「んっ?おもぃ・・・またか、二人とも・・・」
朝目が覚めるとシングルベッドほど小さくはないが。
ダブルベッドほどの大きさも無いベッドが置かれたこのセーフハウスの一室で
目を覚ますと。右腕にフェイトが腕に抱きつくように眠っていて。
反対の左腕にはアルフが同じように抱きついて静かな寝息を立てていた。
あの、時の庭園以来、二人とも外にジュエルシード探しで
出かける時以外は俺の傍から離れなくなり。
寝る際は個室のベッドを使っていて。確かに寝るときは一人なのだが。
朝、目が覚めるとなぜか二人とも当然とばかりにベッドの中に居り。
何度か説教をしたのだが聞く耳を持たないらしい。
まあ・・説教をしても悲しそうにする二人を見ているとなんだか懐いてくる犬のように・・・アルフはそのまま犬だが。
兎に角、ここ最近の生活が一変していた。傭兵団に居るときもまあ・・一人のベッドで寝れないことはままあるのだけども
「ほら、起きろ二人とも。それか腕放せコラッ」
既にもう諦めはあるが。俺に抱きついたまま寝られていると朝食が疎かになってしまう。
簡単に言えばグレードダウン。簡素な朝ごはんになる。
あまり料理の事を二人は気にした様子なく美味しそうに食べてくれるが。
どうせなら美味い物を食べさせてやりたい。それが出来る環境でも
あるので食べたい。食べさせてあげたいという気持ちもある。
「ふわ~・・・おはよ~ノワール♪」
「んっあ?・・・おはようふぇいと~のわーる~♪」
まだ眠たそうに目を擦りながら二人が目覚める。
「眠いならまだ寝てていいぞ二人とも。朝ごはんできたら起こすから」
「起き・・ます・・・zz」
「私も~起きてま・・つ・・・zzz」
「おいおい・・・」
腕を放さないままにまた眠ってしまったので。二人を再び起こし。
台所まで付いて来たのでアルフをワンコモードにさせてその上にフェイトを寝かせて朝食作りを始めた。
こんな日が何時までも続けばと思う俺はやはり変わってしまったと思う。
だが、そうも行かない訳で、新たなジュエルシードが見つかり物語は進んでいく。
「ギッギャアアアア!」
「前の化け猫と比べてかなり好戦的な奴だな」
地面から根を出し。地を割って広がる木の化け物。
公園の木がジュエルシードの力で暴走したらしく。
醜い顔や細長い腕などが伸びて無差別に辺りの物を破壊している。
《バシュ!ピシィン!》
フェイトの放った直線で飛ぶ魔法弾。フォトンランサーがバケモノに張られていたバリアに防がれる。
「うん・・バリアまである」
「へぇ・・生意気だねぇ」
「でも、こういう相手なら俺も相手できる。なあクローシュ」
『おまかせニャ!』
「はい、でも気をつけてください」
封印魔法が使えない代わりに。前からこういう暴走体相手の戦闘は自分主体と決めていた。
「ああ、封印は任せる。それに今、この一体を覆った結界はあのフェレットの物だな。なのはも近くにいるだろう」
「・・・そう、ですか」
フェイトはやはりなのは達とはあまり会いたくないようだ。
「ちょっと念話で連絡・・する必要もないな」
戦いの舞台となる公園の入り口からデバイスを片手に走りよってくるなのはが見えた。
フェレットのユーノ・スクライアも一緒だ。
「ノワールく~ん!フェイトちゃ~ん!」
「どうも気が抜けるな・・あの声聞くと」
「そうですね・・・」
一人と一匹が合流したところで相談して作戦を立てる。
既にユーノ・スクライアの手によって結界が張られているが暴走体が。
無差別に辺りを攻撃しているので術が解ければ現実の世界で被害が出てしまうからだ。
「俺があの暴走体を魔力攻撃で潰すから。二人は封印を「ダメなの♪」行き成りケチ付けんじゃねぇよ・・・」
「ノワールくんは強いけど。やっぱり一人だと危険なの。みんな居るんだし、ねぇ?フェイトちゃん?」
「・・・うん、ノワール一人だと危険。あの暴走体はAAクラスの魔力を持ってる」
そういうところは二人意見を合わせるんですか・・・・と、素朴に思うが口にはしない。
「私もなにもしないってのは性分に反するねぇノワール」
「ぼ、僕はみんながそうするなら協力するだけです」
そして、動物組みの二人も特にそれに反論は無いらしい。
「じゃあ・・そうだな・・・俺があの邪魔な根を叩ッ切るから二人は直接本体に攻撃してくれる?それが効けば封印して。その後はジュエルシードをどちらが持っていくか決めようか」
俺一人で両方こなせるのだろうが・・皆が納得してくれないのでこれが最善だろう。
「ちょっと待ってください。ジュエルシードは元々僕が「ユーノくん?」ッ!?」
「にゃはは♪なのははそれでいいよ。ノワールくんの案にさんせ~い♪」
「え?・・ああ・・そうだな・・・・」
一瞬だけなのはが悪魔の形相でユーノ・スクライアを睨みつけたような気がしたが・・・・気のせいか?
「フェイトもそれでいいか?」
「はい、私もそれで構いません。アルフはみんなのサポートいける?」
「おう!任せてよぉ!」
「がんばろうね!フェイトちゃん!」
「・・・うん」
「それじゃ一番槍行くとしよう。クローシュ バリアジャケット シュトゥルムモード。デバイスモード ドゥクローシュ」
『おお!ご主人さまやる気ニャね!任せるにゃ!』
バリアジャケットが黒く光ると共に今まで来ていた重装のバリアジャケットから一変して。
黒い薄手のYシャツに長ズボン。肘や膝に金属のプロテクターが装備されるだけという。
非常に軽装の姿に変わり。両手には其々ガンブレードのクローシュが握られている。
「二刀流なの ?」
「ああ、攻撃特化の高速戦専用スタイル。嵐のように相手を切り刻む・・・クローシュ!」
『ブリッツアクション!』
「きゃッ!!?」
その場に砂塵を残して一瞬で木の暴走体に近づき。二本のクローシュの刃をその根に向かって振り下ろす。
《ザシュッ!!》
「ノ、ノワールす、すごい!」
「早いの!」
「無茶苦茶だ!」
「さっすが!ノワールだよ!」
声援と比べて俺の感想は芳しくない。思ったより根は太く、全てを断ち切ることはできなかったからだ。
続けて切ろうにもすぐに修復されていく。こちらを叩き潰そうとする木の根を回避しつつ指令を出す。
「チッ!浅い!・・魔法刃を!」
『ザドーシュ・ブラード!』
カートリッジが其々一発づつクローシュから吐き出され。
黒い魔法刃が刀身から刃先に向かって広がり。
魔法刃に覆われたクローシュは先端が細くなる大剣のような形になってリーチが伸びた。
「もう一度!」
《ビシャァァ!ブシャァ!!》
ムチのように振り回される根を一撃で切断し。地面に半ば埋まっている太い木の根も地の表面ごと切り裂く。
魔法刃による魔力ダメージも効いたようで暴走体の動きが鈍くなった。
「なのは!フェイト!」
「うんっ!」「はいっ!」
『デバインバスター!』『サンダースマッシャー!』
既に二人とも空に上がって待機していたようで。息を合わせたように砲撃が撃たれバリアも貫通し
暴走体は完全に沈黙。砲撃と同じように封印魔法も放たれて事態は収束していった。
そして、俺が空中に浮んだジュエルシードを手に掴む。
実際のところここからが厄介なわけで・・・。
「で?どうする?」
これが仕事でなければユーノ・スクライアに渡すところだが。
生憎と今持っている手の物の回収をするのが仕事で。
封印魔法もなのはとフェイトの二人で掛けられたものなので。
ある意味これの所有権は半々と言ったところだ。
「それなら考えてあるよ、ノワールくん」
「え?まさか・・・」
「・・・・」
なのははフェイトの目を真っ直ぐ見つめ。フェイトも無言でなのはを見つめ返した
「ジュエルシードを賭けて戦おう?それからわたしの持ってるもう一つのジュエルシードも賭ける。その代わり、わたしが勝ったらフェイトちゃんのジュエルシードを集めてる。
その理由をわたしに教えて?前にも言ったけど、なにも理由を知らずに争うのは嫌だから・・・・やっぱり言葉だけでも力だけでもダメだってわかったから
わたしが口だけじゃないってフェイトちゃんに分かってもらうから!」
「・・・うん。じゃあ私も同じように一つ賭けるよ」
空に浮んだまま。二人が其々デバイスを構えぶつかり合うように互いの間合いに入り込み。
なのははレイジングハートを振り下ろし。フェイトも同じくバルディッシュを振った。
《ガシュ!ガキィンッ!》
しかし、二人のデバイス同士がぶつかり合うことは無く。レイジングハートは手で掴まれ
バルディッシュはデバイスの柄で受け止められた。突然現れた黒と灰色の装飾のバリアジャケットに身を包んだ少年に。
「えっ?」「あっ?」
「ストップだッ!ここでの戦闘行動は危険すぎる。
時空管理局執務官 クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか」
「管理局執務官!?」
すぐにフェイトとアルフに念話を繋ぐ
【フェイト!アルフ!今すぐに撤退だ!殿は俺がやる!注意を引くからその隙に!】
【え?あ、はい!】
【わかったよっ!】
執務官は言わばエリートの魔導師。単独であらゆる捜査権限などを持ち。
実力のある魔導師でなければなることの出来ない執務官
傭兵団でも殆どのやつは執務官と真面目に戦わずに逃げろと教えられている。
俺自身は一対一で負ける気はしないが、他の武装局員に囲まれると少し厄介だ。
そして、気が抜けていた為に今の俺は変装も忘れており。既に映像が撮られているだろう。
「あっ!待て!」
フェイトが執務官から離れたのを静止する言葉を放ちながら執務官はフェイトに杖を向けた。
その間に俺は入り込みクローシュを構える。
「悪いが俺達はそっちと話し合いする気は無くてね。今日のところは退かせてもらう」
「・・・お前達は管理局相手に立てつく気か?」
「さあ?そっちが武力に訴えるなら。俺はそれを自分の力で叩き潰すだけだ」
ググッと互いにデバイスを握る手の力が強くなったところで。
フェイトとアルフは転移魔法で逃走しし。
突然、空中に縦に魔方陣が広がり、映像が映し出された。
中にはエメラルド色の髪をした若々しい女性が手を振って現れる。
「はいは~い。ストップストップ♪」
「か・・艦長!?」
「・・・・」
のほほんとした空気の女性の所為で殺伐とした雰囲気が一気に壊れた。
なんだかこのところ、こういったタイプの人との遭遇率が高い気がするのは気のせいだろうか?
「ダメよクロノ。高圧的に接すると無用な衝突を生むことになります」
「し、しかし!ロストロギアをこちらの許可も無く収集している相手ですよ!?」
「まあまあ、それにさっきのその子の言葉からして
こっちから攻撃を仕掛けなければ攻撃してこないんじゃないかしら?どう?」
どうやらこちらの殿という役目も相手は分かっているらしい。
「・・・肯定だ。今日のところは、と最後に付くがな」
「なら、今日はやめて措きましょう」
「では、これも壊させていただきます」
体の周囲に2発の誘導弾 『ミストラル・ミシィール』を作り出し
空高く打ち上げ、其々別の場所で炸裂させた
すると俺の黒い魔光以外に青白い球体が砕けて散った
「あら、バレてましたか」
「この精度で作られたサーチャーならすぐに気づく。俺をあまり舐めるなよ?」
恐らく、フェイトとアルフが転移してから追跡用のサーチャーを設置したのだろう。
俺がこのまま転移魔法を使えばセーフハウスが特定されていた。
油断も隙もない相手だ。
兎も角、早く多重転移で離脱しないと追跡の準備が整うので逃げるとしよう。
「ま、次に会った時はどういった対処をするか分かりませんが」
「あら、私達は出来れば話し合いで解決したいのだけど、どうかしら?」
「これ以上話しを長引かせるつもりはない。船のクルーに無駄な仕事をさせるだけだ」
今頃新たな追跡の準備を始めているに違いない。
「そっちもお見通しですか・・・」
その言葉を皮切りに俺は飛行魔法で空に浮び、『ブリッツアクション』を使用して高速で移動してから
この次元世界に程近い世界へ転移魔法で転移した。
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神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。