No.544916

魔法少女リリカルなのは 退屈嫌いの転生者の介入録

15話 疲労と慰め

2013-02-16 08:41:47 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:5086   閲覧ユーザー数:4842

アースラ艦橋

 

「ふぅ」

 

一人の女性がため息をつく

 

リンディ・ハラオウン

 

艦船アースラの艦長でありクロノ・ハラオウンと言う子を持つ一児の母である

 

「お疲れ様です艦長」

 

と話しかけたのはエイミィ・リミエッタ

 

このアースラの通信主任である

 

「ありがとう、エイミィ」

 

といいエイミィが淹れた茶を飲むリンディ

 

………砂糖てんこ盛りの緑茶を

 

「にしても彼って異常ですよね。数少ない希少技能所有者(レアスキルホルダー)希少技能(レアスキル)の数も尋常じゃないときた」

 

モニターに出るのはクロの写真と所持能力

 

そこに列挙されるレアスキルの数々

 

単体で15以上のレアスキル所有者など普通は存在しない

 

「彼、管理局に入ろうとしているんでしょうね………」

 

と自分が持ちかけた話の時の表情を思い出す

 

まるで子供が新しいおもちゃを貰ったかのような嬉しそうな表情だった

 

「多分そうだと思いますよ」

 

エイミィも同意見のようだ

 

「はぁ………私ったら何であんな事を言ったのかしら………」

 

後悔したように呟く

 

「仕方ないですよ。私も誘おうかと思ってしまいましたし」

 

それほど彼は落ち込んでいた

 

正直言ってあんな落ち込んだ様子を見れば仕方がないと思う

 

「はぁ………ちょっと休むわ。後の事よろしくねエイミィ」

 

「お疲れ様です艦長」

 

後悔等の感情が抑えきれないのかいたたまれない様子で出て行くリンディ

 

 

 

 

 

 

 

(ここは?)

 

暗い…ただ暗いそんな場所だった

 

闇………そう表現するのが正しいだろうか

 

そんな中にリンディは居た

 

(いつもの悪夢と違う)

 

ある男性を亡くしてから見続けてきたその男性の死の悪夢

 

それとは全く違う物だと理解した

 

暗く…寒く…周りには誰もいない…リンディただ独り

 

すると

 

(え!?)

 

驚く光景がリンディの目に入ってきた

 

一人の男性が現れたのだ

 

(………クライド)

 

リンディはその男性を知っていた

 

自分の夫であるクライド・ハラオウンである

 

クライドの方へ歩いていくリンディ

 

だが、歩いているにも関わらず近づけない

 

それどころかどんどん離れていく

 

そしてクライドが自分に背を向け歩いていく

 

(待って!)

 

歩いているのに進めない自分が離れていくクライドに追いつけるわけがない

 

そう理解しながらもあがき続ける

 

追いつける訳もなく………次第に消えてゆくクライド

 

それをただ見ているだけしかできなかった

 

悔しさがリンディを襲う

 

そんな時、また誰か現れた

 

(クロノ?エイミィ?)

 

息子のクロノと先程まで談笑していたエイミィである

 

その二人の方に歩いていくが

 

………先程同様やはり進めない

 

そしてまた離れ………消えてゆく

 

同じように自分の親しい友人や最近知り合い仲良くなったなのはやその家族達などが現れては消えてゆく

 

(皆…皆私から離れていく………)

 

自分の大切な物を全てが無くなっていく

 

そんな恐怖が彼女を蝕んでゆく

 

(独りはイヤ………誰か………お願い…一緒に居て…)

 

自分はこんなにも弱かったのだろうか、とも思わずただ誰かの温もりを求める

 

独りであるという恐怖はそれほどまでに痛烈だった

 

何もかも投げ出したくなった

 

そんな時に

 

「ん………」

 

彼女は夢から目を覚ます

 

「………」

 

起きた後も感じる恐怖

 

それに怯え体を丸めようとすると

 

(あれ…?)

 

なぜか後頭部辺りに温もりを感じる

 

その温もりは小さいながらも気持ちよく恐怖を和らげてゆく

 

気になり目を向けると

 

「あ、起きました?」

 

「クロ…君?」

 

見える最近知り合い先程エイミィと話題にしていた人物がそこにいた

 

「あれ?」

 

と状況を確認するが………

 

「私…どうしたの?」

 

全くわからなかった

 

なので聞いてみる

 

「倒れてたんですよ?艦長室に入ってすぐの所で」

 

倒れた?私が?

 

「過労ですね。働き過ぎなんじゃないですか?」

 

…その彼の診断に否定できないでいる自分

 

確かに闇の書事件以降色々な手続きなどをしていたせいでまともな休みをとっていなかった

 

過労になって当然と思った

 

「で、何でこんな事に?」

 

と視線を自分の頭を置いてある場所を見るように言う

 

膝枕をされている場所を

 

「リンディさんが倒れていて、医務室に運んだ方がいいのか?とか思ったんですけど何か震えてて、で近寄ったら俺のズボンから手を離してくれなくて、倒れた状態ってのもどうかと思ったんで」

 

「そ、そう」

 

言われて気づいたのだが自分の手がしっかりと彼のズボンを掴んでいた

 

「ごめんなさいね?迷惑だったでしょ?」

 

「いえ別に?リンディさんの寝顔見れましたし?役得かと」

 

「………」

 

思わず赤くなった

 

当然だ、彼は膝枕をしていたのだから自分の寝顔を見れるのは当然なのだ

 

が、流石に寝顔を見られるのは恥ずかしかった

 

「さて、もう少し休んだら…」

 

「泣いてもいいですよ?」

 

「!?」

 

クロの発言に驚くリンディ

 

まるで今の感情を見透かされているかのような発言だった

 

「何があったかは知りませんが泣きたいほど辛い事があったんですよね?だったら泣いた方がいい」

 

「な、何を?」

 

少し上半身を起き上がらせた状態で固まっていた状態のリンディを抱きしめるクロ

 

「泣けない事情が有った、そんな感じがします。俺なんかでよければこうしてますよ?」

 

抱きしめられた状態で聞かされる優しい言葉

 

クライドが亡くなってから泣くことが出来なかった

 

あまりにも悲しすぎて…誰かに迷惑かけたくなくて…まだ幼かったクロノにそんな姿を見せたくなくて

 

………泣けなかった

 

そんな自分が泣くことを許された

 

それを理解したリンディから悲しみの感情が溢れる

 

リンディは大声で泣くことを恥ずかしいと思わずに泣き続けた

 

クロはそんなリンディを慰めるかのように抱きしめ続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさいね。あんなカッコ悪い姿見せちゃって」

 

あれから数分後、ようやく落ち着いてきたリンディは涙を拭きながらそう言った

 

「いえ、役に立つ事ができたならいいですよ。悲しい気持ちって誰かにあんまり見せたくないですもんね」

 

「ええ、親である以上余計にね…」

 

あ~…と言いながら納得したように頭をかくクロ

 

「でも、ありがとう。やっと泣けた気がする」

 

「美人が辛そうにしているのはほっとけないですし」

 

「び、美人?」

 

思わず聞き返すリンディ

 

「美人ですよ、リンディさんは」

 

断言された

 

(な、なんでこの子はこんなにはっきり言えるの?!)

 

顔が熱くなる

 

「じゃ、これで」

 

「え、あ、えぇ、またね」

 

と言うリンディの言葉を聞いて去ってゆくクロ

 

それを見届けほぅ…と溜め息をつく

 

「クロ君…かぁ」

 

思わず思い出す

 

弱さを見せた、優しくしてくれた、美人と言われた

 

それらを思い出してまた顔を赤くする

 

「ち……違う!ほ、惚れてなんか………」

 

 

 

 

 

 

その日の夢で

 

「やっちゃいなYo!」

 

というはっちゃけクライドの夢と

 

「………リンディ」

 

と言って抱きしめられキスしてくる大人クロという夢を見て思わず顔を赤くしたリンディである

 

盛大にやらかした

 

なんか独自解釈が半端なく入ってた気がする

 

でも後悔はしていない!


 
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