No.510613

SAO~黒を冠する戦士たち~ 第百三十九技 堕ちた者の主

本郷 刃さん

第百三十九話になります。
ボスとの対面を果たすキリト達、戦闘にはなりませんよ。

どうぞ・・・。

2012-11-21 09:51:37 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:9819   閲覧ユーザー数:9132

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第百三十九技 堕ちた者の主

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリトSide

 

俺達がこの迷宮に閉じ込められて三日目(正しくは丸二日間)の朝。時間は十三時。

 

準備を整えて、巨大な扉の前に立つ。

 

「さて…覚悟は出来てるか?」

 

「もちろん。生き残る覚悟だけど」

 

「……全力を尽くす、勝つ為に…」

 

「そうね、あたし達にできるのは本気で戦うことだけ」

 

俺はハクヤ、ハジメ、カノンさんのモチベーションを確認した。

 

俺達は武器を手に持ち、ボス部屋の扉を開けて中へと入った。

 

 

 

ボス部屋の壁はステンドグラスで出来ている。

 

だがそこに描かれているのは、黒い翼を持った血まみれの天使達。

 

武器を持ち、女を抱き、酒を飲み、人を殺す……この絵は…。

 

「『グリゴリ』、なのか…?」

 

「確か…堕天使の一団のことよね?」

 

カノンさんの問いに俺は頷くことで答えた。未だに出現しないボスに俺達は警戒を続ける。

 

だが俺が疑問に思ったのはそれだけではない。

 

かなり高い天井を見上げると、そこには九枚のステンドグラスがあった。それには英語と動物の絵が彫られている。

 

「プライド、エンヴィー、ラース、スロウス、グリード、グラトニー、ラスト……ヴァニティ、グルーム……」

 

「ライオン、蛇、ドラゴン、熊、狐、蠅、蠍、グリフォン、驢馬(ロバ)、ねぇ…」

 

「最初の方は『七つの大罪』だけど、残り二つはなんだろう?」

 

俺が英語を呟き、カノンさんが動物を言い、

ハクヤはそれらが指し示すことに気付いたが全てではない。

 

「いや……これは紛れもなく『七つの大罪』だ」

 

「……なぜ分かる、これは九つあるぞ?」

 

ハジメの疑問は最もだが、これは人の七つの罪で間違いない。

 

vanity(ヴァニティ)の意味は『虚飾』、gloom(グルーム)の意味は『憂鬱』。

 この二つは元々、『八つの枢要罪』に当てはめられていた。

 それが『虚飾』は『傲慢』に含まれるようになり、『憂鬱』は『怠惰』と一つの大罪となった。

 そこに『嫉妬』が追加されたことで『七つの大罪』になったんだ」

 

「グリゴリに七つの大罪、堕天使型モンスター……ボスはこれらに関係しているのかしら?」

 

俺の説明を受けてカノンさんは言った。彼女の言う通りその可能性は非常に高い。

 

そして俺は、自分達が立っている床の絵にも気付いた。

 

「始まりの罪……アダムとイヴと禁断の果実…」

 

床に描かれているのは、始まりの人類であるアダムとイヴ、そして知恵の木の果実。

 

これは最早、ボスに関係している以前の問題だ。これはプレイヤー達に対するメッセージだと思った。

 

その時、

 

―――パァァァァァァァァァァンッ!

 

突如として部屋全体が輝きだし、中央に台座が現れた。そこから光が集まり、形を作っていく。現れたのは、

 

「…………………………」

 

ボスモンスターだった。名を〈The lord of falldowner(ロード オブ フォールダウナー)〉、意味は『堕ちた者の主』。

 

その姿はいままで見てきたモンスターの中でもあまりにも異質だ。

 

全長は74層のボス〈The Greameyes(グリームアイズ)〉と同じくらいで、体を重厚な鎧で纏っており、

僅かに見える皮膚は爬虫類の赤い鱗になっている。

 

これくらいならばまだいいだろう。だが異質なのは次に挙げるものだ。

 

奴の背中には、天使の翼が二枚、堕天使の翼が二枚、悪魔の翼が二枚、そしてドラゴンの翼が二枚の計八枚がある。

腰元からは鎧で固めた尾が伸びており、腕は六本、上の二本は鎌を、中の二本は剣を、下の二本は槍を持っている。

最後に、奴の頭部は兜を被っているが、顔の部分が露わになっており、その顔は眉目秀麗といえる男性のものだった。

兜の中から出ている髪は黒く、瞳も黒である。しかし、その顔に表情は一切無い。

その横にHPバーが表示される、数は七本。

 

「……本当に、ボス、なのか…」

 

「なんのモーションも起こさないなんて…」

 

「だけど、こいつは…」

 

「ああ……かなりやばい…」

 

呆然と呟くハジメと疑問を持つカノンさん。ハクヤと俺はそれに大きな不安を感じる。

 

レベルの安全マージンは十分にある。だが、俺達にはあまりにも嫌な予感しかしない。

 

そして俺はこいつがなんなのかということに辿り着いた。

 

「こいつは……アザゼル、ルシファー、サタン、サマエルを表しているのか…」

 

「どういうことだ?」

 

俺の確信の篭った声にハクヤが尋ねる。警戒を緩めずに、疑問に対して答えていく。

 

「『グリゴリ』のリーダー格であるアザゼル。

 『七つの大罪』の『傲慢』を司るルシファーと『憤怒』を司るサタン。

 そして『エデンの園』に棲む、天使にして、蛇にして、魔王であるサマエル。

 一説では彼らは全て同じ存在だと言われている。

 奴の姿は、まぁ全てを合わせた結果なんだろうな…」

 

「ステンドグラスに描かれている絵はそう意味だったのね…」

 

「……前者の三体は分かった。だが、サマエルは何故分かったんだ?」

 

ハジメの疑問は当然だ。床に書いてあるエデンの園の絵には蛇などいない。

 

「アダムとイヴが食べた禁断の果実。それを食べるように、イヴを唆したのが…サマエルってわけだ」

 

「……なるほどな」

 

俺達が会話を終えた時、奴がついに動き出した。武器を構え、攻撃の態勢を取っている。

 

「まるで俺達の理解が終わるのを待っていたみたいだな」

 

「意外と気が利くのかしら?」

 

「……或いは最後の時間を与えた、と…」

 

「かもな…。ま、最後になるつもりはないけど、な!」

 

ハクヤ、カノンさん、ハジメ、俺の順で軽口を放っていく。

 

俺達もまた、武器を前に出しながら瞳をギラつかせる。そして、

 

「「「「っ!!!」」」」

 

「!!!!!」

 

俺達はボスとぶつかり合った。

 

キリトSide Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

オリジナルのボスってこんな感じの説明で良かったでしょうか?

 

分かり難かったらすいません(ペコリ)

 

出来るだけ異形なものにしてみたかったもので、こうなった次第です。

 

さて、キリト達はどうなるのか・・・次回は戦闘です。

 

では、また・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
19
8

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択