No.510177

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第八十一話 アッサキュムゥアアアアアアッッ!!

2012-11-19 22:57:24 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5910   閲覧ユーザー数:5329

 第八十一話 アッサキュムゥアアアアアアッッ!!

 

 

 

 「……あれ?ここは?」

 

 ふと気が付くとそこは埃が積もった暗くて広い空間だった。

 私の傍にはロープで縛られたアリサちゃんの姿が…。

 

 「アリサちゃん!あっ?!」

 

 私は慌てて彼女に駆け寄ろうとしたが立ち上がる事すらも出来なかった。

 アリサちゃんと同じような状態で私も縛られていた。

 そこでやっと気づく。

 そうだ、私は…。私は…。

 

 「…目が覚めた?薬をあまり吸っていなかったのか?」

 

 「っ」

 

 私は声がした方向を見るとそこには数人の大人の人がいた。皆見覚えの無い人達ばかりだった。

 彼等のリーダー格らしき人はいやらしい顔をしながら私達の方に近寄ってくる。

 そうだ!

 私とアリサちゃんはなのはちゃん達と別れた後、しばらくすると黒塗りの車が凄い勢いでやってきて、そこで無理やり車に祖せられた跡に、口に当てられた布で…。

 

 「君のお姉さんとそこの御嬢さんの親父さんに私達の会社の事業をとられてね…。潰れてしまったんだよ…」

 

 「…逆恨みですか」

 

 私のお姉ちゃんはとある事情で月村家の財政の全てを担っている。

 アリサちゃんと私が仲良くなったことで、お姉ちゃんと叔父さんが仲良くなって共同事業を起こすことはよくあった。

 

 「ちがう!貴様等が金に物を言わせて我々からあの事業を取り上げたのだ!」

 

 ガッ。

 

 「あぐっ」

 

 私の言葉を聞いて逆上した男の一人が私のお腹を蹴ってきた。

 蹴られた衝撃で跳ね飛ばされた私は隣で寝ていたアリサちゃんにぶつかる。

 

 「…おい、やりすぎんなんよ」

 

 「別に構わねえさ!ただで返すつもりはねえんだからよ!」

 

 男の人達が何やらもめているところでアリサちゃんが起きた。

 

 「…ん?すずか?…ここどこ?」

 

 「あ、アリサちゃん。…けほ、だ、大丈夫?」

 

 寝ぼけ眼で目を覚ましたアリサちゃんに声をかける。

 アリサちゃんはまだ薬が抜けきっていないのか私よりも意識がしっかりしていない。

 それでも…。

 

 「…す、ずか。あん、たこそ…。咳き込、…んでいるじゃ、ない」

 

 アリサちゃんは私を気遣って私の様子を聞いてくる。

 私はお腹を蹴られたけど、これぐらいなら平気だ。だって、私は…。

 

 「わ、私は大丈夫だよ。だって…」

 

 「夜の一族。…だからですね」

 

 っ!

 

 「…情報屋」

 

 「皆さん、お疲れ様でしたね。後は私が彼女とお話をさせてもらいますよ」

 

 男達の一人が私に近付いてきながら私に話しかけてくる。

 

 「…あなたは」

 

 「貴女のお姉さん。月村忍に爪はじきされた者達の一人です。まあ。仕返しの為に貴女だけを誘拐したかったのですが余計なものまでくっついていましたがね」

 

 お姉ちゃんがこの人たちには気をつけなさいと写真を見せて覚えていた人の中の一人。

 なんで、この人がこんなところに?

 

 「おい、情報屋。身代金のさっさとこいつ等の親に要求しようぜ」

 

 「…そうですね。ただし、月村への対応は私がやります」

 

 男の人達は私達の鞄から携帯を探り出すとおもむろに私とアリサちゃんにいやらしい目で見てきた。

 

 「…別に無傷で返さなくてもいいよな?」

 

 「お前、そっちの気があったのかよ」

 

 「まあ、いいんじゃねえか。こういう気の強そうなガキでも女なんだからよ」

 

 「じゃあ、俺は大人しそうなやつの方を…」

 

 っっ!

 この人達は私達に乱暴をするつもりなんだ!

 

 私はこの人たちから遠ざかろうとしたけどロープで絞めつけられていて身動きも取れないでいた。

 

 私は私よりも身動き取れないアリサちゃん引き寄せるように男達から少しでも離れようとした。

 だけど、男の人達はゆっくりとだけ近寄ってくる。

 

 「夜の一族が必要以上に俗世の者と関わるからこうなるのですよ。月村すずか」

 

 私に話しかけた男の人が私にしか聞こえない声量で話しかける。

 

 「貴女という化け物がそこのお友達をも巻き込んだ」

 

 っ!

 

 「私は予めあなたの身の回りの情報を集めた。そして、そこにいる人間たちはあなたの姉とそこのお嬢さんの父親に恨みを持つ者です」

 

 …私の、所為?私の所為でアリサちゃんまで…。

 

 「さあ、あなた達が一緒にいたいと思った人間に乱暴されてもなお、そんなことが言えますかね?」

 

 そんな。そんなのって…。

 

 私が彼の言葉に貶められていると男の一人がアリサちゃんの鞄から可愛くラッピングされた小さな箱を取り出す。

 あれは…。

 

 「…触んじゃないわよ、クズ。それは、あんた達が、触って、いいもの、じゃないわ」

 

 アリサちゃんは朦朧とした意識の中でそれを聞いた男の一人はいらだったのか、それを地面に叩き付けて足で踏みつぶした。

 

 「…あ」

 

 アリサちゃんは小さく声を上げるが、すぐに怯えた顔に戻る。

 そして、男達はアリサちゃんや私の服に手をかけた。

 

 「怖くないですよー。お前が言っていたクズとすこーし大人の遊びをするだけですからねー」

 

 野卑な顔と声で。

 

 「そうそう、気持ちいい事をしてあげるからね~」

 

 いやらしい声色で。

 

 「…あのくそ社長。娘がこんなふうにあったなんて知ったら、気が狂うんじゃねえか?」

 

 恨みがましい感情で。

 

 「電撃ビリビリ棒を喰らったみたいに?」

 

 少しふざけた感じで…。

 え?

 

 「そうそう。…て、誰d」

 

 「ベイオネット・スパイカー。シュート!」

 

 急に私達の隣に現れた銀色の鎧。

 その鎧が持つ銃から鋼鉄の網が勢いよく吐き出され私とアリサちゃんを掴んでいた男の人達を突き放した。

 その勢いは凄まじく私に話しかけていた人以外の人をまとめて弾き飛ばしていった。

 

 「スタンロッドもくらいな!」

 

 銀の鎧の脇腹から小さなロケットみたいなものが出現すると同時に網に捕らわれた人達の所に向かって飛んで行く。

 

 ズガガガガガガガガッ。

 

 「「「「があああああああああ!!?」」」」

 

 そのミサイルの弾頭が彼等に命中すると同時にそれは弾けて青白い光を放つ。

 その光が消えると私達に乱暴をしようとしていた人たちは体中のあちこちから煙をあげながら気絶していった。

 

 「…君は誰で「ベイオネット・スパイカー。シュート」な?!」

 

 夜の一族について知っている人が銀色の鎧を見て話しかけようとしたが、銀色の鎧は有無を言わさず、先程の網を吐き出す銃を放つ。

 

 「ちょ、「シュート」人の話「シュート」をきき「シュート」がばっ!」

 

 最初の一発目は外したものの、二発目で体勢を崩し、三発目でその網に捕らわれる。そして、再程の人達に放ったロケット弾が発射された。

 

 ズガガガガガガガガッ。

 

 「ぐあああああああ!!?」

 

 先程の人達と同様に電撃を浴び、その場に崩れ落ちる。

 私とアリサちゃんは突然の出来事に驚きながらも、辺りを見渡している銀色の鎧に目が釘付けだった。

 

 「…索敵終了。敵対勢力、完全無効化。後は、この鉄線でしばりつけておくか」

 

 と、私達がいた空間(のちに廃工場だと知らされる)に落ちていた鉄線で彼等の動きを封じた銀色の鎧は、私達に近寄りながら声をかけてきた。

 

 「…一応、聞くけど大丈夫?…だよな?」

 

 その声は私達がよく知る男の子、高志君だった。

 

 

 しかし、びっくりした。誘拐って本当に起こるものなんだな。

 はやて達から貰ったチョコレートを放課後になってから食べているところを北海君と沖縄君に見られて、つるされた。

 そこから何とか脱出すると同時に学校外に逃げ出すことが出来た。が、そこですずかとアリサが黒服の人達に無理矢理車に乗せられるところを見てしまった。

 それの後を追う為に、ガンレオンをセットアップしかけたが目立ちすぎるので、ブラスタを展開すると同時に搭載された光学迷彩を起動。

 あとは魔法で強化した体で走って追いかけた。

 

 空は飛べない。

 飛んだら最後、☆になっちゃう。

 地面を全速力で走るブラスタ。

 …とってもシュールだ。

 

 飛べない豚はただの豚。

 だから俺は…。

 

 ただの豚。

 

 ちょっと涙が出てきた。

 まあ、追いかけながら、プレシアといった他の人達にも連絡は入れたし、この事件も何とかなるだろう。

 しかし、ブラスタは隠密行動に優れているな…。

 ぶっつけ本番でブラスタの武装も何とか使えたし…。マニュアル操作のゼロ距離射撃だけど…。

 

 「た、かし君。だよね?」

 

 「あ、んた。どうして?」

 

 おっと。ブラスタは解除しておこう。

 威圧感丸出しだから…。

 

 「ごめんな、すぐに助けてあげれなくて。慣れない武装と周りに他の奴がいないか調べていたらこんなに遅くなった」

 

 怯えている二人を落ち着かせるために距離をとって(・・・・・・)話しかける。

 

 

 PTSD。心的外傷後ストレス障害。

 

 

 目の前の二人は()に乱暴されかけたことによりトラウマを持ってしまっているかもしれないので、あまり近寄らない様に話す。

 物語の主人公ならこの二人を抱きしめて落ち着かせるところだろうけど、この物語の主人公はなのは。たとえ、そうでなかったとしても、この二人を抱きしめて落ち着かせてやるなんて…。俺の器量じゃ無理。

 

 「今の銀色の鎧は?」

 

 「どこかで見たことがあるんだけど…」

 

 「クロウの鎧だ。今は俺が使わせてもらっているけど…」

 

 『揺れる天秤』と一緒にガンレオンの中に来たのはびっくりしたけどね。

 と、考えていたら後ろで何かが蠢く音がした。振り返ってみるとそこにはすずかと何かを話していた男がゆっくりと立ち上がる所だった。

 

 「あいつ、まだ…」

 

 非殺傷設定とはいえ、かなりの電圧のスタンロッドを浴びたはずなのに!

 今度はガンレオンをセットアップしようとしたが、男はやはりダメージが大きかったのか、その場に崩れ落ちた。

 

 「ぐ、く、くそ。夜の一族が、まだいたのか?」

 

 「夜の一族ってなによ?」

 

 「そこの化け物の事だ」

 

 アリサの質問に目の前で崩れ落ちた男は答えた。

 化け物って…。

 まあ、確かにブラスタやガンレオンは化物じみた性能ですけど…。

 

 「…やめて」

 

 すずかは体を震わせながら呟くが男は一気に喋る。

 

 「そこの御嬢さんは吸血鬼なんだよ!人の血を吸い、心を操る化物なんだよ!」

 

 あ、ブラスタ()の事じゃないんだ。

 

 「…え?…すずかが?」

 

 「人より強い体!運動能力!それらを用いて人を襲う化け物なんだよ!お前が助けた奴はな!」

 

 「やめてぇ…」

 

 目の前の男はすずかが泣きだしたことに気をよくしたのか、顔を歪ませる。が、

 

 「…………え?それだけ?」

 

 「「「え?て、え?」」」

 

 俺はあまりの少なさに驚いていた。

 だって…。

 

 「いやぁ、さっき俺が使っていたブラスタの方が凄いよ?だって遠距離射撃から光学迷彩。スタンロッドに網を出すことが出来るんだけど?」

 

 「な、何を貴様こそ何を言っている!?恐ろしくないのか人の姿に擬態している化物が!」

 

 「全然」

 

 俺は首を振って答える。

 人の形をしている人外の物なんて家康の周りにたくさんいるし、かくいう俺も元死人?だし。そして、なにより…。

 

 「そんなものよりもっと怖いものを知っているし…」

 

 アサキムとかアサキムとかアサキムとかプレシアとかアサキムとか…。

 アサキムと(スフィア)を巡って喧嘩しないといけない。

 確かに心を操られるのは怖いけど…。

 それ以上にアサキムは怖いんだよ。

 

 「な、な、なななぁあああ」

 

 「…高志君」

 

 すずかは涙声になりながらも俺に何かを期待するような視線を送る。

 

 「まあ、あれだ。すずかが心を操るなんて真似なんかしないだろう。人より少し頑丈で貧血なだけだ」

 

 「…馬鹿が。お前は、その選択を、後…悔することになる、…絶対に」

 

 そう言って男は再び地面に倒れる。

 俺はそれを確認した後に再び鋼鉄のロープで縛り上げる。

 プレシアのお仕置きとチョコ狩団の拘束で縛り上げるという動作は大したものなんだよ。

 …あれ、おかしいな。また眼から涙が。

 誘拐した人達を全員縛り上げて、すずかやアリサを拘束しているロープを解いていく最中ですずかやアリサが話しかけてきた。

 

 「…アリサちゃん。高志君。ごめんね。私の所為でこんな迷惑を被って」

 

 「気にすることはないわよ、すずか。あんなのただのほらでしょ」

 

 「本当だとしても俺は構わないし?」

 

 アリサは先程の男の言葉を嘘だと断定していたが…。

 たぶん、あの事は真実だろう。

 

 「…本当に私が吸血鬼だったら、二人はどうするの?」

 

 「それでもすずかは私の友達よ!それともあんたは私や高志の心を操りたいと思うの?」

 

 「そんな、そんなことはしないよ!だけど、私は…化け物なんだよ」

 

 「じゃあ、俺は怪物だな」

 

 ペイン・シャウターは凄い威力なんだからね。

 ビルの一つや二つ。簡単に吹き飛ばせるんだから。

 

 「…なのははビームとか撃つし、フェイトは素早い動きで敵を切り刻み、はやては広範囲による爆撃。吸血鬼なんて可愛いもんだろ」

 

 「そ、それは…。でも、私は」

 

 「すずか。お前はなのはの事が怖いか?」

 

 「そんなこと!…そんなこと」

 

 「アリサ。フェイトやはやては怖いか?」

 

 「怖いわけないじゃない!例え、魔導師とか言われても友達は友達よ!」

 

 「…というわけだ。お前が吸血鬼だろうとなんだろうと俺達は付き合いを変えるつもりはない」

 

 「うん…。…うん。…二人とも本当に、…ありがとう」

 

 

 「すずか!アリサちゃん!大丈夫!」

 

 「お姉ちゃん!」

 

 「忍さん!」

 

 誘拐犯を一か所に集めて廃屋を出ようとしたらすずかに似た二十代ぐらいの一人の女性がやって来た。

 すずかの姉?保護者が来たならもう大丈夫かな?

 

 「…あなたは?」

 

 「あ、沢高志です。一応そこの二人のクラスメートです」

 

 忍さんと呼ばれた人は、アリサの事は知っているが俺とは初対面なので警戒している。

 まあ、子どもとはいえ、妹が誘拐されて見知らぬ男の傍にいれば怪しむよな。

 

 「あ、お姉ちゃん。高志君が私達を助けてくれたの。だから…」

 

 「嘘、こんな子どもなのに!?」

 

 中身はあなたぐらいの年齢ですよ。

 しかし美人さんだな。すずかもあと十年後にはあんなふうになるのかな?

 

 「…魔導師とかいう奴なの?」

 

 なのは達を通して魔導師の事を知っているようだったので素直に頷いて答えた。

 

 「まあ、そんなもの」

 

 「…そう。二人を助けてくれてありがとうね」

 

 「そっちも。夜の一族のことはよく知らないけれど俺とアリサはすずかの友達ですのであまり気を負わないでくださいね」

 

 その言葉にすずかの姉は驚いた顔をしていたが、すぐに表情を和らげ、

 

 「…そう。これからもすずかとは仲良くしてね。あと、このお礼は必ず(・・)するわ」

 

 忍さんにとっても『夜の一族』の事を知っているのは驚いたが、恩人という事とアリサの事もあってかここでは問い詰めないようだ。

 必ず。という所に語気を強めたのはたぶん、あとで俺と話し合いをする為だろう。

 それだけに彼女達の抱えている問題は深刻のようだ。

 などと、考えていたらアリサが話しかけてきた。

 

 「…高志。…あのさ、あんたさっき私の事を名前で呼んだわよね」

 

 「…そうだったか?」

 

 「そうよっ。すずかもだけど私達の事を名前で呼んだわ」

 

 ………………………。

 

 「……くっ。俺としたことが…」

 

 「なんでそこで悔しがるの!?」

 

 だって…。これを機に私の事を名前で呼びなさい。と言いそうだもん、お前。

 

 「まあ、これを機に私の事は名前で呼びなさい!」

 

 「一字一句間違いなしか!このツンデレさん!」

 

 「誰がツンデレ、あっ」

 

 どさっ。

 

 「あ、あれ…?な、なんで?」

 

 アリサは今になって恐怖が増してきたのか、俺に掴みかかろうとして前のめりに倒れる。そして、そこから立ち上がれないでいた。

 

 「…はあ。ほらよ、と」

 

 「きゃ、な、何すんのこの馬鹿!スケベ!」

 

 これだけ元気ならトラウマの心配もないかな?

 

 「自分で立ち上がれるなら降ろすけど?立てなかったらお姫様だっこな」

 

 身動き取れないアリサをおんぶするとアリサは暴れ始めた。が、俺の言葉を聞いて暴れるのを止める。

 

 「だ、だって、私…」

 

 「俺の背中は走って来たから()でべちょべちょだけど我慢してくれ」

 

 「…う」

 

 アリサは今の自分の状態を知られるのが嫌だったのか俺のフォローを聞いて押し黙る。

 誘拐されて、乱暴されかけたら、大の大人だってアリサみたいな状態になる。

 だから俺は、背中が濡れている(・・・・・)理由を先に言う。

 

 「……我慢するから私の事を名前で呼びなさいよ」

 

 「あ、高志君。私の事も呼んでほしいんだけど…」

 

 アリサは俺の首元で、すずかは姉の隣から要求している。が、

 

 「断る。こんな事件があった後に名前で呼び合うようになったらお前達はまたこの事件を思い出しちまうだろ?」

 

 「「…あ」」

 

 俺の答えを聞いて忍さんは優しく微笑んでいる。

 まあ、それ以外にアリサをアジサバ。すずかを酢漬け。と呼ぶのが楽しいのもある。

 

 「…このこと以外で呼ぶのならいい」

 

 「じゃ、じゃあチョコをあげるから私の事をあ」

 

 「これからよろしくなアリサ」

 

 「だから早いよ高志君!本当にそれでいいの!?」

 

 「構わないよ!で、チョコは何処に?」

 

 「ちょ、チョコなら鞄の中…に」

 

 アリサはしどろもどろになりながらも鞄の中に目を向けたが途中であることに気が付いて、とある場所に目を向ける。

 

 「…あ」

 

 そこには、踏み潰された小さな箱。

 それを拾い上げてみると、踏み潰されたところの穴からチョコレートの欠片がぱらぱらと落ちてきた。

 

 「…ご、ごめんね。高志。チョコはまた次の日にでも」

 

 「うん。美味い」

 

 甘すぎず、のど元に絡みつくことなくのど元を通り過ぎる、すっきりしているのに香りだけは最後までいい感じで…。これがブルジョワのチョコレートか。

 

 「あ、あんた。なんで…?」

 

 「お前みたいな美少女から貰えるチョコなら例え落ちたものだろうと踏み潰された物だろうと喰う。…美味かったぞ、アリサ」

 

 アリサが鼻をぐずらせながらも俺の頭を一度叩いた。

 

 「…と、当然よ!初めてだけど、私の手作りなんだから!」

 

 「つまり、アリサの初めては俺が美味しく食べたという訳か?」

 

 「いやらしい言い方するな!」

 

 もう一度俺の頭を叩くとアリサは俺のうなじ部分に顔を埋めてきた。

 すると、すずかも俺の近くに寄ってきて俺の腕を軽く触るようにして話しかける。

 

 「私も呼んでほしいな。明日、準備するから私の事もすずかって、呼んで」

 

 「…チョコを貰ったらな」

 

 俺ってば、この二人に懐かれた?フラグじゃないよね、コレ?

 

 それから忍さんと一緒に四人で廃屋を出ながら話をしていた。

 

 「そう言えば、高志君が怖いものってなに?」

 

 すずか。お前だけではなくアリサも知っていると思うけど…。

 

 「あ~、俺が怖いものっていうのはなア…」

 

 「忍!すずかちゃんやアリサちゃんは無事か!」

 

 「アッサキュムゥアアアアアアッッ!!」

 

 ガンレオン・セットアップ!

 ジャレンチを喰らいやがれェええええええ!!

 

 

 

 高志は高町恭也に攻撃した。

 恭也は手にした木刀で高志の攻撃を受け流した。

 恭也の反撃、ガンレオンの装甲の薄い所に鋭い突きを放った。

 高志はその衝撃で気絶した。

 

 高志の目の前は真っ暗になった。

 ちなみにアリサはガンレオンの背中に捕まっている間に事態が収まる前に目を回してしまったらしい。

 それでも高志の背中から落ちることが無かったのは彼女の運動神経の良さが起因していただろう。

 

 

 

 その後、高志は月村邸で取り調べを受けて双方の誤解を解くまで二時間はかかった。

 取り調べ中は恭也さんには土下座もしながらも言い訳もした。

 アサキムと恭也さんの声がそっくりだったので思わず襲い掛かったんです!

 だが、これを機に恭也さんとは何かと相談に乗ってもらうことが多くなり、恭也さんは俺に愚痴を聞いてもらうというお互いに頼りになる存在となった。

 

 そして、翌日。

 

 「おはよう、高志」

 

 「おはよう高志君」

 

 昨日あれだけのことがあったのに元気だな二人共…。

 そして、目の前の二人は俺がなんというのかいまかいまかと待っている。

 わかりました。呼べばいいんでしょ。呼べば。

 

 「おはよう。アリサ。すずか」

 

 「「うん♪おはよう♪」」

 

 二人が俺に見せた笑顔は今まで見てきた笑顔の中で一番輝いているようにも見えた。

 

 


 
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