episode113 捕まった隼人
「・・・・」
隼人は呻き声を出して重い目蓋を開けて目を覚ました。
「ここは・・・」
最初に目に入ったのはコンクリートの天井で、電灯が一つであったためか少し薄暗い。
(俺は確か――――)
額に手を当てて思い出す。
(そうだ・・・ユニコーンに止めを刺されたんだった。
見覚えの無い場所ってことは・・・やつらに連れ去られたって訳か)
そのまま起き上がると少し違和感を覚える。
「・・・・?」
すぐに自分の腹を見ると、ISスーツに血が付着していたが、傷は無かった。
(本当にこういう身体で良かったと思うよ。普通なら死ぬ所だ)
ため息を付いて周囲を見回す。
(明らかに俺は捕虜か。目的は大体分かるが・・・)
隼人は首に提げられているはずのバンシィの待機状態であるドックタグが無い事を確認する。
(持っていかれているのは当然か・・・どちらにしてもウイルスの中和も完全には終わってないだろうな)
すると独房の扉が開いた。
「どうやらお目覚めのようだな、神風隼人」
「お前は・・・」
そこにはリアスが立っていた。
「しかし大した物だ。あれだけの負傷を負いながらも平然と居られるとはな」
「正直こっちもそう思っているよ」
「ふっ。伊達にオリジナルと言われているわけではないか」
リアスは後半は呟いた。
「で、何の用だ。わざわざ俺の負け顔を見に来たのか」
「私はそんな趣味は持たん。ただ話しに来ただけだ」
「以前のようにか」
「そうだな」
「07・・・いや、ラウラは元気か」
「あぁ。元気だよ」
「そうか」
「心配でもしているのか」
「まさか。次に戦える時に不調ではこちらが困るのでな」
「なるほど」
「まぁ、あの時戦えなかったのが、少し残念な所だ」
「ふーん」
「まぁ、元気ならいい」
(どうも俺の周りにはシスコンっやブラコンが多い気がする)
「しかし、リアスの身勝手も少し困り種ですわね」
そんな様子をシスターと数人の戦闘機人が見ていた。
「本当にベー姉そっくりだな・・・ってか、同一人物か?」
ツヴァイクは少し驚いていた。
「ベータ姉さんはオリジナルを基にしていますから、似てて当然ですよ」
「そりゃ・・・そうかも知れないけどさ」
「ふーん。あれが私達のオリジナルなんだ」
と、赤い髪を結び、少年のような容姿を持つ戦闘機人・・・ウェンディは見る。
「本当にベータ姉そっくりだ」
ウェンディに少し似ている戦闘機人・・・ノーヴェが呟く。
「私達の基となった戦闘機人・・・」
茶髪のロングヘアーの先をリボンで結び、頭にカチューシャをつけた戦闘機人・・・ノインが言う。
「でも、リアス姉さんもどうしてオリジナルによく関わるんだろうね」
「私が知るわけ無いだろ、ウェンディ」
「オリジナルの仲間に、彼女の妹がいるのですよ」
「あぁ。戦闘機人になり損ねた遺伝子強化素体か」
「気にしているんすかね?」
「どうでしょうね。まぁそれが原因で身勝手な行動が多いですがね」
「ふーん」
「まぁ後は好きにしていいですが、私はドクターのお手伝いに行きますわ」
そうしてシスターはモニタールームを出た。
(それにしても、中々いい働きをしてくれましたわね)
(軽いもんだ。あのくらいな)
と、シスターはとある人物と通信を入れていた。
(それに、ちゃんと情報もくれた事だ。お前とはいい関係が組めそうだ)
(それはお気に入れられて良かったですわ。今後もよろしくお願いしますわ。ミスターデスティニー)
(あぁ)
「調子はいかがかしら、ドクター」
少し通路を歩いてドクターが居る研究室に入る。
「中々いい進み具合だよ。基礎フレームが組み上がった所だ」
と、目の前には巨大な何かがあった。
骨組みの状態であるためにどういったものになるかは分からないが、明らかに人型ではない。
「ISの外装強化ユニット・・・『シド』。完成が待ち遠しいですわね」
「あぁ」
「そういえば、ロストはどうなっていますか」
「彼女ならもう調整を終えて休んでいるよ」
「そうですか」
「しかし、さすがはタイプゼロを基にして作られた戦闘機人のロストナンバー。№02よりいい性能だ」
「そうですね・・・(とは言えど、あの時の違和感はなんだったのでしょうか)」
シスターはあの時ロストが見せた妙な動きに違和感を持っていた。
「それで、タイプゼロはどうなさるつもりで?」
「今は無理だろうけど、しばらくすれば再調整を行えるだろう」
「そうですか」
「しかし、驚いたものだよ。試作段階だとしてもあのウイルスをすぐに中和して耐性を持つとは。さすがはタイプゼロだ」
「えぇ。あと、黒獅子はどうします?」
「外部からのアクセスを拒んでいる以上調べようが無い。まぁ、何とかなるさ」
「何とか、ですか」
その頃――――
「まぁ予想はしていたが、やはりこういう扱いか」
あれからマドカはまた独房に戻されていた。今は千冬より話しを聞き出されていた。
「仕方が無かろう。お前はあくまで捕虜の扱いだ。例え協力したとしてもそれが変わることは無い」
「まぁ、そうだな」
「だが、どういうことなんだ」
「・・・・」
「神風が何かを吹き込んだのか」
「まさか」
「・・・・」
「私の意志だ。あいつはただ私に問題を出していただけの事」
「問題?」
「すぐには分からなかった。何で分からなかったか不思議でならなかった」
「・・・・」
「だが、ただ素直になってみて考えたら、すぐに分かった」
「素直、か」
「私はあいつと共に戦うと決めた。それに揺らぎは無い」
「・・・・」
「まぁ、このままでも、構わんがな」
「・・・・」
「だが、今の状況だと、一人でも多くの戦力は必要となるはずだが?」
「・・・・」
事実そんな状態であるために千冬は何も言えなかった。
「あいつなら言いそうな事だ」
「神風なら、か。言えているな」
千冬は鼻で笑った。
「まぁ、今後のお前の処遇は話し合いで決まる」
「できるのなら、いい方向に行って欲しい物だ」
「どうかな」
『そうですか・・・隼人が・・・』
「リインフォースさん」
隼人の部屋でリインフォースと颯が話していた。
「リインフォースさんは気付いていたんですか?」
『あぁ。私と隼人は繋がっている。あの時隼人が受けた痛みも感じた』
リインフォースはお腹に手を当てる。
「そうなんですか」
『だが、まさか隼人が連れ去られるとは・・・』
「兄さんの場所はどこなのか分からないんですか?」
『分からない。恐らく遠くに居るのだろうな』
「遠くに・・・」
『例え分かっても、今の私達には・・・なす術がない』
「・・・・」
(ここぞと言う時に・・・役に立てない自分が悔しい・・・)
リインフォースは拳を握り締める。
(ご無事で居てください・・・隼人)
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!