第百八十四技 世界の終末に現れる者
キリトSide
俺達が意気込みを入れ終わり、意志を固めた時、
ヒースクリフ率いる『血盟騎士団』とウェルガー率いる『聖竜連合』がやってきた。
今回集まったプレイヤーの総数は50人を超えている。
前回の76層ボス攻略は、死者を出さずにボス討伐を行うことができた。
ターニングポイントである75層を超えているので、勢いを保っておきたいところなのだろう。
号令をかける為にヒースクリフとウェルガーが前に出る。
「皆、今回もよく集まってくれた。現在俺達は勢いに乗っている。
この勢いを出来るだけ攻略に活かす為にも、全力で戦おう!」
「76層のボスは強くもあったが、我々には共に戦う仲間がいる。
この層のボスも共に打ち倒し、攻略への大きな一歩としよう」
「「「「「おぉ!」」」」」
ウェルガーとヒースクリフの演説にプレイヤー達にも気合いが入る。
ちなみに75層のボス攻略の時のような演説はしないからな、と伝えてある。
毎回あんなものなどやりたくもない…。
それよりも、今の俺にはもっと気になることがある…。
ヒースクリフが現れてから、嫌な感覚が拭い切れなくなった。
もっと、確かなものを掴まなければ…。
「キリトくん、大丈夫?」
「大丈夫だよ、心配するな…」
「っ……うん…」
俺を心配してくるアスナに出来るだけ優しく微笑んだ。
一瞬、アスナの表情が歪んだ気がしたが、いつもの笑顔を浮かべたので気にしないでおこう。
「それでは、行くとしよう…コリドー・オープン!」
ヒースクリフがボス部屋の前に座標を合わせてある『
俺とアスナも手を繋ぎながら空間へと足を踏み入れた。
キリトSide Out
アスナSide
なんだろう…。キリトくんに言われたからじゃない……だけど、嫌な予感がする…。
キリトくんは団長を見ていた……ううん、睨んでいた…。
まるで敵を見るような、そんな眼をして……敵?
団長が、敵…?
一瞬、ある可能性がわたしの脳裏を駆け巡ったけど、さすがにありえないと思った。
だって、それなら何故、
ねぇ、キリトくん……キミは、何を考えているの?キミの眼は、団長の中の何を捉えているの?
色んな思いがわたしの中で渦巻くけど、いまはボス戦のことを考えないと…。
団長が回廊結晶を使用して、みんながそれに続いていく。
わたしとキリトくんも、手を繋ぎながら空間へと入った。
アスナSide Out
キリトSide
転移した先は、77層迷宮区フロアボスの部屋の前。
迷宮内部は壊れはしないものの、叩けば壊れてしまいそうな水晶で出来ている。
どこか寒さや冷たさを感じるのは、透き通った水晶のせいだろう。
最後の装備確認を行い、俺達は武器を手に持った。
「準備は整ったね……では、開門!」
ヒースクリフの宣言を受けて二人のソロプレイヤーが扉を開き、俺達はボス部屋へと突入した。
全員が部屋に入り終わると、重厚な扉が音を立てながら閉じていった。
ボス部屋は十分な広さの円形の床があり、扉のある場所を除き、全方位を滝が覆っていた。
止めどなく落ちてくる多量の水から迸る水滴に、微かにだが体を濡らされる。
俺達は背中を合わせるように円形を組み、周囲を警戒する。
75層のボスは天井に張り付いていたので、遥か高さにある天井にも気を配るが、
出て来る気配はない……出て来る気配は、だ…。
「くそっ、どこにいるんだ!?」
「焦るな、集中力を乱せばやられることになる」
焦る団員を嗜める団長殿。こんな時でもどこか冷静な団長殿を羨ましいとも思うが、やはりこの感覚は拭えない。
右隣にいるアスナが空いている左手で、剣を握る俺の右手に添えてきた。
安心して、と言ってくれているようだ。
―――………ザザザザザ
その時、前にも聞いたことのある水音が聞こえてきた。やはりか…!
「滝の音に騙されるな、水の音を聞き分けて影を追うんだ! ボスは滝の、水の中にいる!」
俺の言葉を聞いて、全員が息を呑んでから静まり返った。
集中して滝の中に現れるだろう影を探し、水の音を聞き入ろうとする。そして…、
「っ、そこです!」
ティアさんが声を発してから『苦無』を投げつけた。直後、滝の中で爆発が起きた。
水が蒸発するものの、すぐにそれもなくなる……が、その部分に影が現れ始め、次第に大きくなる。これは、来る!
「全員、影の直線状から退避!」
俺の指示に従って、皆が左右へと別れる。巨大化していく影……巨大、だと?
そう思った瞬間に、ボスが体を現した。
―――ザッパァァァァァンッ!!!
巨大な水飛沫を上げながら、その巨大な体躯が滝の中から飛び出していった。だが、再び対面の滝へと姿を潜めた。
「おいおい……デカすぎだろ…」
「今までで、最大の大きさじゃないのか…?」
クラインとエギルが呟いた。あまりのボスの巨体に皆が呆然とする。
「ツノが生えてたよな…?」
「足が四本…」
「翼もあったよ…」
「え、ヒレじゃなかったか?」
「翼だったよ」
どんな姿だったかを話す黒猫団、勿論警戒は緩めていない。
「水の生物だというのに、毛が生えていた…」
「なに? 俺は鱗なら見えたが…」
「自分は鋭い歯が見えました…」
シュミットとウェルガーの話しにフリックものる。
「私、お腹に蛇みたいな紋章がみえたんだけど…」
「というか、本当に魚なのか? 竜や鳥にも見えたけど…」
「いや、動物じゃないのか?」
皆が次々とボスの特徴を声に出して確認していくが、イマイチどれも一致しない……。
前回のボスが神話などに関わっていたので、今回もそうなのではないかと俺は思っている。
ふと、口元に水が付いているのに気付き舐めとってみると、塩の味がした……海水?
巨大、ツノ、四足、翼、ヒレ、毛、鱗、鋭い歯、蛇の紋章、竜、鳥、動物、海水。
それらのキーワードに当てはめられる神話の生物はいない……だが、前回のように融合させた結果だとしたら…!
一つの可能性が出てきた。俺はティアさんへと視線を向けると、どうやら彼女も思い至ったようだ。だが再び!
―――ザッパァァァァァンッ!!!
―――ゴォォォォォォォォォォンッ!!!
水飛沫が上がってその巨躯が姿を現し、巨大な咆哮を上げながら直線に突撃してきた。
プレイヤー達が左右に割れて回避するが、四人のプレイヤーが巻き込まれた。
二人は噛み砕かれ、一人はツノに刺され、一人はボスの巨体に巻き込まれながら滝の中へと落ちていった。
―――パッキャァァァァァン!
その四人が砕け散った。その光景に、俺を含む全てのプレイヤー達が息を呑んだ。
一撃で四人が死亡だと!?
そしてボスは、滝から飛び出してから翼を羽ばたかせ、俺達のいる床に降り立った。
名は〈The
『世界の終末に現れる者』……つまり、ベヒモス、リヴァイアサン、ジズ、そしてベヒモスと同一視される竜、バハムート。
それらの融合体だ。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
はっはっは~、どうだ?リヴァイアサンだけじゃなかったぞw
ちなみにリヴァイアサンは悪魔におけるレヴィアタンと同一視され、レヴィアタンの象徴である嫉妬の紋章が蛇なのだよw
次回からは戦闘ですが、前回の堕天使の時ほどは続きませんので。
それでは次回で・・・。
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第百八十四話です。
ついにボスが登場します、皆さんが予想した奴・・・以上のものが出ると思いますw
それでは、どうぞ・・・。