まえがき　コメントありがとうございます。今回は一刀以外の乙女武将たちにスポットを当ててみました。孫堅、孫堅の配下も続々出てきます。漢女も大活躍！それではごゆっくりしていってください。

はぁ～、負けちゃったわ。けど、この出会いは大きいわね。天の御使い、北郷一刀・・・か。呉にいてくれていたら仲良くなれたかしら？

「ただいま冥琳。」

「お帰りなさい。・・・愛璃様、随分と機嫌が良さそうに見えますが・・・憂さ晴らし出来たようですね。」

「残念ながら憂さ晴らしは出来なかったわ。けど、不思議な出会いはしたわ。」

「？　不思議な出会い・・・ですか。」

「ええ、良い男よ。武に長け、人間が出来ていて・・・ちょっと甘いのがたまに傷ね。それに、・・・ふふっ、戦い終わった後に自己紹介がまだ済んでないって呼び止められて。」

「・・・それは敵ですよね？」

「ええ。負けちゃったけどね。」

「愛璃様が負けたのですか！？それにしては外傷がどこにも見当たらないのですが。」

「見逃してもらった・・・というよりも、傷つけたくないから本陣に戻ってくださいって。」

「は、はぁ。それより、無事で何よりでした。」

「そうね。」

冥琳はまだ思案顔を続けているけど、話を聞くだけではこうなるのも仕方ないことね。機会があれば改めて話をしてみたいわね。

「冥琳、私も元の軍師の仕事に戻るわ。」

「ええ、よろしくお願いします。」

・・・

「誰かある！？」

「はっ！」

「春蘭と秋蘭は既に出たか？」

「はい。お二人とも張遼のところへ向かいました。」

「作戦を変更。春蘭は関羽のところへ。秋蘭は呂布のところへ孫堅たちの加勢に回るように伝えろ。」

「御意！」

これは張遼をこちらに取り入れるのは後回しにするべきだわ。まだ情報が少なすぎる。それに・・・変態とか言われている者の実力がどの程度のものなのか把握できていないから。凪たちには荷が重い場合は他の諸侯にも加勢させるしかないわね。

・・・

「くはぁ、あんた強いなぁ。うち、楽しくなってきたわ。加減を間違えると殺してしまいそうやわ！あんたの妹さんの弓も曲者やしな！」

「秋蘭は凄いからな。それに、華琳様の命令だ。確実にお前を我が主の元へ連れて行かねばいかないから私も加減はしない！」

「姉者はいつも加減していない気がするがな・・・。」

「うちかて月を守らんとあかんし、今回は一刀も加勢に来てくれたんや。それで負けたなんてことは許されへんからな。今日のうちは一筋縄ではいかんでーーー！！」

いい感じや。今日はすこぶる調子がええ。これなら誰にも負ける気がせえへん！

「夏侯淵様、曹操様より言伝を預かって参りました！」

「なんだ！」

「作戦変更。張遼捕獲を後に回し、夏侯惇様は関羽の元へ。夏侯淵様は孫堅らと共に呂布の元へ向かうようにとのことです。」

「分かった。下がれ。」

「御意。」

作戦変更とは華琳様には珍しいご判断だ。何か緊急事態が起きたのだろう。まぁ、大体の察しは着くがな。本郷め、この短期間でよくこれだけの戦力を集めたな。対したものだ。

「姉者！華琳様か通達だ。姉者は関羽のところへ向かうようにご命令だ。」

「くっ、この忙しい時に・・・。しかし華琳様の命令には逆えん。この戦いはまたの機会にお預けだ。」

「すまん。私も呂布のところに向かわねばならないのでな。」

「ちょっ、ちょい待ちい！・・・行ってもうた。」

なんや、不完全燃焼やなー。こっから敵さんとこの兵をなぎ倒すのも燃えんし・・・。

「誰かうちと戦えるうやつはおるか！ここにおるのは雑兵だけか！？」

「ここにいるぞー！」

「！？」

なんや！？背後から声が・・・。・・・・・・。

「なんや、ちびっこやんか。子供ははよおうちにお帰り。」

「うー、たんぽぽだってやるときはやるんだから！」

「あんただけでうちとやりあえるんか？怪我するんが関の山やと思うんやけどなー。」

「たんぽぽだけじゃないぜ！」

「あんた！錦馬超やないか！あんたがおるならうちも本気が出せるわ！」

「たんぽぽ、行くぞ！」

「あーもう、お姉様！いきなり突撃しないでよー！」

やっとうちにも火が付いたで。加減出来んかもしれんけど、しゃーなしや！

・・・

「おおおーーーー！！！」

「うおおおーーーー！！！」

くっ、切り結び続けてもうすぐ一刻が経つがお互いに拮抗していて埒が明かない。どうにか向こうに隙が出来れば！

「そろそろ斬られろ！そうせねば秋蘭の増援に行けないではないか！」

「戦中に斬られろと言われて斬られる馬鹿がどこにいるか、バカモノ！」

こいつ、とことん力押しだな・・・。脳金女め。戦いづらい上に一々の攻撃が重い。弾こうにも防ぐので精一杯だ。どうする・・・。

「ほらほら、そっちから来ないのか？その様子なら私に斬られるのも時間の問題だぞ！！」

「くっ、私を・・・侮るなぁ！！」

渾身の力で振り下ろしたことで一定の距離を取ることが出来た。しっかしなんて馬鹿力だ、少し腕が痺れてしまった。

「ふん、一度距離を置いたところで私の攻撃が終わったわけではないぞ！」

万事休すか・・・。身の危険を悟ったとき、一本の流れ矢が私の後方から相手を襲い・・・、

「ぐぁぁぁああああああ！！」

彼女の左目を襲った。

「！！」

これには突然のことに私も言葉を失い、その場から動けなくなった。彼女の左瞳からとめどなく鮮血が溢れ出てくる。しかし瞳に矢をまともに食らってはそれに伴う痛みも相当なはず。常人であれば即死しても可笑しくないものだ。それを考慮して考えれば彼女の精神力は並外れたものだと伺える。

「くっ、私としたことが不覚を取った！」

彼女はそう言いながら刺さった矢を引き抜いき、左目を抑えた。

「このまま使えぬ左目であっても、この目の精は我が父から、我が地は母から頂いたもの！そしてこの五体と魂、今はすべて華琳様のもの！断りなく捨てるわけにも、失う訳にもいかぬ！」

「・・・ならばどうする？」

私は彼女の忠誠心に関心しながらも、これからの挙動に目を釘付けにされていた。

「私のこの左目は！これからも私の血肉となり！永遠に私の中にある！」

彼女は己の左目をくり抜き・・・口の中へ放り込んだ。

「ぐちゅ、ぐちゅ、ごくん！」

なんてやつだ・・・己の目を食らうとは・・・。しかし、相当な体力を使ったのは間違いない。今追い打ちを掛ければこやつの首を刎ねるのは容易いが、それでは私の意思に反する。

「お前、名は何という？」

「・・・・夏候惇元譲だ。」

「私は関羽雲長だ。夏候元譲、もう動けるか？」

「もちろんだ。これしきの事で動けなくなるほどやわではない。」

「そうか。では、戦いは一時お預けだ。急いで本陣まで戻れ。」

「なっ！？私はまだ戦える！」

「お前がそう言っても私はそうにはいかない。相手を万全の状態で、しかも目の前で負傷しておいて首を刎ねるなど私の誇りが許さないからな。次に戦う機会があれば、その時は万全の状態で挑んで来い。」

「・・・分かった。感謝する。」

彼女はゆっくりと立ち上がると踵を返し、あちらの本陣まで急ぎ足で歩き出した。ふぅ、相手を失ったわけだが、恋の様子は・・・

・・・

くっ、三人がかりでもまるで歯が立たない。流石は飛将軍と謳われているだけあるな。

「一人一人は面倒だ。まとめて、かかってこい。」

「全く、この孫堅文台も舐められたものね。」

「水蓮様、落ち着いてください。」

「分かってるわよ。思春もね。夏侯淵、後方から援護射撃を頼む。」

「承知した。」

この孫堅文台、ただでは終わらないわよ。

「はぁぁああああ！！」

「遅い。」

「よそ見は死に繋がる、黄泉の道を渡りながら覚えておくことだ。」

「恋、まだ死なない。」

「なっ！？」

まだだ、まだ隙を見せない。あの二人がもう少しこちらに引き付けてくれれば・・・。弓を引き絞り、ギリギリのところまで引きつけ一瞬の隙を見て矢を放った。だが、

「丸見え。」

呂布は己の武器を地に叩きつけ砂塵を起こすことによって矢が弾かれた。まさかあの乱闘時でもこちらの状況を把握しているのか・・・。それから隙を見て何発か矢を放つが砂塵で塞がれやつの武器に弾かれ終いには矢を掴まれた。ここまで何もさせてくれないとは・・・。

「どうした？ここまでか？」

「そうね、今日はここまでにしておいてあげるわ。思春、撤退よ。」

「御意。」

「夏侯淵も引き際が肝心よ。戦いたければ続けても構わないけど。」

「いや、私もここで退かせてもらおう。孫堅、甘寧、また後で。会おう。呂布、この続きは他の機会で決着を付けさせてもらう。」

私は後ろ髪を引かれる思いを抱きつつも華琳様の待つ本陣へと駆けだした。

・・・

「水蓮様、呂布を討ち取らなくても良かったのですか？あそこで討ち取らなければ後々の脅威になりえると思うのですが。」

「今回は時間稼ぎだからこれでいい。後は明命が虎牢関までたどり着いて情報を持ってきてもらう。ないし、どいつかを討ち取ってくればこちらの有利に働くわ。」

「なるほど。」

その頃の明命は・・・

・・・

ようやく目的地、虎牢関までたどり着きました。途中、魏の数名の人たちが変な人と争っているのが目に入りましたが、こちらに到着するのが先でしたので。さて、関の様子は・・・。

「ダーリン、儂もここをちと怪我してしまった。少し見てくれんか？」

「ん？どこだ？」

「あわわ。卑弥呼さん、真面目に働いてください。」

「なんじゃ、儂のような可憐な恋路を邪魔するのは野暮というものじゃぞ。」

「あまり目の当たりにしたくない光景ね・・・。」

「雛里ちゃん、伝令さんから通達だよ。ご主人様と恋ちゃん、愛紗ちゃんが敵さんとの戦闘に勝って他の子たちの応戦に向かうって。」

「了解しました。では伝令さん。ご主人様は霞さん、愛紗さんは星さん、恋さんは流琉ちゃんの援護に向かうように伝えてください。」

「御意。」

これは重要な情報を得ました。早速水蓮様・・・は出払っているから冥琳様と愛璃様に報告しなくては。

「・・・ようやく行ったの。」

「？　どうしたんですか？」

「今どこかの偵察が敵本陣へ向かったぞ。」

「え！？た、大変です！」

「これ、慌てるでない。あの偵察は敢えて本陣へ向かわせるべきじゃ。」

「？　どうしてですか？」

「敵に情報を教えておいた方が後衛に待ち構えている貂蝉、ここにいる鈴々と儂で敵を薙ぎ倒せば兵糧の減りを軽減することが出来るし、儂らでやれば兵の死ぬ数も減る。」

「で、ですが、それでは桃香様にまで危険が及んでしまいます！」

「それなら届かないように儂らが矢なり槍なりをいなしていけば良いだけじゃろ。春秋のころに比べればこのくらい造作もないことじゃ。」

「・・・。」

この人、敵じゃなくて良かったです・・・。私、この人が敵として出てきたら普段の采配を下せる自信がありません。

・・・

「この化物は何なんだ！ちっとも効いている気がしない！」

「だぁれが目が飛び出て戻ってこないほどビックリな化物ですってぇ！？」

「誰もそこまで言っていない！それと顔が近い！言うだけの理由で近寄るな！」

なんだこいつは！見た目は気持ち悪いが相当の手練だ。素手で戦う相手を私以外で見たのは初めてだが一発も拳を命中させられない。それに、気の扱い方が異常なほど卓越されている。恐らくであった中では群を抜いて秀でていると見ても間違いない。

「あなた、気の扱いを習得しているじゃない。なかなかのものね。それに戦闘の型が私と似てるわ。いわゆる、似た者同士ねん♪」

「気持ち悪いことを言うな！」

「あらん、照れ屋さんねぇ。」

「照れてない！」

「凪、ようあないな化物とサシでやれるなぁ。」

「けど、そろそろ紗和たちも応戦した方が良さそうなの。」

「せやけど、あんなかに割って入っていけるか？」

「・・・正直、何もできずに終わりそうなの。」

「紗和、真桜！お前たちも戦え！」

「せ、せやな。」

「分かったの。」

「威勢が良いのは私的には大歓迎よ～。三人がかりでかかって来ていいわよん。いらっしゃ～い。」

くっ、完全に舐められている。しかし、三人がかりでもあちらの実力が上なのは事実。

「うー、戦うとは言っても突っ込みたくないの・・・。」

「そちらから来ぬならこちらから行くぞ！」

「きゃぁぁぁあああなのーーー！」

「来るなーーーーー！」

「こら！逃げるな！」

・・・

「ボクにご飯作りに来るって約束したのにーーーーーー！！」

「それは何度も説明してるでしょーーーーー！！」

季衣とばったり会って最初は久しぶりって言ってたんだけど、ご飯の約束を破ったとかでいきなり私に攻撃してきた。仕方なく応戦してるんだけど・・・。

「それなら華琳様のところに来ればよかったじゃない！」

「私は兄様と桃香様と一緒にいたいの！」

これじゃ平行線を辿る一方だよ・・・。どうにかしないと。

「流琉、手伝いに来た。」

「あ、恋さん！」

「りょ、呂布！」

これなら季衣も退いてくれるはず！・・・と思ったら向こうから誰かこちらに向かってきています。そう簡単にはいかないようですね。

「飛将軍呂布！お主の相手は儂らが相手になろう。」

「相変わらず祭はせっかちなんだから！もっと穏便にならないと！」

「何を言っておる。そう言う美々こそ戦いたくてそわそわしておったではないか。」

「祭ほどではありません！ま、まぁ戦いたかったのは否定しないけど。」

「・・・オバさんたち、誰？」

「お、オバ・・・。」

「私は李異。それと、祭よりは年取ってないわよ。」

「ひ、人の前で歳のこと言うでない！」

「まぁまぁ、今更なんだから気にしない♪」

「くっ、嬉しそうに言いおって・・・。私は黄蓋公覆。孫権配下の一人じゃ。」

うわ～、強そうです・・・。けど、何か・・・愉快な人たちですね。

「・・・漫才？」

「そうではない！・・・はぁ、美々やるぞ！」

「はーい。じゃあいきなりで悪いけど、やっちゃいますか！」

「そうはさせない。流琉、そっち、頼んだ。」

「御意です。」

・・・

「ご主人様！」

「朱里！どうしたの？」

「ご主人様、雛里ちゃんからの伝言です。ご主人様は霞さんの加勢に向かってください。夏侯惇将軍、夏侯淵将軍が持ち場を離れたという情報が入ったので今が攻め時です。お二人で前線を押し切ってください。可能ですか？」

「了解。後は俺たちに任せていいから朱里は持ち場に戻っていよ。」

「はい。ご武運を。」

「朱里もね。」

朱里が戻っていったのを確認すると俺は霞の持ち場へと向かった。というか、俺と一緒に戦ってたはずなんだけど・・・。まぁいいや。

・・・

「せりゃー！！」

「はぁぁぁああ！！」

金属が擦れる音が辺りに響き火花が飛び散る。霞と馬超の猛攻は始まってから結構の時間が経つがどちらも疲れを見せない。しかし、霞は馬岱の隙を見た不意打ちにより苦戦を強いられているのは間違いない。

「そろそろ終わらせようぜ！たんぽぽ、行くぞ！」

「分かった！」

「そうはさせんでー！」

しかし運悪くこの窮地に霞の体に疲れが襲ってきた。くっ、ここで体に響くんはちょお辛いわ。万事休すか・・・。

「霞、お待たせ！」

「一刀！」

「なにっ！？」

・・・

間に合った。俺が背の高い方の人の攻撃を防いだことで霞も後方から奇襲してくる子の攻撃を防いだ。

「お姉様、大丈夫？」

「問題ない。攻撃を防がれただけだしな。」

しっかし、凄い勢いでこちらに近づいてきたのに全く気付かなかった。こいつ、もしかしてかなりの曲者？

「霞、遅れてゴメンネ。」

「気にせんでええで。というか、礼を言うんはうちの方や。おおきに。」

「どういたしまして。それで、この人たちは誰？」

「西涼の馬超、馬岱や。」

「それって・・・。」

これは一応確認しておいた方がいいのかな・・・。・・・うん、そうしておこう。その方が後で蒼に連絡できるしね。

「その、馬超さん。ひとつ質問してもいい？」

「？　なんだ？」

「君のお兄さんにさ、蒼・・・馬鉄さんっている？」

「なっ！？」

「えっ！？」

二人して一気に唖然とした表情に変わる。あー、これは白だな。

「な、なんであんたがうちの兄の真名を知ってるんだ！？」

「その、うちで兵士さんやってるんだ。」

「・・・へ？」

「えええええええぇぇぇぇぇ！！！！」

あとがき　読んでくださりありがとうございます。今回もオリキャラ結構出してしまいました。さて、この場を借りてキャラ説明をします。まずは孫堅ですが真名は水連。孫家三姉妹の母にして江東の虎ですね。年を取っても祭同様現役で活躍してます。次に李異です。真名は美々。武器は鍍金の大斧とゴリ押しタイプですね。髪の色は桃色のショート。体育会系の女の子、嫌いじゃないです。細身で身長１５５cmくらいにして季衣、流琉以上の怪力を誇ります。それでは次回　第四節：姉妹と兄の再会　でお会いしましょう。