第百八十三技 予感からの恐怖
キリトSide
俺達は一日の休息を過ごし、迷宮区の攻略を再開した。
迷宮区は水晶で出来た神殿になっており、エンカウントするモンスターはフィールド同様に、
鎧騎士のモンスターや水竜、肺魚などもいた。
迷宮のマッピングは多くの攻略組プレイヤーで行った為、さくさくと進んだ。
結果、迷宮区の攻略スタートから四日という早さでボス部屋を発見することが出来た。
そして発見したこの日、ボス攻略会議を行い、翌日午後一時からのボス攻略戦を行うことが決まった。
今までの経験から予測して、今回のボス戦は結晶アイテムを各自『転移結晶』を一つだけ持って、
あとの回復アイテムはポーション系を持参することに決まった。
戦闘に参加するのは『血盟騎士団』、『聖竜連合』といった大手ギルドは勿論、
『風林火山』などの中堅ギルド、『月夜の黒猫団』と言ったサポートメイン組、
エギル達ソロプレイヤー組、そして俺達『黒衣衆』である。
ボス戦ということもあり、ハクヤ、カノンさん、クラインも復帰することにしたらしい。
そして、会議が終わった後の夜…。
「……………」
俺は寝室のベッドで一人夜空を眺めている。
「キリトくん、どうかしたの?」
風呂上りなうえに大変色気のあるランジェリーを着たアスナが隣に座った。
信頼してくれているのはありがたいが、こうも無防備だとイタズラをしたくなるぞ……まぁ、今はそんな気分じゃないけどな…。
「考え事だよ…」
「明日のボス戦のこと…?」
「あぁ……こんな感じは、今までで初めてだ…。俺がこんなに恐怖を覚えるとはな…」
「っ……そんなに、なの…?」
俺は頷いて応えた。体の震えが止まらない、今までのボス戦や戦いの非じゃない。
何かが起こるのを、俺は恐れている……ならば、何が起こるというのか? それが分からない…。
そこでアスナが俺の頭を自身の胸に抱き締めてきた。
「大丈夫だよ…。何が起きても、わたしが一緒に居るよ。
わたしだけじゃない……みんなも一緒だから、絶対に大丈夫だよ」
「っ……ありがとう、アスナ…」
強大に感じ取れた嫌な予感による不安、それが薄れていく。
アスナの温かさをこの身に感じながら俺はしばらくの間アスナに抱き締められていた。
「もう大丈夫……アスナ、ありがとな」
体を離して言うとアスナは照れた様子だった。
「えへへ、どういたしまして///」
可愛らしい笑みを浮かべながらそう言ってくれたアスナ。俺も微笑を浮かべる。
その時、彼女は俺を押し倒して覆い被さってきた。
「どうしたんだよ、アスナ…(ニヤリ)」
「うぅ~。キリトくん、分かって言ってるでしょ///?」
「さて、なんのことやら…?」
俺は意地の悪い笑みを浮かべ、ワザとらしく
アスナは頬を桜色に上気させながらも、俺に顔を近づけてきた……が、俺はそれを押し留める。
「キ、キリトく~ん…(涙目)」
「嬉しいお誘いだけど、やけに今日は積極的だな?」
「だ、だって…キリトくんがあんなに不安がって、だから、わたしも不安で……んっ//////!?」
俺は言葉にしていくアスナの唇を自分の唇で塞いだ。
そのまま舌を絡ませ、お互いに唾液を交換して飲み干していく。唇を離すと、間に繋がっていた銀の橋が途切れた。
「キリ、ト、くん…/////////」
「そのお誘い、受けるよ…」
「(こくっ)お願い、します…/////////」
その言葉を受けて、俺達は再びキスを始めた。そして夜の帳が降りていった。
朝、目が覚めてみれば時刻は十時。盛大な寝坊だ、ボス戦まであと三時間しかない。
「アスナ、そろそろ起きないとマズイぞ」
「ん…ふぁ、おはよう///」
「ん、おはよう」
目覚めのキスを交わしてから俺達は着替えた。そしてアスナは料理を始めて、俺はその姿を見つめる。
何故か、こうしておきたい衝動に駆られる。それはやはり、予感がそうさせているのかもしれない。
料理を作り終えたアスナが俺に笑顔を向けたので俺もそれに応え、遅めの朝食を取った。
朝食を終えると、俺達は自身の装備を整える。
俺は漆黒のコートと黒装束、『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』、右手には攻撃力上昇の指輪を、
左手の薬指にはアスナとの結婚指輪を装備として確認する。
アスナは黒と紅の騎士団服をモチーフとした服にプレート、武器は『クロッシングライト』、
右手には敏捷値上昇の指輪を、左手薬指には同じく俺との結婚指輪を装備する。
お互いにアイテムストレージをチェックし、転移結晶を各一つずつとポーション系回復アイテムで固める。
装備の耐久値は昨日の内にリズとルナリオに整備してもらったことで完璧だ。
俺とアスナは頷き合うと自宅から出て『コラル』にある転移門を使い、77層の主街区へと跳んだ。
時刻は十二時半。辿り着いた77層主街区には既に大手ギルド以外のプレイヤー達が集まっていた。
仲間達もみな勢揃いしている。
「みんな集まってるな」
「お待たせしました」
俺とアスナに気付くと皆が声を掛けてきた。
「ようやくボス戦だな」
「ま、この層では色々あったからな」
クラインとエギルはこの層でのことを振り返りながら言い、
「今回も頑張りましょう」
「ふふ、そうね」
ティアさんとカノンさんもやる気が十分、
「今回もサポートがメインだけど、任せてくれ」
「うん、頑張ろ」
「やったるぜ!」
「
「精一杯、やらせてもらうよ」
黒猫団の五人もやる気満々だな……しかし、黒衣衆男性陣はどこか神妙な様子だ。
ま、分からなくもないけどな…。俺はハクヤ達に近づいた。
「皆、アレを感じたのか?」
「はい…」
「ボクもっす…」
「……凄まじかった…」
「キリトは、あんなものをいつも感じているんだな…」
「ヤバいって思ったぞ…」
俺の問いかけにヴァル、ルナリオ、ハジメ、ハクヤ、シャインが言葉にしたが、
「今回のは別格だ……俺があそこまで恐怖を覚えたのは初めてだからな…」
さらなる俺の言葉に聞いたみんなは絶句していた。
「取り敢えず、戦うしかないだろ? 全力でやれば、なんとかなるって」
「そうだな…今回も全開でいくぞ」
シャインの言葉に俺は答えた。
俺達は頷き合い、予感を振り払うように意志を固めた。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
甘い+シリアス感を出してみました。
キリトが思いっきりフラグを感じ取っていますね・・・。
さて、この「77層ボス攻略編」が最終編となります。
まぁ原作と同じような展開になりますが、是非お楽しみに♪
それでは・・・。
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第百八十三話になります。
ついに最終編「77層ボス攻略編」に入ります。
まぁ、今回は甘いですがw
それでは、どぞ・・・。