第百三十八技 進む展開
アスナSide
わたしは黒猫団のギルドハウスにいる。キリトくん達が居なくなって一日が経ってしまった。
わたしは不安で仕方が無く、サッちゃんやシリカちゃんが元気づけてくれて、
ヴァル君や黒猫団のみんなが守ってくれて、情けないとも思う。
キリトくんがいないだけでこんな風にまでなってしまうなんて…。
「アスナ、絶対に大丈夫だから…」
「そうですよ。あのキリトさん達なんですから」
言葉を掛けてくれるサッちゃんとシリカちゃん。
ヴァル君は最前線でキリトくん達の探索、
黒猫団の男性陣は少しでも情報がないか街の方に情報収集にでている。そこに…、
「「「「ただいま~」」」」
「おかえり、みんな」
少々疲れた様子で帰ってきた黒猫団の男の子達にサッちゃんが声を掛けた。
「あの、なにかわかりましたか…?」
「確信はないけど、一つだけあったよ…。76層の主街区でNPCからある罠の情報を掴んだんだ」
「罠?」
シリカちゃんの問いかけにケイタ君が言ったので、わたしは聞き返した。
「うん、お爺さんのNPCなんだけど言い伝えみたいな感じかな。内容はこうだよ。
『黒き翼を纏う堕天使、いずれも白き翼を纏う誇り高い天使だった。けれども彼らは欲に堕ちた。
彼らの五百の命を削れば、不可侵にして逃れられぬ領域に落とされるであろう。
それは、彼らの最後の断罪なり』ってね…。
俺の解釈では、迷宮区にいる堕天使モンスターを倒せばどこかに閉じ込められる罠だと思うんだ」
ケイタ君の情報を聞いたわたし達は一様に黙ってしまった。それが正解だとすれば、キリトくん達は……。
「戻りました……なにかあったんですか?」
探索から帰ってきたヴァル君。わたし達の雰囲気を察してか、遠慮気味に訊ねてきた。
「えと、ちょっとね……ヴァル君の方はどうだったの?」
「……キリトさん達の行方は依然として分かりません。その代わり、76層迷宮区のボス部屋を発見しました。
75層のこともあるので、今回のボス攻略戦は偵察を行わず、参加者希望での即攻略になることが決まりました」
「うそ…」
「マ、マジかよ…」
シリカちゃんに訊ねられたヴァル君が答えた。サッちゃんもロック君も驚いている。
呆然とした。今までは事前の偵察でボスの特徴などを掴んでいた。
だけど前回は偵察部隊の全滅ということだった。
それを考えるとどのみち情報が掴めないのならば最初から総力戦でいこうということなのだろう。
「とりあえずキリトさん達が見つかってから、攻略戦を行うということです」
「まぁ、そうだよね…」
「だよなぁ~…(ほっ)」
ヴァル君の言葉にヤマト君とテツ君もホッと息を吐く。
「そういえば、さっきの雰囲気は…」
「実は……」
今度はヴァル君に先ほどの説明をするケイタ君。
説明を聞き終えたヴァル君は思案したあとに口を開いた。
「キリトさん達がその罠に掛かってしまった可能性は十分に高いですね。
それに、その後も罠が発動していないところをみると一度だけの罠なのかもしれません。
『最後の断罪』というくらいですから」
「でも、おかしくないかな? いくらキリト達でも、五百体も倒すだなんて…」
「おそらくですが、総合的な数じゃないでしょうか? キリトさん達が五百体目を倒したのではないかと…」
サッちゃんの疑問に答えたヴァル君の言葉に納得するわたし達。
でもわたしは、ただキリトくん達が無事でいてくれればと、そう願っていた。
アスナSide Out
リズベットSide
ハクヤ達が居なくなって一日が経過した。
昨日たくさん泣いたお陰で今日は少しだけすっきりとしていた。
仕事もいつも通りにこなしているけれど、常連のお客さんには「何かあったのか?」と何回も聞かれてしまった。
お客さんにまで心配を掛けてはいけないと思いながらも、
ハクヤへの想いが上回ってしまい、時々上の空になってしまう。
そんなあたしを心配してくれているティアさん。昨日からずっとあたしの側についていてくれている。
探索はシャインさんとヴァルとルナリオ、クラインやエギル達他の攻略組のみんなが行っているらしい。
会いたい……早く会いたいよ、ハクヤ…。
あたしは、未だに戻らない想い人の無事を祈った。
リズベットSide Out
To be continued……
後書きです。
アスナが主でしたが、二人の視点でした。
罠の発動にしては妙な条件だとも思われるでしょうが、ご勘弁を・・・。
次回は再びキリト達側になります・・・というよりも、ボスとの対面です。
さらにその次からボス戦になりますので、お楽しみに。
では・・・。
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第百三十八話です。
今回はアスナ&リズ視点です、メインはアスナの視点ですが・・・。
どうぞ・・・。