No.516024

超次元ゲイムネプテューヌmk2 Reborn 第二十三話 断罪

更新遅れて申し訳ありません…。
ちなみにサムネイルの素材はこちらから拝借いたしました。http://www.purplemoon.jp/
http://skr.s7.xrea.com/9612/kreuz0706/
今までで1番執筆進みませんでした…。

2012-12-07 22:44:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1132   閲覧ユーザー数:1044

現在ラステイション

 

――ごめんなさい、ユニ…ネプテューヌ……。

 

自分に訪れる終わりを静かに受け入れるように、ブラックハートはゆっくりとそのまぶたを閉じた。

直後に自分を襲うであろう凄まじい衝撃にも、なんら恐怖は感じなかった。

代わりに彼女を支配していた1つの大きな感情……

 

――後悔

 

結局私は何も出来なかった。

差し伸べてくれたネプテューヌの手を振り払い、それに対しての謝罪の言葉一つ、言う事ができなかった。

……ある意味これは、自分への罰なのかもしれない。

そう、当然の報い。”死”をもっても償えない、私の罪への断罪。

原因を作ったのは全て私だ。

本当の気持ちを打ち明けられなかったのも、謝罪1つ言えなかったのも、全部私のちっぽけな自尊心と傷付くことを恐れる臆病さが招いた結果。

――そんなことは百も承知だったのに。

結局、最後の最後まで、私はネプテューヌを越えられなかった。

私には、あんな優しさを、あんな誠実さを持つ事なんて、不可能だった。

……これから死ぬって時に、何考えてるんだろう、私……。

もし、こんな事ができるなら……戻りたい。

あの時……あの場所……そして―――

 

 

――謝りたい…。

 

 

 

「ちょっと待ったあああぁぁぁぁあああああ!!」

「「!!?」」

 

勝負が決まろうとしていた2人の表情に同時に動揺の色が走った。

2人の頭上からラステイションの市街地に響く威勢の良い声は、その高さからして女性の物と思われた。

そして動揺の色を未だに隠せない2人にはハッキリと分かった。

その声が徐々に大きく、つまり声の主が自分達に近づいているという事に!

 

「てりゃあああぁぁぁあああああッ!!!」

 

刹那、その叫びと共にブレイブの頭が硬質な音を立てて大きく横に揺れた。

重力による加速を生かした女性の飛び蹴りがブレイブのこめかみを的確に捉えたのだ。

そしてこの距離になって初めて、ブラックハートの頭にある記憶の1ピースがその声を認識した。

――この声は!?

そう思ったとき、ブラックハートの脳裏に1人の女性の姿が浮かび上がった。

その女性はブレイブに叩き込んだ飛び蹴りの反動を生かして宙を舞うと、まるで鳥と錯覚するかのような軽やかな動きですぐ傍のビルの屋上に降り立った。

 

「悪を裁くは正義のヒーロー! 女神様の危機に即参上!」

 

ビルの屋上に仁王立ちしながら叫ぶその女性は、紅に染まった不気味な空をバックに首に巻いた赤のマフラーと特徴的な青いロングヘアーを風になびかせている。

胸元が広く開いたライダースーツを身にまとい、黄色のゴーグルを額に身につけ、ペンギンと思われるキャラクターの形をしたリュックを背負うその姿はどこか漫画やアニメに出てくる正義のヒーローのそれを思わせる。

ブレイブから目線を外し、その女性を凝視するブラックハートもやはりその姿に記憶の中にある彼女の姿を映しているのだろうか?

否、ブラックハートの視線は明らかに女性のある部分を捉えていた。

そう、もはや発育途上とすら言えない、まっ平らな胸を。

 

「ゲイムギョウ界の正義のヒーロー、日本一! 見参!! 女神様、加勢いたします!」

 

自分の名前を叫びながら、日本一はアニメの戦隊物でよくありそうな決めポーズを恥ずかし気も無く披露した。

 

「……。」

 

そんな日本一をブラックハートは冷ややかな目で見つめる他なかった。

窮地を救われたと分かっていても、何故かお礼の言葉ではなく、沈黙する以外に方法が浮かばなかった。

流れ始めたしらけきった空気にようやくそれを促した張本人が気付き始めた。

 

「……あれ? 私、何か変な事しました?」

「その恥ずかしい決めポーズに言葉を失ってるだけですの。全く、真正面から突っ込む事しか能がないんですの?」

 

そう毒づく幼さを感じさせる声はブラックハートの真下から上がった。

日本一と同じく、その声もブラックハートにとって聞き覚えのある声であった。

思わず視線を下に向けるブラックハートの目には、栗色の髪と同じ色の瞳を持ち、白い兎をモチーフにした帽子が特徴的な見かけ4、5歳ほどの少女の姿が映っていた。

 

「ムッ、恥ずかしくないよ! ヒーローのポーズは何時だってクールでカッコいいって言うのが世界の常識だよ!!」

「それは日本一の頭の中だけの常識ですの…。それより、良いんですの? 目の前のロボットみたいなのを放って置いて。」

 

少女、がすとは言いながら手袋をはめた右腕でブレイブを指差した。

がすとの言葉にハッ、と気付かされた2人はほぼ同時に視線をブレイブの方へと向けた。

先ほどまで力が入らなかった右腕に、ブラックハートは鞭を打って力を込め、自身の腕から流れた血で汚れた大剣の鞘を強く握る。

そしてその鋭い目がブレイブの今の姿を捉えた瞬間、2人の顔色が変わった。

 

「ぐがあッ! お、おのれ……この俺に、膝をつかせるとは…。」

 

ブレイブは片膝を地面に着きながら、顔を歪ませてブラックハートの方を睨みつけていた。

ブラックハートと日本一の強打をまともに受けたのだ。いかにブレイブがさる者と言えど、そのダメージの大きさは想像するに容易い。

肩で息をしながら膝を着き、両手で持つ大剣をゆらりゆらりと揺らすその姿は、限界が近い事を表すのには十分だった。

 

「ユニ! 今よ、トドメを!!」

 

考えるよりも先にブラックハートの視線は自分の後方に居るブラックシスターの方へと向いていた。

その声に反応したブラックシスターは震える手で銃剣の先をブレイブへと向けた。

銃剣の先には先ほど姉に言われてから溜めていた高密度エネルギーの塊が鋭い光を放っていた。

 

「ぅ……。」

 

だがブレイブを見つめる彼女の眼差しはその光の鋭さとは対称的だった。

慈愛さえも感じられる若々しい潤んだ瞳は、ぼやけたブレイブの姿のみをそこに映している。

銃口は既にブレイブへと向けられている。今のブレイブの状態ならば、ユニの人差し指1つでその身を焦がし、一筋の白煙に変えることなど造作も無いだろう。

そしてその事実を痛いほど承知しているからこそ、銃剣の引き金に添えられたユニの人差し指はその場で小刻みに震えるばかりだった。

 

「どうしたの!? 早く!!」

「で、でも……ブレイブは……。」

 

姉の叫びも、ユニの人差し指を動かす事はできなかった。

返答を濁らせるユニの声は、その銃口の向きすら不確かな物へと変えていた。

ユラユラと上下左右に揺れるエネルギーの塊が不規則な白光の筋を描いていたその時――

 

『……お前の誓いはそんなものだったのか?』

 

”声”が聞こえた。

一瞬、空耳かとも思った。だがそんな類の物じゃない。ハッキリとそれはユニの頭の中にのみ、凛とした声を響かせた。

聞こえるはずの無い、剛健な声。それが今のユニにどれ程の衝撃を与えたのかは、計り知れなかった。

 

「え? ……この声…。」

 

辛うじて搾り出したその声と共に、いつの間にか銃剣を持つ腕の震えも弱まっていた。

呂律が回らない頭を必死で整理しながらも、もはや目の前の標的(・・)に関しては一切考える事を止めていた。

”声”はかまわず続けた。

 

『子供達の娯楽を……未来を守るのではなかったのか?』

「と、当然よ! だって、約束したじゃない!!」

 

先ほどの弱々しい声からは想像もつかないほどハッキリとした口調でユニが返す。

その場に居合わせた3人からの不思議そうな視線も、今となってはどうでも良かった。

ずっと心の内にためていた思いを、ユニは”声”に向かって盛大にぶちまけたのだ。

それに答えるように、”声”は再びユニにだけその言葉を紡いだ。

 

『ならば、目の前の敵を倒せ。誓いを阻害する者は力ずくでも排除してみせろ!』

「力ずくで……。」

『そこにいるのは俺ではない。俺の形をした別のモノだ、ユニ!』

 

その”声”がユニの頭の中に響いたその瞬間、ユニの腕から完全に震えが消えた。

ユニは静かに視線を上げると前方を見定めた。

その時、ユニは初めて目の前のそれを標的として捉える事ができた。

もはやユニの心には一片の迷いもなくなった。

 

「……ごめん、ちょっと弱気になってたみたい。」

 

呟きながらユニは乱暴に右腕の袖で潤んだ目を拭った。

腕が退けられた後の瞳は一層輝きに満ちていた。

 

「そうよね。子供達のためにも、アンタとの約束のためにも、こんな所で立ち止まってられない!」

『その意気だ。行けッ!」

「はぁぁぁあああああああああッッ!!」

 

ユニは目線を上げるのとほぼ同時に銃剣の照準を標的のど真ん中に合わせた。

カチン、と引き金が静かに鳴る。

刹那、銃剣の先の高密度エネルギーの塊は轟音を上げ、周囲の空気を巻き込みながら白色の流れ星と化した。

同時に凄まじい反動がユニの体にのしかかるが、女神化しているユニにとってはバックユニットの出力を上げてしまえば事足りる。

標的は咄嗟に両手に持つ大剣をねかせて防御しようとするが、流星の速度が勝る。タッチの差で防御が間に合わない!

ユニの顔に余裕の笑みがこぼれた。

 

 

 

――断罪は成された。

流星が標的の腹を貫いた。

 

「ぐッ……ぐああああぁぁぁぁああああああ!!!」

 

辺りを揺るがすほどの叫びと爆発音を上げながら、標的は木っ端微塵に消し飛んだ。

先ほどまで標的が片膝を着いていた場所に残されていたのは、辺りに四散した黒い機材とシュウシュウと音を立てて立ち上る黒煙のみであった。

それを確認すると、ユニは静かに銃剣の先を地面に向けた。

それに呼応して大きく肩を下ろしながら、深い吐息がユニの口からこぼれた。

勝利を実感すると同時に再び”声”がユニに話しかける。

 

『見事。だが、あまり手を焼かせてくれるな。安心して眠ることもできん。』

 

歓喜、というよりはどこか呆れを含んだような口調がユニの頭に響く。

 

「だからごめんって。今回きりだから。もう大丈夫。」

『……その言葉、信じよう。では、今度こそさらばだ…。』

 

別れの言葉すら、その”声”は剛健でどこか凛とした爽やかさを帯びた口調だった。

直後にそよ風がユニの銀色のツインテールを軽く揺らした。

どうやら迎えが来たようだ。

ユニには分かった。暖かみを含んだ風が、彼を運んでいったのだと。

頭に残る喪失感がそれをより確かな物にしていた。

――アイツらしいお別れ…。

ゆっくりとユニの唇が上下する。

 

「……ありがとう、ブレイブ。」

 

呟きと同時に、ユニの表情に微笑が見えた。

空の不気味な血色さえ、一瞬彼女の微笑越しに見ると鮮やかに見えてしまうような、そんな心からの微笑だった。

ふと気がつくと、風がその呟きと思いを乗せるように同じ方向に吹いていた。

 

 

 


 
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