No.509253

真・恋姫†無双~不信の御遣い~ 第十二話

BLADEさん

第十二話です。

2012-11-17 17:15:19 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2768   閲覧ユーザー数:2440

アホ毛の女の子が、メチャクチャ驚いてるね。

 

無理もないか。

 

絶対に。

 

分からないと。

 

思っていたようだからね。

 

だが。

 

あまたの人間と関わって。

 

傷つけられてきた僕には。

 

特殊能力、ってほどじゃないけど。

 

一目見れば、その人がどういう人間なのかが、だいたいわかる。

 

まぁ、ゼウスさんが僕にくれた『神の加護』のおかげなのかもしれないけど。

 

そんな僕が。

 

彼女を見たときに思って。

 

彼女から感じたものは。

 

『恐れ』だった。

 

よくよく考えれば。

 

こんなところに来るまでに。

 

彼女ほどの強さを持った人間が。

 

あんな奴ら。

 

たたきつぶせないはずないんだ。

 

それなのにしなかった。いや、できなかった。

 

人質にされた少女が、彼女の持つ圧倒的な『力』に、『恐怖』しないように。

 

となると。

 

彼女はその『力』に。

 

自分自身で。

 

恐怖している、ということになるのか。

 

震えながら。

 

俯いている彼女を見て。

 

僕はそう思っていた。

 

 

なぜ、わかったんだろう。

 

恋が、自分の『力』を恐れているってこと。

 

初めてだった。

 

それに気づいてくれた人は。

 

ご主人様でも、気づいてくれなかった。

 

恋は、普通じゃない。

 

それは、生まれた時からだった。

 

ほかの子供たちとは、明らかに。

 

違っていた。

 

だから、恋は。

 

他の子達から、こう呼ばれてた。

 

『化け物』

 

と。

 

すごく、悲しかった。

 

好きで、こんな『力』を持ったわけじゃない。

 

それなのに……。

 

「れ、恋?大丈夫か?」

 

ご主人様が、恋の様子に気づいてくれて、声をかけてくれた。

 

優しい、聞いていると落ち着く、ご主人様の声。

 

だけど。

 

今はその優しさが、辛いとしか、感じられなかった。

 

 

恋の尋常じゃない『力』のことは、俺もよく知っている。

 

華雄や霞を相手に軽くいなしているところを、俺は何度も見た。

 

だけど、いつも恋は、自分の『力』に対してさして興味があるようにも見えなかった。

 

けど、高順の今の言葉で見たこともない動揺を見せて、震えながら

 

うつむいている恋は、本当に辛そうだった。

 

その原因を作った張本人は、なんでもないような顔で俺と恋を見ている。

 

その様子にわけもなく頭に血が上った俺は。

 

知らないうちに、高順の胸ぐらを掴んでいた。

 

「お前、今あの子に何を言ったか、自分でわかってるのか!?」

 

叫びながら問い詰めると。

 

「もちろん」

 

と、言ってきた。

 

そのいまだなんでもないような様子に俺は。

 

「お前に、あの子の苦悩がわかるのか!?俺はあの子に、恋に、『真名』を預けてもらったけど、

 

恋の過去のことは詳しく知らない。少ない時間の中での、あの子しか見ていない。

 

けど!!!

 

お前なんかよりは、あの子の痛みも分かるつもりだ!!!」

 

と、言葉を叩きつけてやった。

 

許せなかった。

 

恋は優しい女の子だから。

 

きっと。

 

ガマンしていたのだろう。

 

俺たちに言いたいことも隠して。

 

だけど、初対面であの少女の命を助けたからって。

 

他人のトラウマをほじくりだしていい、ってことにはならない。

 

それも、なんでもないような顔で。

 

俺の怒鳴り声に、人質の少女も恋も驚いていた。

 

まぁ、滅多に出さないしな。

 

それでも、まるっきり表情を崩さないこの少年に。

 

さらに怒鳴ってやろうとした瞬間。

 

やはり、少年は表情を変えず、言った。

 

 

 

「羨ましいよ」

 

 

 

と。


 
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