No.527345

学園の守護者~白騎士事件編~第三話

BarrettM82さん

本編より十年前に起きISを一躍に有名にさせた事件、それが『白騎士事件』だった。日本に向け発射されたミサイル、その数は二千三百発以上。
この世界の日本の国の国防を担う『国防軍』やその他の組織の最前線で戦う男達、そしてこの国最後の男性首相直井慎三を中心に描いた作品。

2013-01-03 22:27:26 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:994   閲覧ユーザー数:924

第三話 東シナ海海戦

 

IS迎撃艦隊司令官松本義和中将は旗艦『信濃』の第一艦橋で周囲を見渡した。

左舷方向にはアメリカ太平洋艦隊のニミッツ級航空母艦『ジョージ・ワシントン』が見え、艦載機F/A-18E『スーパーホーネット』とF-35C『ライトニング』が離着艦を繰り返していた。

艦隊は第七艦隊の護衛任務が任されていた。

この他にもASEAN連合艦隊、中国艦隊、ロシア艦隊、EU艦隊がこの狭い東シナ海にひしめき合っていた。

ここが領海である琉球国海上自衛隊は平和憲法に基づき、集団自衛権の行使に当たる為に参戦せずに遠くで監視に当たっていた。

松本司令官はこの任務に疑問を持っていた、それはこの国を救ってくれたISとその操縦者に対して攻撃することだった。

 

「司令官。どうされましたか、そんな顔をして。」

 

「高柳艦長、どうもこうもこの任務はおかしいと思っていてな。」

 

高柳信也大佐は戦艦『信濃』の第十代目艦長だった。

ちなみに本編に出てくる有賀遼平大佐は第十五代目艦長。

 

「やはりそう思いますね、日本を救った救世主を殺せなんて。」

 

「どうせアメリカの圧力に屈して政府の高度な政治判断で発動された任務だからな。」

 

「ですが司令官、あのISとやらは簡単には撃墜されませんよ。」

 

「宇宙空間まで数分で上がることが出来る上昇力、戦闘機より遥かに早い速度、そして弾道誘導弾を一瞬にして撃墜できる戦闘能力。常識では考えられない能力をあれは持っているんだろうな。」

 

「はい、私は戦闘指揮所に行きますが司令官は?」

 

「俺はISを身近で見てみたいからここにいるよ。」

 

「わかりました。」

 

高柳艦長はエレベーターで第二艦橋の下にある戦闘指揮所に降りた。

司令官は腕時計を見ると午後零時まであと十分前に迫っていた。

ISの開発者篠ノ之束の予告だと午後零時に『白騎士』が現れると宣言していた。

 

「全艦隊に下令、対空戦闘用意。」

 

「対空戦闘用意!」

 

艦内に館内放送で鐘の音が鳴り響き、何基もある127mm速射砲やCIWSが砲塔を回転させ砲身を上下に動かして可動出来るか確認する。

松本司令官は艦艇戦闘服装に着替え、双眼鏡を覗いて周辺海域を見張った。

空母ジョージ・ワシントンからは続々と戦闘機が空に上げられ、編隊を組んで待機している。

戦闘指揮所では何人ものレーダー操作要員がレーダー画面を見張り続けていた。

電子時計が午後零時を指した時、艦隊の前方に百km先に光点がひとつ現れると、すぐに反射されたレーダー波を解析する。

 

「目標を探知!白騎士です!」

 

「よし、左舷VLS一番から二十番発射用意!」

 

砲雷長の命令ですぐさま弾頭にIS『白騎士』のデータが入力された。

 

「左舷VLS一番から二十番、目標データ入力完了!」

 

「SM-2発射!」

 

左舷に敷き詰められたVLSから二十発のスタンダードミサイルが打上げられ空高く上がるとマッハ2.5で白騎士に突き進んで行く。

全艦隊から発射された対空ミサイルは百発以上を数え、上空に待機していた戦闘機が一斉に空対空ミサイルを発射して一気に白騎士に接近して行った。

アメリカ海軍F-35B『ライトニング』のパイロット、ロバーツ少尉はフライトリーダーについて行く。

 

《こんなにミサイルを打ち込めば敵機も撃墜できるだろう。》

 

フライトリーダーの言葉にロバーツ少尉は一抹の不安を感じていた。

相手は数十発の弾道ミサイルを一瞬にして迎撃した機体、どんな武装をしているかも分からなかった。

すると突然警報が鳴り響いたと気付いた時、すぐに操縦桿を左に倒して機体を左に傾けた。

真横を真っ白い人型の機体が通ると右翼が根元から切られ揚力を失って墜落して行く。

すぐにロバーツ少尉は射出用のフックを引張って、脱出した。

パラシュートが展開して顔を上げて周りを見ると次々と機体がISの持っている刀みたいなもので切られていた。

だが殺す意思はないのか機体各部を破壊しつつも脱出する時間を残していた。

空には戦闘機よりもパラシュートの数が多くなり、次々と着水していた。

彼は白騎士の機動がどのようにして出来るか理解できなかったがひとつだけ分かった。

 

「アメリカはヤバイのを敵に回しちまったか。」

 

そしてロバーツ少尉は着水して膨張式イカダに乗って、戦闘を眺めた。

 

 

 

 

白騎士を駆る織斑千冬は目の前にいた戦闘機の機首部分と胴体部分を切り離した。

次に機銃を撃ちながら突っ込んでくるF/A-18E戦闘機のインテークの中に雪片を突っ込ませてエンジンを破壊すると一気に引き抜いて左に回転して避けた。

戦闘機はエンジン部分から火を吹きながら降下して、パイロットが脱出すると爆発した。

 

「しかし数が多いな。」

 

すると横から飛来してきたAAMー9を蹴り上げその先にいる編隊に突っ込み、瞬く間に十二機の戦闘機を無力化した。

見渡すと煙を吐いて落ちていく戦闘機の姿しかいなかった。

 

《ちーちゃん仕事速いねっ。たった五分で四十機の戦闘機を撃墜したよ。》

 

「そうだな、だが・・・。」

 

そこまで言うと一気に上昇して下に向けて大型荷電粒子砲を連続発射する。

下から上昇してきた数十発のSM-2を撃墜し、接近されるとアクロバティックな機動で避けた。

 

「まだ艦隊が残っている。しかし死人を一切出さないというのはきついもんだぞ。」

 

《そうだよ、でも出来るだけ日本艦は損傷を少なくしてね。》

 

「わかった、まずは巣を潰そう。」

 

織斑は一気に降下して海面ギリギリをマッハ3で飛行してレーダーから身を隠した。

すぐに第七艦隊を見つけるとそのままジョージ・ワシントンに高速で近づく。

接近してレーダーに再探知できた全艦隊は一斉に対空攻撃を仕掛けるがすべてをかわされる。

ジョージ・ワシントンの十mまで近くと一気に上昇して飛行甲板の真上に出た。

CIWSが砲身が高速回転して20mm徹甲弾を送り込むがシールドで防ぎ、大型荷電粒子砲をチャージして最大出力で艦首に向けて発射した。

ビームはカタパルトと飛行甲板を溶かして艦内を貫通して艦底に大穴を空けた。

そこから艦内に膨大な海水が流れ込んだが水密扉を塞いでいたことが幸いしてゆっくりと浸水していった。

それらも織斑の考えた計算の内だった。

すぐに左舷側を航行している駆逐艦『ステザム』に飛び込みCIWSのレーダードームを切り裂き、イージス艦の特徴である四面のSPY-1レーダーを破壊して戦闘能力を奪った。

最後に大型荷電粒子砲を撃ち込んで機関室を破壊して、これも艦底に穴を破壊して浸水させた。

次に撃破した駆逐艦の後方を航行していた横腹を見せた巡洋艦『カウペンス』に突っ込み雪片を展開させて艦の真上で一回転した。

すると真っ二つに切られ、真中から浸水して行った。

このような攻撃を繰り返して第七艦隊をすべて撃破するとEU艦隊に飛び込んだ。

アメリカの力の象徴だったジョージ・ワシントンは艦首から沈み艦尾を上げて巨大なスクリューを見せて沈没する様子を大量に漂う救命ボートの上で五千人以上の米海軍将兵が見ていた。

 

「おい、俺たちのジョージ・ワシントンが沈むぞ。」

 

「空母だけじゃない。第七艦隊の駆逐艦も巡洋艦もすべて撃沈された、このままだと世界のパワーバランスが変わる。」

 

水兵の言葉にジョージ・ワシントンの艦長が答えると遠くで爆発音が聞こえた。

目を細めて見るとフランス国旗を掲げた駆逐艦が艦橋の上にあるマストやレーダードームを一直線に消されるといつもの通り白騎士は刀を機関室に突き刺した。

 

「フランス海軍駆逐艦『カサール』大破!あ・・・EU艦隊旗艦イタリア海軍の空母『カヴール』もやられました!」

 

空母『カヴール』は飛行甲板を切り裂かれ、格納庫が露出して離着艦不能になった。

 

「俺達よりはマシだ、船を沈められるよりは。」

 

「艦長、あとこの海域で生き残っているのは日本海軍だけですね。」

 

「あの敷き詰められた対空火器が効果を発揮できるかだな。俺は寝る、少尉あとは任せた。」

 

艦長はその場で横たわって寝てしまった。

 

 

 

 

松本司令官は目の前で起きていることに驚いていた。

IS『白騎士』の強大な戦闘力の前に第七艦隊とEU艦隊は敗れ去りすべての艦艇が沈没するのは時間の問題だった。

 

《こちら戦闘指揮所、ロシア艦隊と中国艦隊が海域から離脱します!》

 

艦橋にある対水上レーダーがふたつの艦隊が離れていくのがわかった。

乗組員の顔には不安の表情が見えた。

 

「我が艦の対空火器の数を見ろ、撃墜は出来なくても接近させずに済むだろう。」

 

司令官は中にいた乗組員の不安を和らげるために言った。

戦闘指揮所では高柳艦長が対水上レーダーの画面を見ていると、EU艦隊を表す光点が消えて日本艦隊以外の光点が消えてしまった。

 

「EU艦隊フリゲート『アルミランテ・ファン・デ・ボルボン』をロスト、EU艦隊の艦艇すべてが撃沈された模様。」

 

対空レーダーに目を映すと白騎士を表す光点が高速で戦艦『信濃』に向かって来た。

 

「敵機が高速で突っ込んできます!」

 

「落ち着け!すぐにESSMを発射、次に主砲を発射しろ!」

 

「了解!VLS三十番から五十番ESSM発射用意!」

 

「左舷砲戦用意!弾種、零式通常弾を装填!」

 

45口径46cm三連装砲三基が左舷にゆっくりと回転して白騎士に向ける。

 

「久しぶりに砲撃するのか、ゾクゾクするな。」

 

松本司令官は前甲板にある主砲二基が回転しているのを見ながら耳を塞いだ。

 

「ESSM、発射準備完了!」

 

「主砲発射準備完了!」

 

「ESSM発射!続けて主砲発射!」

 

左舷のVLSから二十発の発展型スタンダードミサイルが飛び出ると、砲撃を知らせる警報が鳴り響いた。

すると九門の砲口が一斉射撃を行い、白騎士の傍で零式通常弾の信管が作動して爆発して破片を撒き散らした。

艦砲射撃の影響で大量の煙が艦橋を覆う。

 

「やったのか?」

 

一人の乗組員が言ったが、左舷側の127mm速射砲五基の砲撃で白騎士がいることを伝えた。

 

「艦隊を二つも潰した兵器が簡単にはやられないだろう。」

 

松本司令官が乗組員に向かって言うと左舷側CIWS群が作動して20mm徹甲弾を発射した。

対空レーダーには距離二百mで光点が動かなくなった。

 

「火力拘束できたか、すぐに砲弾を装填しろ!」

 

「艦長!この距離では我々にも被害が・・・。」

 

「馬鹿野郎!あいつにダメージを与えるにはこちらも覚悟しなければならないんだ!」

 

「発射準備完了!」

 

砲雷長の反対を押し切って艦長は命令した。

 

「撃て!」

 

発射された零式通常弾は信濃側近で炸裂して、白騎士と信濃にダメージを与えた。

爆風が巨大な信濃の船体を傾け、破片などが各部に被害をもたらした。

艦橋にも炸裂した零式通常弾の爆風と破片が飛び込み、ガラス片ごと艦橋にいた乗組員が負傷した。

 

「高柳艦長は無茶しよるわ~。」

 

松本司令官もガラス片が腕や上半身などに刺さって、出血していた。

すぐに乗組員が傍に寄って来るが、司令官は自力で立ち上がって言った。

 

「司令官がここで倒れてどうする、最後まで作戦を見届けるのが任務だ。」

 

戦闘指揮所には各部署から被害報告が上がっていた。

 

「左舷CIWS群四番五番が破損、射撃不能!」

 

「SPY-1レーダー左舷側が破損!」

 

「被害報告はいい!白騎士はどうなった!」

 

「・・・白騎士が離れていきます!汎用駆逐艦『高波』に接近!」

 

砲撃を受けた白騎士は信濃の無力化を諦めて、駆逐艦に向かって行った。

砲身が叩ききられたり、射撃管制装置を破壊されて戦闘不能にされたが機関は破壊されずに一時間に及ぶ戦闘は白騎士が消え去ったと同時に戦闘は終了した。

海面には一万人を超す生存者が救命ボートや破片に捕まって漂っていた。

 

「艦長、すぐに救命活動を。あと琉球国海上自衛隊に救助要請を出してくれ。」

 

「了解しました。」

 

その後、琉球に残っていた米海軍や琉球国海上自衛隊と海上保安庁と共同で救助を行った。

 

 

 

 

直井首相は首相官邸の危機管理センターで閣僚と共に海戦の結果を待っていた。

するとドアを開けて職員が入ってきて、小走りで国防大臣に耳打ちするように小声でいいメモを渡した。

 

「首相、中央指揮所にIS迎撃派遣艦隊から戦闘が終結したと報告が入りました。」

 

「そうか、どのような結果だ?」

 

「一時間の戦闘で第七艦隊及びEU艦隊の全艦艇が撃沈、派遣艦隊は戦艦信濃が小破、それ以外の艦艇が戦闘不能ですが航行可能です。現在琉球国と在琉米軍と共同で救助活動中とのことです。」

 

「中国艦隊とロシア艦隊は?」

 

「第七艦隊が撃破された時点で戦闘海域を離脱したと。」

 

「賢明な判断だ、我々はなんとか生き残ったがアメリカやEUは大変なことになっているだろう。」

 

その後、マスコミの前に篠ノ之束が出て来て勝利宣言を出した。

そしてISの紹介をして注目させた後、日本にコアを二十個提供することを伝えた。

これは束の戦略でコアを手にした日本に絶対海外からの圧力が加わり、日本が技術を流失しなければならない事態になると。

アメリカは第七艦隊全艦艇が撃沈された映像が世界中に流れ、米国債が大量に売られる事態になった。

またISの性能が世界に知られるとアメリカの主要航空機メーカーの株が大量に売られた。

このため大きな投資銀行が潰れる寸前まで陥ることになった。

ホワイトハウスではそれらの対策を進める過程で、IS技術をアメリカが持てば希望があるのではないかと考えられた。

それを考え逸早く実行に移した国があった。

 

 

 

【後書き】

 

次話でIS学園警備大隊の創設することになった事件を扱おうと思います。


 
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