昼下がりの空の下、病床に伏せていたフリシンは杖を突きながらイルーネと一緒にゲルテナ館が開催されている美術館へ向かった。ゲルテナ展へ向かった理由は、暇つぶしに読んでいた雑誌にゲルテナ展の特集が書かれていて、彼は絵画などには興味が無かったが、ゲルテナの描いた絵画に何故か心を奪われ行きたくなったのだ。
「着いたわ」
車を運転していたイルーネは目的の場所にたどり着くと、パーキングエリアの駐車場に車を停めて、エンジンを切った後、後部座席にいるフリシンの手を取って支えてあげた。
「ありがとう」
フリシンは彼女に感謝を述べ、杖を地面に突いて身体を支えた。イルーネは車の扉に鍵を掛け、彼の隣りまで動いた。
「大丈夫?」
「あぁ、大丈夫」
フリシンは笑顔で彼女の顔を見つめる。彼女は顔を真っ赤にしながら慌てて急かした。
「へ、平気なら良かったわ! さあ、それでは行きましょうか!」
「行くのはいいが、私を置いてかないでくれよ」
彼女は自分が先にどんどん進んでいるのに気づき、慌てて彼の元に戻り、手を取ってゆっくり歩き出す。フリシンは彼女の慌てている姿を見て笑いを堪えるのに必死だった。
歩いてから5分弱、フリシンとイルーネの視界に美術館の壮観な建物が目に入ってきた。美術館の入口に老若男女問わず沢山の人達が出入りしており、活気の良さが伺えた。
フリシン達も美術館の中に入り、そして、中は比較的広く、清潔さと荘厳な雰囲気が周りを満たしていて、人が多いにも関わらず非常に静かだった。受付には既に人が沢山並んでおり、今から並ぶのは時間が掛かりそうだった。
「フリシン先に行ってて? 私が受付をしているから」
「いや、私も待とう」
「ダメよ……この人の量だと三十分は掛かると思うし、それに長くはここに居られないしね……」
彼女の言い分に彼は反論する術が無く、彼女の好意に甘えることにした。
「ありがとう、先に見に行ってくるよ」
「えぇ! 楽しんでおいで!」
フリシンはイルーネと別れ、受付から見えていた一階の絵画を見ることにした。
「まさか地面に描かれているとは……どうやったんだ?」
柵に囲まれた床を見ていると、青をベースにした海の中の生物を描いている絵画をフリシンは見つけ、感動した。題名は『深海の世』と書かれており、その絵の説明も書かれていた。
「後ろには巨大な絵画が」
振り向いた彼は、その壁に立て掛けられている大きな絵画『悪意なき地獄』を見て驚いた。一体ここまでの絵を書くのにどのような努力が要るのだろうか……
「そういえばパンフレットもらったね」
フリシンはパンフレットを広げて自分が大広間に居るのを確認する。そして、まだ一階の通路には他の作品があるみたいだが、先に二階に行ってみようと思った。何故なら、雑誌に特集としていた絵画の世界というタイトルの絵画が二階に設置されているみたいだからだ。
フリシンは受付まで戻り二階へ上る。二階はいきなり絵画とは違う作品が展示されていて、興味を引いた。首のないマネキンで題名は『無個性』と書かれており、フリシンは何故『無個性』というタイトルなのか気になったが、考えている間に門限が来てしまうので、すぐに目的の作品の場所へと足を運んだ。
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多分改稿予定。