No.533311

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第九十八話 超重要です!

2013-01-18 17:48:39 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:5003   閲覧ユーザー数:4506

 第九十八話 超重要です!

 

 

 

 三人称視点。

 

 「という訳でキリエ・フローリアン。投降しに来ました~♪」

 

 「「「「「………」」」」」

 

 「てぇ!皆さん凄く殺気立っているんですけど?!アミタ!ヘルプ!」

 

 「…キリエ。なんでよりにもよってこんなタイミングで…」

 

 桃色の髪を有した少女。

 未来の世界から自分の世界を救うため過去の世界にやって来た少女キリエはヴォルケンリッターの騎士達に囲まれていた。

 アサキムがいなくなってしばらくの間警戒していた宙域に突如現れた。

 厳戒態勢の彼女達の前に…。

 

 (あの人が俺達を過去の地球に送った人…)

 

 (今すぐ未来に返してほしいところだけど…)

 

 (うう…。なのはママ達、滅茶苦茶怒っているよ…。下手な真似したらブレイカーががががががががが)

 

 (ヴィヴィオさんしっかり気を持ってください)

 

 タカが医務室で手当てを受けている間に他の身元不明の魔導師を何人か保護することになった。

 もっとも、有無を言わさずリインフォース・クロノ・ユーノ・はやてといった比較的に高志と友好関係が深かった者達が率先して捕獲した。彼等には聞くことが山ほどあるからだ。

 

 「…それであなた達は、よくわからないのにアサキムについて行ってあの怪物と戦闘。…アサキム足止めの獣をあなた達が相手していたんだ」

 

 エイミィが未来から来たという四人組とデバイス三体を会議室の端っこに置いて尋問をしている。が、そこではほぼいじめに変わらないほどの数の弾圧だった。

 

 「あ、あの、俺達実は未来から来たみたいなんです」

 

 「ああっ!だったらアサキムの事を知らないわけないねぇだろ!」

 

 「ヴぃ、ヴィータ師匠。本当なんです!私達、八神指令やヴォルケンリッターの皆さんに助けられて…」

 

 「うちは指令。じゃないんやけど…。まあ、確かに八神は私だけやけど…」

 

 「ヴィヴィオのお母様もすぐには信じられないでしょうが本当なんです。信じてください」

 

 「なのはママの砲撃、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いこわこわこワコワコワワワワワワ…」

 

 「その子大丈夫?!すごくばぐっているんだけど!」

 

 「ユーノ司書長!お願いします!ヴィヴィオさんを抱きしめて落ち着かせてください」

 

 「どうしてそこでユーノが出てくるんだ?」

 

 「はーい、ストップストップ。これ以上あなた達。未来側の情報をあまりあっちに渡さないでね。渡したら最後、貴方達は元の時代に帰れなくなるかもしれないんですから」

 

 ちょっとしたカオス空間にアミタがストップを入れる。

 タイムパラドックスの事を軽く説明した後、ようやくキリエが発言することを許された。

 ただし、手足には魔法で出来たロープで拘束されてはいる、が。

 

 

 

 「つまり、私達全員でアサキムを撃破することが第一目標という事ですね」

 

 「まあ、そうなるわねぇ」

 

 キリエから渡された魔力で出来た情報結晶体の中にはあちら側。マテリアル達から要求する物が書かれていた。

 まず、アサキムの撃破。これは私達も同じだが次からは少し違ったことが書かれていた。

 『偽りの黒羊』を剥ぎ取る為に『傷だらけの獅子』『悲しみの乙女』の力を借りたい。

 『エグザミア』。おそらく、高志が言っていたDエクストラクターの事だろう。これの暴走を直したいのでまた、『傷だらけの獅子』の力を借りたいとのこと。

 『傷だらけの獅子』の力で直せるのだろうか?

 P・Bなら出来そうなのだが、無機物。機械に使ったことは無いので何とも言えない。

 次は個人的な要望。ディアーチェ。シュテルはそれぞれのオリジナルはやてとなのはとの決着を望んだ。

 レヴィは『傷だらけの獅子』と一緒においしいご飯を食べに行くこと。

 

 「『偽りの黒羊』って、引きはがせるの?」

 

 「前例があるからシュテルンちゃんも提案してきたんじゃないかしら?しかし、その『傷だらけの獅子』の力は凄いわね」(…エグザミアの代わりになるかしら?)

 

 「…それで私達へのメリットとは何かしら」

 

 「そりゃあ、暴走するヤミちゃんを事前に止められるという事じゃないかしら?このままじゃヤミちゃんはスフィアの力を使いすぎて本格的に暴走して本当に手の付けようがない状態になっちゃうわ。一応、言っておくけどそんなに時間は無いわよ」

 

 「…く」

 

 相手のいいように条件を呑むしかないという事だ。

 クロノは苦虫を潰したかのような顔をした。が、この条件を呑まなければ地球が大惨事になる。

 リンディは涼しい顔をしながらも煮え湯を飲むような心情で相手の要求を呑みこみたかった。が、今はそれも出来ない状態だとキリエに伝えることにした。

 

 「我々はアサキムの居所は未だつかめていません。ですので、最初の条件を呑むのは難しいです」

 

 「それじゃあ、ヤミちゃんの治療からかしらね。そっちが『悲しみの乙女』ちゃんね。よろしく~♪」

 

 「「「「「………」」」」」

 

 「…アミタ。皆が冷たい目をして私を見てくるんだけど」

 

 すがるように自分の姉に視線を向ける。

 それを見た姉は妹の為にアースラの現状を説明する。

 

 「キリエ。実はですね…」

 

 

 

 「『傷だらけの獅子』が意識不明の重体ぃいいいいいい!!??!?」

 

 キリエやマテリアル達の作戦は早速頓挫の予感がしていた。

 

 

 ???視点。

 

 ペチ。

 ―…い―

 

 ? 誰かが俺の頬を叩いている?

 

 ペチペチ。

 ―………い、起きろ―

 

 ペチペチと音を立てて俺の意識の覚醒を促している誰かがいる。

 

 「……だ、」

 

 誰?と、喋ろうとした瞬間!

 

 ごきゅるりぃっ!!

 

 「んぎゃあああああああっすっ!?!?」

 

 体の中にある骨がねじられながらすり潰されるような音がしたぁああああ!?

 

 ―おい、起きろ―

 

 「声の音程と音量はそのままなのに起こそうとする感触がすげぇええランクアップした!?」

 

 体中の骨にひびが入ったのかと思うぐらいに、○王拳四倍を使った後の棒戦闘種族並に悲鳴を上げながら俺は意識を覚醒させた。

 へへっ、○空。…超強化状態のデメリット、つれぇえんだな。

 

 ―…抉りこむように―

 

 「打つなよ!中腰で構えたその拳!…アリシア!て、ふぅおおおおおおおお?!おま、おま、おままままままま…」

 

 ―お○んま?―

 

 「仏壇か!じゃなくて何でお前裸なんだよ!」

 

 目が覚めたらどこまでも真っ白な空間。床もシミ一つない白。壁もなく床しかない真っ白の世界。そこには全裸の俺とアリシアがいた。

 なにこの怪しい空間?!て、どこかで似たようなことを…。

 

 ―『揺れる天秤』と一度話したことはあるな?―

 

 「…お前、アリシアじゃないのか?」

 

 ―まあ、な。察しの通り俺は『傷だらけの獅子』だ。今はこの娘の体を借りてお前の意識下で話をしている―

 

 目の前で『俺』という見慣れた少女はやれやれと言った感じに頭を掻く。

 

 ―今、結構やばい感じになっている。『悲しみの乙女』がお前がボロボロになった所為で力を増してきた。『偽りの黒羊』も『知りたがりの山羊』から逃げる為に必死に『(ジャミング)』しているせいで力を増してきている。そこに良い情報と悪い情報が入ってきているんだが…―

 

 「待って!その前に俺からも言いたいことがある!」

 

 突然スラスラと色んな事を喋り出すアリシアの形をした『傷だらけの獅子』がいた。が、その前に俺はどうしても言いたいことがあった。

 

 ―なんだ?―

 

 「まず服を着ろ!」

 

 ―…そこ、重要か?―

 

 超重要です!

 

 ―…やれやれ―

 

 ため息を立てた『傷だらけの獅子』。その次の瞬間にはアリシアがいつも着慣れている緑のワンピース目の前の奴の体を覆った。

 

 ―じゃあ、話すが…―

 

 「待ってくれ!まだある!」

 

 ―………なんだ?―

 

 「…俺にも服を着させてください」

 

 ―………そこ重要か?―

 

 超重要だ!

 かたや全裸の少年。かたやワンピースの幼女。こんな状況、プレシアが見たら俺は消し炭になる。

 『傷だらけの獅子』はやれやれと首を振りながら俺に手を向けると俺は聖祥学園の制服をつけていた。

 

 ―…………もう、いいか?―

 

 「どうぞ」

 

 ―まずはスフィアがお互いに近付きあいながら力を高め合っている。もうそろそろこの事件にも決着がつくだろう―

 

 そうか…。て、俺達も?

 

 ―まあな。あと一段階。俺達の力を上げたら俺達はスフィアの力を完全に熟させることになるな。今の状態でアサキムに殺されたら俺達の魂は喰われるかもしれないな―

 

 「っ?!もう、そんなに…」

 

 俺達のスフィアは熟しているのか…。

 で、良い情報は?

 

 ―今のが良い情報だ。俺達はもう少しでもう一段階、力を高められるという事だ―

 

 …俺、フラグ回収しちゃった?

 で、では悪い方の情報は…?

 

 ―…この娘。アリシアの魂は完全に回復した。傷だらけの獅子(スフィア)である俺がいなくても生きていられる―

 

 それのどこが悪い情報?

 

 ―お前はこの娘を俺達(スフィアリアクター)の戦いに巻き込みたいのか?―

 

 …それって。

 

 ―聖痕(スティグマ)。俺達がもう一段階力を上げた瞬間。俺達の周りにいる人間たちにそれを刻みこんでしまう。あのアサキムと同じように『呪われた放浪者』にな―

 

 スフィアをめぐった永遠の戦い。

 スフィアが集まり太極に至るまで永遠に時空を超えた戦い。何度も何度でも繰り返される戦い。

 

 「そ、んな…」

 

 ―…お前があいつ等を巻き込みたくないのなら俺達はもうあいつ等から離れないといけない。争いごとにあいつ等を巻き込みたくない。寂しがりやなお前にとってこれ以上の悪い情報は無いだろ―

 

 「あ、ああ…」

 

 目の前が真っ暗になった気がした。俺は、俺はもう…。

 

 ―…そうだ。俺達はこれ以上俺達が強くなってしまっては―

 

 

 

 アリシア達とはいられない。

 

 

 

 足元からこの世界で積み上げてきた物が全て崩れ落ちていく。

 

 

 

 転生してからようやく癒えてきた孤独という『傷』は、再び俺の心を締め上げることになった。

 

 


 
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