バスから降り、皆揃ってバニングス家の別荘に入る。
「じゃあ各自、荷物を持って二階の好きな部屋を使ってちょうだい。部屋の中はどこも同じだから。それで荷物を置いたらまたここに集合ね。少し歩いて私有地から出たらファミレスやレストランがあるからそこで昼食にしましょう」
「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」
早速、アリサの指示に従い俺達は二階に上がる。そこで適当な部屋に入る。
部屋の中にはトイレ・洗面所・風呂は勿論完備のこと、ベッドにテレビ、テーブル、冷蔵庫等々が置いてある。もうホテルの一室みたいだ。他の奴等の部屋もこの部屋と同じなんだろうな。金持ちは凄いねホント。
俺は
「シュテル達にも荷物を渡さないとな」
シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、ルーテシアが選んだ部屋を探す。その前に自分の使用する部屋には『勇紀』と書いたホワイトボードを扉の表面に付けておく。自分の部屋を忘れて他人の部屋に間違えて入ったら大変だからな。
と、部屋を出たところで俺の方に向かってくる人影があった。
ルーテシアだ。
「おにーちゃんみつけたー」
「ルー、どうしたんだい?」
「おにーちゃんをさがしてたのー」
俺に抱き着いてきたのでルーテシアの頭を撫でてやると、気持ち良さそうな表情を浮かべる。
「ルー、シュテルお姉ちゃんと一緒にいたよな?シュテルお姉ちゃんはどうしたんだ?」
「しゅてるおねーちゃんはあそこのへやにいるの」
ルーテシアが指差したのは俺の部屋から4部屋程離れた所の一室だ。
「シュテルはあそこか。ルーはシュテルお姉ちゃんと同じ部屋で過ごすんだね?」
「わたし、おにーちゃんとおなじへやがいい」
「お兄ちゃんと?」
「うん!おにーちゃんといっしょにねたい」
部屋のベッドはそこそこ大きいので俺とルーテシアが寝れるぐらいのスペースは十分にある。
「まあお兄ちゃんは構わないけど、ルーがいないと思って心配させるといけないからお姉ちゃん達にはちゃんと言っておこうね?」
「はーい!」
元気良く返事するルーテシアと手を繋ぎ、俺はシュテルの部屋の前に立つ。
「シュテル、俺だけど入っていいか?」
コンコンと扉をノックして声を掛ける。
「ユウキですか?いいですよ」
シュテルから部屋に入ってもいいと言われたのでドアノブを回し部屋の中に入る。
「ルーも一緒だったのですね。ユウキを探すと言って部屋を出て行ったのですが無事に会えて何よりです」
「部屋を出てすぐに会えたからな。ところでお前の荷物を置きに来たんだが何処に置けばいい?」
「とりあえずテーブルの上に置いてもらえますか?」
「了解」
俺が宝物庫を解錠し、シュテルの荷物が入ったリュックサックをテーブルの上に置く。
「…よし、シュテルの荷物はこれだったな。あ、シュテル。ルーは俺の部屋で一緒に過ごしたいって言ってるんだけどいいか?」
「ユウキと相部屋ですか?」
「ああ」
「…変な事しないですよね?」
「しねえよ!」
何で家族にそんな疑いを持たれんだよ!?
「冗談ですよ。怒らないで下さい」
その割には聞いてきた時の目が結構マジだった気がするんですけど?
「…はあ~。もういい、俺は行くぞ?」
「もうですか?少しはゆっくりしていってもいいんですが…」
「レヴィ、ディアーチェ、ユーリにもさっさと荷物を渡しておきたいんだよ」
「そうですか…(残念です)。あ、ユーリの部屋は右隣の部屋ですから」
「分かった。早く集合場所に来いよ。あまりに遅いとアリサが吼えかねん」
そう言い残しルーテシアとシュテルの部屋を後にする。次はユーリだな。部屋を出て右隣の部屋の扉をノックする。
「はい。誰ですか?」
「俺だユーリ。お前の荷物渡しに来た」
「ユウキですか?入ってくれてもいいですよ」
「じゃあお邪魔します」
扉を開けて部屋に入る。シュテルの時と同様、ユーリのリュックサックをテーブルの上に置く。
「ありがとうございます。それにしてもルーも一緒だったんですね」
ユーリがルーテシアの頭を撫で、当の本人は『えへへ』と嬉しそうにしている。
「わたし、おにーちゃんといっしょのおへやなの」
「そうですか。ユウキと同じ…………同じ部屋?え?え?何でですか?」
ルーテシアの発言に混乱してるな。
「ルーが『一緒がいい』っていうからな。シュテルにはもう連絡済みだ」
「そ…そうですか。……ルーが羨ましいです」(ボソッ)
「ん?何か言ったか?」
「いえ、何でも」
「そうか?まあ、いいや。それより早く集合場所に来いよ?」
「分かってます。すぐに行きますから」
『じゃあな』と言って部屋を出る。残りはレヴィ、ディアーチェの二人だ。
「あの二人の部屋は何処なんだ?」
一部屋ずつ確認すれば確実なんだが時間がかかる。部屋を選ぶ前にアイツ等の荷物を先に渡しておけばよかったと今は後悔している。
…今渡すのは諦めて昼食後に渡せばいいか。
「ルー、集合場所に行こっか」
「れびぃおねーちゃんとでぃあーちぇおねーちゃんに、おにもつわたさなくていいの?」
「お昼ご飯食べてから渡せば問題無いよ。それよりほかの皆を待たせたらいけないからね」
俺とルーテシアは階段を下りて一階の集合場所に来た。そこにいたのはすずか、ヴィータ、リンス、リイン(普通の子供サイズ)、ザフィーラ(狼形態)の四人と一匹だった。
「勇紀か。荷物は置いてきたのか?」
「ああ」
「勇紀君は何処の部屋にしたの?」
「階段上がってすぐのとこにある部屋だな。自分の名前が書いてあるホワイトボードを扉に貼り付けたから部屋を間違わずに済む」
「勝手に貼り付けていいのか?」
「ホワイトボードの裏側はマグネットだからすぐに外せるさ」
部屋の扉は薄い鉄製の扉だからマグネットで張り付くんだよな。
「勇紀さんは何でそんな物を持ってきたんですかぁ~?」
「以前に百円均一で買ったままのやつがあったんでな」
「しかし他の皆は遅いな。荷物置くだけならすぐここに戻ってくるかと思ってたんだが」
「皆、水着の用意してるんじゃないかな?お昼ご飯食べて部屋に戻ったらすぐ着替えられる様に」
『私も水着はもう鞄から出してあるから』というすずか。ヴィータ、リンス、リインもすずかの言葉に頷いた。用意周到だね。
「水着か。そういやシュテル達も一昨日買いに行ったらしいし」
アイツ等にとっては初めての海水浴だ。海鳴にも海水浴場はあるが、去年は原作組に遭遇する可能性もあったから連れて行く事は無かったのと、この世界の一般常識を教えるのを優先させていたためだ。
「わたしもうみはじめてー」
隣のルーテシアも凄く楽しみにしている様だ。
「ルー、海に入る時は誰か他の人と一緒にいるんだよ?ルーが一人で入るのはまだ危険だから」
「はーい!」
素直に返事してくれる我が家の末娘はとても良い子です。
…っと、どうやら他のメンバーも全員やってきたな。しかしながらご機嫌ナナメな二人がいらっしゃいますね。
「ユウキ!何故荷物を持ってこんのだ!?」
「シュテるんとユーリには渡しておいて僕達の分だけ忘れてたなんて事はないよね!?」
「俺、お前等が何処の部屋なのか知らんし」
「「なら一部屋ずつ確認すればいいじゃん!(よいではないか!)」」
「そんな事してたら集合に遅れると思ったんだよ…………あと、メンドくせえし」(ボソッ)
「「後半の部分何て言ったの?(言ったのだ?)」」
「イエ、ナニモイッテマセンデス」
地獄耳だなこの二人。
「昼食の後で渡してやるからそれでいいだろ?別に海は逃げたりしないんだし」
『う~~』と唸る二人を宥めて他の連中に『早く昼食取りに行こう』と促した。
やっぱり先に荷物渡しておけば良かったよホント………。
皆揃ってレストランで食事をして再び別荘…そして海に行く準備をするため、俺はレヴィとディアーチェに荷物を渡した後、自分の部屋に戻ってきて海パンをリュックサックから出す。
「おにーちゃん、わたしのおきがえないよ?」
そういえばルーテシアの荷物はシュテルのリュックサックに入ってたっけ?
「ルー、シュテルお姉ちゃんがルーの着替え持ってるだろうからシュテルお姉ちゃんの部屋に行ってくれるか?それとお兄ちゃん、先に海の方へ行くからシュテルお姉ちゃんと一緒に後から来るんだよ?」
「わかったー」
返事をして俺の部屋から出て行くルーテシア。
俺はそれを見送ってからトランクスタイプの海パンを履き、上は白いシャツ一枚を着る。
後は現地で必要な物を宝物庫から出せばいいだけなので俺は手ぶらでそのまま別荘を後にする。
別荘のすぐ目の前が海であり、私有地なので関係者以外は誰も入る事が出来ない。完全な貸切り状態だ。
砂浜にはすでに来ている人影があった。亮太だ。
アロハシャツを着てブリーフタイプの海パンを履いている。
「早いな亮太」
「いや、僕も今来たところだよ」
「そっか。まあ男子って着替えるのに時間かからないもんな」
「だね。それでどうしようか?」
「パラソルやシートが宝物庫に入ってるから取り出すわ」
そう言ってシートやパラソルを取り出し、浮き輪やゴムボートなんかを膨らまして俺と亮太は皆が来るまでのんびりと待っていた。
そして10数分後……
「おにーちゃーーーーん!!」
元気な末娘の声が聞こえてきたので振り返るとこっちに向かって走ってくるルーテシアとその後ろからぞろぞろやってくる皆さんがいらっしゃった。
ルーテシアはシートの上に座っている俺の前に来て
「これにあうー?」
と尋ねられたのでルーテシアの水着を見る。ルーテシアの水着は可愛らしいウサギの顔がプリントされたワンピースタイプの水着だ。
「似合ってるよルー、可愛い可愛い」
「えへへー、ありがとー♪」
そう言って俺の手を引く。
「はやく!はやくうみであそぼ!!」
もう待ちきれない様だ。
「じゃあ行こうか?」
俺もシャツを脱いで腰を上げ、立ったところで
「ユウキ、少し待って下さい」
シュテルに呼び止められた。
「何だ?」
「えっと…その…ですね…///」
何か頬染めてモジモジし始めた。
…いや、シュテルだけじゃなくレヴィ、ディアーチェ、ユーリ、フェイト、アリシア、はやて、すずかもシュテルと同じ様に頬を染めてモジモジ・ソワソワしたりこちらに視線を向けてはすぐ逸らしたりと挙動不審になっている。
「???どうしたんだ?何か用があるから呼んだんだよな?」
「はい…実は、その…///」
それから何度か聞き返すがシュテルはただ言葉を詰まらせ会話が先に進まない。
「《勇紀、彼女達はルーちゃんみたいに水着の感想を君に言ってもらいたいんだよ》」
亮太から念話が届く。言われて『ああ、そう言う事か』と納得する。
「あ~、シュテル?後、他の皆もだが…」
「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」
声を掛けようとしたら一斉に皆の視線が俺に集まる。
「水着、似合ってるぞ」
「「「「「「「「本当!?(ですか!?)(か!?)(ホンマに!?)」」」」」」」」
なのは、アリサ、守護騎士の面々以外が詰め寄って聞いてきた。何時の間に近寄ったんだよコイツ等?
俺は一瞬で囲まれていた。正直コイツ等の動きを目で追えなかったし。
「わざわざ冗談を言う理由なんてないだろ?それにお世辞じゃなく本当に似合ってると思うぞ」
「「「「「「「「////////」」」」」」」」
褒めてやると顔を真っ赤にさせながらも表情は緩々になっている。
「皆、お顔が真っ赤っ赤なの」
「アンタ達、このまま熱中症とかで倒れたりしないでよね?」
「はやてちゃん、大丈夫ですかぁ~?」
こっちにゆっくり歩いてきたなのはとアリサ、それにリインを先頭に守護騎士の皆もやってくる。
ちなみに皆の水着だが
シュテル=赤色のビキニタイプ
レヴィ=トラ縞のビキニタイプ
ディアーチェ=紫と紺が混じったスポーティーなワンピースタイプ
ユーリ=赤色のワンピースタイプ
なのは=ピンク色のビキニタイプ
フェイト=黒色のビキニタイプ(パレオ付き)
アリシア=黒色のビキニタイプ(パレオ無し)
はやて=肩を露出させた白色のワンピースタイプ
アリサ=黄色いビキニタイプ
すずか=白色のワンピースタイプ
シグナムさん=黒色のビキニタイプ(フェイト・アリシアの水着と若干デザインが異なる)
シャマルさん=白色のビキニタイプ
ヴィータ=赤色のビキニタイプ(シュテルの水着と若干デザインが異なる)
リンス=紺色のスクール水着
リイン=白色のスクール水着
である。
……うん、よく見るとシュテル、レヴィ、ディアーチェ、なのは、フェイト、はやて、シグナムさん、シャマルさん、ヴィータ、リンスの水着には見覚えがある。
十人が着てる水着は『なのはGOD』のコスチューム解放条件を満たすと出現する各キャラの水着姿と全く同じ物であった。よくこの世界で売ってたな。そして各々もよく自分のコスチュームと同じ水着を手に取ったものだ。正直偶然とは思えんぞ。
「おにーちゃん、うみにはいろうよー!」
…っと、ルーテシアを待たせてしまったな。俺はルーテシアと海の側まで行き
「ルー、海に入っている最中に足が攣ったら溺れちゃうからまずは体操して身体をほぐそうな」
「たいそー?」
ん?ルーテシアは体操知らないのか?
いや、まだ二歳前だし知らなくても当然か。
「お兄ちゃんがやるのと同じ動きをしてくれるか?」
「わかったー!」
そして俺とルーテシアは体操をし始める。特に手首、足首を念入りにほぐし
「まあ、こんなもんでいいかな」
「もうはいっていいの?」
「いいよルー。突撃だー!」
「わーーーい!!」
ルーテシアと一緒に海へ向かって走り出す。海に入ってルーテシアの腰が浸かるぐらいのとこまで来てから、水を掛け合ったり追いかけっこしたりしてルーテシアと遊ぶ。後からシュテル達も合流して更に賑やかになっていく。
なのはは浮き輪、ユーリとリインはゴムボートの上に乗って波に揺らされるまま海を満喫している。
そして俺達の保護者的な立場としてきた守護騎士の面々。
ヴィータは海でシュテル達と遊んでるザフィーラはシートに座ってお留守番してる。そしてシグナムさん、シャマルさん、リンス、亮太の四人は
「シグナム!」
「任せろシャマル!はあっ!!」
「甘いですシグナムさん!」
「ナイスレシーブだ大槻!」
四人でビーチバレーに興じていた。シグナムさん・シャマルさんVS亮太・リンスでペアになって別れているみたいだ。なかなか白熱してるねえ。
しばらく泳いだり遊んだりした俺は皆の輪から外れ一足先にシートの方へ戻ってくる。
「もう泳がないのか?」
「ちょい休憩だよ。ザフィーラこそ泳がないのか?人型になればいいのに」
「…海水は苦手だ」
意外な事実が発覚。ザフィーラは海水が嫌いなのか。
シートの上に腰を下ろし、皆の様子を見るが楽しんでるようで何よりだ。
ん?誰かこっちに来るな。
あれは……はやてか。
「何や、さっきから勇紀君おらんなー思たら休んでたんか?」
「ん。休憩中だ。そっちも休憩か?」
「せや。わたしは皆ほど体力無いからなー(そのおかげで勇紀君の側におれる口実になるんやけど)//」
俺のすぐ隣に腰を下ろすはやて。顔が少し赤いけど大丈夫なのだろうか?熱中症になったら大変だから水分補給させた方がいいな。
「はやて、麦茶あるけど飲むか?」
「飲む!…って言いたいんやけど麦茶なんて何処にあるん?」
俺が宝物庫を開き、麦茶の入ったペットボトルを取り出す。何も無い空間からいきなり出てきた事にはやてとザフィーラの表情は驚きのものになっている。
「ちょ!?勇紀君、今の何や!?新手の転移魔法か何かか!?」
「そういや、うちの家族とすずか、亮太以外には見せた事無かったよな。これが俺のレアスキルの一つ、
「…そういえばシュテルが言うとった。勇紀君には『荷物を収納するレアスキル』があるって。これがそのレアスキルなんやね」
「まあな。ほれ」
取り出したペットボトルをはやてに渡す。
実際には、『中にある宝具の原典(俺の場合は何故か普通の宝具もある)を撃ち出して攻撃する』というのが正しい使い方なんだが…。
まあシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリにはそんな使い方してる所を見せた事は無いから『荷物を出し入れ出来る便利なレアスキル』と勘違いされてても仕方ないか。『荷物を出し入れ出来る』っていうのも決して間違っている訳じゃないし。
「それにしてもこのペットボトルのお茶、よう冷えとるなあ。今さっきまで冷蔵庫に入れとったみたいや」
「
冷凍庫から解凍する前の食べ物やアイスなんかも
あ、そういやアイスも旅行前に買っておいたやつを宝物庫に収納してあったんだった。せっかくだし食べよう。
俺はアイスとスプーンを宝物庫から取り出す。
「何ちゅうか、便利やね。そのレアスキル」
「そうだな。家を引っ越す事になったとしても業者の人を呼んだりする必要も無い。お金を無駄に使わずに済むな」
パクッと一口。…うむ、『冷たくて美味しいです。』と本来なら思うのだろうがまだ俺の味覚は戻っていないのでそう思えない。
はやてはお茶を飲んで水分を補給している。二人(と一匹)で休憩していると他のメンバーも疲れたのか俺達のいるところに戻って来た。
「あー、疲れたー…っておい勇紀、オメー何食ってんだよ?」
「見ての通りアイスだけど?ちなみに東雲堂のアイスだぞヴィータ」
「何!?アイスがあんのか!?しかも東雲堂のか!?」
凄い反応だね。流石アイス好きの騎士様。
「食うか?まだ沢山あるけど?」
元々、皆で食べるためにいっぱい買ったんだし。東雲堂のアイスだからそれなりに値は張ったけど。
「当然だろ!!ここにきて『食わねー』なんて選択肢はねー!!」
「勇紀さん!リインも!リインもアイスが食べたいですぅ~」
「おにーちゃん!わたしもたべる!」
ヴィータ、リインは当然としてルーテシアも欲しいとねだってきた。他の皆にも視線を合わせると皆、首を縦に振って肯定の意を表す。
そこで全員分のアイスとスプーンを宝物庫から出して皆に配る。はやて同様に
でもアイスを口にした瞬間、その表情も一瞬でご満悦のものへと変わる。流石、東雲堂のアイスだ。
一通り休憩した後は再び海に向かって突撃し、ひたすら海水浴を満喫していた………。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう訳で、空もオレンジ色に染まり始めてきた頃。
「今日はこれぐらいにして皆別荘に戻るわよ。夕食食べる時間が無くなるから」
アリサの一声で皆も頷く。
「ねえねえアリサ。晩ご飯もレストランで済ますの?」
「そのつもりよ。別荘には食材とか置いてないから」
「おおー!またあの美味しい料理が食べられるんだね!!」
口元に涎が垂れ始めたレヴィ。
「そういう事よ。だから早く別荘に戻ってまずは身体を洗うわよ。海水を落とさないといけないから」
「ルーは私と一緒に身体を洗いましょう」
「はーい!」
「じゃあ、僕は先に別荘に戻るから皆も早く来てね!」
そう言うや否や一足先に別荘向かって走り出すレヴィ。その後を俺達は歩いて着いて行く。ルーテシアはシュテルと手を繋いで仲良く歩く。
アリサの指示で30分後にまた玄関前に集合と言われた後、俺も自分の部屋に着くと早速浴室のシャワーを使い、海水を洗い流す。しっかりと身体を洗った後でシャツと短パン姿になり、宝物庫から取り出したドライヤーで髪を乾かす。
コンコン
「勇紀君、私だけど入ってもいいかな?」
声の主はすずかだった。
「ん、いいぞ」
『失礼します』と一声掛け、扉を開けてすずかが入ってくる。
「どうしたんだ?」
「玄関に集まるまで少し時間あるから勇紀君とお話でもしようかと思ってたんだけど迷惑だったかな?」
「いや全然。俺も特にする事無かったから。それよりそこで立ってないでこっちきて座れば?」
俺が腰掛けているベッドの表面をポンポンと軽く叩いて『ここに座れ』と促す。
「あっ、うん。し…失礼します//」
若干頬を染め、緊張した感じですずかが俺の隣に腰掛ける。
「それで話って言うけど何話せばいいんだ?」
「えーっと、何話そうか?」
「話題考えて無かったの!?」
「あっ!ち、違うよ!その、頭の中が真っ白になっちゃって何を話そうとしてたのか忘れちゃって…」
すずかはさっきからガチガチに固まってるな。
「そこまで緊張する事か?もっと気楽にしてくれよ」
「む…無理だよ(勇紀君こんなに近くにいるんだもん。……嬉しいけど)///」
むー。どうしたもんかねえ。あ、よく見たらすずかの髪の毛…
「すずか、ちょっと動かないでくれ」
「えっ?」
すずかの返事を待たずにすずかの後ろに回り込んでドライヤーの温風をあてる。
「まだ髪の毛が若干湿ってるな。乾かしてやるからそのままでいてくれ」
「う…うん。ありがとう//」
温風をあてながら宝物庫にある櫛を取り出し、少し髪を梳いてやる。程無くして髪が乾いたのでドライヤーの電源を切り、櫛も宝物庫に直した。
「もういいかな…髪も乾いたし。あっ、勝手に髪の毛少し梳いたけど良かったのか?」
「べ…別にいいよ。私も心地良かったし。それにしても勇紀君、女の子の髪の毛梳くのに随分手馴れてるね」
「たまにレヴィの髪の毛梳いてやってるからな」
「…むう(レヴィちゃんズルいよ)」
あれ?何かご機嫌ナナメ?
「勇紀君、もうすぐ時間だから行こ」
「あ、ああ…」
立ち上がったすずかが俺の手を取って引っ張る。
……俺、何もやってないよね?
夕食も食べ終え日も沈み、既に時計も午後8時を回った今、俺達は再び別荘前の砂浜にいる。その理由は…
「見て見てフェイト!これスッゴイ綺麗だよ!」
「姉さん、振り回しちゃ危ないよ」
「あ…消えちゃった。はやて、僕にも新しいやつちょうだい」
「じゃあ、これでええか?」
「はやてちゃん、リインにも新しい花火下さいですぅ~」
「ルー、花火は人に向けてはいけませんよ。火傷すると大変ですから」
「はーい」
花火を満喫しております。
「やっぱ夏といえば花火よね」
「定番の風物詩だからな」
「私は皆がやってる様な花火よりこっちの線香花火の方が好きだな」
レヴィ、アリシアを始めとするテンションの高い元気なメンバーは派手な花火を中心に楽しんでおり俺、アリサ、すずかのようにのんびり過ごしてるメンバーは少し離れた所にいて、線香花火で楽しんでいたりする。すずかも夕食前は不機嫌だったが今はそうでもない。期限が直ってくれて良かった。
「ていうかアンタ本当に準備いいわね。花火まで持ってきてるなんて思わなかったわよ」
「準備したのは俺じゃなくレヴィだぞ」
ディアーチェが言うにはデパートへ水着を買いに行った際にレヴィが『花火もやりたい』と言って買い込んだらしい。
「でも皆、楽しんでるみたいだし私はレヴィに感謝なの」
「その言葉はレヴィに直接言ってやってくれなのは。アイツの財布から消えていったお小遣いもその一言で浮かばれるだろうよ」
買い込んだ後で俺に泣きついて来月の小遣いの前借りを催促してきたのは記憶にまだ新しい。勿論、前借りなんて認めなかったけど。
「でも
「そもそも打上花火なんてお店で売ってないと思うの」
「そんな事俺に言われてもな…あの打上花火の玉は『知らないおじさんに貰ったんだ』とか言ってたし」
知らない人に物なんて貰うなよ。その人もその人で何で打上花火なんだ?訳が分からん。
「まあ折角だし打ち上げましょうよ」
「いや、ホントに打上花火かどうかも分からない以上危険だと思うんだが…」
「その時はアンタが魔法で何とかしなさいよ」
「まあ、危険そうなら何とかするけどさ。今のままだと打ち上げられん」
「「「何で?(なの?)」」」
なのは、アリサ、すずかが声を揃えて聞き返してくる。
「まず打ち上げるための
まさか砲丸投げみたいに投げて空中で着火させる訳にもいかんだろう。それに許可証持たんとやったら捕まる。
「心配ご無用ですぞ長谷川様」
「「うおっ!?(にゃっ!?)」」
突然背後から掛けられた声に俺となのはがビックリして声を上げる。
振り返った先にいたのは執事の鮫島さんだった。
「円筒を始めとして必要な物は全て揃えておきました。それとコレを」
鮫島さんの少し後ろには確かに打上花火をするための道具が全て揃っていた。
数秒前まで何処にもそんなの無かったよな?
後、鮫島さんが見せてきたのは『煙火消費保安手帳』……打上花火の使用許可証だった。
「流石ね鮫島」
「恐縮ですお嬢様。仕える主の要望には何であれ全力で応えるのが執事という職ですから。それとコレらの資格を取得するのは執事として当然でございます」
それでも人間の出来る事に限界ってあると思う。それにただの執事がわざわざ取る資格でも無いと思う。
「やっぱり鮫島さんは凄いですね。うちのノエルでも最速で1分弱かかりますから。資格は持ってるんですけどね」
そしてすずか。1分弱でこれらの物全て揃えるなんていくらノエルさんが自動人形でも無理だろ。それとノエルさんも『煙火消費保安手帳』持ってんの!?
「…なのは。俺の執事やメイドに関する一般知識って間違ってんのかな?」
「…勇紀君。私も執事さんやメイドさんに関する一般知識に自信が無いの」
「そんな事今はどうでもいいでしょ?打上花火が出来るんだからはやくその玉鮫島に渡しなさいよ」
「……はいはい。鮫島さん、お願いします」
ややテンション低下中の俺は鮫島さんに渡すと鮫島さんは打上の準備をし始める。
「かしこまりました。それと危険ですので少し離れて貰えますか?」
一応円筒があるところからはそれなりに距離があるけど鮫島さん曰くもう少し離れておかないと危ないとの事なので俺達はレヴィ達のいる所まで移動する。
「あれ?ユウ達じゃん。どったの?」
「お前が貰った打上花火を打ち上げるんだよ。それで円筒に近すぎると危険だからって鮫島さんに言われてコッチ来た」
「おお!!遂にアレが見れるんだね?」
元々の貰い主であるレヴィはこの打上花火を誰よりも楽しみにしていたからな。瞳をキラキラ輝かせながら空を見上げて今か今かと待っている。俺とレヴィの会話を聞いていた他の皆も夜空を見上げ、その時を静かに待つ事数分…。
ドーーーーン
大きく綺麗な色の花火が夜空に咲いた。
「「「「「「「「「「綺麗~~」」」」」」」」」」
夜空に打ち上げ、円状に広がった花火はそこいらの花火大会で見られる打上花火より綺麗だった。
「どうだった皆?僕が貰った打上花火は」
「凄く良かったよレヴィ」
「うん。あんなに綺麗な花火は初めて見たよ」
フェイトとすずかは花火について絶賛してる。他の皆も同じ様にレヴィを褒め称えている。俺も褒めてやりたいがあの打上花火を手に入れた経緯を思い出すとなあ…。
クイクイ
「ん?」
シャツの裾を引っ張られる。
「おにーちゃん」
ルーテシアだった。さっきまではシュテルと一緒に花火を楽しんでたのにいつの間にか俺の隣に来てた。
「どうしたルー?」
「ねむい…」
瞼は半分閉じ、ユラユラと揺れながら答える。
そういやルーテシアはいつも寝るのが早いからな。9時ぐらいにはもう寝ている。今日は朝からずっとはしゃいでいたし海で思いきり遊んだから疲れてるんだろう。
「そっか。じゃあ今日はもう部屋に戻って寝ような?」
「…ぅん」
ヒョイっとルーテシアを抱き上げ頭を撫でてやると、そのままルーテシアは目を閉じて小さな寝息を立て始めた。
「悪いけどルーが寝たから先に戻るな。お前等まだ花火すんのか?」
花火はまだそれなりに残っているし、まだルーテシアみたいに眠そうな奴は他にいない。
「どうしよっか?」
レヴィが皆に聞く。
「今日はもう切り上げてもええんとちゃう?残っとる分はまた明日やればええ訳やし」
はやての意見に『そうだね』と他のメンバーも頷く。これでお開きみたいだ。
「ユウキ、ルーを着替えさせますので私の部屋に連れてきて下さい」
「ん、分かった」
シュテルの言葉に頷き、眠ってるルーテシアを抱っこしながら俺達は別荘に戻る。
こうして別荘での初日は終わりを迎えるのだった………。
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。