No.547830

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

混戦の光

2013-02-23 19:00:45 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:885   閲覧ユーザー数:836

「おおりゃあああっ!!」

 

 

ザンッ!

 

 

ビームブレードが無人機の装甲を縦に裂く。

 

「もう一発だ!」

 

そのまま回転してビームウイングで追撃。無人機に三本の縦長の穴が開いた。その間からISのコアが覗く。綺麗な色をしてるけど、今はそれを気に留めている余裕がない。

 

「シャルッ!」

 

「はあっ!」

 

アサルトライフルの弾丸がその正確な射撃でそのコアを叩く。けどISのコアはダイヤモンドには劣るけど相当な硬度を持っている。そう簡単には壊れない。

 

「――――――――」

 

最後の抵抗か、無人機は背中のブースターを使って逃走を図ってきた。

 

「ふふっ…残念でした」

 

シャルが笑った無人機の行く先には……

 

「捉えたぞ!」

 

「これで…!」

 

ラウラと簪の二人がレールカノン、そしてミサイルラックを向けて待ち構えてるんだ。

 

「―――――――!!」

 

それを把握したのか、無人機は両腕にブレードガンの砲口を二人に向ける。でも、遅い。

 

 

ドドドドドッ!!!!

 

 

ミサイルと砲弾が直撃し、黒い装甲が砕け飛ぶ。

 

しかし、それでもなお、装甲内部の機構を露出させてでも、無人機は動き続けた。

 

 

だから…トドメと行こう!

 

 

「「「瑛斗!」」」

 

「オーライ!! 離れてろよ!」

 

最大出力のビームブラスターの光が無人機を飲み込んだ。

 

「――――――………」

 

ビームの中で炸裂が起こり、海に人型の塊が落ちて波紋が広がる。

 

直後、轟音と共に水柱が立った。無人機が海中で爆発したんだ。

 

「なんとか…片付いたか」

 

短く息を吐いてG-spiritをG-soulに戻す。

 

「こちらも終わりましたわ」

 

セシリアを先頭に鈴、マドカも戻ってきた。

 

「とりあえず目に見える最初の目標は撃破ってところね。これくらい楽勝楽勝!」

 

鈴が牙月を肩にかけて余裕綽々に言ってくる。なるほど、確かに装甲に目立った傷は見当たらないな。

 

「まずは四機か。こんだけの人数で相手をするとなると落ち着いて戦えるぜ」

 

「けど…油断しちゃ、ダメ」

 

「簪の言うとおりだ。無人機どもも強化を施されている。火力、装甲の堅さもあるが、一番に恐ろしいのはその無人機ゆえの無限の体力だ。連戦して私たちが疲弊しているところに向こうが多数で来たらひとたまりもない」

 

「わ、わかってるわよ。アタシもそれを考えてないわけじゃないし…」

 

「危なくなったらすぐに補給に動こう。僕たち以外にも戦ってくれてる人たちもいるんだしさ」

 

シャルの一言にみんなで頷いたところにオープン・チャンネルで拠点から通信が入った。

 

『戦闘を終了したようだな。全員、機体の損傷はどうだ』

 

「はい。こちらに目立った損傷はありません。教官」

 

『そうか』

 

「織斑先生、次の目標はどこにいますか?」

 

『そのことだが………見失った』

 

「「「「「「「……え?」」」」」」」

 

全員で声を揃えてしまった。

 

「え、見失ったって…全部やっつけたってこと?」

 

マドカが素な口調で先生に聞く。

 

『そうではない。これまでレーダーで探知で来ていた反応が一斉に消えた。なんらかのステルスシステムを使用したと思われている』

 

ウインドウを開いてみれば確かにいつの間にか赤い小さな点は消えていた。代わりに『ターゲット・ロスト』の文字が浮かんでいる。

 

「つまりどこにいるかはわからない、ということなのでしょうか?」

 

『そういうことになる』

 

「さらっと答えてきたなぁ…」

 

「じゃあアタシたちはどこに向かえばいいんですか!?」

 

『落ち着け。まだ手がないわけではない。現在映像での捜索に切り替えて目標を探している。再度データを送る』

 

ウインドウに更新の表示が出た。ローディング画面に入る。

 

「あの…織斑先生……」

 

簪が織斑先生に声をかけた。

 

『どうした』

 

「お姉ちゃんは……どうなってますか?」

 

どうやら楯無さんのことが気になったらしい。

 

『お前の姉はお前たちより早く戦闘を終えて別の目撃情報があった場所へ向かっている。今のところは無事だ』

 

「よかった……」

 

簪はほっと息を吐いた。

 

「確か…フォルテ先輩と一緒に出撃したんですよね?」

 

『ああ。卒業生のケイシーと合流して移動している』

 

「おお! ダリル先輩が!」

 

いつぞやの卒業マッチ以来だが、どうやら元気そうだ。

 

『そろそろ情報の送信が完了するはずだ。確認してみろ』

 

先生に言われるままにウインドウを見――――――――

 

《警告! 下方からのロックオンを確認!!》

 

 

ザバババババァッ!!

 

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「――――――――――」

 

真下の海面から十数機の無人機が飛び出してきた! どの機体もその銃口を俺たちに向けてやがる!

 

 

バシュンッ!

 

 

被弾を覚悟したけど、銃口から飛び出したのはネットだった。

 

「うわあっ!」

 

「きゃあっ!」

 

完全に虚を突かれたから見事に近くにいたマドカまで俺と一緒にネットに捕らえられてしまった。

 

「ちょっ、なんなのよコレ!」

 

「り、鈴さん! 暴れないでくださいまし! 牙月の刃がすぐそこに!」

 

「う、動けないよ!」

 

「こんな網など!」

 

ラウラがプラズマ手刀でネットに斬りかかる。でもプラズマはネットに触れた瞬間に消滅した。

 

「なっ…!?」

 

鈴も牙月をネットの中でがむしゃらに振るけどまったく効果がない。

 

「牙月でも切れないじゃないの!」

 

「だから暴れないでと言ってますでしょう!」

 

一緒のネットに入れらているセシリアが慌てて牙月の刃を避ける羽目になってる。

 

「――――――――」

 

そのまま無人機はバラバラな方向に飛んだ。つまり、俺たちはバラバラに離ればなれに。

 

「瑛斗!」

 

他のみんなは二人ずつ。だけど一人だけ、簪だけが一人で運ばれていく。その手が俺に伸びている。

 

「簪!」

 

しかし簪は黒色の無人機に連れて行かれてしまった。

 

「クソッ…! マドカ! 無理にビットは動かすなよ! 下手すりゃ俺たちが微塵切りだ!」

 

「わ、わかってるよぉ!」

 

網目が細かいからマドカのブレードビットもすり抜けられないし、ビームソードを近づけても切っ先がネットに届く前に蝋燭の火みたいにフッと消えてしまう。網の向こうには無人機が俺とマドカの入った網を引っ張っている機体以外に左右に二機。

 

『どうし……! お………い! …じを…………!』

 

織斑先生の声が段々聞き取りづらくなっていく。ジャミングでもされているみたいに雑音が混じってやがる。

 

そしてついに先生からの声は完全に雑音になっちまった。

 

「シャルたち…ダメだ! 繋がらねぇ!」

 

「私の方もダメだよ!」

 

「ちっくしょう! 出しやがれ! 俺たちをどこに連れてくつもりだ!?」

 

無人機に吠えても返事はない。攻撃の気配がないのが怪しすぎる。

 

俺たちはどうすることもできないまま無人機に運ばれるしかなかった。

 

 

 

 

「に、二年生専用機持ち組がバラバラの方向に移動していきます!」

 

拠点にいる千冬たちの前の投影型ディスプレイでは瑛斗たちのISの反応が高速で移動していく様子が映し出されている。

 

「つ、つつ通信も繋がりません!」

 

真耶の報告する声がパニックを起こしていた。

 

「レーダーから消えた次は桐野たちを分断……他の専用機持ちの様子はどうだ」

 

「五反田さんと戸宮さんは現地の先生たちと合流して目標の一機を撃墜。現在補給に動いています。更識さんとフォルテさんは現在移動中です」

 

報告からして、どちらも二年生組と同じような状態に陥ってはいないことを千冬は理解した。

 

「なぜ桐野たちだけが……まさか…いや、そんなはずは―――――」

 

思案しているところに学園から緊急通信回線である人物から連絡が入った。

 

『織斑先生、どうやら大変なことになっているようですな』

 

音声のみだがその声の主は轡木十蔵のものだとすぐに分かった。

 

『こちらも問い合わせの電話が殺到ですよ。ああ、もちろん妻の方にね。子供は無事なのか、と』

 

「申し訳ありません…現在事態の鎮圧に動いています」

 

『わかっています。責めるつもりはありませんよ。で、本題ですが…とうとう完成しましたよ』

 

「……!」

 

その言葉は、千冬が待ち望んでいたものであった。しかし、それは今の状況では素直に喜べずにいた。

 

『どうしますか? こちらはいつでも準備はできていますよ』

 

ここで十蔵に『YES』の返事をすればこの事件は一気に収束する。

 

だが、それでは…

 

「……………………」

 

『織斑先生?』

 

「……すみません」

 

『ん?』

 

「まだ…その時ではありません。アイツを……束を止めるのは、私ではありません」

 

『………………』

 

十蔵の声が聞こえなくなった。沈黙しているのだ。それから数秒。

 

『わかりました。また次の機会ということにしましょう』

 

「せっかく協力していただいたにもかかわらず…本当に申し訳ありません」

 

『いいのです。アレが今のこの世界で動くのは正直言って私もよく思っていませんでした。使うと言われたらどうしようか、内心ヒヤヒヤでしたよ』

 

「必ず止めます。止めさせてみせます。ですから―――――」

 

『そこまで。その言葉が聞けただけで充分です。頑張ってください。私たちもできるだけの支援をしますので』

 

十蔵との通信は終え、千冬は短く吐息した。

 

「…織斑先生……大丈夫ですか?」

 

「山田先生…なにか?」

 

「い、いえ…顔色が悪そうだったので」

 

その目が心底自分を心配する目であった。

 

「気にするな。問題ない」

 

だから千冬は真耶に小さく笑って見せてから、声を出した。

 

「残りの目標は」

 

「は、はい! 現在6機の目標の撃墜を確認しています! 残り44機です!」

 

「各国への支援の要請は」

 

「アメリカを初めに十数か国が現在時刻までに支援を約束しています! すでに到着している部隊もあるようです!」

 

「よし、このまま私たちは二年生組との通信機能が回復するまで情報の整理、そして他の専用機持ちたちへの指示を出す。真耶、情報の管理を頼む。なにかあったらすぐに報告を」

 

「わ、わかりました!」

 

真耶は大広間の奥の機材に駆けて行った。

 

「………………」

 

その後ろ姿を見てから、千冬は思う。

 

(アレが完成したとなれば、もうすぐ奴らも……)

 

これから先に起こるであろうことを想像し、なぜか笑いが零れた。

 

「やれやれ……前途多難は変わらんか」

 

 

瑛斗たちが出撃してから一時間くらい。一人待機を命じられた俺は箒が眠る部屋にいた。それでもいつでも出撃できるようにISスーツは着ている。

 

「………………」

 

箒の顔は眠っているように見える。身じろぎひとつしないその姿に俺は言い知れない不安を感じた。

 

 

『いつ目が覚めるかはわからない』

 

 

「………っ」

 

瑛斗の言葉を思い出すと胸が張り裂けそうになる。

 

「箒…瑛斗たちは戦ってるよ。俺はこうしてここにいちまうけどさ」

 

いつもなら『情けない。それでも男か!』って怒鳴って来るのに、それがない。

 

「束さんがISで世界を滅ぼそうとしてるんだ。今日の夜に世界中のISが爆発するんだって」

 

「………………」

 

反応なんてあるはずないのに、俺はなぜか話しかけ続けていた。

 

「束さんは、なにがしたいんだろうな…お前をこんな風にして……」

 

箒は束さんのことを敬遠してたけど、束さんは箒の事を気にかけていた。…と思う。

 

それなのに束さんは無人機に箒を襲わせて、世界を滅ぼそうとしてる。

 

「…やっぱり、俺にはわかんないな」

 

もう一度箒の顔を見る。なんだか悲しそうに見えた。

 

「箒…目を覚ましてくれよ。じゃないと……俺…………ん?」

 

腕が熱い。まるで熱い鉄を近づけられたみたいに、白式を付けた右腕が熱い。

 

「光ってる…?」

 

白式が輝いていた。目の奥を貫くような激しいものじゃなくて、ぼんやりと優しい光り方だ。

 

(……一夏)

 

声が響いた。俺を呼んでる。

 

「箒?」

 

箒の声だった。でも、当の箒は目の前で眠っている。とてもじゃないが口を聞けるような状態じゃないのは一目瞭然だ。一体どうなってんだ?

 

(……一夏)

 

「あ…」

 

箒の身体にかけられている布団の中からなにか光っているのが見えた。

 

「……………………」

 

ゆっくりと布団をめくってみると、箒の右手首の紅椿が淡く光っていた。瑛斗が見たらきっと驚くような現象だ。

 

紅椿に呼応するように白式の光が強くなる。

 

なぜかわからなかったけど、どうすればいいか分かった。

 

白式を紅椿に近づける。

 

(………一夏)

 

「箒……」

 

白と紅、二つの光が俺と箒を飲み込んで………

 

 

瑛「インフィニット・ストラトス~G-soul~ラジオ!」

 

一「略して!」

 

瑛&一「「ラジオISG!」」

 

瑛「読者のみなさんこんばどやぁー!」

 

一「こんばどやぁ」

 

瑛「さぁて! ラジオISG、今回も張り切っていきましょう! 本日の質問!」

 

一「えーと、カイザムさんからの質問。あ、俺宛てだ。もしもIS操縦者ではなく、料理人として活躍するなら、どんな料理を極めたいですか? そして自分の店を出すならどういう店名にしたいですか? だって」

 

瑛「一夏が料理人かー。お前上手だもんな料理」

 

一「いやぁそれほどでも」

 

瑛「一年の調理実習でカレー作った時も評価高かったよな。ラウラの『どえらいカレー』もさることながら」

 

一「よ、よく覚えてるなそんなの…」

 

瑛「まあ話を戻して、とりあえずどんな料理極めたいですか? って質問を消化しようぜ。一夏の得意料理ってなんだ?」

 

一「結構レパートリーは多いからな。うーん…」

 

瑛「ホント和洋中なんでもござれだからなお前は」

 

一「和食かな…多分和食だろうな、うん」

 

瑛「和食か。そう言えば正月に一緒におせち料理作ったな」

 

一「あー作った作った。そんでみんなで食った」

 

瑛「みんなの勢いが凄すぎてこっちは取るのが大変だったぜ。ほいじゃあ和食の方向で、今度は店開くならどんな名前がいいかだ」

 

一「店を開く予定なんてこれっぽっちもないからな…考えたこともなかった」

 

瑛「まあそりゃそうだよな。俺もなんとなーく考えてみたんだが、和食なら無難に『料亭 織斑』とかどうだ?」

 

一「思いっきり苗字じゃん」

 

瑛「だよなー。でもなかなかしっくり来てると思うぜ?」

 

一「そうかぁ?」

 

瑛「違う? あそう…………エンディング!」

 

一「お前気に入らないとそれやるシステムやめろよ!」

 

 

流れ始める本家ISのエンディング

 

 

一「まあそれでホントに流すスタッフもスタッフだけどな…」

 

瑛「今日はそこで知り合った男の人と女の人に歌ってもらったぞ。なんでも料理関係の雑誌の取材の途中だとか」

 

一「思いっきり仕事中の人邪魔してんじゃないのか?」

 

瑛「いんだよいんだよ。大衆食堂でぽーっとしてたから。気分転換さ」

 

一「そういうもんなのか?」

 

瑛「そういうもんさ。それじゃあ!」

 

一「みなさん!」

 

瑛&一「「さようならー!!」」


 
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