No.512892

そらのおとしもの  棒旗遊戯(ポッキーゲーム)3

水曜定期更新
ポッキーゲームその3
アストレアさんVSイカロスさん
アストレアさんお利口の秘密が今明らかに

続きを表示

2012-11-28 00:02:36 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1443   閲覧ユーザー数:1400

 

そらのおとしもの  棒旗遊戯(ポッキーゲーム)3

 

 

「……さあ、決着をつけましょう。同じエンジェロイドの先輩の慈悲として死に掛けのアストレアに私がとどめを刺してあげます」

 目の前に聳えるはver.2と化して大幅な能力値UPを達成した空女王イカロス。

「お腹が空いて凶暴化している私の実力を見せてあげますよ」

 右手に唯一の武器であるクリュサオルを構えて精一杯強がって答えてみせるアストレア。

 戦力比は1対100かそれ以上の開き。

 けれど、命を賭している以上、戦力差がどうとか言っている場合ではなかった。

「それにこの勝負は……ポッキーを折った方が勝ちなのですから」

 アストレアの視線はイカロスの右手に握られているポッキーへと集中していた。

「戦闘で勝つ必要なんてないんですから」

 アストレアは自身の唯一の勝ち目に賭けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 棒旗遊戯開始後、アストレアは自身の根拠地である山や川方面には移動せず、繁華街を移動し続けた。

「カオスはきっと師匠か守形が倒すはず。なら、私はイカロス先輩との決戦に備えなくちゃ」

 純粋な戦闘力だけで言えば、カオスの方がイカロスよりも強い。けれど、カオスの知能は幼い子どもと何も変わらない。

 となれば、美香子や守形にとってカオスは御すのが難しい相手だとは思えなかった。

 一方で、守形にイカロスをどうこうできる方法があるとは思えなかった。美香子なら、悪知恵を用いてイカロスを屈服させる方法を有している可能性はあったが。

 となると、イカロスを倒せる可能性を有しているのはアストレアだけ。少なくとも彼女はそう判断した。

「でも、幾ら私と先輩が同じ戦闘用エンジェロイドだとしても、まともに戦ったんじゃ絶対に勝てない」

 サイヤ人並のパワーアップを果たしてしまったイカロスを相手にまともにぶつかって勝てる筈はない。

 でも、勝たなければいけない。

 そんな時にアストレアの脳裏に思い浮かんだのが師である美香子の口癖だった。

 

『できるだけ汗をかかず~危険を最小限にし~♪ バクチをさけて~♪ 戦いの駒を一手一手動かす♪ それが真の悪なのよ~♪♪』

 

 アストレアに元来悪属性はない。

 けれど、師である美香子の戦いの極意はアストレアにも影響を与えていた。

 そして──

「オレガノからもらったおむすびを食べて以来、師匠の考え方がすごく読み取れる。オレガノの奴、やっぱりおむすびに何か仕込んだわね」

 オレガノの言うことをまともに信じてしまった自分に腹が立つ。

 アストレアは知らなかったが、オレガノがおむすびに篭めたのは邪悪分だった。

「でも、絶対に負けられないこの勝負。師匠の考えが分かるのはすごく有利っ!」

 自身の言葉に力を得ながら低空飛行を続ける。

 

「イカロス先輩に全力を出させちゃいけない。そんなフィールドを選ばなくちゃ」

 アストレアはイカロスが周囲を気にして攻撃に躊躇する戦場を選択しようと思った。

 そして、イカロスが躊躇する条件とは何か考える。

 答えは一つしかなかった。

「男達、特に美少年がいる場所で先輩は全力攻撃ができないはず」

 イカロスの野望が人類総BL化計画であることは本人が常々口にしている。そんな彼女にとって男達を自分の手で傷つけてしまうこと何より嫌なことに違いなかった。

 だから、男達が多く集まる町の中心部に留まり続けるのが得策だと判断した。

 そして実際にアストレアの判断は間違っていなかった。

 イカロスは地上付近を低空飛行するアストレアを攻撃してこなかった。空美町の上空にその姿を堂々と晒しているのにも関わらず。

 

 

 一方で地上のアストレアは、カオスの猛攻を逃げることに成功したごく少数の参加者と戦うことになった。

「アストレアの嬢ちゃん。俺が一生遊んで暮らせる金を手に入れる為……覚悟してもらうぜぇっ!」

「たこ焼き屋のオヤジっ!?」

 オヤジの突然の襲撃にアストレアの姿勢が大きくぐらつく。

 けれど、最初の一撃さえ避けてしまえば後はこちらのものだった。

「クリュサオールっ!!」

 唯一にして絶対の武器を振り回し、オヤジのポッキーを真っ二つに粉砕する。

「む、無念……っ」

 ガックリと崩れ落ちるオヤジ。

「やるな。だが、この数学の竹原の知略には敵わんぞ」

「体育教師の松岡のラフプレイも甘く見てもらっては困るな」

「化学教師のトリッキープレイもとくとご覧あれ」

 更に現れる棒旗遊戯参加者たち。

「私は……負けないっ!」

 アストレアは右手の必殺の剣を握り直して男達へと向かっていった。

 カロリー消費は危険領域へと達していった。だが、負けるわけにはいかなかった。

 

 

 アストレアが参加者たちを8人打ち倒した時だった。彼女の前にとても厄介な相手が現れたのは。

「ブラボ~ブラボ~。さすがはアストレアさん。実に見事な戦いぶりでした」

「鳳凰院・キング・義経……」

 アストレアの前に現れた白い学生服に身を包んだ長身の美少年だった。額に嫌な汗が流れる。

「何で、義経がポッキー握っているの? 鳳凰院家がこの大会を開いているんでしょ?」

 警戒しながら義経に尋ねる。

「今回の大会の主催は全面的に月乃に任せているからね。僕は参加者として出場し、妹の演出を影から盛り上げていくのさ」

 義経は髪を掻き揚げて気取ってみせた。

「義経にはどんな望みがあるって言うの?」

「はっはっは。僕の望みなど、この世界で最も美しい女性、イカロスさんとの結婚に決まっているさ」

 義経は歯をキラキラと光らせた。

「それ、鳳凰院家の力を使っても叶えられない望みじゃないのよ」

「否。イカロスさんは、Mr.桜井のクローンとBLな毎日を送れば、指1本触れないという条件で僕の妻となることを了承してくれた」

「それでアンタは満足なの? そんなの夫婦って全然言えないじゃないの!」

「フッ。夫婦でもプライベートは大事なものなのさ」

 義経は澄み切った瞳でアストレアを見ている。騙されていることにさえ気付かない瞳。

 

「まあ、そういうわけで僕とイカロスさんの結婚の障害になるアストレアさんにはここでリタイアしてもらうよ」

 義経は瞳を細めた。

「トランザム(脱衣)っ!!」

 義経の全身が眩い光に包まれて一瞬にして衣服が消失する。

 光が収まった後には、全裸で雄雄しく立つ義経の姿があった。

「さあ、アストレアさん。僕のトランザムと貴方の身体能力。どちらが上か勝負です」

 自信満々に告げる義経。

「クウウっ!!」

 アストレアもまた、自身の不利を悟らざるを得なかった。

 トランザム状態の人間に勝つのは戦闘用エンジェロイドといえでも困難。

 ましてアストレアはカロリー不足によっていつまでまともに動けるか分からない。

 しかし、状況が不利だからといっても諦めるわけにもいかない。

「私は優勝しなくてはいけない。こんな所で負けられない。どうしたら?」

 脳内で少ない知力を使って作戦を考える。

 その時、再び美香子の言葉が頭をよぎった。

 邪悪回路の発動だった。

 

『できるだけ汗をかかず~危険を最小限にし~♪ バクチをさけて~♪ 戦いの駒を一手一手動かす♪ それが真の悪なのよ~♪♪』

 

「危険を最小限に……ですね。師匠」

 邪悪回路の発動。

 空腹のせいで余計なことが考えられずに、思考が鋭利に研ぎ澄まされていく感覚。

 この2つの条件が重なることでアストレアは普段とは全く違う思考回路となっていた。

 

「この男と戦わずして勝つ……」

 義経に関するデータがアストレアの脳裏に思い浮かぶ。

 ナルシスト、女好き、女にだけやたら優しい、女に甘い、女の言うことなら何でもいうことをきくetc.

「そっか」

 アストレアの瞳が細くなった。

「答えなんて簡単だったのよ」

 アストレアはクスッと笑った。

 そして──

「あ~~お腹空いちゃったなぁ~~。誰かポッキー持っていたら私に食べさせてくれないかな~? そうしたらおでこ撫で撫でぐらいしてあげるのにな~」

 義経に向かって大声でお願いしてみた。

「さあ、アストレアさん。僕がこの手に持っているポッキーをお食べください。美味しいですよ」

 義経は自分のポッキーを髪を掻き揚げながらアストレアへと差し出した。

「うわ~い♪ ありがとう~♪」

 アストレアは義経のポッキーをばりばりと噛み砕いて口の中へと収めた。

「フッ。この鳳凰院・キング・義経。自身の敗北に一片の悔いもありません」

 アストレアに頭を撫でられながら義経は自己陶酔を続けていた。

 

 

「……アストレアがチビッチのような小賢しくてビッチな策略を使うとは意外でした。ビッチ極まりないですね」

 上空から声が聞こえてきた。

「……これ以上、エンジェロイドにビッチが増えて評判が落とされるのは我慢なりません。羽1枚残さずに殺してあげますから、空に上がってきなさい」

 イカロスの声は有無を言わさない迫力に満ちていた。

「確かに、時間が経てば経つほどお腹が空いて不利になるのは私の方。これ以上逃げ回っていても、意味はないですね」

 アストレアはゆっくりと空に向かって上がっていく。

 イカロスに対する必勝の策も練ることができないまま、空女王と戦うことになった。

 

 

 

「……はじめに言っておきます。私はアストレアのポッキーを一切狙いません。途中でポッキーが折れて戦闘が終了してしまっては困りますので」

 空女王は瞳を紅くして自身の戦闘スタンスを説明している。

「……アストレアの消滅とポッキーの消滅は同義になると思ってください」

 要するに、アストレアを殺したいのでポッキーには危害を加えないということだった。

「それはご親切にどうも」

 アストレアは左手に握ったポッキーを見る。

 絶命しない限り、自分のミスで折ってしまったりしない限り、ポッキーは安全そうだった。

「なら、私は、イカロス先輩のポッキーを是が非でも粉砕します」

 イカロスの右手に握られているピンク色のポッキーを睨む。

「……アストレアが私を倒すのは不可能。故に妥当な判断ではあります」

 イカロスは挑発的にポッキーをよく見えるように振ってみせた。

「……でも、私と貴方の性能の差はそんなハンデ程度では埋められません」

 イカロスの周囲に攻撃力精度共に進化したアルテミスⅡが無数に出現する。

「……アストレア。貴方に残された選択肢は…死、のみです」

「そんなこと……やってみなくちゃ、分かりませんよっ!」

 アストレアは自分からイカロスに向かって突進していく。

 中長距離攻撃主体のイカロスに対してアストレアには遠隔攻撃の兵装が一切ない。

 危険を承知で爆弾の海へと飛び込んでいくしかなかった。

 

 

 空美町の大空に爆竹が立て続けに鳴り響くような爆砕音が木霊する。

「どうしました、アストレア? 逃げ回っているだけでは私には勝てませんよ」

 戦闘が開始してからイカロスは1cmたりとも動いていない。

 爆煙の中心に悠然と静止している。

 対するアストレアは

「ちっくしょぉ~~~~~~っ!!」

 イカロスに突撃を何度も試みるも、全く近付けないでいた。

 アルテミスⅡの威力は強大。傷付くのを覚悟の上で特攻という戦術をアストレアは取れなかった。イカロスに接近する前に五体がバラバラになるのは目に見えていた。

 誘導弾を剣で切り落としながらイカロスの周囲を円周飛行しながら隙を窺う。

 しかし、イカロスからは無限にアルテミスⅡが放出され続け、時間が経る度にむしろ自分を追い掛けてくるミサイルの数は増えてくる。

「早く、早く何とかしなくちゃ……っ」

 ミサイルの数は増える。一方でそのミサイルの爆発によってアストレアは傷付いていた。

 クリュサオルを握る右手にもうほとんど感覚がない。

 イカロスの攻撃はアストレアの右腕に集中していた。

「イカロス先輩。本気で私を殺しに掛かってるんだもんなあ」

 全く無傷の左腕、無事なポッキーを見ながら小さくぼやく。イカロスがアストレアを完全無力化して完全破壊するつもりに違いなかった。

 と、アストレアが自分の体の状態をチェックしている時だった。

 

「あっ!」

 力が入らなくなった右腕から必殺の剣が零れ落ちた。

 剣は空美町の地面に向かって自由落下を開始する。

「待って!」

 アストレアは慌てて追おうとする。

 すると──

「えっ? アルテミスが一斉に剣にぶつかって爆発していっている?」

 ミサイルが次々にクリュサオルにぶつかって爆発している光景を目撃した。

 数百発のアルテミスⅡが光子剣にぶつかって爆発。アストレアはミサイルの突撃が止んだ後でようやく剣を回収した。

「そっか。イカロス先輩は照準をこの剣に合わせているんだ」

 アストレアの左腕が全く無傷な理由は意外と単純明快だった。けれど、謎が分かったからといって状況が即座に好転するものでもない。

「こんな時、師匠ならどう戦うかな?」

 邪悪回路を再び発動させる。

 

『できるだけ汗をかかず~危険を最小限にし~♪ バクチをさけて~♪ 戦いの駒を一手一手動かす♪ それが真の悪なのよ~♪♪』

 

 美香子の黒い笑みと共にイカロスに勝つ為の作戦が思い浮かんでくる。

 アストレアは空を見上げた。

 

(ぐっひょっひょっひょっひょっひょ♪)

 

 大空から空美町を守る英霊となった智樹は相変わらず町の覗きに忙しかった。

「智樹には人質としての価値はない。クズだもんね」

 イカロスのメンタル面の弱点を突いた作戦を却下する。故人となった智樹に人質にするメリットはなかった。

「なら、別の作戦を……」

 考える。考える。

「ダメだ。これじゃあ、一手足りない」

 次善の作戦を発動させようにも、シミュレートだとどうしてもコマが揃わずに負けてしまう。

「どうすれば、どうすれば……」

 考えている間にもアストレアの周囲を取り囲むアルテミスの数は増えていく。

 そして──

「おっ、お腹が空いたぁ~~~~っ」

 イカロスとの戦闘で飛び回ったことによりアストレアの空腹は限界に達していた。

 現在の状態では後数分戦闘が続けば死んでしまうのは間違いなかった。

 カロリー(=ポッキー)が必要だった。

 

「……どうやら、下の決着がついたようですね」

 イカロスはボソッと声を出した。

「……ビッチ巨乳ダウナーと遊んでいるのも飽きました。死んでください」

 声と共にイカロスの頭上に2連砲の大砲が出現する。

「……ヘパイストスⅡ起動」

 一発でもエンジェロイドを完全に消失することが可能な大砲が2門。アストレアを狙っていた。

「アレさえ避けられれば私にも勝機は十分にある。でも、あれを避ける手段がない」

 先程のシミュレーション通りなら、アストレアはあの大砲に掻き消されることが決定していた。

「何か、何かないの?」

 アストレアが迷っている間にもイカロスは大砲の発射準備を進めている。

 アルテミスの数はますます増え、アストレアの空腹は限界に達しようとしている。

 けれど、打つ手がない。

 そして、イカロスは右手を挙げた。

「……さようなら、アストレア。生まれ変わったらBLを理解できるぐらいの知能は持ちなさい」

 イカロスがアストレアにとどめを刺す。

 その瞬間だった。

 

 

「うわぁああああああああああああぁっ!?!?」

 遥か上空から真っ白い布を羽織った翼の生えた男が2人の付近へと落ちてきた。

「何故、ベータと人間(ダウナー)の女なぞに悠久の栄華を誇ってきたシナプスの長である俺が駆逐されねばならんのだ~~っ!? しかも、ただの八つ当たりという理由で~~っ!!」

 男は哀愁を漂わせながら地面に向かって落ちていく。

 そんなシナプスのマスターに対してイカロスは

「……汚物は消毒です」

 ヘパイストスⅡを発射した。

「うわらばぁああああああああああああぁっ!!」

 男は真っ黒焦げになって地面へと墜落していった。

「……次弾発射まで20秒」

 イカロスは次の発射に備える。けれど、ヘパイストスはその構造上連続発射はできない。

「絶好のチャンスっ!!」

 アストレアは、イカロスがダウナー退治をしている隙を見逃さなかった。

「いっけ~~っ! クリュサオールっ!!」

 アストレアは自身の必殺剣をイカロスに向かって投げつけた。

 

「……フッ! そんな攻撃効きません。イージスⅡ展開っ!」

 イカロスが防御力の増した絶対障壁シールドを展開する。

 その直後、クリュサオル、更に剣を追って来たアルテミスの大群がイカロスを襲った。

「……無駄です」

 けれども、空女王は全くの無傷だった。

 ミサイルが爆発し尽くした所でシールドを解いて周囲の様子を窺う。

「……煙のせいで視界が効きません。レーダー探知に切り替え」

 レーダーでアストレアの位置を捕捉する。

 すると、アストレアはいた。

 予想よりも遥かに近い上空に。

「ワンワンワンワンワンワ~~ンっ!!」

 アストレアは何故か犬の鳴き声を発していた。

 上空なのに、犬の様に手足を使って駆けてきた。

 視界が効かない中、臭いだけを頼りにイカロスに向かって突撃を仕掛けて来た。

 それはまったくのデタラメだった。

 けれど、その血走った瞳は飢えたケモノを連想させた。

 そして、そんな風にアストレアのことを観察し続けていたことがイカロスにとって致命的な遅れとなった。

「バウバウバウバウバウバウバウ~~ンっ!!」

 素手の人間では飢えた野獣には敵わない。

 イカロスがそんな内容のテレビ報道を思い出すのと、右手に握っていたポッキーをアストレアに齧られるのは同時だった。

「カロリ~~~~っ、ゲ~~~~~トっ!!」

 アストレアが大空に向かって雄たけびを上げるのを聞きながら

「……まさかアストレアごときに後れを取るとは思いませんでした。食欲とは恐ろしいです」

 己の負けを認めるしかなかった。

 

 

 

「どうやら勝負が着いたみたいね~~♪」

 イカロスの下方から声が聞こえてくる。

 地上からではなく、煙幕のすぐ下から。

 この場から聞こえるはずがない少女の声が。

「イカロスちゃんが勝っていたら~~即座に一刀両断にしようと思っていたのだけど~。アストレアちゃんが勝ってくれて助かったわ~♪」

 とても物騒なことを述べながらその少女はイカロスの前へと姿を現した。

「……会長……さん」

「うふふふふ~♪ 命拾いできて良かったわね~イカロスちゃん♪ 長生きはしてこそ華だもんね~~♪」

 イカロスは石の仮面をつけたまま楽しげに笑う五月田根美香子の姿を見て驚かずにはいられなかった。

「……会長さん。その翼は?」

「空からゴミが落ちてきたんで~~再利用しただけのことよ~~。この仮面をつけているとね~~色々なものを取り込めるようになるのよ~♪」

 美香子の背中には漆黒の2枚の翼がつけられている。禍々しい邪気を放つ翼が。

「……納得です」

 イカロスは頷いてみせた。

「……それでは、その右手のビームセーバーは?」

 イカロスは美香子が右手に持つ、暗黒の光線を発する棒状のサーベルを見ながら尋ねる。

「イカロスちゃんってば~♪ これは私のポッキーに決まっているじゃないの~♪」

「………………納得です」

 イカロスは頷いてみせた。頷かなければイージスを展開する前に叩き切られる。イージスを展開しても叩き切られる。

 そう、判断した。

 

 

「さあ~最後まで残った者同士。最終決戦といきましょうか。アストレアちゃ~~ん♪」

 

「師匠~~~~っ!!」

 

 棒旗遊戯決着の刻が近付いてきていた。

 最終決戦に臨む2人を桜井智樹とシナプスのマスターが上空から優しく見守っていた。

 

 つづく

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
2
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択