No.508344

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第八十話 幸せ慣れしていない『傷だらけの獅子』と天然どSな小悪魔ちゃん。

2012-11-15 00:54:39 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:7167   閲覧ユーザー数:6460

 第八十話 幸せ慣れしていない『傷だらけの獅子』と天然どSな小悪魔ちゃん。

 

 

 

 「もう台所立つなよ!せめて人が壊れない程度になるまでは!」

 

 「うう…。ヴィータちゃん酷い。で、でも私は食べても平気でしたよ」

 

 「…シャマル。毒手というものを知っているか?」

 

 「ひどっ!?シグナムそれは言い過ぎでしょ!」

 

 ヴィータの叱責を受け、シャマルはしょんぼりと肩を落としながら家を出る。が、シグナムの言葉を受けてさらに落ち込む。

 済まないシャマル。フォローできない。

 

 「それは…。今の(・・)ザフィーラを見ても言えるのか?」

 

 「………」

 

 普段から寡黙なザフィーラは狼形態で無言を貫いている。が、

 

 (お気になさらないでください(しゅごごごごご))

 

 

 念話すらもまともに出来ていない!

 

 

 この守護獣は主と我等を守る為にシャマルの作り出した物体Xを主が一個食べた後、残りの全てをその牙で砕き呑みこんだのだ!

 みんなの精神とシャマルの料理が下手という事に彼女が心を痛めないように!

 

 

 …無茶しやがって!

 

 

 「ザフィーラ。今日はザフィーラが好きな物を作ってあげるからな」

 

 (ありがたきお言葉(しゅごご))

 

 「…ごめんなさい」

 

 落ち込むシャマルをよそに私達はとある場所に向かっている。

 それは…。

 

 

 一見するとどこにでもありそうな学校風景。だが、その屋上に掲げられた十字架。貼り付けの罪人。その周りを取り囲むように踊る人達。

 屋上の上では十数人の男子生徒が狂ったかのように踊りながら怨嗟の声が鳴り響く。

 

 

 

 「「「リア充滅。リア充滅。リア充滅」」」

 

 「「「イケメン排除。イケメン排除。イケメン排除」」」

 

 「「「裏切りには死を。裏切りには死を」」」

 

 オオオオオオオオオオオォォォオォ!!

 

 

 

 「……私、復学するのはやめておこうかな?てか、やめるわ」

 

 「…ここは学び舎なのか?」

 

 何を学んでいるのだろう?

 いや、知りたくもない。

 なんで、学校の屋上で盛大な儀式を行っているのだろう?

 それも知りたくもない。

 そして、そこに『傷だらけの獅子』である高志が張り付けられているのかも…。

 てぇ!

 

 「『傷だらけの獅子』!?」

 

 「高志君!?なんで!?」

 

 ちなみに、はやて達は魔力強化で視力をアップさせて主が復学予定の学び舎の門から状況を把握しています。

 

 「あ、なのはとフェイト。あと、すずかとアニサが助けに行ったぞ」

 

 「ヴィータ。彼女はアリサだ」

 

 ヴィータの言う通り高志君は無事にあの四人に助け出されていた。

 ついでにシグナムに訂正を受けて「うるせーな。ちょっと間違えただけだ」と顔を赤くした。

 

 (どうやら助かったようだな(しゅごごごご))

 

 「…ごめんなさいザフィーラ。本当にごめんなさい」

 

 「あ、あはは。そ、それじゃあ復学手続きをしにいこうか?」

 

 主はやては一抹の不安を抱えながらも聖翔学校への復学手続きを行う為。そして、とある目的の為に門をくぐった。

 その後ろではシャマルは未だにバグっているザフィーラに謝っていた。

 

 

 

 「…それじゃあ、お願いします」

 

 「はい。了承しました。学力テストも問題無いみたいなので三月からになりますけどよろしくね、八神さん」

 

 「はい。宜しくお願いします。それじゃあ、失礼しました。…あ」

 

 「…お。家康にシグナムさんに女神様」

 

 私は優しそうな女の先生に編入手続きの書類を渡して職員室からシグナムとリインフォースと一緒(ザフィーラとシャマル。ヴィータは校門の外で待機中)に出ると、お弁当箱を持った高志君と丁度出くわした。

 

 「なんでシグナムは普通でリインフォースは女神様やねん」

 

 開口一番でそれかい、高志君。

 

 「だって、シグナムさん、雰囲気は立派だし。リインフォースさんはめっちゃ美人だし」

 

 「雰囲気は。とは、どういう意味だ」

 

 シグナム目が笑っていないでっ。

 

 「何かからかったら即斬りかかられそうで…」

 

 「私は辻斬りか何かか?」

 

 「すいません」

 

 高志君は即座に土下座をしてシグナムに謝るけれど…。

 …シグナム。そうは言うけどいつでも斬りかかれるような体勢をとらんといて。否定できなくなるから。

 

 「わ、私は美人などではないぞっ」

 

 「ならばリインフォースさん以上の美人を教えてください」

 

 そう言ってリインフォースは慌てるけれど高志君の二の句を聞いてリインフォースは可愛く慌てる。

 

 「っ」

 

 その姿に私が萌えた!

 

 これはお持ち帰りやっ。

 家族だから当然やっ。

 持ち帰った後は…。

 …ぐふふ。

 うちのリインフォースは世界一ぃいいいいい!

 …はっ。おちつけ私。

 

 「しょ、将や湖の騎士!それに艦長殿もおられるではないか!主や高町といった可愛らしい者達だっておられるし…」

 

 高志君はその様子を見て悪戯心がうずくのか私とシグナムに目配りをすると更にリインフォースをいじる。

 

 「自分が美人という事は否定しないんですね」

 

 「悔しいけどそれは認めざるを得ない」

 

 当然、私もそれに乗っかる♪

 シグナムも私達に続んや。

 

 「…だが、それに見合った。いや、それ以上の美貌は持っていると私も思うぞ?」

 

 シグナムもやれやれと言った感じの顔やったけど、最後にはにやけ顔でリインフォースをいじる。

 

 「主はやてっ、将まで!」

 

 それから少しの間リインフォースを弄った後、高志君が屋上で貼り付けにあった理由を聞いてみた。

 

 

 ≪高志。事情説明中≫

 

 

 「…つまり、僻み(ひがみ)。か。…情けない」

 

 「ごめんなさい」

 

 「…『傷だらけの獅子』。もう少し威厳というものを持った方がいいと思うぞ?」

 

 「いや、本当にごめんなさい」

 

 シグナムとリインフォースに言われて更に肩身を狭くする高志君。

 アリサちゃんに土下座をしてまでチョコを欲しがるなんて…。

 しかも、自分で発足した集団にボコられるとは。

 

 「まあ、その程度の怪我で済んでよかったな」

 

 「そうっすね。数値で言うなら七割三分くらいもっていかれましたし…」

 

 「かなりボロボロだな?!」

 

 シグナムの質問に平然と答える高志君。

 73%もの体力をもっていかれたって、かなりの攻撃やないの?!

 

 「まったく俺が手加減して相手してやったというに調子に乗りやがって…」

 

 まあ、私達には魔力があるからそれで強化すれば一般人なんか絶対に勝てないほどの身体能力を発揮することが出来るからな。

 かくいう私も足が不自由な分不利やけど、それでもリインフォースから魔力の使い方を学んでいるから一般人の同い年の子には負ける気はしない。

 

 「ちなみにどれくらいや?」

 

 「九割七分ぐらい?」

 

 「ほぼ全力じゃないか?!」

 

 そこに油断はあったんやろうか?

 

 そんなやりとりもしていると高志君はお昼ご飯である弁当を食べないといけないので私達と別れることになった。

 

 「あ、まってくれ。貴方に渡したいものがあるんだ」

 

 「おお、そうやった。はい、コレ。私達を助けてくれたお礼に食べてーな」

 

 おっと、危ない。忘れるところやった。

 この時間に会えなくてもアースラに私達は立ち寄る予定だったのだが、今のうちにチョコレートを渡しておこう。

 言っておくけど、手作りやで。だけど、シャマルのではないで。

 

 「………」

 

 高志君は私とシグナムとリインフォースからチョコレートを受け取ると同時に動かなくなった。

 こういうイベントは初めてで少し照れくさい事もあったけど、アースラの皆さんにも配る予定やし、シグナムやリインフォースもいるから…。ん?

 

 「高志君?どうしたん?ぼーっとして?」

 

 「『傷だらけの獅子』?」

 

 ちなみにリインフォースは高志君のことを未だに『傷だらけの獅子』と呼ぶ。

 なんでも名前で呼ぶのは照れる、とのこと。そっちの方が照れると思うんやけどな。

 高志君は私達から義理チョコを貰ってしばらくの間沈黙していたけど、ゆっくりととんでもないことを言いだした。

 

 「…あ、俺。今日死ぬんだ」

 

 「なに物騒なことをいっとるんや!?」

 

 あまりにも幸せ慣れしていない高志君。

 そんな彼の姿に私は涙した。

 

 

 

 

 

 

 

 高志とはやて達がそんなやりとりをしている頃。

 とある幼稚園にて。

 

 

 夏の終わりごろにやって来た。金髪美幼女アリシア。

 その容姿と天真爛漫さに心ひかれた幼稚園の男子達。

 この幼稚園では女子園児がチョコレートを持って男子にあげることを容認している。

 そして、その男子の殆どがアリシアからチョコを貰えることを願っていた。

 

 「アリシアちゃんも誰かにチョコレートあげるの?」

 

 「うん♪一つはお兄ちゃんの♪」

 

 (((((おのれ、『お兄ちゃん』め!)))))

 

 お兄ちゃん。とはアリシアの送り迎えをしている見た目は平凡な少年だ。

 何故アリシアが彼に惹かれているのかはわからない!

 しかも、自宅に連れ込んではメイドプレイを強要(アリシアの悪戯心による発言が元になっております)をしているのに、何故…。

 

 アリシアと仲のいい女子園児が、アリシアが持ってきた袋を見て質問するとアリシアは元気に答える。

 そして、

 

 「もう一つは同じクラスの…」

 

 (((((!?ほかにあげる人がいるのか?!)))))

 

 「はーい。皆。お昼寝の時間ですよ」

 

 アリシアの次の言葉を待っているとそこに先生が入り込んでその言葉を強制的に打ち切った。

 それから皆でお昼寝をすることになったのだが、男子園児の誰もがアリシアの次の言葉が気になって眠れなかった。

 そして、帰宅時間まで待たされた彼等の目の前でアリシア『お兄ちゃん』こと高志に渡すであろう袋よりも一回り大きな袋を先生に頼んで教卓の前に置く。

 アリシアに頼まれた先生は職員室に戻っていくが彼等にはそれを気にする余裕は無かった。

 何故なら、男子園児の全員はそれをこう見て思ったからだ。

 

 

 アレを貰えたものは『お兄ちゃん』よりも好かれているぞ!と、

 

 

 「はーいっ。みんな注目。まだ帰らないでね、特に男子。今日はバレンタインです。なので私からサプライズです」

 

 どうやらアリシアは皆の前で渡すつもりらしい。

 男子は俺か?いや、俺しかいないだろうっ。と、言った具合に目を光らせて待っていた。

 

 そして、ついにその袋が開けられる!

 誰もがアリシアの愛情の結晶をがん見していた!

 

 

 MIRO。

 

 

 大きなロゴの入った茶瓶が袋から取り出した物は子どもから大人まで愛されているココア。高志も好きでよく購入している。

 牛乳いっぱいに対して一匙でちょうどいい甘さの飲み物になるカカオを粉状にしたものである。

 

 アリシアの愛情は全て高志やプレシアと言った家族にいきわたっており同じクラスメートには愛情という名の潤いは無かった。

 

 湿気0%。乾燥率100%のMIROがそれを証明していた。

 

 「一人スプーン一杯までだよ!」

 

 そう言ってアリシアはいつの間にか自分の迎えに来たプレシアの元へと走っていった。と、同時に先生が電気ポットを持って教室に入ってきて、まるで給食のように幼稚園児の男子達に配っていく。

 

 「「「「「………………」」」」」

 

 子どもの大好きなココアを貰っていながらも、彼等の表情は期待に満ちたままの顔で固まっていた。

 

 スプーン一杯。

 それがアリシアの彼等に対する愛情の軽、いや、重みであった。

 

 アリシア・テスタロッサ。

 

 海鳴市一の天然どSな小悪魔ちゃんである。

 

 


 
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