及川がこの世界に来て数日が経った。
慣れない環境に戸惑いながらも、悪友である一刀がいるというだけで及川の心には幾ばくかの余裕があった。
一方の一刀も自分の世界について心配しているところに及川が現れたため、口では文句を言いながらもうれしいようだった。
及川「ふあぁ~、もう朝か~」
及川はこの世界に時計がないため、日が昇り、何刻か経つと起きてくる。
彼自身、こちらの世界に来てまだ間もないため、字が読めないので仕事もなく、暇さえあれば宮内を散策し武将たちと会話をするのがほとんどである。
中でも、フランチェスカのお嬢様たちのような性格をしている麗羽やノリのいい猪々子とは仲がいいようだ。
逆に朱里や雛里、月に詠には近寄ると逃げられてしまうようだ。
おまけにセキトには会うと吠えられる始末。
後は一刀が警邏の時や暇な時には一緒について町を探索するのが彼のこの世界での一日である。
今日は一刀と一緒に昼を食べに行く予定である。
及川「かずピー、おるか~?」
北郷「あぁ、もしかして昼誘いに来たのか?」
及川「当たり前やん、こういう時しか町に出れへんのやで!楽しまなそんやん!」
北郷「お前は相変わらずだな。」
及川「かずピーは何か変わったな……、なんちゅうか、大人っぽくなったな。」
及川「あれか、猿になったでか!あそこにおった子ら皆手ぇ出したんやろ~」
及川「ハーレムか…男の夢を叶えおって…」
北郷「そんなんじゃない!…」
その時一刀はとても悲しい顔をした。
それもそのはず、一刀はこの世界に来て、戦争の表舞台に立った。
人々の平和を願う桃香達の考えに共感し、君主として争いに関わった。
領土を広げるためとはいえ、たくさんの人々を殺してきた。
皆と天下統一を夢見るうちに多少の犠牲というものを軽くみてしまっていたのかも知れない。
それは及川に会って、気づいてしまった一刀の負の感情である。
北郷「俺は平和のためとはいえ、沢山の人たちを殺している。そして自分の身を守るためとはいえ、じいちゃんにならった剣道を人を殺す技として使ってしまった。もう俺はこの罪を背負って生きていかなきゃならないんだよ。」
北郷「だから俺は皆と一緒にこれからもこの国を守っていくつもりだ。」
及川「お前、もう元の世界に帰る気ないんか?」
北郷「あぁ」
及川「そおか…なら俺もここに残るわ。」
北郷「お前は帰るべきだと思う…」
及川「何言っとんのや!俺ら友達やろ。友を見捨てて戻れるかい!!」
北郷「そっか…」
北郷「及川、ありがとな。何か気が楽になったよ。」
及川「ええねん、困ったときはお互い様やろ。」
及川「その代わり…あのハーレムの中に俺も入れてぇな~」
相も変わらない及川にあきれながらも笑う一刀であった。
そして昼飯が終わったあと、町を探索していると、近くに人が集まっているようだ。
北郷「どうかしたんですか?」
町人A「あ、これはこれは天の御遣い様……実はあちらで3人くらいの男達が人質をとっているんです。」
それを聞いた一刀は人ごみを掻き分けて入って行こうとしている。
及川「かずピーどこ行くんや!!」
北郷「人質を助けに行くんだよ!」
それを聞いた及川は一刀が自分の知らないうちに遠くへ行ってしまったような感覚に囚われた。
そして、自分は何も出来ないことに気がついた。
北郷「おい、お前たち!その人を放せ!!」
男A「何だお前は。」
北郷「俺はこの国の太守だ。」
男A「なるほど、太守様か……なら貴様は華蝶仮面と言うやつを知っているか?最近俺の部下がお世話になったようだから、こうやっておびき出そうとしてるんだが。」
一刀はどう対処しようか迷ったが、チャンスを見つけるために時間を稼ぐことを選んだ。
北郷「俺はそんな怪しいやつは知らない。」
男A「嘘をつけ、あの仮面野郎はこの国にいるんだろう!!あんな怪しいやつがのさばっていられるのもお前がかくまっているからじゃないのか!?」
頭の悪そうな男Aにしては頭が回ったらしい。
男A「ほら、はやく呼ばねえとこいつがどうなってもいいのか?」
一刀は迷ったが、覚悟を決めた。
北郷「なら俺が変わりに人質になろう。だからその人を放せ。」
男A「お前が~、なるほど、いいだろう。」
こうして一刀は人質を入れ替わった。
このとき及川はどうしようかと考えていた。
自分の友がピンチになっている。
やけど、自分の力では助けることはできない。
それに、もしかしたら返り討ちにあって殺されるかもしれない。
それが及川の足を止まらせていた。
???「あなたはそれでいいの~?」
及川「えっ!?」
???「あなたはあの男の子を助けたいと思っているのでしょ~」
及川「当たり前やんか!!」
???「なら助けに行きなさ~い。華蝶仮面が来る時間を稼ぐのよ~」
及川「…わかった!」
だれかに背中を押され、友を助ける勇気をつけた及川は一歩一歩進んでいった。
北郷「及川!!」
及川「やい、そこの野郎!!」
及川「俺のかずピーはなさんかい!!」
男A「ああん!?誰だお前。」
及川「俺はかずピーの友の及川や!!」
男A「ふ~ん…まあいい、そろそろ飽きてきた頃だし、目の前にちょうどいい相手が出来たんだ。たっぷり可愛がってやる。」
男A「おい、お前ら!!そこの太守様を抑えていろ!」
子分A、B「「へい!!」」
北郷「お前らはなせ~」
及川は途端に怖くなった。
どうして痛い目に遭わなければならないのかと。
しかし、目の前の友を見捨てるほどお人よしではなかった。
及川「関西かぶれなめんな~」
及川は右手を硬く握り思いっきり力任せに殴りかかった。
しかし、相手の方はそれを避け、足を引っ掛けるように突き出し、及川を転ばせた。
男A「さあて、覚悟はいいか~」
そういうと男Aは剣を抜き、高々と上げた。
まるで、見せしめの処刑のごとく。
だが及川はそれを見た瞬間、恐怖に負けてしまい、足が動かなくなってしまった。
そして男Aは剣を振り下ろした。
北郷「及川~!!」
カキンッ!!
大きな剣がはじかれる音がした。
目の前を見るとそこには大きな巨漢が立っていた。
身体をTバックのような布着れだけで隠した露出狂、もとい華蝶仮面2号がそこに立っていた。
貂蝉「あら~、弱いものいじめは駄目よおん」
そしてこの声を聞いた瞬間、何故だか知らないが一刀は気分が急にわるくなってしまった。
それもそのはず、彼女?は前の外史にいた貂蝉だからなのです。
詳しくは恋姫✝無双を参照してください。
貂蝉「私、華蝶仮面2号が来たからには、あなた達の負けよ~」
男A「やってみろや~」
男Aは剣を横薙ぎに払った、しかしそれも華蝶仮面2号の足に止めれてしまった。
貂蝉「次は私の番よ~」
貂蝉「ぬっふうううううん!!」
男A「ぬああああああぁ~~」
華蝶仮面2号が放ったパンチは相手のみぞおちに入り、そしてそのままその男ははるか彼方まで飛ばされた。
一刀を抑えていた二人はそれを見て、「ば、化け物~!!」と言って逃げていった。
やはりどこの世界にいっても化け物呼ばわりされる貂蝉なのでした。
及川と一刀は、町の騒ぎを警邏していた兵達に任せ、町外れの森へと来ていた。
北郷「及川!!無茶するのはやめてくれよ!!」
及川「何でや、友達助けるのは当たり前やろ!!」
北郷「あの剣がお前に当たった事を考えたら、心配になるだろ!!」
及川「それはそうかもしれへん…けど、それはかずピーにも言えるんやで!」
北郷「それは…」
及川「確かに今までの事でこの国に対して責任感じ取るかも知れへんけど、かずピーの命は1つなんやで、かずピー死んだら俺だけやなくて桃香ちゃんたちも心配する。」
貂蝉「まあ、二人とも助かったんだから喧嘩しちゃ駄目よ~」
及川と一刀は後ろを振り向いた。
すると先ほどの変態もとい華蝶仮面2号もとい貂蝉いた。
北郷、及川「「ぎゃああああぁぁ~」」
貂蝉「あら、失礼しちゃうわ。」
やはり、驚かれてしまった貂蝉なのでした。
北郷「それにしてもさっきはありがとう。」
貂蝉「どういたしまして。」
及川「ほんまに助かったわ。それで何か用あるん?」
すると貂蝉は言い辛そうに話した。
貂蝉「そこにいる眼鏡の子なんだけどね、実は手違いでこっちの世界に飛ばされちゃったみたいなの。」
貂蝉「だからこの世界に何か影響が出る前に見つけてもとの世界に帰そうと思ったんだけど…」
その話を聞いて一番驚いたのは一刀だった。
北郷「今の話どういうことだ?お前は何者なんだ?」
貂蝉「訳あって話すことはできないわ。ただいえることはこの子を元の世界に送らなければならないという事よ。」
それを聞いた瞬間、一刀は、
北郷「どうしても連れていかなきゃならないのか?」
貂蝉「それは決まっていることなの。もし、彼をここに残しているとこの世界に何か影響がでるかもしれないし、彼らが気づくかもしれない…」
ちなみに彼らとはかつての外史にいた干吉、左慈の事である。
貂蝉「だから、残念だけど彼にはこの世界から退場してもらわなければならないの。」
北郷「でも…」
及川「かずピー…俺戻るわ。」
及川「及川!!」
及川「やって、このまま居ってもかずぴーに迷惑かけるだけやし、それに俺の居場所はやっぱり向こうの世界みたいやわ。」
北郷「及川…」
及川「心配せんでもええ。向こうでまっとるさかい、いつでも帰ってきてええで。」
北郷「ああっ…」
すると次第に及川の身体が透けていった。
北郷「及川!!俺頑張るよ。」
及川「ああ、皆によろしゅう頼むな~」
北郷「わかった。バイバイ~」
及川「あほう、こういう時はまたな~やで…」
そうして及川はこの世界を去って行った。
その後、及川が帰ったことを皆に説明した。
皆自分のことのように悲しんでくれた。
俺はこれからもそんな優しい彼女達と一緒にこの国を守っていくつもりだ。
北郷「ありがとう、及川…」
その日見上げた空は及川の笑みのごとく晴れ晴れとした澄んだ青空であった。
~fin~
おまけ
その日及川は夢を見た。
自分が昔の中国にいって一刀や沢山の女の子達と暮らす夢を。
そして自分が今涙を流してる事に気づいた。
及川「さて、今日も頑張るか!」
そして時間をよく見たら遅刻してもおかしくない時間だということに気づき、慌てて着替えて学校に向かって走り出した。
学校へ向かって走っていると曲がり角から人が飛び出してきた。
及川「危ない!!」
及川はよけれずそのままぶつかってしまった。
しかし、女子のはずなのに自分が飛ばされてしまった。
???「あなた、落ち着きがなくってよ。」
及川はこの声の主が夢で聞いたことあるようなことに気づき顔を上げた。
及川「ぎゃあああああぁ~、ドクダミの君~~」
この日及川が誰に会ったのかは彼しか知らない…
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かつての悪友 その2です。
一応これで完結します。
やっぱり小説は難しい…
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