明日は天の国の行事で「くりすます」、という日で、今夜は聖夜というらしい。
元は羅馬の宗教行事で寺院等で祈りを捧げる日であったが、一刀様の国へ伝来するに転じて「さんたくろーす」なる白髪白髯赤服の老仙が童達に玩具等の贈り物を配り歩く、仲の良い者達で宴会を行う、恋人達が共に過ごす夜となっているそうだ。
寵姫達にとっては三点目が重要でありいずれも一刀様と共に過ごさんとしたが当然に折り合いがつくはずもなく、結局不可侵協定により第二義に沿って深夜までは宴会、その後第一義の「さんたくろーす」に一刀様が扮して見知りの子女に贈り物等を下賜戴き、その夜は夜伽は無しとして夜這い防止の為に配置された警備部の警備の下お休み戴くこととなった。
王都の子女は璃々嬢、幼達他数名とのことだった。六女、七女の恵達と雅達は『(年齢上限で)足切りされました』と憮然としており、夏の展示会の『璃』の室の少女達は殆ど同様の取り扱いとなっていたらしい。
恵達ら曰くは『ここ一連の年少の者の動きは璃々殿に主導権を執られているように思います、今回も璃々殿が足切りの線を引かれた節があります』と言うが、私の記憶の中の璃々嬢は正に子供そのものでとてもそのような策謀をめぐらすとは思われなかった。
また予め所望するものを申告する事となっていたが、伯達姉様によると『戴きたい物は御座いません、枕元靴下内に御用意致しました手紙をお読み、お持ち帰り頂ければ結構です』と幼達は言ったという。
未だ年も年であるし、値の張るもので無ければお願いしても良いのではと思ったが、一刀様に御負担をかけない心がけは殊勝であるので特に意見はしなかった。
「くりすます」当日は幼達の手配もある為、伯達姉様と叔達、季達、顕達に宴会に出席してもらい、私は辞退させて頂いた。
一刀様の御来宅予定のおよそ半刻前となったので屋敷の入り口でお待ちしたところ、雪が降ってきた。一刀様のお話では聖夜の雪は風雅とするという、厚着もしているので特に苦も無くお待ちし始めたところ
大分時間が早いにも拘らず直ぐに門を叩く音がしたので慌てて閂を開け門を開いたところ、『うわ、本当に仲達さんいた!半刻前行動って本当なんだね』と言いながら一刀様が御姿を見せた。
屋敷内に請じ入れると仲達さん頭積もってるよと言いながら頭の雪を払い落として下さり、御案内しようとしたところ背後からすみませんが私達も警備の為ついて行かせて下さい、と凪の声がした。士季が一刀様に聞こえぬように
「一刀様だけだと思いました?残念、警備の士季ちゃんと凪さんでした!
ひょっとしたらお泊りされるかもとか思いました?ねえ思いました?下着とか替えちゃいました?」
と冷やかしてきた為凪には茶を、士季には冷水を馳走した。
一刀様を幼達の寝室に静かにご案内し、幼達の手紙を御読み戴いた所暫くお考えになりながら御顔を顰められ、『これ…どういう意味だと思う?』と手紙を見せられながら聞かれた。
『然るべき時に一刀様の誠意を所望致します』
また手紙の下方は妙に空けられており、正直なところ私も意図が読めなったが幼達は予め『戴きたい物は無い』と申しておったはずなので、このお手紙を御受け取り頂くだけで宜しいのではないでしょうかと意見させて頂いた。
一刀様は御諒解され、『よくわかんないけど、意外とこんなのがすごく高くついたりしてね』と冗談を仰りながら手紙を懐に寝室を出られた。
宴会の御様子を伺ったところ、宮中では例の近親☆上等姉妹が宴会終盤に乱入し
『我等も子供です!「ぷれぜんと」に一刀様の熱々濃厚こってりなやつを所望します!』
『いやいやいつも御仕事でお疲れの一刀様に私自身をこの性夜に「ぷれぜんと」致します、この帯を寝台で解いて下さいませ!』
等と言って一刀様に抱きつこうとしたが関羽殿その他に笑顔のまま簀巻きにされてあっさり放り出されたという。
屋敷を出られる間際に一刀様が『ああそうだ、市販のものだけど。仲達さんの綺麗な銀髪がいつまでも綺麗でいますように』と仰いながら竹細工の櫛を下さった、またしても私の名が彫られている!
みんなにも何かしらあげてるから気にしないで受け取ってとの事で有難く頂戴することとし、お見送りしようとしたところ士季が
『一刀様の御手が外回りで冷たくなってますから暖めて差し上げて下さいよ、仲達様は気が利かないですね!
行きがけは凪さんが自分のおっぱいに挟んでちゃんと暖めてましたよ?ほら私達外で待ってますからちゃちゃっとやって下さいよ、
あ、一刀様に伺ったりしたら絶対御遠慮されるから有無を言わさずとっととやって下さいね、それが気が利く臣ってもんですよ!』
と言い出し、凪とさっさと外に出てしまった。
まあ、何と言うか…人並みよりは大きい方だとは思ってはいたが、無駄な飾りとかでなく、一刀様の為になる使い道があって良かった、と思う。
びっくりしたけど暖かくなった、有難うと仰って出て行かれる一刀様をお見送りした。御手は冷たかった筈なのになぜか体は熱くなってしまった。
この次は黄忠殿の屋敷を訪問し御帰宅なさるとのことだった。とても良い年の瀬、『くりすます』だ。
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翌日夕食の時に士季が
「璃々ちゃんてあの娘、幾つでしたっけ?昨夜黄忠さんに凪さんと部屋の前で締め出されちゃいまして、一刀様が部屋から出てきたらなんか女の匂いがしてまして、ヤッちゃいなさそうだったのですがちょっと気になったんで彼女を今日見てみたんですが…あのエロ心を擽りそうな童顔と身長であのおっぱいやばいですね、来年は私も追いつかれるかもしんないですよ。
まあ一刀様はでかきゃいいって方でもないからいいですけど。しかしあれですよ、孫尚香だけ押さえておきゃいいだろうとか思ってましたがちょっと甘かったかもしれませんね、今の人たちが引退した後は下手すりゃあの娘に腰の上独り占めされかねないですね」
と呟くと六女、七女、八女の恵達、雅達、幼達が箸を取り落とした。
「…いえ、私達の方が年は上なわけですから。当然に先と決まっております」
「あ、あの透かしは李典様特製で、浮き上がる時を待って証文を示すだけでなんら問題は」
などと言いながら箸を拾っていたが、なぜかその後の食事は妙に殺伐とした雰囲気であった。
尚後日、凪に一刀様の御手を暖めた件を流石凪です私は士季に言われて漸く気づいて御暖めした、忠臣とは貴女のような方を指す言葉だと褒めたところ、赤くなってそのようなことはしていないという。
経緯を理解し士季を吊るそうとしたが私だって体が暖かけりゃ私のでやりましたよ、一刀様だって有難うって言ってたんだからいいじゃないですかあの日乳揉みしてもらったの仲達様だけですよなどと言う。
今回は特別に説教にとどめることとした。
また最近鏡台に向かって髪を梳く時間が増え妹達に早く退く様急かされる事が増えてしまった。
気持ちの引き締めが必要と思い、食事のときに他の姉妹達にも
『一刀様をお慕いする事は良いがそれにかまけて他への注意を散漫にすることの無いように』
と指導すると士載のみが深く頷き、他は一様に無言で私の顔を見ていた。
何故だろうか。
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その後の、とある文官のクリスマスの日記です。
外伝でリクを頂いたのですが、日記になってしまったので一応本編とさせて頂きました。