目を覚ますと、そこはとても懐かしく、久しぶりあの自分の部屋だった。
一刀「・・・・久しぶりだな。」
嬉しいんだと思う・・・いや、久しぶりの部屋だ嬉しくないわけがない・・・・
でも・・・・やっぱり・・・・・・そう思ったとき・・・コンコンとノックの音が部屋に響いた。
一刀「(誰だ?)・・・・どうぞ」
??「・・・・起きたのね。久しぶりね一刀ちゃん・・・」
ドアから顔を出したのは優しそうな顔をした40代くらいの叔母さん。
一刀「・・・・・夏妃叔母さん。」
夏妃「覚えていてくれたのね・・・お爺さん残念だったわね。」
夏妃叔母さん・・・北郷家とは親戚関係で法事や正月などに何回か顔を合わせている。
夏妃「下に及川くんもいるわ。着替えて顔を洗ったら来て頂戴、朝ごはんも出来てるから。」
及川・・・俺が見つかったと聞いて来てくれたのかな。
一刀「分かりました・・・・」
その返事を聞いて頷いた夏妃叔母さんは一階に降りていく。
一刀「みんな・・・・・俺はどうしたらいい・・・・」
その言葉に返事してくれるものはおらず、ただ一刀の押し殺した泣き声だけが聞こえた。
一刀「・・・・おはようございます。」
そう言って朝ごはんの準備をしてくれている夏妃叔母さんと、座布団に胡座をかいている及川がいた。
夏妃「おはよう、一刀ちゃん。」
及川「・・・・かずピー、おはようさん。」
一刀「・・・・あぁ、おはよう及川。」
俺の顔を見てホッとする及川。
及川「・・・ホンマに帰ってきたんやな。かずピーが帰ってきた聞いたときはホンマに心臓飛び出るかとおもたわ・・・・・・でも無事で安心したわ。」
一刀「・・・ありがとう及川。」
及川「さぁ、感動の再会はここまでや!とりあえず、その美味そうな朝飯食ってまえ。」
一刀「・・・あぁ、そうさせてもらうよ。」
心の中でもう一度及川に礼を言うと、久しぶりの日本の味をしっかりと味わって食べた。
そして、朝食を食べながら自分がいなかったあいだの出来事を及川に聞かせてもらった。
俺が行方不明になってから、爺さんが休学届けを出していたみたいだが2年生に上がって爺さんが亡くなったことで休学届けも無効。
及川たちが卒業すると同時に俺も退学処分になったそうだ。
俺が行方不明になって警察も動いたそうだが、あまりの手掛かりのなさに捜査を断念。
しかし、俺と同じクラスだった1年A組のみんなと、不動先輩を始め剣道部のみんなが捜査を再開させるという署名運動をしてくれたらしい・・・ホントに良い先輩、友達、後輩を持ったと思う。
及川「つい昨日その署名が終わって今日はそれを提出するはずやったんやけどな。」
一刀「うっ・・・・すまん。」
及川「ええんやて、かずピーが帰ってきてくれたことが重要なんやから。」
一刀「・・・・ありがとう。」
及川はこの2年間ですごく変わったと思う・・・・そう!大人っぽくなった!
及川「かずピーがおらんと合コンに参加せえへん女どもがいるんやもん!」
一刀「・・・・良くも悪くも変わってないみたいで安心したよ及川・・・」
及川「?ワイはワイやでかずピー。」
一瞬でもこいつをかっこいいと思った数十秒前の自分に背負投と四の字固めかけてやりたい!
そんな感じで、以前とあまり変わらないやりとりをしていると夏妃叔母さんが一枚の紙を持って部屋に入ってきた。
一刀「・・・夏妃叔母さん、それは?」
夏妃「一刀ちゃん・・・・お爺さんの遺言よ・・・・あの人らしい遺言よ。」
そう言って渡された紙に書かれていたのは3つだけ・・・・
・家と財産は全部おまえにやる。
・北郷家当主として神棚の刀だけは持っていてくれ。
・嫁は大切にしろ。
最後に「北郷平八郎より馬鹿孫北郷一刀へ」で締められている。
一刀「・・・爺ちゃんらしいな。」
及川「ワイもかずピーのことで色々聞きに行った時会っとるけど大胆というか豪快な人やったなぁ。」
夏妃「ふふ、昔っから考えるより動く人だったから・・・・今の一刀ちゃんみたいに。」
一刀「うえっ!?・・・俺って慎重に考える方だとおもうんだけどなぁ・・・」
及川「かずピーは慎重ってより優柔不断なだけやろ・・・それ抜いたら・・・似とるかも。」
一刀「優柔不断・・・か。爺ちゃんに似ているのって誇っていいことだよな?」
夏妃「私は誇っていいと思うわ。兄さんは最後まで笑ってたもの、後悔は一刀に剣を最後まで教えられなかったことだって言ってたわ。」
及川「ワイも誇ってええと思うで。あんなに楽しそうに生きてる人はそうおらんかったと思う。」
ここにきてなぜ爺ちゃんに剣を、心を、人生を聞かなかったのか、そん後悔ばかりが胸の中を埋め尽くしていた。
一刀「夏妃叔母さん、俺はこの家も財産も守りたいと思います。
そして俺は北郷家当主として恥ずかしくないような人間になりたいと思います。」
その言葉を聞いた夏妃叔母さんは優しい笑顔を浮かべて、
夏妃「そう・・・もしよかったら私の家に来ないかって聞こうと思ったんだけどね。
これが預金通帳、兄さん一刀ちゃんのために相当貯金してたみたいよ。
家の裏に畑もあるかから自給自足もできるだろうし、生活には困らないと思うわ。
ただ、財産に頼って当主らしくない生活を送っているようなら即刻家を追い出してもいいと兄さんから言われているから気をつけてね。」
さすが爺ちゃん抜かりはないってか・・・・
一刀「・・・分かりました。お世話になりました。」
夏妃「いいのよ、兄さんの大切な孫ですもの。」
そうして渡された預金通帳・・・中を見てみれば0の桁が多くて目が痛くなった。
夏妃「・・・兄さん、一刀ちゃんが生まれてからずっと貯めてたみたいだから。
だからこそ、兄さんの思いを踏みにじるようなお金の使い方は許さいわよ?」
金額を見て放心状態になっていた一刀だが、夏妃叔母さんの言葉を聞いて通帳を見直す。
一刀(ホントだ、俺の生まれた日からずっと貯められてる・・・・爺ちゃんありがとう。」
そして、爺ちゃんの思いを胸に覚悟を決めて前を向く。
夏妃「うん、今の一刀ちゃんなら任せられるかな。」
及川「かずピーめっちゃ男前な顔しとるで!」
そんな二人の言葉に恥ずかしくて笑ってしまう。
一刀(みんな・・・たぶん俺はそっちには行けないと思う。
俺がここでの役目を放置してそっちに行ったとしてもみんなは喜んではくれないと思うから。
みんなのことは今でも愛してる。
いや、これから先も愛し続ける。
みんなも愛し続けてくれたら幸せだけどそうもいかないだろう。
だからせめてみんなの幸せを願っているよ)
外を見れば青く晴れた空を風が人撫でした・・・・まるで言葉を運ぶかのように。
一刀「ふぅー飲んだ飲んだ。」
あの日北郷家当主になって早3年がすぎた。
この3年のあいだに一刀は、運転免許を取得し、畑の整理、財産や家の整理、そして剣道とは違う北郷流の剣を爺ちゃんの残した書物を頼りに身につけた。
今日は一刀の高校のクラスメイトで集まり飲み会だった・・・途中から及川が独り身で合コンするぞ!などと言って沢山の女子にボコボコにされ飲み会は終了となった。
家の前に着いた時ふと違和感を感じた。
一刀「あれ?・・・俺、家の電気は全部消したはず・・・あそこは・・・爺ちゃんの部屋!?」
空き巣か?そう思い玄関の鍵を音を立てないようゆっくりと開け、とりあえず道場で鍛錬用の袴に着替え刀を腰に差す。
一刀「この家を汚すことは許さない・・・」
そう言って、腰にある刀の柄を左手の親指で押して少しだけ刀身を晒す。
ドアの前に立つとドアからは光が漏れているが中から物音はしない。
一刀(気づかれたか?中に隠れているかもしれないな・・・・よし!)
意気込んだ一刀は腰を屈め足の親指に力を込める。
一刀(狙うは初撃・・・・足に力、腕は脱力、心は熱く、頭は冷静に・・・)
頭で作戦を纏め、さっきより深く屈み、腕には最低限の力のみ残す。
一刀(3・・・・・・・・2・・・・・・・1・・・・・・・GO!)
頭の中で掛け声をあげて扉を勢いよく開け放ち、最速の居合で斬りかかる。
急な光に目を細めるが目の前にある影にそのまま刀を振るう。
一刀(もらった!)
そう思った次の瞬間・・・・・・・・・・・・・
ガギン!!!!!
刃物同士がぶつかったような重く鋭い音が広がる。
一刀(なっ!?反応するとか人間かよ!?)
そして光に目が慣れて目の前の人物に目を向ければ・・・・・・・・・・・
一刀「・・・・・・雪蓮?」
雪蓮「・・・・・・一刀?」
蓮華「・・・・・・一刀なの」
冥琳「・・・・・・北郷?」
祭 「・・・・・・北郷か?」
華琳「・・・・・・一刀?」
春蘭「・・・・・・北郷?」
秋蘭「・・・・・・北郷?」
桂花「・・・・・・・・・」
桃香「・・・・・・ご主人様?」
愛紗「・・・・・・ご主人様!?」
朱里「はわわ!?雛里ちゃん!?」
雛里「あわわ!?朱里ちゃん!?」
星 「・・・・・・主・・・なのですか?」
月 「一刀様!?」
詠 「一刀!?」
霞 「・・・・・どうなっとるん?」
華雄「私に聞くな・・・・・」
恋 「・・・・・・一刀?」
その場には一刀が愛した国の重鎮がいた。
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