八神はやてはあまりのショックに意識を失った。

 主だけじゃない。

 私を救ってくれた小さな勇者たちも、その友人。そして、私以外の騎士達も皆がそれを否定した。

 

 彼が死ぬはずないと…。

 

 その訃報を伝えに来たリンディ艦長は、ただ無言で私達から目を逸らすだけだった。

 いくら問い詰めても帰って来るのは無言と言うつらい現実だった。

 

 報告でも『調査中に突然の大爆発。そして、身元が不明になる』といった不可解な点が多かった。

 だから、我々はその現場に急行した。

 そこはブラックホールにも似た空間。高次元空間に近い無人世界。

 何もない荒野。いや、一ヵ所だけ荒野じゃない領域があった。

 それは大爆発があったと思われる場所。

 そこにはわずかながらも、彼の魔力。『傷だらけの獅子』のスフィアの力の残滓もあったが確実ともいえない。

 

 長期にわたってそこを調査して手がかりを見つけたかった。しかし、高次元空間付近の世界は常に不安定である。

 プレシアの説得も空しくリンディは調査を打ち切りに。

 翌日、その世界は高次元空間に取り込まれ、消えていった。

 

 

 はやて視点。

 

 アースラブリッジで私達は沈痛な面持ちでリンディさんの言葉を聞いた。

 

 「調査の打ちきり。か…」

 

 「再開しようにもその宙域が消滅してしまっては調査のしようがないから…」

 

 私はクロノ君から現状を聞かされた。

 高志君がいなくなってからもう一週間。現実を受け止めなあかんとは思っても諦めきれずにいた。

 

 「お願いや、クロノ君。あの消えた世界以外の調査もさせて…」

 

 「駄目だ。あの世界周辺は既に高次元空間だ。それに高志が行っていたのは文明が残されているだろうという可能性を持った世界だ。残念だけどあの世界の周りにある世界にその可能性。断片もない。あいつが行ったという可能性は…」

 

 クロノ君は途中まで言いかけたが口を閉ざす。

 

 「…すまない。はやて」

 

 私はいつの間にか涙を流していた。

 私だけじゃない、フェイトちゃんやなのはちゃんも嗚咽を漏らしながら泣くのを堪えていた。

 

 「なら私達だけでも!」

 

 アースラの皆も高志君の探索に出ている。

 だけど…。

 残された可能性はあまりにも残酷だった。

 アースラとの最後の交信。音声のみだけの情報だった。

 

 『さよなら』

 

 たったそれだけの言葉を残して高志君はあの爆心地から存在を消した。

 そんなの認めない!

 私はたくさん彼に貰ったのに何一つ返せていない!それなのに…!

 

 「…それは駄目よ。はやてさん」

 

 「…プレシア、さん」

 

 目にクマをつくり、少しやせた感じがしたプレシアさんは言葉を紡ぐ。

 

 「もう、これ以上彼の探索に人員は裂けない。グレアム提督の証言があるとはいえ、裁判直後にそのような行動をとれば印象を悪くしてしまうわ」

 

 「プレシア!お前!タカシがいなくなって・・・」

 

 プレシアさんの淡々とした言い方にヴィータは文句を言おうとしたが、プレシアさんの行動は私達も知っている。

 私達が探索から返ってきてもずっとモニター席から離れることなくコンソールをいじり続けていたのも。

 そして、誰よりも疲れているのがみてとれたから、怒鳴るのを止めた。

 

 「悪い。そっちが一番つらいはずなのに…」

 

 「…いいわよ。非魔導師(私達)は私達なりに探すから」

 

 魔法の力は失っても、その技術・知識。そして、この中では誰よりもスフィアの事を知っている自分だから出来ることがある。

 プレシアさんはそう言うとアースラから海鳴市に繋がる転送装置に乗って自宅へと向かって行った。

 

 「…艦長。よろしいのですか?」

 

 「一週間も働きづめだったから。…彼の事も整理したいんでしょう。今は家でゆっくりしてもらいましょう」

 

 エイミィさんはリンディさんにそう尋ねるが、彼女はそのままプレシアさんを自宅に帰した。

 

 「あ、あの!それなら私達が!」

 

 「私も!」

 

 「私もやるよ!」

 

 「君達も駄目だ。なのは、君は転移魔法が苦手だろう。それなのにあの高次元空間の調査を一人で行うのは危険すぎる。フェイトやアルフもそうだ。君達の防御力であの空間に放り込まれでもしてみろ、助かる保証は出来ない」

 

 「で、でもクロノ」

 

 「だから僕が調査する。君達はその周辺区域。もしかしたら高志は時空漂流をしてしまっているかもしれないから、その周辺を探せばいいさ」

 

 クロノ君は諦めたかのように言葉を紡ぐ。

 クロノ君もまだ諦めたわけじゃない。そうだ、ここにいる誰もが高志君が生きていることを信じている!

 

 「…クロノ」

 

 「現時刻を持って、僕、クロノ・ハラオウンは執務官の権限で時空漂流者探索。民間協力者・嘱託魔導師の協力で探索を開始する」

 

 「…ナイスッ、クロノ君。よっ、男前♪」

 

 エイミィさんが茶々を入れてくるのに頬を染めながらもクロノ君は一度咳払いをしてから言葉を繋ぐ。

 

 「だけど、これが出来るのは一ヶ月間までだ。それ以上は流石に伸ばせない」

 

 「…一ヶ月。うん、絶対に見つけ出して見せる!」

 

 「ああ、心配させた分思いっきり殴ってやるんだから!」

 

 「私、アリシア達に伝えてくるね!」

 

 なのはちゃんやアルフは力強く頷き、フェイトちゃんはマンションで待機しているだろうアリシアちゃん達の所へと向かう為にブリッジルームから出て行った。

 今、この場に居ないユーノ君も前もってクロノ君から支持されていたのかリーゼ姉妹と一緒に時空管理局の無限書庫で手がかりを探している。

 

 「…そうだな。恩を返せずにこのままと言うのは私の矜持に反する」

 

 「私もまだまだ治癒魔法で教えきれて無い事が沢山あるんです」

 

 「あいつはどこか主はやてに似ていて無茶をするからな。次に会った時は説教だな」

 

 「ああ、あの分厚い鉄板を砕いてでも言い聞かせてやる」

 

 私の騎士達もまだ諦めてはいない。

 だけど、ザフィーラ。私ってそんなに無茶しているかな…?

 

 「主はここ最近、授業中に居眠りをするとか…」

 

 リインフォース。な、なぜそれを…。

 

 「バニングスや月村から聞かせていただきました。エクストラクターにはまだ調整が必要なので戦闘以外では役に立たないのがよかったのでしょう。主のように無茶をすることが出来ない二人は、自分では探せないというもどかしさを感じながらも主達を心配なさっていましたよ」

 

 そ、そうなんか…。

 気をつけなあかんなぁ…。

 

 「という訳で今日はゆっくり休んで説教です」

 

 「ざ、ザフィーラ…。目が怖いんやけど…」

 

 「守護獣たる者、従者としてあまり口出しはしたくはないのですが、守護する主がそんなことでは本末転倒。シャマルと一緒にお話をしましょう。O・HA・NA・SIを…」

 

 ま、待って…。

 ザフィーラ!それは待って!

 それを受けると私、半日ほど意識が飛ぶんやけど!?

 

 「それは好都合。半日は確実にそのお体を休めていただけますね」

 

 「ごめんなさい。はやてちゃん。ちょっとO・HA・NA・SIするだけですから」

 

 「それじゃあ、なのはちゃん達もO・HA・NA・SIしようか♪」

 

 「こっちが指定した時間以上に探索しますと言ってごねていた分も含めて♪」

 

 「抵抗するならしてもいいぞ。デュランダルで凍る覚悟があるならな」

 

 「「「「…え?」」」」

 

 シャマルに後ろから車椅子で押されながら私はザフィーラに誘導されるようにブリッジルームを出ていく。

 なのはちゃん達もいつの間にかリンディさん達に捕まって個室へと連れて行かれていく表情が強張っている。

 皆、これから起こりうるO・HA・NA・SIに恐怖しながら…。

 

 あ、ちょ、やめ、シャマル。ザフィー…、アッ―――――?!

 

 

 リインフォース視点。

 

 

 

 『…少し頭を冷やそうか?』『にゃあああああああ?!!』『うわああああああ?!!』

 

 ブリッジルームの向こう側から執務官の声と高町やテスタロッサ妹達の悲鳴が聞こえた。

 

 「…主はやて達は逝ったか」

 

 「何気にはやてを見捨てたよな、私等…」

 

 蒐集の為無茶をしていたという前科がある分、私を含めた守護騎士達は適度に休憩を入れていたのでO・HA・NA・SIを免れた。

 

 「…だが、無茶をして体を壊されても困る。それではタカシにも申し訳がないからな」

 

 私がそう言うと将やヴィータは驚いた顔をして私を見る。

 

 「な、なんだ?二人して?」

 

 「いや、お前が彼を名前で呼ぶとはな…」

 

 「なのは達も名字で呼ぶことがあるのに、何かあったのか?」

 

 命を救ってもらった。スフィアも抑えてもらった。

 主はやてとの魔力のラインも切れてしまったが私は封印された『悲しみの乙女』から滲み出る僅かな力で生きていける。

 もう、まともな戦闘は出来ないがそれでも主はやてと共に生きていけるという時間を彼から与えてもらったのだ。

 

 「ああ、あったな…。返せない程の恩を彼から頂いたな。今度会えたら私は一生をかけてでも彼を支えていきたい」

 

 「リインフォース。それは、その…」

 

 「少し大げさなんじゃねぇか…」

 

 耳年増なヴィータに、その事には疎そうな将までも私の発言に顔を赤く染める。

 確かに私の発言は誤解させそうな言葉だった。が、誤解なんかではない。

 

 「彼が許してくれるなら私はそれでもいいと思っているぞ」

 

 「んな!?」

 

 「…思いきった発言だな」

 

 ああ、そうだな。

 あの温泉で主と彼がキスをした場面。いや、テスタロッサ姉との場面に遭遇してから私の中に何かが生まれた。

 私もあれが出来たら…。そう思うとたまらなく顔が熱く、心が火照る。

 

 「何より、彼を笑顔に。幸せにしたいと思っているのは紛れもなく本心だ」

 

 貴方に会うまで私は決して『悲しみ』で俯いたりはしない。

 だって、俯いたりなんかしたら貴方の笑顔は決して見ることは出来ないのだから…。

 

 


 
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