第百五十八技 加速する事態
キリトSide
結局、昨日のティアさんのジョニー・ブラックとの接触から得られるものはなかった。
戦力を集めているのは分かるが、いつ仕掛けてくるのかが予想できない。
一応、シンカーさん経由でザザからジョニーについての情報を得た、ということは各ギルドには伝わっている。
勿論、俺達が接触したということは知らせていない。
既に77層に至ってから五日が経っているが、攻略の目途は立たない。
やはり今回の一件を終えるまでは攻略を行うのは厳しいだろうな。
「情報、全然集まりそうもないね…」
「そうだな…。いまのところ、俺達が手に入れたものだけだから、余計にそう感じるんだろ」
呟くアスナに俺は答えた。彼女は頷くと、次いで訊ねてきた。
「そういえば、今日の新聞は読んだよね?」
「ああ。中層のプレイヤー達から不満の声が上がっているんだよな……そのせいで」
未だに警戒態勢が解かれず、自宅や宿に篭っているのが耐えられなくなってきたらしい。
まったく、このゲームが始まった時はほとんどの奴らが引きこもっていたくせに。
まぁ、今でもそういう奴らはいるらしいのだが…。
とにかく、そういうわけで既に何人ものプレイヤー達が街から出て、その結果…。
「奴らに捕まり処刑、か…」
今度は四人のプレイヤーがPoH達の手によって捕まり、
再び公開処刑さながらに写真に収められながら命を落としたようだ。
警告を無視したのだから自業自得とも言えるが、黙ってはいられないよな。
その時、メッセージが届いた、シンカーさんからだ。
「どうしたんだろ…?」
「なにか分かったのかもしれないな。とりあえず、読んでみよう」
届いたメッセージを開き、内容を読み、それに対して驚いた。
「こ、
「……分からない。だが、確認する必要はあるな…」
驚くアスナと内容を分析する俺。
メッセージに載っていた内容は二つあり、一つ目は俺達が驚いた内容のもので、
二つ目の内容はそれに関して攻略組に招集を呼びかけ、第二回『ラフコフ対策会議』を行うというものだ。
場所は前回と同じ75層『コリニア』にある闘技場、時間も同じで午後一時に行われるらしい。
俺とアスナは顔を見合わせてから頷き合った。
午後一時、75層『コリニア』の闘技場に、俺達は再び集まった。顔ぶれは前回と同じである。
「俺の呼びかけに集まっていただき、ありがとうございます。
内容はみなさんが既に連絡を受けた通りのことです。
情報屋から手に入れたもので、ラフコフの残党が集まっている場所を発見しました」
その言葉に、周囲に緊張が奔る。
そう、シンカーさんのメッセージに書かれていた一つ目の内容とはラフコフ残党、
つまりPoH達の居所がわかったことを伝えるものだったのだ。
いままで見つけることができなかった奴らの居所が分かったのだ、いやでも緊張するだろう。
「その情報は信頼できるものなのか?」
「微妙なところです。この情報を売ってきたのはアルゴさんなんですが…、彼女自身も怪しいと思っているようなんです」
「というと?」
「彼女の元にグリーンのプレイヤーから垂れ込みがあったそうなんですが、
そのプレイヤー自身も、他のプレイヤーから情報屋に伝えてほしいと言われたそうなんです」
ウェルガーの問いかけに答えたシンカーさんだったが、その回答に疑問を持ったヒースクリフが訊ね、
シンカーさんは再び答えた。
情報の信頼性としてはいまいち、ということか。
アルゴのことだから確かめてはいるはずだが、相手はあのPoH達だ。
アルゴも自分を悟られないようにする為に、派手には動けないだろうし…。
「その場所に偵察部隊を送った方が良いのではないか?」
「だが、偵察部隊だと少数になる。その場合、見つかれば場所を変えられるのは間違いないだろう。
加えて、偵察部隊を消される可能性もある」
ウェルガーの言うように偵察部隊を出して、本当に奴らがその場所に居るのかは確認した方が良いが、
ヒースクリフのいう事も最もだ。
犠牲を出したり、逃げられては元も子もない。
「それなら、その情報を提供したっていうプレイヤーに、
どんな奴から流すように言われたのか、聞いてみればいいんじゃないのか?」
「確かになぁ」
エギルが情報源を特定することを提案し、クラインがそれに賛成する。確かにエギルのいう通りだ、けれど…。
「そうはいかないだろうな。そいつ自身も情報を流すことを頼まれたのかもしれない。さらにその先も、な…」
「結果的には、姿を見せないで情報を寄こしたのかもしれねぇぜ」
俺とシャインが情報源の特定はおそらく不可能であることを口にした。
「ふむ、キリト君とシャイン君の言うことは最もだね。ということは、やはり…」
「この前のボス戦同様に偵察無しでの……討伐戦か…」
ヒースクリフが言ったあとに、ウェルガーが重々しくもそう言った。
さらにそのうえ、相手はモンスターではなく生きた人間だ。
中にはグリーンカーソルの信者もいるはず、戦い辛いなんてものじゃないよな。
闘技場に重い沈黙が流れる。けれどそれも、
「放っておくわけにもいかんな。俺達がやらなければなるまい」
「中層や下層のみんなも、不安に思っていますし…」
「やるしかないということだね」
ウェルガー、シンカーさん、ヒースクリフが賛同の意を述べていく。
「ケイタ、黒猫団は外れろよ。相手は
「リズやシリカちゃんのこと、お願いね」
「はい、分かりました」
シャインとアスナの言葉を聞いてか、ケイタは黒猫団の参加を断念したようだ。
「こういうのは、大人の義務だからな」
「その通りだ」
クラインとエギルも決意をしたようである、そして俺も…。
「決着をつけようぜ、『
俺の両隣りにいるアスナとシャイン、集まったプレイヤー達が頷く。
ここに、『第二次ラフコフ討伐戦』が決まった。決行は明日の深夜、日付が変わる時だ。
キリトSide Out
???Side
俺は集まっている殺し好きな奴らを眺めている。数は三十と少しってところか…。
そこに、一人のオレンジプレイヤーが近づいてきた。
「どうやら奴等が討伐隊を編成したらしいぜ」
「ようやくshowが始まるのか…で、来るのはいつだ?」
「明日の深夜十二時、早い話し日付が変わった瞬間だな…。雑魚共には教えるのか?」
「まさか……今回のテーマは『終幕』だ。集まった奴等にはワリィがな」
「くっくっくっ。えげつねぇよ、アンタ」
「お前には言われたくないな」
「それもそうだ」
ああ、楽しみだ。今度こそ、お前の大事なモンと共に、血祭りにあげてやりてぇよ、キリト…。
???Side Out
To be continued……
後書きです。
ついに決定した『第二次ラフコフ討伐戦』、荒れますよ。
とはいいますが・・・実はそこまで大したものにはならないんです。
どちらかと言うと、予定している続編などへのフラグがありますね。
あとは・・・カノンとクラインの話しにも繋がります。
それでは、次回で・・・・・・。
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第百五十八話になります。
事態が急速に動いていきます。
どうぞ・・・。