7月3日
三国会議にて一刀様より『青少年保護育成法』の制定の御提案があった。
およその趣旨の御説明のあと、「前回の展示会はマジでやばかった…次は自信無いんだよ、頼むから俺を助けると思って!」と切羽詰った御声で制定をお求めになられた。
各国王はあまり乗り気でない御様子であったが、最終的には「そうねぇ、私達としても別に嫌っていう訳じゃないんだけど…まあ出来る範囲でね、制定に向けて前向きに善処するわ」と御承諾なさった。
7月5日
子丹御嬢様が、総務部に来て以来親しくなった士載の吃音が以前よりも悪化しているように思ったので華陀殿に診せてみたところ、心因性のものであり彼女の場合精神環境の改善により良くなる可能性があると聞いたという。
彼女の症状の改善に出来ることがあれば私もしたいと申し出たが、士季と相談して一度「偽薬効果」というものを試す事としたとのことだ。
士載は優秀だ。吃音を克服していま少し自信を持てば良い官吏、あるいは良い政治家となれるかもしれない。
…士季も負けず劣らず優秀なのだが、何故か『良い』官吏や『良い』政治家という表現がしっくりこない。
7月8日
士載に折り入って相談がと頼まれ、個室で話を聞くことにしたところ暫く恥ずかしげに躊躇っていたが、『吃音を直す方法が見つかったかも知れない』と言う。それは非常に喜ばしい事なのでどのような方法なのかと聞いたところ、一刀様のその…玉露を飲む事だと聞かされ仰天した。
そもそもの発案はなんと子丹御嬢様で、一刀様の天の国の御力で効果があるかも知れないので自身の御伽の日に一滴取り分けて(一体どうやってなのかとは思ったが)与えるので服用してみてはどうか、元よりお慕いしているとは聞いており嫌ではないだろうから駄目元で試しては、と士載に提案したそうだ。
士載としては恥ずかしくはあるが否やはなく、一滴頂いてみた所それ以降は心の持ちようが変わり、なんと以前より若干滑らかに言葉が出るようになった。そこで御嬢様にお礼を申し上げたところ、
「それならもう一刀様に呼んで頂いて、直飲みさせてもらうしかありませんね…貴女さえ良ければ一刀様に私からも頼みますが、それで良いですか?」
と言われ、動揺のあまり少し考えさせて下さいと言って辞してきたのだと言う。更に私に相談する前に親しい友人である士季と姜維に話したところ、いずれもお願いするべきと答えた上、加えて士季は『効果を確実にする為には本来頂くべきところにも注いで頂き、かつ世の中には座薬と言うものもあるわけなのでそれ相応の箇所にも頂くべき』と付け加えたとの事だ。
暫く考えて、一刀様の御迷惑でなければお願いしてみてはどうか、加えて華陀殿の御意見も伺ってみてはと助言し、士載も得心したようだった。
7月10日
末の妹の幼達が、間もなく月様の下での体験学習期限を迎える恵達と雅達に代わり、自分も体験学習に行きたいと言い出した。秋季から合同塾の年少学級に入学する事を思えば未だ時期尚早であろうと答えたが、幼達にしては珍しく暫く食い下がってきた。
恵達と雅達に幼達の話をしたところ、「先日の展示会で璃々殿に大きく水をあけられている事を聞き、焦りがあるのでしょう」という。かなりの間璃々嬢とはお会いしていないが、今はどれくらいの姿になられたかと聞くと二人とも黙ってしまった。重ねて聞くと、恵達が「彼女は進境著しく、破竹の勢いで成長されています。身長こそ我等よりも一段低いですが胸囲は流石に血筋と言うべきか既に顕達姉様に匹敵し、髪も下ろしいまや童女などではなく少女の風で、正に膨らみかけた蕾と言うべきでしょう。
しかも幼少の頃より大人達に混じって暮らしていた所為か精神年齢が我等並みに高く、状況を瞬時に判断して己の年齢を使い分ける賢さをも持ち合わせております。呉の呂蒙殿の成長躍進がいかばかりであったかは存じませんが、蜀下の阿璃に非ずと言う言葉こそ彼女に相応しいものと思います。風の噂によりますれば、孫尚香様は既に彼女を強く警戒しており『私と一刀がいずれ造る愛の巣を壊す者があるとすれば、それはきっと黄忠の娘ね』と語ったと聞き及んでおります」と答えた。
士季らを見て後世畏るべしと思っていたが、それどころでない下からの攻勢に総毛立つ
思いだ。謙虚に分析の出来る恵達は良い官吏となれるだろう、運が良ければ一刀様の御目にもとまることだろうと助言した。
7月11日
一刀様の御入浴にあたって御背中を流させて頂いた。
…例の水着を着てだ。
裸よりも恥ずかしい気がするのは何故だろうか。しかし一刀様は可愛いといって下さった。
…お言葉のみでなく態度でも強く深く、何度もお示しして下さった、身体の奥底から一刀様の御愛情が染み渡るようで幸せすぎて死にそうだ。
湯の中で抱かれたまま、どんな(下着を着けた)なら御喜び頂けるでしょうかと伺ったところ、仲達さんは美人さんだからなんでも似合うと思うけどと仰って下さった後少し考えられ、仲達さんが『ちょっと恥ずかしいけど見られて嬉しいって思うもの』かなと言われた。
陶然としてしまって頭の螺子が外れてしまっていたせいか、『はい、これからは一刀様に見られて恥ずかしくて嬉しいものを着けるように致します』と答えた自分が正気に返った今は悶絶するほど恥ずかしい。
どうしたものか…
7月17日
『青少年保護育成法』の法令草案が作成され、張勲殿の法令精査結果の報告が回ってきた。
「法施行前に後宮入りしてる娘は適用外とする必要があると思います。主に美羽様とか。ただ施行前の駆け込みの嵐を一刀さんがどうさばくか要覚悟ですね」
「最終条の『第十七条 但し、本法適用の例外については各国の施行令にて定める』ってありますけどこれってつまりザル法じゃないですか?」
とあった。稟様に御報告したところ、
「…各国毎に適正に運用されれば良いのではないですか。この件はあまり深く突き詰める必要はありません、政治の世界には色々あるので」
と疲れた表情で仰った。
7月20日
一刀様の至急のお召しの為にお部屋に伺うと、一刀様と子丹御嬢様が既にいらしていた。どのような御用向きか伺うと、士載の件だという。
「今、華陀に確認とったけどさ…方法がアレっていうのはどうにかならない?華陀の話じゃ、ある意味それじゃなくたって薬だって言えばなんだっていい訳でしょ?」
と一刀様が仰り、
「既に『それ』が薬であると彼女に伝えてしまっておりますから、今更それ以外というのは難しいかと…それに士載は一刀様をお慕いすること一通りでない事は一刀様だってご存知でしょう?汝南から中央に抜擢される原因を作ったのも、また退官を引き止めたのも一刀様なのですからここは一つ責任を取って下さいませ」
「…ちょっと変態ぽいけど、例えば唾液とかで…」
「士載は士季とは対照的に気弱な娘ですので、一刀様に『飲ます価値無し』と評価されたと彼女は判断すると思います。退官くらいで済めば良いですが自暴自棄になって娼婦に身を落としたり人生に絶望して最悪、自殺してしまうかもしれませんね…蜀の諸葛均さん、今はお元気ですか?」
等と子丹御嬢様とやり取りをされていたが、
「仲達さん、どう思う…?」
と聞かれ、既に効果は明白と思いますし本人も望んでおりますので何卒御慈悲、御情けを士載に賜りたくと申し上げると、仲達さんはそうだよねぇ…と仰り、暫くして
「分かった、日取りの調整とかは楓(子丹御嬢様の真名だ)と仲達さんに任せるから、ただ『ヤれば絶対治る』みたいな過剰な期待は彼女にさせないで」
と仰った。御嬢様は満面の笑みとともに有難う御座いますと述べ、二人でお部屋を辞した。
お部屋を離れたところで、
「仲達知ってた?一刀様のあれ、滋養強壮にも良いのよ」
と御嬢様に言われ、
「ああ、やはり…実は私も御伽の翌日は妙に元気が出るので不思議には思っていました、ではこれからは風邪の者は一刀様に戴きにあがる様皆に伝えるように致しましょうか」
と答えると、
「…本当に、仲達につける薬は無いわねぇ。本当は士載と貴女以外には効かないから、皆には言わなくて良いわよ」
と生温かく微笑まれた。
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その後の、とある文官の日記です。