第百六十七技 戦後報告
クラインSide
カノンの過去を聞いた俺は愕然とした。正直、あまりにも重すぎる内容だ。
けどよ、カノンはそれを八年間もの間背負い続けてたんだ。
多分だけど、いつもそれを胸ん中にしまっていたんだろうな。
平和に生きてきた俺にとっちゃ、なんでこんな女の子にって思わず神様を恨んじまったよ。
ホントに情けねぇ、言葉一つ掛けてやることができねぇ自分が…。
デモント、鬼船の奴はこれでお終いだとかほざきやがったけどよ…俺が、そんなことさせねぇよ。
俺はそう考えて、少し前を歩くカノンの後を追いかけた。
クラインSide Out
キリトSide
討伐戦が終わった。
戦闘が行われた場所には最早敵の姿はなく、各自回復の為に回復結晶を使ったり、ポーションの類を飲んでいる。
そこに、シャインとティアさんが戻ってきた。
しかし、カノンさんと彼女を追いかけたクラインの姿が見えない。
「カノンさんとクラインは?」
「二人とも無事です。少しと遅れてくると思いますけど」
ティアさんからそれを聞いて、風林火山のメンバーはホッとしており、アスナやエギルも笑みを浮かべる。
だが、俺達黒衣衆はシャインの様子がいつもと違うのに気付いた。
俺はシャインに近づき、皆に聞こえないように話しかける。
「シャイン、何があった…?」
「……カノンがデモントを殺した、けど…それをクラインが見ちまったかもしれない」
「っ……じゃあ二人は…」
「多分、話してると思うぜ…」
「そうか…」
おそらくカノンさんは相当なショックを受けているだろうな。
彼女はクラインの事が…。そう思考していると…、
「リーダー!」
「カノンさんもいるぜ!」
クラインとカノンさんが戻ってきたようで、風林火山のメンバーが二人に気付いたようだ。
カノンさんは笑顔を浮かべているものの、どこか空元気のようなものを感じる。
クラインの方はというと、空気が引き締まっているような感じだ。まぁ、皆気付いていないだろうけど…。
「カノンさん、無事で良かったです」
「ありがとう、アスナちゃん」
「あまり心配をかけるなよ…」
「大丈夫だって~」
アスナはカノンさんに、エギルはクラインに声を掛ける。
二人はいつも通りに振る舞っているが俺達の目は誤魔化せない。
特にカノンさんは無理をしている。そこにシンカーさんが歩み寄ってきた。
「皆さん、無事で良かった。それでいきなりなんですが、集まってもらっていいですか?
各自の報告とかを行いますから」
「分かりました……行こう、みんな」
俺達は一同に集まることにした。
討伐戦に参加したプレイヤー達が集合した。そこでヒースクリフが口を開いた。
「まずはこの討伐戦で亡くなった二人のプレイヤーに冥福を祈ろう……黙祷…」
今回の討伐戦によって味方側から二人の死者がでた。
『MTD』のメンバーと最近攻略組に参戦したばかりのプレイヤーである、二人が戦死したのだ。
俺達は目を瞑り、黙祷を捧げた。少しして目を開けてから再びヒースクリフが口を開いた。
「不謹慎で申し訳ないが、報告に移ろう…。
まず今回の戦いでジョニー・ブラック、並びにほとんどの『
そして、敵側にも三人の死者が出た。
この討伐戦でカーソルがオレンジになってしまった者には、シンカー君から提案があるそうだ」
ヒースクリフに促されてシンカーが前に出た。
「カーソルがオレンジになってしまった方は、カルマ回復イベントを受けないといけません。
そのイベントですが、俺達MTDが最大限に協力したいと思います。
元々は俺達の怠慢が奴らを好き放題にさせてしまった原因ですから…。
そういうわけで、協力を願いたい人は言ってください」
なるほど、シンカーさんは自分達にも多少の責務があると思っているのか。
まぁ、元軍の横暴や怠慢が原因というのは少しはあるかもしれないな…。
それなら、俺も自分の分は話さなければならないな。
「次は俺から……すまない、PoHを逃がしてしまった」
俺はそう言って頭を下げた。
「キ、キリトさん!? 頭を上げてください!?」
「そうだぞ、こればかりは仕方が無いことだ。
キミで捕まえられなかったというのなら、ここに居る全員でも無理だったということだ」
「だが……」
「気にするなよ。どのみち、この戦いに強制的に参加させちまったようなもんだ。
大人の俺達が出来なかったことを、責めようなんて思わないさ」
「そうだぜ」
恐縮するように言ったシンカーさん。ウェルガーや他のプレイヤーからも気にするなと言われた。
「分かった、ありがとう…」
俺は一礼して一歩下がった。すると今度はシャインが前に出た。
「んじゃ、今度は俺だな。
気付いた奴もいると思うが、俺とティア、カノンとギルド『風林火山』のリーダーであるクラインの四人は、
デモントを追って森に入った。そこで俺達は『嘆きの狩人』と思われる人物と遭遇した」
それを聞き、驚くプレイヤー達。シャインはそのまま話しを続ける。
「黒いローブを被り、少しだけ見えた顔の部分は仮面で覆っていた。
まず間違いないと思う。それでソイツは、俺達の目の前でデモントを殺した」
「マ、マジか!?」
「ああ。武器は細剣だったから『
それを聞いて周囲に動揺が奔るが、それもすぐに納まった。
「……取り敢えず、今回は良しとしておきましょうよ。彼らはこちらには被害を加えませんし…」
「それもそうだな」
「ふむ、それでは他に何かないかな?……よし、皆今夜はご苦労様。
各自、ゆっくりと休んでくれ。77層の攻略は明後日くらいから再開しよう。
それでは、解散」
シンカーさんとウェルガーは無害と判断し、ヒースクリフの宣言によって解散することとなった。
こうして、『第二次ラフコフ討伐戦』は完全に幕を下ろした。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
さて・・・次回、ついにクラインの漢の一端を目撃することができると思います!
さらにその次は、クラカノのターン!
是非、お楽しみに♪
では・・・。
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第百六十七話です。
今回で「ラフコフ討伐戦」という括りは終わりです。
どぞ・・・。