episode120 力を求める理由
数分前―――――
海へと落ちた隼人は海の海底で横たわっていた。
「・・・・」
隼人は薄っすらと意識を取り戻し、ユニコーンもそれに連動して再起動した。
(また・・・こうなるのか・・・)
薄暗い海底で僅かに海に照らされる太陽の光が見えていた。
同時に左胸より出る自分の血が周囲に漂って赤く染めていた。
(情けねぇ・・・たったあれくらいの事で・・・)
身体を動かそうにも体中の感覚が鈍っていた。
恐らくさっきの電撃で伝達系統のほとんどがやられたのだろう。
それに出血の量が多いのか視界がぼやけて来た。
(このまま・・・俺はまた死ぬのか。・・・何もできずに・・・みんなを置いて・・・逝ってしまうのか・・・)
いつ意識がまた途切れるか分からない状態で、隼人は呟いた。
(やっぱり・・・力を得ても・・・俺は何もできない・・・無力なやつだったんだ。・・・力を得ても・・・何も・・・)
隼人は涙を流した。
(俺は・・・俺は・・・)
そうしてとある人物の顔が思い浮かぶ。
それはいつも俺の事を気に掛けてくれる人・・・
いつも優しく、俺に接してくれる人・・・
世界で誰よりも一番大切な人・・・
命に代えてでも守りたい人・・・
(簪・・・すまない・・・)
本当にそれでいいのか?
(・・・・?)
すると声が頭の中に入ってきた。
お前はそれで本当にいいのか?
(なんだ・・・?)
隼人は目を開けると、そこはさっきまでとは違う世界が広がっていた。
そこは地面に草が満ちる草原で、静かに風が吹き、空はオレンジ色に染まっていた。
(ここは・・・)
隼人は周囲を見回す。
(・・・・)
隼人は何かに導かれるように草原を歩いていく。
そうして隼人は丘の上まで来ると、そこには誰かがいた。
(来たか・・・神風隼人よ)
そうして一人の女性が隼人のほうを向く。
自分より少し年上の女性で、黄金のように輝く金髪を腰の辺りまで伸ばして広げており、瞳の色は右が血のような暗い赤で、左は深い森の様な緑のオッドアイであった。身体には暗紺色の全身スーツを着ているので身体のスタイルが丸分かりだった(特に胸が大きいと言うのが・・・)。上に同色で縁に金色のラインが施されたジャケットを着ており、腰には両側と後ろに金のラインが縁に入った腰布をつけていた。背丈は自分とほぼ同じぐらいで、その顔にはどことなく見覚えのあるものであったが、思い出せなかった。
(・・・・)
(神風隼人)
女性は隼人に問い掛ける。
(・・・・)
(お前は力を欲するか)
(力を、か)
隼人は表情を険しくする。
(そりゃ・・・持てるのであれば持ちたいさ)
(ならば、その理由を問おう)
(理由は・・・色々とあるな。力があればできる範囲も広くなる。できないと思っていたことも出来るようになる)
(・・・・)
(一時期はそう思っていた。だが――――)
(だが?)
(・・・ただ力を欲しても・・・何の意味も無い)
(・・・・)
(俺は力さえあれば何でもできると思った。仲間も守れると思った。どんな敵からも仲間を守れると)
(・・・・)
(だが力を持っても、それをうまく使いこなせなければ、何の意味を成さない)
(・・・・)
(ただ力を振るうだけの愚か者だ。ただ自分の身を滅ぼすだけの力になる)
(率直だな)
(・・・・)
(確かに、そうだね)
(・・・・?)
すると右から声を掛けられて隼人はそっちを向くと、そこにはバンシィの意思(モデル:フェイトTハラオウン)が居た。
見れば周りの景色も雲一つ無い青空が広がる海が広がっており、波の音がしてその浜辺に二人は立っていた。
(力を求める者の行き着く先は自らの滅び。君もそういう時があったね)
(あぁ・・・そうだな)
隼人は右手をジャケットのポケットに入れる。
(俺はただ力を求めて、みんなを守ろうとした。ただの自己満足の為に)
仲間を守れると言う満足感・・・ただそれを感じたかっただけなのかもしれない。
(でも、実際は力が無意味だったり、使いこなせなかったりと、そう簡単な事じゃなかった)
(・・・・)
(力があっても、その力が及ばないことだってある。
現に俺はラウラの非道の行いに激昂して、感情を制御できずに徹底的に叩きのめした。恐怖とトラウマを与えるまで)
(・・・・)
(福音の時もリインの助けが無ければどうする事もできなかった。
ティアが裏切った時も感情を制御できずに、ただ怒りの趣くままに行動した。
颯が連れ去られた時だって助ける事すらできなかった)
(隼人・・・)
(俺はいつまで経ってもこんな状態だった。みんなには偉そうな事を言っても、俺自身は何も変わってない)
隼人の表情が暗くなる。
(・・・・)
(だから変わろうと努力はした。だが根本的な所は変わらない)
(確かに人はそう簡単に変わることは出来ない。精神を壊すぐらいしない限りね)
(そこまで変わろうとは思ってない・・・)
(・・・・)
(だから、力だけを求めず、その力をどう使うか・・・それをずっと考えていた)
(それで、答えは見つかったの?)
(いいや)
隼人は即答だった。
(以外だね。てっきりすぐに見つけているかと思ったけど)
しかしバンシィは別に驚いた様子を見せていない。分かっているからだ。隼人が答えを見つけなかった理由を・・・
(そういうものはすぐに見つかるものじゃない。いいや、そもそも答えなんて無いんだ)
(どうして?)
(力をどうするか、どう制御するかなどの考えは人それぞれだ。本当にどうするべきかは、その本当の答えはいくら探しても無い。
いや、無いものは無い・・・存在しない答えだ)
(確かに人の考えはそれぞれ。同じ答えを出せるわけは無い。それが人と言うもの)
(・・・・)
(でも、答えは無いわけじゃない)
(・・・・)
と、今度は後ろから声を掛けられて隼人が後ろを向くと、そこにはユニコーンの意思(モデル:高町なのは)がいた。
周りの景色は暗くなり、輝く星がたくさんある夜空が広がった山の頂上に変わっていた。
(そうでしょ、隼人君?)
ユニコーンの意思は両手を後ろに組むと微笑を浮かべる。
(まぁな。本当の答えは見つかることはないが、俺自身としての答えはある)
(・・・・)
(何度でも言うが、力だけを求めても何の意味を成さない。ただ自分の身を滅ぼすのを促進させるだけだ)
(・・・・)
(俺は力を求めないとは言わない。例えそれが自分を変えてしまうほどのものだとしても)
(それは自分の身を滅ぼすだけだと、君は言ったよね)
(確かにな。だが、俺は大切仲間を・・・そして――――)
隼人は一旦間を置く。
(愛する者を守れるのであれば、本当に人間を捨てる覚悟は出来ている)
隼人の残った右目には決意が現れていた。
(・・・君のその考えが後悔を生む。君の闇はそう言ったよね)
ユニコーンは表情一つ変える事無く問う。
(バンシィからも聞かれたよ。確かにそれが後悔を生んだのかもしれない。今後起こらないとも限らない)
(・・・それでも君は君の考えを通す。って言うんでしょ)
(あぁ)
(君らしいね。まぁ、それが君の強さなのかもね・・・でも――――)
するとユニコーンの表情が厳しくなる。
(君は本当に強くなりたいとすれば、守るべき者の為に戦えるの?)
(当然だ。仲間を危険に晒すやつらを倒すまでだ)
(例えそれが人間であったも?)
(・・・・)
隼人の表情が少し揺らぐ。
(仲間が人間によって危険に晒されたら、君に出来るの?その人間を排除する覚悟が)
(・・・・)
仲間の為に戦えば必ず傷つく者が出る。そして死ぬ者も出る事もある。
(そういうものだよね。何かをなし得るのには、一つの覚悟を持たないといけない)
(・・・・)
(どうなの?)
(確かにそうなのかもしれない。バインドだけが危険対象じゃない。人間もその一つだ)
(・・・・)
(人間だけを殺さずにみんなを守れるとは限らない。いや、戦えば必ず人は傷つく。出来るとは言えない)
(・・・・)
(だが、それでも俺は守るべき者の為に戦う。例えそれが人を殺す事になってしまっても)
その言葉には嘘偽り、曇りの一片も無い。
(そう・・・)
(お前の気持ちは・・・十分理解した)
すると夕日の草原の景色に戻るとオッドアイの女性が再び姿を現した。
今度は右にバンシィの意思、左にユニコーンの意思と一緒である。
(では、改めて問おう、神風隼人)
(・・・・)
(お前は危険を顧みずに、大切な者達の為に命を賭け、この世界を守る事を誓うか)
(あぁ。この命に賭けてな)
隼人は左胸に手を当てる。
(しかしこの力を得る事はお前が破壊の王に近づく事になり、力を使えばお前は人間では無くなる。本当にな)
(・・・・)
隼人は息を深く吸うと、ゆっくりと吐く。
(覚悟は出来ている。一度は失った命だ。この身体で生まれた事に後悔などは無い。そして本当に人間を捨てる事に恐れは無い)
曇りの一片も無い目で女性を見ると、女性は目を閉じる。
(・・・お前の覚悟・・・その意志。確かに受け取った)
女性は目を開いて隼人を見る。
(ならばこの力を・・・お前に託そう)
そうして女性は右手を差し出して返すと、掌に光を出す。
(新たなる力。お前が本来持って封印された力。今こそ解き放つ)
(・・・・)
隼人は光が放たれている女性の手の上に右手を置いた。
(ユニコーン、バンシィ。お前達二人の枷も解こう。そして神風隼人の力となれ)
(分かりました)
(全力で全うします)
ユニコーンとバンシィは隼人の手の上に重ねて右手を置いた。
すると重ねた手から眩い光が放たれて四人を包み込んだ。
海底でもユニコーンが光り輝くと光を出して海中に浮かび上がると、光の球体を形成すると中で影が三つに分かれた。
そして球体の中で緑と赤二つのツインアイが発光すると海面に向けて砲撃二つと巨大光波を放ち、一気に海上へと飛び出した。
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!