No.508577

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ八


 お待たせしました!

 それでは曹操の家臣達に対する裁きや

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2012-11-15 20:54:18 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:7344   閲覧ユーザー数:5546

 

「そうですね、俺の意見としては…」

 

 劉弁様に意見を求められた俺はそう言ったものの…実はあまり考えて

 

 なかった。

 

 いや、その、どうしよう…って悩んでいても仕方が無い。

 

「詠や冥琳の言う通り、曹操殿の家臣達を曹操殿と同じ場所へ流すのは

 

 危険であると俺も思います。曹操殿と共に行けるのはせいぜい二人まで

 

 にして、残りは他の場所へ流すべきかと」

 

 意見を求められて、結局こういう意見しか言えない自分にため息が出る。

 

「ううむ、一刀もそういうのであればやはり一緒にするのはダメかのぉ」

 

 劉弁様もまた悩み始める。

 

「恐れながら劉弁様、それではこういうのはどうでしょうか?」

 

 その時、朱里が自分の考えを話す。

 

「…なるほどな。卑怯かもしれんが仕方無いかの」

 

「それならボクも賛成よ」

 

「私も異存は無い」

 

 詠も冥琳もその意見に賛同する。

 

「ならば、それでいく事にする。月よ、後は任せる」

 

「はっ!」

 

 

 

「それはどういう事だ!!何故我々が華琳様と同行出来んのだ!!」

 

 夏侯惇が怒りの声をあげる。その後ろで無言を貫いてはいたが、夏侯淵

 

の眼にも怒りの色が宿っていた。

 

 朱里が提案したのは曹操達を一旦青州まで一緒に護送し、そこで配流先

 

 を分けるというものだ。確かにこれなら途中までではあるが同行はして

 

 いるので『同行を認める』という言葉に嘘はない上に、配流先に曹操の

 

 家臣が集まる事も無いのだが…しかしこの裁定は曹操達を騙したと受け

 

 取られても仕方の無い話ではあった。しかもそれが通達されたのは既に

 

 全員が青州まで護送され、曹操が楽浪郡に先に配流されてから数日後の

 

 事であったので、夏侯惇達の怒りも尤もではあったのである。

 

「そうは言われてもな、劉弁様は『詮議する』とも言ったはずだ。その

 

 結果お主達の同行は認められんという事になった。これは既に決定事項

 

 なので申し訳ないが、拒否権は無いからな」

 

 そう言ったのは青州の州牧でもある盧植であった。最初は月がその役目

 

 をする予定だったのだが、もし不測の事態があった時は年寄りが身代わ

 

 りに斬られると盧植が申し出たのであった。

 

(とは言っても盧植もまだ四十代後半なのだが)

 

「ふん!!こんな手段なんか取るなんて、よっぽど華琳様が怖いの

 

 かしら!?」

 

 荀彧がそう毒づく。しかし、

 

「その通り、我らは曹操をこそ最も恐れておるのだ。そしてお主達のような

 

 有能な者が曹操の下に集結する事もな。だからこそ、このような卑劣な

 

 手段を取ったのじゃ。そしてそれを劉弁様に具申したのはこの儂さ」

 

 盧植はあっさりその皮肉を肯定し、しかも自分自身が泥を被ったのであった。

 

 

 

 その後、盧植より夏侯惇達の配流先が通達された。

 

 夏侯惇・夏侯淵 → 揚州へ・孫権預かり

 

 荀彧・許楮   → このまま青州へ留め置き・盧植預かり

 

 李典・于禁   → 并州へ・董卓預かり

 

 そして、

 

「姜維、そなたは涼州・武威へ配流じゃ。馬騰殿の預かりとなる」

 

「涼州…」

 

 姜維は虚ろな眼のままそれに答える。しかし、その心の中では…。

 

(これは盧植将軍の考えではあるまい。おそらくは諸葛亮の…今更何を言おう

 

 が考えようが一緒か。劉備殿亡き今、もはや私には何も出来やしないのだか

 

 らな)

 

 いろいろな考えと諦めの気持ちがない交ぜになったような物が渦巻いていた

 

 のであった。

 

 夏侯惇達は必死に抵抗しようとはしたが、拘束されている上に武器も無けれ

 

 ば兵も二十人しかいない状況では如何ともしがたく、半ば無理やりに各地へ

 

 護送されていったのであった。

 

 ちなみにそれを曹操が知ったのは楽浪郡に着いてから十日程してからだった

 

 のである。

 

 それを聞いた曹操は表面上は冷静にしていたが、その眼には静かに怒りの炎

 

 が燃え上がっていたのであった。

 

 

 

 場所は変わり、雍州である。

 

 ここは月の領土であったが、今回新たに白蓮に与えられたのであった。

 

(ちなみに月には代わりに冀州が与えられている)

 

 そして衛将軍としての公務により洛陽を離れられない白蓮に代わって統治に

 

 当たる事になったのが、

 

「何故、私が…まったく伯珪殿も戻って来た早々、私にこのような任を押し付

 

 けるとは…なあ、雛里もそう思わんか?」

 

「あわわ、それは多分白蓮さんが星さんを信頼している証ではないかと…」

 

 再び白蓮に仕える事になった星と一刀より補佐を命じられて赴任してきた

 

 雛里であった。

 

 白蓮自身は有能な政治家でもあるのだが、洛陽の仕事との両立はさすがに無理

 

 であるので、誰か雍州で政務を取れる者を一時期でいいから貸して欲しいと

 

 劉弁様に懇願し、それを聞いた華雄が推挙したのが雛里だったのである。最初は

 

 雛里本人が乗り気でなかったのと、一刀も雛里を一時期とはいえ手放すのに抵抗

 

 があったのだが、劉弁様と白蓮のたっての願いで赴任する事となったのである。

 

(ちなみに星は白蓮に再仕官した際に、一刀達に真名を預け済みである)

 

「ところで雛里よ、あの三人はどうしているのだ?」

 

「あの方達は与えられたお屋敷の中で静かに『もう怒ったのだ!!愛紗、勝負なの

 

 だ!!』『ほう、ならば容赦はしないぞ!!』『あの、二人共~喧嘩はやめよう

 

 よ~!』…していないようです」

 

「仕方無いな、あやつらも」

 

 星はそう言って苦笑いを浮かべたのであった。

 

 

 

 

 ~その屋敷の庭にて~ 

 

「うりゃりゃりゃりゃ~~~~!!」

 

「この程度で倒せると思ったか!!」

 

 関羽と張飛がやり合っていた。これが稽古ならば特に問題は無かったのだが…。

 

「愛紗ちゃんも鈴々ちゃんもやめようよ~。ね、お饅頭なら私の分を鈴々ちゃん

 

 にあげるから。それで仲直りして…」

 

「それじゃダメなのだ!!お姉ちゃんがそうやって愛紗に甘いから鈴々の饅頭を

 

 食べても謝ろうとしないのだ!!」

 

「桃香様、鈴々を甘やかす必要は無いのです。こやつは既に十個は食べているの

 

 です。我々は自由に食べに行ったり買いに行ったりしづらい身の上である以上、

 

 食べる量も考えなければならないのです!それを考えも無しにパクパク食べる

 

 こやつが悪いのです!」

 

 どうやら三人分、しかも数日分用意してあった饅頭の大半を張飛が食べてしま

 

 い、怒った関羽が一個食べてしまったのを張飛が文句を言っているようだ。

 

 お気づきだとは思うが、ここに処刑されたはずの劉備が普通にいたりするので

 

 ある。

 

 厳密に言えば「劉備」という人物は確かに処刑されているのである。そして

 

 一刀が曹操達に渡した服も本物だったのだが…話は劉備を処刑する為に一刀が

 

 城外へ引っ立てていった時に遡る。

 

 

 

 ~処刑時の話~

 

「劉備殿、そろそろよろしいか?」

 

 俺はそう淡々と問いかける。

 

 その瞬間、張飛さんは俺に恨めしそうな眼を向ける。

 

 正直、彼女の哀願を聞いてあげたい気持ちはあったのだが「劉備」の処刑は

 

 手早く行わなければならないので、俺は半ばそれを無視する形で劉備さんを

 

 促す。

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 劉備さんは関羽さん達と言葉を交わした後、こちらへ歩を進める。

 

「白蓮、例の物を」

 

「わかった」

 

 白蓮は置いてあった包みを持って茂みの方へ行き、陣幕のような物を張り巡

 

 らせる。

 

「では劉備殿、まずはあちらへ」

 

 俺は劉備さんを促し、幕の中へ入る。

 

「あの…ここで処刑を行うのですか?」

 

 劉備さんは恐る恐る聞いてくる。

 

「ああ、そうだよ。だがその前に、今着ている服を全て脱いでもらう。下着も含

 

 めてね」

 

「……え、えええええええ~~~~~~っ!えっと、あの、それは一体どういう

 

 …まさか処刑の前にその、あの…」

 

 劉備さんは急に顔を赤くし、体をモジモジさせ始めた。

 

「おい、北郷。その言い方は誤解を招くだろう…ちゃんと順序立てて説明をしろ」

 

 陣幕を用意し終わった白蓮が寄って来てそうツッコむ。

 

「済まない、劉備殿。少々誤解を招く言い方をしてしまった。そういう事をする

 

 わけでは無いんだ」

 

「え、あ、そうなんですか?何だ…そうなんだ…」

 

 …? 何か劉備さんがちょっとガッカリしている様に見えたのは気のせいか?

 

 まあ、いいか。 

 

 

 

「それじゃ白蓮、劉備殿の着替えと準備が終わったら呼んでくれ」

 

 俺はそう言って幕の外に出る。

 

 それからしばらくして、

 

「北郷、終わったぞ~」

 

 白蓮の声が聞こえたので中に入る。そこには、

 

「これはどういう事だ!何故私がこのような服を着させられてこのような目に!」

 

 先程まで劉備さんが着ていた服を身に纏わされ、縛り上げられている一人の男の

 

 姿があった。

 

「北郷、言われた通りにこいつに桃香の服を着せたけど…そもそも誰だ、こいつ?」

 

「こいつは『劉備』だよ」

 

「……はぁ?」

 

「正確に言うとこいつは『劉備』と名乗っていた盗賊の親玉さ」

 

「どういう事だ?何故こいつが『劉備』って名乗っているんだ?」

 

「さあ?それについてはこいつが何も答えないのでわからん」

 

「しかし、何でそんな奴を北郷が捕まえているんだ?」

 

「たまたま南陽に出た盗賊を退治して頭目を捕まえたら『劉備』って名乗ったから、

 

 もしかしたらうまく使えるんじゃないかと思って捕まえたままにしてたんだけど…

 

 本当に役に立つとは思わなかった」

 

 俺のその言葉を聞いた白蓮は何かを察したように驚いた顔を俺に向ける。

 

「北郷、まさか…」

 

「ああ、そうだよ。白蓮は反対か?」

 

「いや、その、反対っていうか…それで騙せると本気で思っているのか?」

 

 白蓮は普通に真っ当な質問をする。

 

「一瞬騙せりゃ問題無し」

 

 俺のその返答に白蓮は諦め混じりのため息をついた。

 

 

 

 こうして劉備さんの服を着せた偽劉備を処刑し、その血がついた服を曹操さん達に

 

 見せたのであった。ここまで素早く行う事によって、他の刃向かう可能性のある者

 

 達を黙らせる必要があった為、俺は淡々と『劉備』の処刑を行ったのであった。

 

 ちなみに劉備さんは処刑の身代わりを立てた事について含む所のあるような視線を

 

 向けて来たが、俺はそれを無視して関羽さん達に引渡し、さらに雍州の太守も兼任

 

 になった白蓮の下へ謹慎という名目で預けたのであった。(ちなみに、関羽さんと

 

 張飛さんは劉備さんと一緒にいると共に謹慎する道を選んだのである)

 

 しかし、預けるにしても『劉備』のままでは具合が悪いので彼女には違う名前を

 

 名乗ってもらう事になった。それは…。

 

 ・・・・・・

 

「そういえば、お姉ちゃんの新しい名前って何になったのだ?」

 

「鈴々…確かここに来る前に教えたぞ?」

 

「にゃはは、忘れたのだ」

 

 張飛のその答えに劉備は苦笑いを浮かべる。

 

「あはは…あのね、鈴々ちゃん。私の名前は『劉貞』になったんだよ」

 

「りゅうてい…?何でそんな名前になったのだ?」

 

「北郷さんが名付けてくれたんだけど…しかもそれが私の先祖の名前だってちゃんと

 

 知ってて。あの人って時々不思議な感じがするよね」

 

「でも北郷のお兄ちゃんはお姉ちゃんを鈴々達に返してくれたから良い人なのだ!」

 

「ああ、しかも星の下へ預けてくれたしな。星の奴が白蓮殿の下へ再仕官すると聞い

 

 た時は驚いたが、もしかしたらこの展開を予想していたのやもしれんな」

 

「本当は真尋も一緒が良かったのだけど…」

 

 張飛が姜維の名前を出した途端に関羽の機嫌が悪くなる。

 

「ふん、あいつは自分の意志で曹操を選んだのだ。今更一緒になど…」

 

「もう、愛紗ちゃんたら…」

 

 その時、突然張飛が話題を変える。 

 

「それよりも愛紗、勝負の続きなのだ!」

 

「ほう、容赦はしないからな」

 

 その言葉に関羽の機嫌も治まる。そして二人はまた勝負を始め、劉備改め劉貞は

 

 それを微笑ましく眺めていたのであった。

 

 

 

 こうして劉協陛下の崩御から始まった混乱は収まり、劉弁様が正式に第十四代皇帝と

 

 して即位したのであった。そして、劉備さんを担いだ曹操さんの企みに加担した諸侯

 

 達は慌てて劉弁陛下に対し忠誠を誓いにやって来たのであった(当然、全員それなり

 

 に罰せられたが)。しかし、ただ一人姿を現さない者がいたのである。

 

「月よ、確かに劉璋は来ておらんのだな?」

 

「はい、何度も成都へ使者を送り劉璋殿自ら洛陽へ赴くよう申し付けたのですが、返事

 

 すらありません。しかも、益州の各城には多数の兵が入り完全に戦闘態勢に入ろうと

 

 しているとの報告が来ております」

 

「あやつめは何を考えておるのだ?前回は袁紹、今回は曹操の企みに参加して、しかも

 

 謝りにも来んとは…同じ劉姓の人間として恥ずかしい限りじゃ」

 

 陛下は憤りを隠さずにそう言い放つ。

 

「念の為、もう一度使者を送ったのですが…もう帰って来る頃合かと『申し上げます!』

 

 どうしました!?」

 

 月の言葉を遮るように血相を変えた兵士が駆け込んでくる。

 

「益州よりこれが…」

 

 兵士が差し出したのは首桶であった。

 

「これは一体…まさか!」

 

 月がそれを開けて中を見た途端、みるみるうちに顔色が変わる。

 

「…? 月、どうしたのじゃ!?その首は誰のじゃ?」

 

「…私が今回益州に使者として送った者の首です」

 

「なっ!?まさか…それが劉璋の返事という事か!!」

 

 陛下は怒りの声を上げたのであった。

 

 

 

 

 

                                続く…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 一応曹操達への処分は一旦終了です。

 

 しかし我ながら無理やりな感じがします…ご不快に思った方々には申し訳なく

 

 思っております。温かく見守ってくださると幸いにございます。

 

 一応、次回から益州討伐戦の予定です。何故、劉璋陣営は月の送った使者の首

 

 を刎ねたのかなどは次回にお送りする予定です。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ九でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 

 追伸 曹操はまだ終わっていませんので…多分。

 

 

 

 

 

 


 
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