チュンチュン……、と小鳥のさえずりが聞こえる。
ああ、もう朝か。昨日は結局皆に心配かけたまま、眠りについたんだっけ。
でも、あそこまでの心配は必要ないんだけどね、正直。
怪物みたいな軍馬が出てくるとは考えられないし。
まぁ、大丈夫だろう。
そんな事を考えていると、グゥとお腹が空腹を告げている。
「しょうがない。朝食でも作るか」
そう言い、ベッドから出て着替えをし、僕は厨房へと向かった。
昨夜、全員が集まる部屋に恋ちゃんに連れられ、その時に城の構造をザッっと教えてもらった。
全てとはいかないが、大体は把握できたと思う。
そんなこんなで、厨房にやってきた僕。
さて、何を作ろうか?
え~と、野菜はある。米もある。肉も魚も調味料(?)のようなものもある。
さすが、あの優しそうな董卓ちゃんが治める領地だね。材料もいいものが揃ってる。
何故かって?簡単な話だ。
『領主』が『民』の為に尽くし、『民』が『領主』の為に尽くす。
たったこれだけで、『国』は成り立ち、潤う。
ここ、天水ではそれが出来ている。
やっぱり董卓ちゃん達はすごい人達なんだなぁ、と改めて実感する僕。
もし今回の条件を達成しても、上手くやっていけるんだろうかという不安がある。
まぁそれも、僕を殺してくれる人が現れるまでの辛抱だけれど。
さて、そろそろ汁物がいい具合だ。あとはこの肉を焼いて、水に浸してある野菜を
肉に巻いて盛り付ける。後はご飯。
さて。
「頂きます」
手を合わせ、肉を野菜で巻いたものを口に運ぼうとした時、厨房の入口からじっと、
恋ちゃんがこちらを見ているのに気がついた。
「……じぃ~……」
「おはよう、恋ちゃん」
とりあえず、挨拶をしてみる。
「……じぃ~……」
「あの、恋ちゃん?」
どうしたのだろう?全く反応が見受けられない。
「……じぃ~……」
何かを訴えるような視線だ。
その視線が、僕の食べているご飯に向けられていると分かった。
「成程、ご飯が食べたいのかい?」
「……(コクコク)……」
首を縦に振っている。どうやら正解のようだ。
「じゃあ、こっちにおいで。一緒に食べよう」
僕が誘うと、恋ちゃんは嬉しそうな表情を浮かべて、
「……うんっ……」
と言った。
「…………言葉が出ねぇよ」
今僕は、料理を作りながら信じられない光景を目の当たりにしています。
あの小柄な恋ちゃんのお腹にこれでもかという程、ご飯が吸い込まれている。
僕はすぐに「……おかわりは……?」と可愛らしく聞いてくる恋ちゃんに応えるべく、
奮闘して料理を作ってます。
助けてください。君は城の中の食料全部食べ尽くす気かい?と聞きたいけれど、
ご飯を待ってる可愛らしい子犬みたいな目で見てくるから何も言えなくなっちゃう。
手強いなぁ、この子。
まぁ、美味しそうに食べてくれるのは嬉しいんだけどさ。
すると、何を思ったのか恋ちゃんは、ご飯を食べるのを止め、僕に向かって、
不安げな、心配そうな表情で、
「……高順。今日、本当にあの条件を受けて、あの軍馬を手懐けるのに挑戦するの……?」
と、聞いてきた。
「うん、まぁね」
即答する。これは決めたことだからと、恋ちゃんに説明する。
「……そう。じゃあ、一つだけ、約束して……」
「何をだい?」
僕が言うと、恋ちゃんは僕には絶対に守れそうにない『約束』を、
天使のような微笑みで、課した。
「……何があっても、必ず、恋の所に帰ってきて……」
あまりに、切実そうな、でも真っ直ぐなその微笑みに僕は、
「…………努力は、してみる」
と、答えることしか、出来なかった。
そのあと、霞さんや華雄さんや一刀君や董卓ちゃんや賈詡ちゃんが来て、
皆僕のご飯を「おいしい」と言ってくれた。あの気難しそうな賈詡ちゃんまで、「まぁまぁ」
と言ってくれた。
素直に笑えば良かったのだけれど、あいにく僕が感情表現が苦手なので、
「どうも」と返すことしか出来なかった。
でも、僕はそう言っている最中にも、
恋ちゃんの笑顔が、頭から離れなかった。
投稿お待たせしてしまって申し訳ありません。
言い訳なのですが、リアルの方が大学受験の為の勉強で忙しくて、あまり時間が取れないのです。
本当にごめんなさい。
これからも、よろしくお願いします。
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第二十五話です。