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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第三十二話 別荘にご招待(後編)

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2012-12-06 06:32:12 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:36127   閲覧ユーザー数:32234

 「ん…ここ、何処だ?」

 

 朝。目を覚ました俺の視界に映ったのは見た事無い天井。

 

 「…………ああ、そうか。アリサの別荘に来たんだった」

 

 少しずつ意識が覚醒し、自分の現状を理解し始める。

 『顔でも洗うか』と思い、起き上がろうとしたら左腕に重みを感じた。何かが抱き着いてる感じがする。

 

 「…そういや、一人で寝たんじゃなかったな」

 

 隣で寝ている末娘、ルーテシアの方に視線を移す。昨日シュテルの部屋で、シュテルが寝ているルーテシアをパジャマに着替えさせて、俺の部屋に運んで一緒に寝たんだった。

 スヤスヤと寝息を立て、まだ目を覚ます気配が無い。

 

 「このまま抱き着かせといてやりたいけど…」

 

 起きてからすぐに尿意を感じたので、ルーテシアが起きない様にゆっくりと左腕を引き剥がす。

 左腕が解放され、ベッドから静かに下りて身体を思い切り『ん~~~!!』と伸ばす。

 その後、トイレで用を足し洗面所で顔を洗うと眠気も完全に吹き飛んだ。

 時間は午前6時過ぎ。俺はルーテシアが寝ている間に着替えを済ませ、テレビを点ける。

 テレビの天気予報によれば、今日と明日は日本全国どこもずっと晴れらしい。確かに窓の外から見える空は昨日に引き続き快晴で絶好の海水浴日和だ。

 

 「……ん~~~~…」

 

 ベッドでモゾモゾと動く音がする。

 ベッドの方を見るとルーテシアが上半身を起こし、うっすらと目を開けている。

 

 「おはようルー」

 

 「…おふぁよー」

 

 目の焦点が定まっていないので意識が半分寝ているのが分かる。

 

 「まだ朝早いから寝ててもいいよ」

 

 「……ううん、おきるー」

 

 「じゃあ顔洗いに行こうか」

 

 ベッドから下ろしたルーテシアの手を繋ぎ洗面所まで連れて行く。

 

 バシャバシャバシャ

 

 蛇口から出る水で顔を洗う。濡れた顔をタオルで拭いてあげ、次に歯ブラシと歯磨き粉を渡して自分の歯を磨かせる。

 歯を磨き、口の中を濯いだ後こちらに振り返ったルーテシアの目はパッチリと開いている。眠気は完全に吹き飛んだようだ。

 

 「目は覚めた?ルー」

 

 「ばっちりー」

 

 笑顔で元気に答えてくれる。

 

 「じゃあこれから朝ご飯の時間まで何しようか?」

 

 「いっしょにあそぼ!」

 

 「遊ぶの?良いよ。何して遊ぶ?」

 

 「げーむ」

 

 「ゲームかあ。ルーはどんなゲームしたい?」

 

 「ぱずるげーむ!」

 

 パズルゲーム…ならゲーム機本体がいるんだが。

 

 「ルー、ゲーム機は今お兄ちゃん持ってないんだ」

 

 「おにーちゃん、おうちのげーむきもってきてないの?」

 

 「いや、あったんだけど昨日の夜レヴィお姉ちゃんに渡したままだからレヴィお姉ちゃんの部屋にあるんだよ」

 

 花火が終わった後も遊ぶ気満々だったらしく、家から持ってきてたゲーム機を渡したら他の連中も誘って部屋に籠もったし。

 

 「じゃあれびぃおねーちゃんのおへやにいこ」

 

 「行ってもレヴィお姉ちゃんは多分寝てるよ。起こすのは可哀相だし」

 

 「そっかあ」

 

 コンコン

 

 「ん?誰だろう?どうぞー」

 

 ガチャッ

 

 「ユウキ…とルーももう起きていたのですね。おはようございます」

 

 シュテルだった。

 

 「しゅてるおねーちゃん、おはよー」

 

 「おはようシュテル。こんな朝早くからどうした?」

 

 「そろそろユウキが起きてるだろうと思いまして、ルーを私の部屋に運んでもらおうと思ってきたのです」

 

 「ルーを?」

 

 「はい。ルーが起きた時に着替えさせないといけませんから」

 

 そういやルーテシアはパジャマのままだった。ルーテシアの着替えはシュテルの部屋に置いているのでここには無い。

 

 「しかしルーが起きているならちょうど良かったです。ルー、着替えに行きましょう」

 

 「ルー、シュテルお姉ちゃんについて行って着替えておいで」

 

 「はーい」

 

 シュテルの後をついて行き、部屋に一人取り残された俺はヒマになった。

 持ってきた夏休みの宿題でもやるか?それともテレビ観ながら時間を潰すか?

 

 「ん?そういえば朝食ってどうすんだ?」

 

 よく思い出してみると朝食をどうするのか知らなかった。

 また何処かに食べに行くのか?

 俺達の行動に関しては基本アリサに決めて貰っているからアリサに聞かないと分からないんだが当の本人は寝てるかもしれないからなあ。

 

 「…考えても仕方ないな」

 

 とりあえずボケーっとしておくのもアレなので俺は部屋を出て適当にブラブラする事にした………。

 

 

 

 「あーー、勇紀さんですぅ~」

 

 「ん?」

 

 ちょうど、階段を下りたところで俺の名前を呼ぶ声がした。

 

 「おはようございますぅ~」

 

 挨拶しながら抱き着いてきたのはリインだった。今は別荘内という事もあってか子供サイズではなく本来のサイズになっている。

 

 「おはようリイン。早起きだな」

 

 「はいです。今日はいつもより早く目が覚めたんですぅ」

 

 「そうか」

 

 「勇紀さんもリインと同じで早く目が覚めたんですかぁ~?」

 

 「俺は普段からこの時間帯に目が覚めるからな。リインは一人か?」

 

 大抵は八神家の誰かと一緒にいるのを目撃するのでリインが一人というのは珍しい。

 

 「はいです。リイン早起きしちゃって退屈してたのです」

 

 「だよなー。この時間帯はテレビも面白いのやってないし。家からDVDとDVDプレイヤーでも持ってくるんだった」

 

 せめてレヴィが起きてくれたらゲーム機借りて暇潰し出来るんだけど。

 

 「まあ、それよりもリイン。今日の朝食について何か知らないか?」

 

 「朝食ですかあ?」

 

 「朝食も皆で何処かへ食べに行くのか昨日何も聞いてなかったからな」

 

 「今日からは自炊すると私は聞いたぞ」

 

 「お姉様!」

 

 ちょうど二階から下りてきたらしいリンスがリインの代わりに答えてくれた。

 

 「リンスか。おはよう」

 

 「おはようございますお姉様ぁ~」

 

 「二人共おはよう」

 

 お互いに朝の挨拶を済ませる。

 

 「それで今日から自炊ってのは本当か?」

 

 「ああ、昨日の夜に食材を運んでいるのを見たし、バニングスも言っていたからな」

 

 食材を運んだのは鮫島さんらしい。

 

 「自炊は構わんが一体誰が作るんだ?」

 

 「少なくとも私でない事は確かだな。正直、一人で料理出来る自信が無い」

 

 「…勝手に作っていいなら俺が準備するけど?」

 

 「勇紀さん、お料理出来るんですかぁ~!?」

 

 「当然。そもそもシュテルとディアーチェに家事教えたの俺だし」

 

 味覚こそ低下しているが味付けにこだわったりしなけりゃ普通に作れる。

 

 「ユウキがするまでもない。我が朝食ぐらい作ってやる」

 

 更に新たな声。その声の主であるディアーチェが姿を見せる。

 

 「おはようユウキ、それに融合騎(リインフォース)姉妹」

 

 「おはよう」

 

 「おはようです。ディアーチェさん」

 

 「おはようディアーチェ。お前が料理作ってくれるって言うがいいのか?」

 

 「別に構わぬ。部屋にいてもする事が無いからな《それにユウキ。お前まだ味覚が戻ってないのであろう?》」

 

 「確かにヒマだもんな《味覚は戻ってなくても簡単な料理ぐらい作れるぞ?》」

 

 「だから朝食は我が作る。それまでユウキ達は適当に時間を潰しておけ《それでもだ。万が一なんて事があるかもしれんだろ?》」

 

 「了解《…そこまで言うなら任せるわ》」

 

 結局ディアーチェに朝食の担当を譲る事にした。ディアーチェはそのまま食堂の奥にある厨房に向かう。

 …する事が無くなってしまったのでまたヒマになってしまった。

 

 「さて、何して時間潰せばいいのやら…」

 

 「勇紀さん勇紀さん」

 

 俺を呼びながら服の裾をリインが引っ張る。

 

 「どうした?」

 

 「リインとお話しましょう」

 

 「お話?」

 

 「はいです。リインは勇紀さんとお話したかったんですぅ」

 

 「……まあ、俺としては断る理由も無いし時間潰せるならいいか。でも話すって言っても何か話題あるかなあ…」

 

 「じゃあリインが聞きたい事を聞いてもいいですかぁ?」

 

 「ん?良いけど聞きたい事なんてあるのか?」

 

 「はいです。勇紀さんははやてちゃんの事をどう思ってるですか?」

 

 「はやての事?うーん、学校は違うけど仲の良い友達だと思ってるぞ」

 

 はやてに限らず聖祥組とは皆良い友達関係だと思う。

 

 「じゃあはやてちゃんの事は好きって事なんですねえ?」

 

 「そりゃあな。嫌いな奴とは普通友達になれないだろ」

 

 「そうですかあ。良かったですぅ」

 

 ホッとリインが胸を撫で下ろすが何でこんな事聞いてきたんだ?

 …まさかリインからは俺がはやての事嫌ってる様に見えてたのか?だとしたら流石にショックを隠し切れないんだが。

 

 「実ははやてちゃんも勇紀さんのこt「ほわああああああああっっっっ!!!!」…ひうっ!?」

 

 リインが喋っている途中で誰かが奇声を発しながらやってきた。リインはビックリして俺の背中に隠れる。

 

 「リイン!!ななな、何言おうとしてたんや!?////」

 

 奇声の主ははやてだった。『ハアハア』と息を切らせ、顔を真っ赤にしながら俺の背後にいるリインに怒鳴る。

 

 「わ、我が主…。少し落ち着いて下さい」

 

 「これが落ち着いていられるかいなリンス!」

 

 「いや、落ち着こうぜはやて。何でそんなに焦ってるんだよ?」

 

 足もまだ完治してないだろうに全力疾走してきたっぽいし。

 

 「だ…だってリインが…その……////」

 

 今度は急にしおらしい態度でモジモジし出した。

 

 「…はあ~。ま、とりあえずは挨拶が先だな。おはようはやて」

 

 「あっ、うん。おはようや勇紀君」

 

 「おはようございます我が主」

 

 「…おはようです、はやてちゃん」

 

 リンスと、俺の肩越しに顔を出したリインがはやてに挨拶する。

 

 「二人もおはよう。で、リイン…ちょおわたしと二人でお話しよか?」

 

 「あうう…今のはやてちゃん何だか怖いですぅ」

 

 リインがギュッと力強くしがみつく。確かにただ笑みを浮かべているだけなのに今のはやては怖い。

 

 「何言ってんの?別に怖い事あらへんで?」

 

 「お姉様、勇紀さん、助けて下さいですぅ」

 

 「わ、我が主。どうかその辺で…」

 

 「…あの~、はやてさん?リインが何言おうとしたのかは知りませんがここは許してやってもらえませんか?」

 

 「…勇紀君もリンスもリインの味方するんか?」

 

 『むー』といった感じで不機嫌そうなはやてが聞いてくる。別にリインの味方って訳じゃ無いんだけど。

 

 「リインだって悪気があった訳じゃないだろうし、生まれてそんなに経ってないんだから仕方ない事だってあるじゃん。だから今回は見逃してやってほしいなと」

 

 「……はあ~、分かったわ。今回は許したる。でもリイン、今言おうとしてた事は勝手に言ったらアカンよ?」

 

 「はいです。ごめんなさいです」

 

 「もうええよ」

 

 本当にもう怒ってはいない様でリインもはやての肩に乗る。さっきリインは俺に何を言おうとしてたのかは気になるが…まあいいか。

 それから俺はしばらくはやて、リンス、リインと会話をして朝食まで時間を潰していた………。

 

 

 

 朝食を食べ、午前中は別荘で過ごしていた。昼食の担当ははやてでこれまた美味しかったらしい。シュテル曰く『ディアーチェといい勝負』だとか。流石A‘s原作では守護騎士が現れるまで一人暮らしで家事をしていただけの事はあるね。ただ俺に味の感想聞かれた時は『美味しい』と答えたけど、実際は味が分からなかったので笑顔を浮かべているはやてを見て心中罪悪感で一杯だった。

 …今度味覚が戻った時にもう一度料理作って貰って、その時は正直な感想を言おう(不味いなんて事は無いだろうが)。

 昼食後は昨日同様海で遊ぶ事にした。

 

 「スイカ割りをしよう!」

 

 レヴィの提案で突如スイカ割りが開催される事になった。

 

 「スイカ割りは海でやる事の定番だよね!」

 

 「それよりスイカなんて俺は持ってきた記憶が無いんだが?」

 

 「別荘にあったよ」

 

 別荘にあったという事は鮫島さんが仕入れてくれた食材の中にあったのか?

 

 「じゃあ棒は?スイカ割るのに必要だろ?」

 

 「これがあれば無問題(モーマンタイ)だよ!」

 

 そういって自分の愛機(バルニフィカス)を掲げるレヴィ。しかし直後にディアーチェからの拳骨が下る。

 

 「痛いよディアーチェ!何で殴るのさ!?」

 

 「お前はどこまで阿呆なんだ!!スイカが木っ端微塵になるわ!!」

 

 確かにレヴィなら振り下ろす際に雷刃封殺爆滅剣とか素で使いそうだし。

 

 「うー!棒が無いんだから仕方ないじゃん!!」

 

 「だからと言ってデバイスを使おうとするなよ。少し探せば見つかるかもしれないだろ」

 

 「勇紀!これでどう?」

 

 言ったそばからアリシアが手ごろなサイズの棒を持ってきた。

 …行動するの早いなオイ。

 

 「…うん。これ丁度良い感じだな。この棒でやろう」

 

 「じゃあ僕が一番!」

 

 「何言ってんのレヴィ!私が棒を見つけてきたんだから私が一番だよ!」

 

 「スイカ割りをやろうって言ったのは僕だよ!」

 

 『むうう~』とお互いに睨み合うレヴィとアリシア。しかしここで

 

 「おにーちゃん、わたしもすいかわりやりたい」

 

 ルーテシアが名乗りを上げる。

 

 「…だそうだ。二人共、ルーに譲ってやってくれないか?」

 

 「「え~!?」」

 

 すっごく不満そうだな。

 

 「二人共、ルーよりお姉さんなんだから順番ぐらい譲ってあげなさいよ」

 

 全くもってアリサの言う通りだ。

 

 「「でも~」」

 

 「お姉さんとして我慢してくれ二人共」

 

 「「……はーい」」

 

 渋々ながらも納得してくれた。

 

 「じゃあルー、目隠しするから後ろ向いて」

 

 「はーい」

 

 後ろを向いたルーテシアに手ぬぐいで目隠しをする。

 スイカはルーテシアのいる場所から約10メートル先にある。スイカの下にはダンボールを敷いている。もし誰かが割った時、砂の上に直置きしてたら砂が付着してしまうからな。

 こうして準備が出来、スイカ割りが始まった。

 

 「ルーちゃん、もう少し右だよ」

 

 「ああ~、行き過ぎ行き過ぎ」

 

 「ルー、そのまま真っ直ぐ進めばスイカがありますよ」

 

 皆結構盛り上がってる。ルーテシアも皆の言葉を聞いて右へ左へ動いてスイカを探している。

 

 「ルー、そこで止まって棒を振り下ろせ。スイカは目の前だぞ」

 

 ディアーチェの言葉に従い立ち止まるルーテシア。

 

 「えーい!」

 

 ポコッ

 

 ルーテシアは思い切り振り下ろしてるつもりだろうが腕力が全然無いのでスイカは割れる訳が無い。

 

 「えい!えい!」

 

 ポコッ…ポコッ…

 

 何度も振り下ろすが効果は無い。

 しばらくはその様子を眺めていたがレヴィとアリシアが早くスイカを割りをしたそうな表情をしているので俺はルーテシアに近付き、目隠しを外してあげる。

 

 「お疲れ様ルー」

 

 「???おにーちゃん、すいかわれてないよ?」

 

 「うーん、ルーがスイカを割るにはもう少し大きくならないと無理かな」

 

 「おおきくなったらわれる?」

 

 「多分ね」

 

 「じゃあわたしがおおきくなったらまたやりたい」

 

 「良いよ。ルーが大きくなったらまたやろう」

 

 「やくそくだよ!おにーちゃん」

 

 俺とルーテシアがシートの方に戻ると同時にレヴィとアリシアがジャンケンをして順番を決め始めた。

 

 「「あいこでしょ!あいこでしょ!」」

 

 白熱するジャンケン。その戦いを制したのは…

 

 「勝ったー!やっぱり僕最強!」

 

 レヴィだった。

 

 「ま、負けた…」

 

 逆にアリシアはorzになっていた。そんなにスイカ割りやりたかったのか。

 

 「アリシア。また今度海に行ってやればいいじゃないか。海鳴市にも海水浴場はあるんだし」

 

 「この夏休み中はもう海に行く予定は無いよ」

 

 「じゃあ予定立てればいいのでは?」

 

 「一緒に行く人がいない」

 

 「プレシアさん達に言えばいいじゃないか」

 

 アリシア、フェイトに過保護なまでの愛情を注いでいるあの人なら娘のお願いを絶対に聞きそうなものだが。

 

 「お母さん、今本局の仕事にかかりっきりで手が離せない状態らしいんだよ。家にも帰ってこれないぐらいだし。リニスも一緒についていってるし。」

 

 「大変だなプレシアさんも」

 

 リニスさんも一緒か。…あれ?という事は

 

 「お前等、普段食事はどうしてんだ?」

 

 まさかコンビニ弁当やカップラーメンなんかで済ませてるんじゃ…。

 もしそうだとしたらコイツ等の食生活を改善させんといかんな。

 

 「今はリンディさんの家でお世話になってるよ。私も姉さんもアルフもね」

 

 アリシアの隣にきたフェイトがアリシアの代わりに答える。

 

 「そうか。なら安心だな」

 

 「安心って?」

 

 「お前等料理出来ないって前に言ってただろ?もしかしたらインスタント食品で済ませてるんじゃないかと思ってな」

 

 「あはは…リンディさんの所でお世話になってなかったらそうなってたかも」

 

 「今度リニスさんにでも教えてもらったらどうなんだ?」

 

 「そうだね」

 

 バコッ

 

 そんな会話をしている時に何かを叩く音が聞こえたので音のした方を見るとレヴィがスイカを叩いた音だった。

 

 「やった!手応え有り!」

 

 喜んで目隠しを外すがスイカは割れていない。

 

 「あれ!?何で!?」

 

 そう言いつつ何度も棒でスイカを叩くがスイカが割れる気配が無い。

 

 「むう~、スイカのクセに生意気な」

 

 業を煮やしたレヴィが棒を投げ捨てバルニフィカスを取り出すが再びディアーチェの拳骨によって撃沈。デバイスも取り上げられた。

 その後、何人かスイカ割りに挑戦した(スイカ割りが出来る事で機嫌が直ったアリシア含む)が誰もスイカを割れなかった。どんだけ硬いんだよあのスイカ。最後はシグナムさんが全力で振り下ろして割る事が出来たのだが。

 

 「「スイカ…割りたかった」」

 

 レヴィとアリシアはスイカを割れなかった結果に落ち込んでいる。

 

 「もっと腕力無いと割れないって事だな」

 

 「なら家に帰ったら僕は自分を鍛えるよ!」

 

 「あー、うん。頑張れ」

 

 スイカを割るという目標を掲げ、闘志を燃やすレヴィ。

 そして割ったスイカを均等に切り分け(別荘から包丁を持ってきた)皆で美味しくいただいたのだった………。

 

 

 

 昨日同様、日が暮れる直前まで海を満喫した俺達。一旦別荘に戻った後、シャワーで身体を洗い、着替えてから再び砂浜に集まる。

 

 「あー!アリシア、それ僕が目をつけてた肉なのに!」

 

 「ふっふーん、油断したからいけないんだよレヴィ」

 

 「二人共、野菜もちゃんと食べて下さい」

 

 「そうだよレヴィちゃん、アリシアちゃん。ちゃんと野菜も食べないと食事のバランスが悪いよ」

 

 肉ばっかり食べるレヴィとアリシアをユーリとすずかが注意する。

 現在バーベキュー中である。

 網の上では肉、野菜を焼いている。もっぱら網の上に新しい食材を乗せるのは俺、シュテル、ディアーチェ、はやての料理が出来る四人。それ以外の全員は食べる側に回っている。

 

 「ほれ、新しい野菜追加だ」

 

 「ユウ~。肉も追加して~」

 

 「野菜食ったら追加してやる」

 

 さっきから肉ばっかり減っていくからな。主にレヴィとアリシアのせいで。

 

 「主はやて。そろそろ食事を摂って下さい。網の上に食材を置くだけなら私でも出来ますから」

 

 「そうね。勇紀君にシュテルちゃん、ディアーチェちゃんもそろそろ食べて。私とシグナムが交代してあげるから」

 

 そういや、俺達まだ一口も口にしてないからな。確かにお腹も空いてきたし、ここはシグナムさんとシャマルさんの言葉に従って食べる側に回らせて貰おう。

 

 「じゃあシグナムさんにシャマルさん、お願いします」

 

 俺達は紙皿と割り箸を手に取って網の上でもう焼けている野菜を取り始める。

 

 「キャベツに玉ネギ、茄子に人参っと」

 

 食べたい野菜を取り俺は食べる。

 モグモグと食べていると網の上に肉と野菜が追加された。しばらくして肉と野菜が完全に焼けた頃合いに

 

 「「肉~~♪」」

 

 レヴィとアリシアは『待ってました』と言わんばかりに割り箸を肉に伸ばす…が

 

 ガシイッ×2

 

 「「へ?」」

 

 バインドで捕獲され身動きが取れなくなった。

 

 「二人共、これはユウキ達の分です」

 

 ユーリが『どうぞ』とトングで肉を掴み、俺の紙皿に入れてくれる。

 

 「ありがとユーリ」

 

 「どういたしまして。シュテル、ディアーチェ、はやても食べて下さい」

 

 肉を次々と掴んでシュテル達の紙皿に入れていくユーリ。いつの間にかユーリも食べるのを止めてシグナムさんとシャマルさんの手伝いをしている。

 

 「おおきになユーリ」

 

 「ふむ。中々良い肉ではないか」

 

 「そうですね。家で焼き肉する時でもこれ程の肉は買いませんからね」

 

 俺も肉を口にする。味覚無いのが本当に残念で仕方ない。

 

 「ちょ!?僕にも!僕にもお肉~」

 

 「お願いユーリ!このバインド解いて!じゃないと私の肉が無くなっちゃう」

 

 「駄目です!二人にはしばらく野菜だけ紙皿に入れます」

 

 「「そんな殺生な!!」」

 

 必死に抗議する二人を無視して野菜だけを紙皿に乗っけていくユーリ。

 

 「アリシアちゃんとレヴィ、ガチ泣きしてるの」

 

 「自業自得よ。二人共バーベキュー始めてから肉しか取ってなかったもの」

 

 そんな二人をなのはとアリサは呆れた表情で見ている。

 

 「おにーちゃんおにーちゃん」

 

 「ん?どうしたんだルー」

 

 「わたしもおにくほしい」

 

 「お肉?良いよ。ちょっと待っててくれ」

 

 俺は網の上にある肉を割り箸で掴む。その際に『あーーっ!?』とか約二名が叫んだが気にしない気にしない。

 

 「ほらお肉だよルー」

 

 「あーん」

 

 口を開けるルーテシアを見て『食べさせてほしいのか』と理解する。そのまま口の中に肉を放り込んでやると口をモグモグして食べる。

 

 「おいしー」

 

 「美味しくて良かったねルー」

 

 「おにーちゃんにもおかえしー」

 

 そう言ってルーテシアはフォークで自分の紙皿に入っていた南瓜を俺の口元に持ってきてくれる。

 

 「おにーちゃん、あーん」

 

 「あーん」

 

 口に運んでくれた南瓜を頬張る。甘くて良い味だねえ。

 

 「おいしー?」

 

 「美味しいよルー。ありがとうね(ルー、俺が味覚低下してるって事忘れてるな)」

 

 よしよしとルーテシアの頭を撫でてあげる。

 

 「「「「「「「「……………………」」」」」」」」

 

 …何か視線を感じるんだが。

 

 「勇紀さん勇紀さん」

 

 今度はリインがやってきた。ちなみに子供サイズである。

 

 「どうしたリイン?」

 

 「リインも勇紀さんに食べさせてあげますぅ」

 

 「「「「「「「「っ!!!」」」」」」」」

 

 リインもルーテシア同様フォークで玉ネギを刺して俺の口元に持ってくる。

 

 「どうぞ、あーんですぅ」

 

 「…あーん」

 

 フォークに刺さっている玉ネギにかぶりつく。

 

 「おいしいですかぁ?」

 

 「美味しいよ(味を感じないけど不味くはない筈)」

 

 「良かったですぅ。じゃあリインにもお返ししてほしいですぅ」

 

 「じゃあピーマンで」

 

 リインも俺が差し出したピーマンを食べる。

 

 「美味しいですぅ」

 

 「それは良かった」

 

 「「「「「「「「……………………」」」」」」」」

 

 ……さっきより視線が鋭くなってる様な気がするが気のせいだよね?

 

 「勇紀~。火力が弱くなってきたから火をくれないかい?」

 

 「あいよー」

 

 亮太に呼ばれて俺は網の下に炭と着火剤を入れ

 

 「『天火布武(テンマオウ)』」

 

 指をパチンと鳴らし火を飛ばす。

 

 『天火布武(テンマオウ)

 

 指パッチンする事で火を灯す事が出来る能力。普段は小さい火を出す程度で煙草を吸う人にとってはライター代わりになる能力だが、威力を上げれば簡単に人を焼き殺す事も出来るので力加減を誤ると大変な事になる。ちなみに魔力を使って火を発現させている訳ではないので、勇紀の魔力が空になったり魔法が使えない様な状況下に置いても無制限に使えるのでこのレアスキルは戦闘面でかなり重宝したりする。ちなみに原作『Hyper→Highspeed→Genius』では、この能力は『聖女アナ』の命の火を灯すための能力である。

 

 ちゃんと火が灯り、火力が上がったのを確認する。

 

 「ご苦労様」

 

 「別に苦労する程でもないけどな」

 

 「しかしその能力は火を自在に操れるのかい?」

 

 「まあな。もっとも火の玉を投げつけるぐらいしかやった事ないけど」

 

 「じゃあその火を使って技を編み出そうよ」

 

 「技ねえ…」

 

 「火拳とか火銃とか蛍火とか」

 

 「亮太、お前は俺に『火拳のエース』にでもなれというのかね?」

 

 確かに俺も好きなキャラだけど。

 

 「だって、火を操れるんだからそういった技が無いと勿体無い。宝の持ち腐れになるよ」

 

 「まあ、一理あるわな」

 

 火を今以上に自在に操るための訓練とでも思ってやればいいか。

 

 「聞こえたぞ長谷川」

 

 俺と亮太の側にシグナムさんがやってくる。

 

 「火を操る訓練をするらしいな。その時は私にも一声かけてくれないか?」

 

 「???何故です?」

 

 「私も炎熱の変換資質を持っているからな。お前にアドバイス出来る事があるかもしれん」

 

 そういやそうだった。

 

 「そうですね。シグナムさんの紫電一閃を教えてもらうのもいいかも」

 

 「私の技で良ければ喜んで教えてやるぞ」

 

 「じゃあその時はお願いします」

 

 「ああ、楽しみにしている(ついでに模擬戦の相手にもなってもらうか。コイツとの模擬戦はテスタロッサ達とする時とは違った高揚感が沸くからな)」

 

 新しい技か。とりあえず前世のマンガやゲームで使えそうな技をピックアップしておかないとな。悪魔図書館(あくまとしょかん)も使って色々調べてみよう

 

 「(勇紀、技を考えるのに意識がいっててシグナムさんが戦闘狂(バトルマニア)だって事忘れてるね)」

 

 「どうでもいいけどオメー等、早く肉とか野菜食えよ。焦げちまうぞ」

 

 ヴィータの声でハッとすると確かに網の上にある肉・野菜が良い感じに焼けている。

 

 「ユーリ!いい加減バインド解いてよ」

 

 「そうだよユーリ!ちゃんと野菜も食べるって約束するから」

 

 「……本当ですか?」

 

 「「勿論だよ!」」

 

 「…分かりました。でももし約束を破ったらシュテルの収束砲撃(ルシフェリオンブレイカー)の刑に処しますから」

 

 そう言い、バインドを解除する。

 

 「「絶対に守ります!!」」

 

 ビシッと敬礼して返答するレヴィとアリシア。賢明だな。

 それからはちゃんと野菜も食べる二人を見て、俺も再び箸を進める。

 こうして二日目の夕食は賑やかなまま、ゆっくりと時間が過ぎていくのだった………。

 

 

 

 三日目の朝。俺達は朝食を食べた後、来た時と同じく鮫島さんの運転するバスに乗る。海鳴市に向かって進むバスの中は静かだった。皆この二日間で思いっきり遊んだ疲れが完全に抜け切ってないのだろう。バスが動き始めてすぐに寝息が立ち始めたからだ。

 

 「「~~zzz…~~zzz…」」

 

 そんな俺の隣の座席にルーテシア、膝の上には子供サイズのリインが座り俺にもたれかかりながら気持ち良さそうに眠っている。

 何かリインにはやたらと懐かれたな。子供に好かれる体質なのかね俺は?

 俺の膝の上に座る姿を見た一部の人達からはキツい視線をプレゼントされたが。

 それにしてもヒマだ。俺以外皆爆睡してるので話し相手もいない。どうしたもんか。

 

 「長谷川様もお休みになられては如何です?海鳴市に着くまではまだ時間が掛かりますので」

 

 そんな俺の心中に答えるかのように鮫島さんがこちらを振り向かず言う。俺は少し考えて

 

 「…そうですね。少し眠らせてもらいます」

 

 寝る事にした。そこまで疲れているとは思ってなかったがリインを少し強く抱きしめ、抱き枕代わりにしながら瞼を閉じるとあっという間に意識が落ちていく。

 それから次に目が覚めた時には丁度海鳴市に着いた頃で俺は皆を起こし、バスから降りる準備を促す。

 こうして二泊三日の旅行は皆怪我もする事無く無事に帰ってこれて終わりを迎えたのだった………。

 


 
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