No.532999

司馬日記23

hujisaiさん

その後の、とある文官の日記です。

2013-01-17 20:33:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:15116   閲覧ユーザー数:9658

7月22日

今日はちょっとした事件があった、典韋殿が元譲様を殴ったというものだ。

経緯としては、御優しい一刀様が日頃のお礼にと典韋殿に焼き菓子を御作りになるというので、素人ながら調理の御指導をさせて頂き、調理完了したところで私は政務に戻った。しかし一刀様の調理姿を見かけた元譲様と許褚殿が、一刀様が典韋殿を呼びに行く為に目を放した隙に典韋殿向けと知らずに殆どを食べてしまった。呼ばれて一刀様御手ずからの御菓子に期待して来た典韋殿は愕然として泣き出されてしまい、一刀様はもう一度作るからと宥め、元譲様と許褚殿も青くなって謝った。しかし元譲様の「そんなに旨い物でもなかった、流琉の(作った菓子の)方がずっと旨かったから」という余計な一言に典韋殿が激怒し、「だ、だったら食べなければいいじゃないですかぁ!」と言いながら元譲様を張り飛ばし、もうやだ辞めますと叫んで泣きながら宮城を出て行かれてしまった。

 

その後典韋殿を手分けして探すのを私も手伝い、見つかったところを一刀様がお連れ帰りになって御自室で一晩かけて思い留まる様『御説得』なさったところ、「兄様のそばからは離れません、居させて下さい」と落ち着かれた。

翌朝には元譲様、許褚殿と謝りあって和解出来、一刀様の御菓子も今一度作られるそうだ。ただ、妙才様を目標としていたが今後軍務は務まるか不安だと訴え、それについては一刀様、妙才様預かりとすることとなった。

 

7月24日

管理職定期試験の後、庁内食堂にて凪と亞莎とで点心を楽しんだ。

すると一刀様が通りかかり、今典韋殿と菓子と合わせて珈琲というものを振舞ったのだが残っているので飲んでみないかとお声を掛けて頂いたので頂く事とした。

土のような茶色に亞莎は尻込みしていたが、とある豆を挽いて湯にといたもので甘い菓子に合うと聞いて皆で頂いた。苦味もあるが、香りがとても良いものであった。

 

7月25日

張任殿と劉璋殿が私と同じく一刀様直轄総務室付きとなり、張任殿は私と同じく詠様の部下、劉璋殿は月様付きとなった。張任殿もやる気を見せており、詠様は『専任で貴方みたいな出来る娘が欲しかったのよ』と大変喜ばれていた。

 

7月25日

陳琳殿が職場へ訪ねて来て、多少伺いたいことがあり定時後に酒楼へと誘われた。彼女とは特別親しいわけではなかったが、拒む理由も無かったので応じた。

酒楼の個室でしばらく四方山話をしていたが、執筆中の『魏志』の五巻に私を登場させたく、またこの本は後宮だけで冊数管理された状態で流通するので一般人に見られる恐れは無いので一刀様との馴れ初めから夜の様子を教えて欲しいと言う。

人に語れる程のものでない為お断りしたいと言うとあっさり了解されたが、代わりに私の知る一刀様について教えて欲しいと言われたのでこれは喜んで応じた。

初めて一刀様をお見かけしたところから御生活指導や、如何に一刀様が素晴らしいか、抱きしめて頂いた時の温かさを語ったあたりまでは覚えているが、彼女が酒の勧め上手聞き上手であった為かその後の事をよく覚えていない。

翌朝、叔達に陳琳殿が家まで送ってくれ、また「飲み代は頂きました」との伝言があったことを聞いたが財布から金は減った様子がなかった。

かなり飲んだ気がするが非常に安い店だったのだろうか?

 

7月29日

文書局の王粲が職場へ訪ねて来た、例の小説の題材としたいとの事だった。

彼女のものは全年齢向けであり、取材内容もそういった意味で当たり障りの無いものであった為こちらも応じた。

多少なりとも一刀様の素晴らしさが伝わるものになると良いが。

 

8月1日

三国事務会議にて、元直の発議で交換留学枠拡大の提案がなされた。今後の互いの他国への理解の深化と良好な関係維持の為との事だ。

個人的には良い提案と思ったが一旦国内へ持ち帰る事とした。

 

8月2日

詠様が困った顔をして(曹仁)子孝さん居る?と魏の執務室へやって来た。

城外演習中のはずだと言うと、終わったら相談したい事があるので私の部屋に来てくれるように言ってくれと言われた。

どのような用向きかと伺うと、舌打ちをしながら『お子ちゃまの悩み相談室よ。今蜀から魏に留学してる龐徳の上司が子孝さんだって言うじゃない、翠の話じゃ龐徳も大概なお子ちゃまみたいだから子孝さんがどう料理して(あしらって)るのか教えて欲しいのよ』という。

どういった悩みだろうか、彼女が中央に来る事となった切欠を作ったのは私でもあるのでもし彼女の力になれることがあれば協力したい。

 

8月5日

姜維と士載が聞きたい事があるので飲まないかとの誘いがあり応じたところ、田豊殿と沮授殿も一緒で良いかと聞かれたが特段否やは無いので応諾した。

珍しく個室席を士載が予約しており飲み始めたが、姜維と士載が話を譲り合うようにしており、その後漸く姜維が顔を紅く染めながら「例のあの(陳琳の)小説の最新刊の草稿を田豊殿の伝手で仲達様の部分を読んだのですが」と切り出した。

何の事だか一瞬判らなかったが先に王粲の取材を受けた事を思い出し、あああの(王粲の)小説か、先に草稿は見せてもらっていたがいざ他人に見られると多少照れると答えると、既に内容を知っていたのですか、と驚かれた。

それでその…内容が本当だったのかというところなんですが、と士載が聞くので草稿を思い出し特に事実に誤りは無かったと思うと答えると更に驚かれ、姜維から

「例えば…一刀様の所へ行った時にあの…、(ぱんつを)履かなかったとか…?」

と聞かれどのくだりかと思い返し、ああ、あの御会食へ行って酔ってしまい一刀様におぶって頂いて帰った時の事かと合点したので

「確かに(一刀様の御背中に)吐いていなかった」

と答えると全員からえええええ!と驚かれた。

「恥ずかしくなかったんですか!?」と続いたが

「正直、(酔っておんぶして頂くなど)少し恥ずかしかった」

と答えると、おお…、となんとも言えないため息をつかれた。すると田豊殿が頬を染めて失礼ですがと前置きして、

「あの…濡れたり、したでしょうか」と聞くのでその時の事を思い出し

「ああ…、(涎で襟元を)少し濡らしてしまいました」と答えると、全員が紅い顔をしてきゃあああと叫んだ。

「それは、一刀様に見られ…たんですか!?」

「勿論です、一刀様に見て頂いて濡れていたのが判った訳ですから」

と沮授殿に答えると、本日二度目の黄色い叫び声が上がり、やって来た店員に声を抑えるように注意されてしまった。

「しかし何故…(ぱんつ)履かなかったのでしょうか?」

「?むしろ一刀様と御一緒で吐く(ほど飲む)方がおかしいだろう」

姜維の問の後はまた私以外の四人で微妙なため息をつきながらひそひそと「見て頂くなんて私無理です、恥ずかしくて死んじゃいます」「でも麗羽様のお話でははきなさいって」「濡れたら透けるものにしなさいって意味だったのかしら」等と言っていたようだったが、次いで

「あと、書かれてたみたいに(酒利きの)試験の後に文謙将軍、呂蒙殿とと一緒にその…御褒美といいますか、一刀様の(玉露)を飲まれたというのも?」

と聞かれ、確かに(管理職定期)試験後にそのようなことがあったので

「その通りです、凪と亞莎と一緒に(珈琲を)堪能させて頂きました」

「た、堪能ですか!?」

「?はい。苦味のあるものではありますが私はあの味、あの香りは好みです、何よりも一刀様の(御作りになった)ものですから。貴女達も一刀様にお願いして飲ませて頂いては?」

そう提案すると田豊殿と沮授殿は頬を染めて実は私達も飲ませて頂いた事はあります、味も一刀様のものなので決して嫌いではないですと言い、姜維も実は私もと続いた。すると士載がおずおずと、「わ、私は近々の備えの為に教えて頂きたく、あの…どの位の量だったのでしょうか」と聞いてきたので、

「凪と亞莎と私とそれぞれ杯(カップ)一杯分だ、ただその前に典韋殿に振舞われていた筈なので全部合わせて(元々の量が)どれくらいだったのかは判らない」と答えたところ

「無理ですそんなに入りません!壊れますっ、壊れちゃいますよ!」と赤い顔を振り、田豊殿と沮授殿、姜維は本気の一刀様はそんなに、やっぱり私達手加減してもらってたのね、等と呟き青い顔をしていた。

士載は「そんなには要らない」と言うが慣れれば一杯位はどうという事は無いと諭してやると絶句し少し考えた後、士季ちゃんと(姜維)伯約ちゃんに手伝ってもらって頑張りますと言っていた。

 

なんというか、四人とも熱に浮かされたような赤い顔をしていたが、そろって仲達さんは凄いです、大変参考になりましたが又ご相談させて下さいと言って帰っていった。

特段凄い話はしたつもりは無いのだが。

 

8月7日

昼食休憩時にたまたま士季と行き会ったが、何故か薄ら笑いで私の方を見ていたので何か用かと聞いたが

「いえ…笑いの為にあえて役得を手放す気もありませんので。まあ、二番絞りをご馳走様ですとだけお礼申し上げますね」

と生温かい笑顔で礼をして仕事へ戻っていった。

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