No.513977 ソードアート・オンライン ロスト・オブ・ライトニング 第六話 仲間はアイテムじゃないやぎすけさん 2012-12-01 18:00:00 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:2118 閲覧ユーザー数:2031 |
大地視点
現実に戻ってきた俺は、PCの解析結果に目を通す。
大地「何々・・・おっ、あったあった・・・ってマジかよ・・・」
PCの画面には、SAO未帰還者たちのログアウト方法が表示されていた。
大地「ゲーム内の研究所にあるコンソールから、ログアウトボタンを押すしかない・・・結局世界樹まで行くしかないか・・・」
こちら側でログアウトさせられるのならば、またハッキングを掛けてやろうと思っていたが、須郷も厄介な作りにしていたようだ。
仕方なく、俺は次の作業に移る。
大地「緊急事態用に作っておかないとな・・・」
俺が行っているのは、レクトにハッキングした時に入手したALOのバグ修正プログラムに改造を施してあるプログラムを作成し、それをオブジェクト化するという作業だ。
作業の約95%が完了しているが、ここまで完成させるのに18時間以上掛かっている。
こんなプログラムは、作ったことが無いためデータが無い。
第一こんな無茶なものを作ろうとする物好きは、そうそういない。
大地「これをここで・・・これはここじゃないと
ようやくプログラムは完成した。
これで、確実に世界樹を攻略できる。
大地「ただ、このままだと使い物にならないな・・・まあいいか。
そう言ってから、俺はプログラムをナーヴギアに転送し、自分のアイテムストレージに納めた。
その後時計を確認すると、すでに時間は午後2時を回っている。
大地「風呂に入って食事したら、すぐ出発だな・・・」
俺は部屋から出ると、一階に下りて風呂に入り、その後作り置きしておいたサンドイッチを食べてから部屋に戻る。
大地「やばい!もう2時50分だ!」
急いでナーヴギアを被ると、ベッドに横たわり早口で口にする。
大地「リンク・スタート!」
虹色のリングを通り抜け、俺は妖精の世界へと飛び込んだ。
デュオ視点
目を開けると、泊まった宿屋の天井が見える。
デュオ「行くか・・・」
俺はベッドから飛び起きると、愛用のロングコートと大剣、そして先ほど作った
一階に下りて見ると目の前のテーブルには、すでに二人の妖精の姿がある。
デュオ「悪い・・・遅くなったか?」
キリト「いや、俺も今来たところだよ」
リーファ「あたしも。それじゃ、行こっか。」
リーファがそう言うと、キリトとほぼ同時に立ち上がる。
キリトは、自らの胸ポケットに話しかける。
キリト「おい、ユイ。行くぞ。」
呼び出しに答えた長い黒髪の小妖精は、キリトの胸ポケットからちょこんと顔を出す。
デュオ「ははは、おはよう、ユイ。」
ユイ「ふぁぁぁぁ・・・?・・・おはようございます・・・」
まだ眠たそうに欠伸をするその姿は、本当の子供のように愛らしい。
リーファ「ついてきて。」
俺たちは【すずらん亭】を出ると、リーファの案内に従って俺たちが昨日激突した巨大な翡翠色の塔へと向かった。
塔の中、一階は商業区画らしく、円形のロビーを取り囲む壁に所狭しとショップが並んでいる。
中央には二本のエレベーターらしきものが設置され、ひっきりなしに人が出入りしていた。
この世界では今は朝だが、現実世界では今は夕方ゆえに、人もそれなりに多い。
俺たち3人がエレベーターに乗ろうとした時、後ろから声が聞こえた。
?「リーファ!」
振り返って見ると、重厚そうな銀色のアーマーに身を包み、腰に大きめのブロードソードを吊った、背丈の高い男がこちらを見ていた。
相手を見たリーファは、まずい相手に見つかったといった顔をする。
リーファ「こんにちはシグルト・・・」
シグルドと呼ばれたこの男は、どうやら簡単に退く気は無いようだ。
その様子に、リーファは明らかに作った笑顔でそう切り出した。
挨拶を返す事も無く、シグルトは口元をきつく結び、うなり交りの低い声で言う。
シグルド「パーティから抜ける気なのか?リーファ・・・」
リーファはしばし迷った様子を見せたが、やがて一つコクリと頷いた。
リーファ「うん。まぁね・・・貯金もだいぶできたし、しばらくのんびりしようかと思ってるの。」
シグルド「勝手だな。残りのメンバーが迷惑するとは思わないのか?」
リーファ「パーティーに参加するのは都合のつく時で、いつでも抜けていいって、そういう決まりだったでしょ!」
シグルド「だが、お前は俺のパーティの一員としてすでに名が通っている。理由もなく抜けられてはこちらの面子に関わる!」
俺は半ば呆れた様子で二人の事を見ていたが、シグルトの言い回しはどうにも少々一方的過ぎる。
リーファも明らかに不満そうだが、言葉を失ってしまって動かないので、俺はリーファを庇うためにわざと聞こえるように呟く。
デュオ「面子ねえ・・・」
シグルド「何・・・!?」
案の定、気の短そうなシグルドは俺の挑発にまんまと乗ってきた。
俺は、そっぽ向いたままどうでも良いように答える。
デュオ「嫌だね~パーティーに1人入る抜けるで殺気立ちやがって。どっかの小悪党によく似てるな・・・」
シグルド「どういう意味だ・・・?」
キリト「・・・仲間はアイテムじゃないってことだよ。」
俺とシグルドの間にキリトが割り込む。
シグルド「何だと・・・!?」
キリト「他のプレイヤーを、あんたの大事な剣や鎧みたいに、装備欄にロックしとく事は出来ないって意味だよ。」
シグルド「きっ……貴様らっ!」
この言葉に、シグルトは頭に血が上ったらしく、すぐに顔を真っ赤に染めて腰の剣に手を伸ばす。
シグルド「クズ漁りのスプリガンごときが、図に乗るなよ!!」
デュオ〈インプの俺には何もなし・・・?〉
殺気立った目でこちらを睨んでくるシグルドを、俺はふざけた言い方でさらに挑発する。
デュオ「その膨れ面は何だ?ん?抜いてみろ。抜け~シグルド・・・」
シグルド「こ、の・・・
予想通りと言うか、シグルトは絶叫とともにブロードソードを引き抜いた。
デュオ〈待ってました。〉
心の中で叫んでから、今度は声に出して騒ぎ立てる。
デュオ「あぁぁぁ・・・!!抜いた抜いた抜いた!!皆さ~ん!シグルドさんは気に食わなければ、無抵抗の人でも構わず斬ろうとする怖い人ですよ~!!」
俺の言葉で、周りにいたプレイヤーの視線が集まる。
シグルドの怒りは、すで限界点を突破しているのだろうが
向こう側にもプライドがあるらしく、仲間が仲裁に入り思いとどまったようだ。
シグルド「せいぜい外では逃げ隠れることだな・・・リーファ」
歯噛みをしながらシグルドは俺にそう言った
シグルド「・・・今俺を裏切れば、近いうちに必ず後悔することになるぞ。」
リーファ「留まって後悔するよりはずっとマシだわ。」
シグルド「戻りたくなったときのために、泣いて土下座する練習をしておくんだな。」
それだけ言うとシグルドとその仲間たちは去って行った
デュオ「ざま~みやがれ、雑魚が。」
リーファ「残念ながら、彼はあれでもシルフのトップクラスのプレイヤーよ。」
デュオ「リーファより強いわけじゃないだろ?どう見ても装備で強くなってるだけで、プレイヤーそのものの強さは大したこと無い。」
リーファ「結構ひどいこと言うね・・・それよりごめんね、妙なことに巻きこんじゃって。」
デュオ「気にするなって。俺もたまにはキャラを変えてからかってみたい時があるんだよ。」
リーファ「それでも、あたしの問題に巻き込んじゃったわけだから・・・」
なおも申し訳なさそうにするリーファを俺はからかってみる。
デュオ「お詫びがしたいっていうなら、俺にキスしてみて。」
リーファ「なっ!?・・・バカじゃないの!?」
思った通り、そういったことには経験が無いらしいリーファは顔を赤くする。
デュオ「そうやって元気にしてたほうがいいと思うぞ。」
キリト「デュオの言う通りだよ。元気な方がリーファらしい。」
キリトも俺の意見に賛同してくる。
リーファ「さ、さあ行くわよ。」
リーファはそう言って話を打ち切ると、俺たち3人はエレベータの中に乗りこんで上に上がった
塔の天辺に着くと、俺たちは一気に近くなった天空を見上げる。
キリト「・・・いい凄い眺めだな・・・」
リーファ「ほんと、手が届きそうだよね・・・」
キリトがしみじみと言うと、リーファは右手を空にかざして言った。
リーファ「この空を見てると、ちっちゃく思えるよね、いろんなことが。」
俺は気付かれないように、そっと視線をリーファに向ける。
すると、少し寂しそうな笑顔でリーファは言った。
リーファ「・・・いいきっかけだったよ。いつかはここを出ていこうと思ってたの。一人じゃ怖くて、なかなか決心がつかなかったんだけど・・・なんで、ああやって、縛ったり縛られたりしたがるのかな・・・せっかく、翅があるのにね・・・」
リーファの問いに、俺は思ったことを素直に口にした。
デュオ「人間は自分に無いものを求める。仮想空間はそれを具現化したみたいな世界だ。仮想空間だから、現実に存在しない自分を求める。そして、現実では得られないことを得ようとする。ただの自己満足でしかなくても、そうだとわかっていても望んでしまう。いくら翅があっても、それが人間である限り、それは変わらない。」
ユイ「複雑ですね、人間は。」
ユイはキリトの肩に着地すると、腕を組んで首を傾げた
ユイ「ヒトを求める心を、あんなふうにややこしく表現する心理は理解できません。」
リーファ「求める・・・?」
ユイ「他人の心を求める衝動が、人間の基本的な行動原理だとわたしは理解しています。ゆえにそれは、わたしのベースメントでもあるのですが、わたしなら・・・」
ユイはキリトの頬にキスをした
ユイ「こうします。とてもシンプルで明確です。」
リーファは呆然している。キリトは苦笑い。
俺は、呆れながらユイに言った。
デュオ「人間がみんなそんな単純だったら、何の争いも起きないさ。」
ユイ「手順と様式ってやつですね。」
キリト「頼むから、余計なこと覚えないでくれ・・・」
デュオ「一体、どこからそんなことを吸収してるんだ・・・?」
リーファ「す、すごいAIね・・・プライベートピクシーってみんなそうなの?」
キリト「いや、こいつは特に変なんだよ。」
ユイ「あっ、酷いです。」
頬を膨らませて再びキリトの胸ポケットに飛びこんだユイを見て、俺たちは声を出して笑った。
笑いながら、リーファは遠くを見るような目線で再び空を仰ぐ。
リーファ「・・・人を求める心、か・・・」
リーファはそう言って顔を赤らめながらこちらを見てくる。
デュオ「何だ?何か言いたいことでもあるのか?」
リーファ「う、ううん・・・さ、そろそろ出発しよっか。」
俺の問いに、リーファは手をぶんぶん振って否定する。
キリトはその言葉にうなずくとユイを胸のポケットにしまった。
風の塔の展望台の中央にある
その時、またも後ろから声を掛けられた。
?「リーファちゃん!」
そう叫んだのは、昨日1人コントをやっていた少年、レコンだった。
リーファは浮かせていた足を再び着地する。
リーファ「あ・・・レコン。」
レコン「ひ、ひどいよ、一言声かけてから出発してもいいじゃない・・・」
リーファ「ごめ~ん、忘れてた。」
レコンはガクリと肩を落とすが、すぐに持ち直し真剣な顔で言った。
レコン「リーファちゃん、パーティー抜けたんだって?」
リーファ「その場の勢い半分だけどね。あんたはどうするの?」
レコン「決まってるじゃない!この剣はリーファちゃんだけに捧げてるんだから!」
レコンは腰の短剣を抜くと、横にして前に突き出す。
レコンの言葉を聞いた俺は、そっとキリトに耳打ちする。
デュオ「この外見だからまだ大丈夫だけど、俺たちが言うとしたらだいぶ痛い台詞だな。」
キリト「ああ・・・」
リーファ「え~、別にいらない。」
リーファの言葉に、レコンは一瞬よろけるが、メゲずに言った
レコン「ま、まあそういうわけだから当然僕もついてくよ・・・と言いたいとこだけど、ちょっと気になることがあるんだよね・・・」
リーファ「何・・・?」
レコン「まだ確証はないんだけど・・・少し調べたいから、僕はもうしばらくシグルドのパーティーに残るよ。・・・キリトさん、デュオさん。彼女、トラブルに飛び込んでく癖があるんで、気をつけてくださいね。」
キリト「あ、ああ。わかった。」
デュオ「自分からトラブルを引き起こすキリトよりはマシさ。」
キリト「あっ、ひでえ・・・」
レコン「あ、それと、言っておきますけどね。彼女は僕のンギャ・・・!?」
レコンは何か言いかけたが、リーファが彼の足を思いっきり踏みつけた事によってその先は聞き取れなかった。
リーファ「余計な事言わなくて良いのよ!しばらく中立域に居るから、なんかあったらメールね!」
早口でまくしたてるように言うと、リーファはすぐに空中に飛び上がる。
俺たちもそれを追って飛び上がると、リーファが振り返り、
レコンに向って、大きく右手を振りながら叫ぶ。
リーファ「あたしがいなくても、随意飛行の練習はちゃんとしなさいよ!あと、一人でサラマンダー領に近づいたりしたら駄目だからね!じゃあね!」
レコン「リーファちゃんも元気で!すぐ追いかけるからね~!」
リーファは視線を戻すと、すぐに前を向いて滑空に入った。
俺とキリトは、リーファの左右に並んで飛行する。
キリト「彼、リアルでクラスメイトだっけ?」
リーファ「・・・まぁ、一応ね。」
キリト「ふうん・・・」
楽しそうに笑ったキリトに、リーファは頬を染めつつ、口をとがらせて訪ねる。
リーファ「なによ。そのふうんって・・・」
キリト「いや、いいなぁと思ってさ。」
キリトがそう言うと、胸ポケットから顔を出したユイが言った。
ユイ「あの人は、リーファさんが好きなんですね。リーファさんはどうなんですか?」
リーファ「し、知らないわよそんな事!」
リーファは余計に頬を朱くするとスピードを上げる。
デュオ「やれやれ・・・」
俺がそう呟いてから、2人においていかれないように、スピードを上げる。
後ろを見ると、翡翠の街がどんどんと遠ざかっていく。
リーファ「さ、急ぐよ!一回であの湖まで行こう!」
キリト「ああ!」
デュオ「OK!」
俺たち3人は、天高くそびえ立つ世界樹に向けて翅を鳴らした。
あとがき
途中でデュオがおかしくなったのは、寝てないせいです。
ちなみに“どっかの小悪党”とは、SAOでキリトを殺そうとして、結果デュオに爆破されたあの男です。
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デュオが少し壊れます。