No.507978

そらのおとしもの  棒旗遊戯(ポッキーゲーム)

水曜定期更新。

pixivの方でポッキーの日をやたら応援していたので、それように作っていたけど、間に合わなかったぜなアストレアさんなサバイバルゲーム1話。


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2012-11-14 00:45:37 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1690   閲覧ユーザー数:1631

 

そらのおとしもの  棒旗遊戯(ポッキーゲーム)

 

 

 

「うううっ。お腹が空きましたぁ~~~~っ」

 2012年11月11日日曜日昼。

 アストレアは長かったようなでも実際に活動していた時間は長くなかったような一生を終えようとしていた。

「今日中にカロリーを。カロリーを採らなければ死んでしまいますぅ~~~~っ!」

 アストレアは己の死期をよく悟っていた。

 残り12時間以内にカロリーを摂取しなければ活動が完全に止まってしまい、二度と目覚めないことを。

「こんな時こそ桜井家へ。イカロス先輩にご飯を食べさせてもらいに……はっ!」

 言いかけて思い出す。

 数日前に桜井家にご飯をもらおうとしてそこで遭遇した恐怖に。

 

 

『いいっ! 私はこれから智樹とポッキーゲームする練習に忙しいからデルタに邪魔して欲しくないのよ。分かる?』

 ニンフは箱に入ったポッキーをバリボリと噛み砕き、強度の計算をしながら玄関から上がろうとしていたアストレアを睨んだ。

 荒々しいケモノの瞳をしているニンフにアストレアが上半身を仰け反らせる。

『あ、あのぉ~~』

『何?』

『ポッキーゲームって何ですか?』

 ニンフの瞳がギンギンに輝いた。

『そんなもの、智樹の赤ちゃんを産む為の過程に決まっているでしょ』

 よくは分からないがニンフがまたエロいことを考えている。

 そしてそれを素直に告げれば自分はすぐに殺される。

 それだけはハッキリと認識した。

 小動物的な生を送っているゆえに命の危険に対しては本能が教えてくれる。

『ニンフさん。幾ら何でもそれじゃあアストレアさんに何も伝わらないよぉ~』

 居間からポッキーを咥えたそはらが出て来た。

 またエロい人が出てきたとアストレアは思った。

 2人が積極的に絡んでいる以上、エロいイベントなのだろうと思った。

 でも、それは口に出さない。

 殺されるから。

『私の説明に何か不十分な点があったかしら?』

 ニンフは首を捻った。

 本気で分からないらしい。

『それは結果しか伝えてないんだもん。ちゃんと過程を説明しないと』

『そうだったわね。デルタは馬鹿だからちゃんと一から説明しないと』

 そはらもニンフの結論が間違っているとは述べない。

 エロい人達はブレないなあと思うが口には出さない。死亡フラグを自分で立てたくはない。

 

『要するに……キスするでしょ⇒ムラムラして押し倒されるでしょ⇒男女の愛が爆発するでしょ⇒子供ができるでしょ⇒産むでしょってことよ。分かった?』

『うう~~。ニンフさん言い方がストレート過ぎるよぉ~。それに子供できたらちゃんと結婚式を挙げるって過程もちゃんと踏まないと~』

『でも、人間って、1人としか結婚しちゃいけないんでしょ? 私とそはら2人と結婚することは智樹には出来ないんじゃないの?』

『人間の法律が適用されないシナプスに3人で引っ越すというのはどうかな~?』

『じゃあ、いっそのこと、シナプスを滅ぼして3人で新しいパラダイスを作ろっか』

『うん。それは名案だね~。そうすれば誰にこそこそする必要もないし。2人でシナプス滅ぼしちゃおっか♪』

 2人が何を言っているのかまるで分からない。

 そう素直に言ってしまいたかった。

 けれど、それを述べれば自分はすぐにでも殺される。何せ相手はエロい欲望を満たす為だけにシナプスを滅ぼそうと合意を形成する連中だ。

 アストレアは自分が蚊を叩き潰すように無慈悲にあっさりと殺されるに違いないことをハッキリと悟っていた。

 だからこそ、質問は注意しなければならなかった。

『あの~、何故智樹とキスに至るのか出発地点がよく分からないんですが~?』

 アストレアとしては精一杯知恵を絞った質問だった。

 そもそも、2人の話し合いが理解できない根本要因だった。

『ポッキーゲームってのは男女がキスする為の小芝居よ。智樹が私のこの可憐な唇を荒々しく吸い尽くす為のね』

『ニンフさん。言っていることが過激すぎるよ~。後、ニンフさんだけじゃなくてわたしの唇も吸われちゃうんだけどね~』

 ……エロい人達にこれ以上話を聞くのは時間とカロリーの無駄でしかない。

 アストレアはこの世の真理を遂に悟った。

 

『じゃあ、おふたり共お忙しそうなんで私はこれで……』

 これ以上ここにいると自分の身に不幸が襲い掛かる。

『待って、デルタ』

 回れ右して帰ろうとしたらニンフに肩を掴まれた。

『な、何でしょうか?』

 体の震えが止まらない。

 聞かずとも分かる。

 命に関わる脅しをされるのだと。

『私が智樹とポッキーゲームするのを邪魔したら……殺すから』

『脅迫がストレート過ぎるぅうううううううぅっ!!』

 涙が出た。

『わたしも、アストレアさんに邪魔されたら多分細胞の1つも残さずに消滅させちゃうから覚悟しておいてね』

『はいぃいいいぃっ!! わっかりましたぁああああああああぁっ!!』

 泣きながらアストレアはエロい2人から逃走を図った。

『後、私が智樹の赤ちゃんをちゃんと産むまで、桜井家に入ってきたら殺すわよ~』

『1年間のお別れだね。アストレアさ~~ん。バイバイ~』

 アストレアには2人の物言いに少しの冗談も含まれていないことを感じ取っていった。

 こうしてアストレアはエロい2人の脅迫によって1年間桜井家に上がれない身となってしまった。

 

 

「あの日以来、主要カロリー摂取場所だった桜井家に上がることができず…うっうっうっ」

 自身の境遇を嘆く。

 桜井家へと足を運べば待っているのは絶対なる死。

 けれど、足を運ばなくても餓死の足音はもうすぐそこまで近付いていた。 

「こうなったら、桜井家以外からカロリーを確保する道を確保しなきゃ!」

 アストレアは生き残るために新しい戦略を採用することに決めた。

 

 

「守形~~っ! 知恵を貸して頂戴~~っ!!」

 アストレアは残り少なくなった体力を削りながら守形の元へと飛んでいった。

「どうした、アストレア?」

 釣り糸を垂らしながらジッと川面を眺めていた守形が顔を上げた。

「桜井家に立ち寄れなくなったから、他で毎日食料をもらえる場所を確保したいの!」

 アストレアは守形へ熱く訴えた。

「それは難しい問題だな」

「そう、なの?」

「その問題が解決できなくて俺も毎日危機的状況にいるからな」

 守形はバケツを見た。水が張られたそれには魚が1匹も入っていない。

「だが、それは俺の場合の方がより難しいという話だ。アストレアの方がしがらみが少なかろう」

「しがらみ?」

 守形はしがらみについて詳しく述べなかった。

「まあ、要するにだ。アストレアの場合は、美香子の家に毎日出向いて食事をご馳走になっても問題は生じないだろうということだ」

「師匠の所、かあ……っ」

 アストレアが難しい表情をしてみせた。

「美香子の所に行くと何かまずいことでもあるのか?」

「まずいことって言うか、あの家の雰囲気がちょっと……っ」

 五月田根の屋敷で食事に預かっていた時のことを思い出す。

「あの大きな家で1人でご飯食べていると……寂しくなってご飯が喉を通らなくなるの」

 屋外で飢えているのは辛い。

 けれど、五月田根家での食事はどんなに豪華なものを出されても、切なさが込み上げて結局食べられない。

「まあ、その気持ち……分からんでもない」

 守形は眼鏡を曇らせた。

「しかし、アストレアが頼れる人脈はそれぐらいだろう」

「まっ、まあ、そうなんだけど」

 万策尽きた雰囲気がアストレアに漂う。

 その時だった。

 

「おっほっほっほっほ。そんな時こそ、鳳凰院家の財力にお任せですわ~~♪」

 やたらハイテンションな少女の笑い声が鳴り響いた。

 2人が振り返ると鳳凰院家の息女、鳳凰院月乃が顎に手を当てながら高笑いを響かせていた。

「こんにちは」

 アストレアが頭を下げる。

「これこれはご丁寧に。こんにちはですわ」

 月乃が丁寧に頭を下げ返した。

「それで、何の用だ?」

 守形が鉄仮面な表情で尋ねる。

「実は、アストレア様と守形様を鳳凰院家が開催する棒旗遊戯へご参加して頂きたいと思ったのですわ」

「棒旗遊戯…だとっ!?」

「知っているの、守形!?」

 驚愕の表情を見せる守形に対してアストレアも驚き返してみせた。

「ああ、およそ武術に心得のある者ならば棒旗遊戯の名を知らない者はおるまい」

 守形は緊張しながら解説を始めた。

 

 

 棒旗遊戯(ポッキーゲーム)

 古代中国において歴代の皇帝は農民達の蜂起を警戒し武器の所有を禁じていた。しかし農民たちには野盗や野生動物などから身を守る武力が必要だった。

 そこで考案されたのが、木の棒に布を巻いて即席の武具(棒旗)とし、武術に励むことで武器の不利を補うという方法であった。巻かれた布には皇帝を崇拝する言葉が書かれており、時の権力者たちはこれを禁止できなかった。

 時代が経るごとに棒旗は全土へと広まり、1対1の試合形式でその腕を競う競技会(棒旗遊戯)が盛んに開かれるようになった。全国大会の決勝は皇帝閲覧の御前試合となり、その優勝者には武術家としての最高の栄誉と巨万の富が与えられたという。

 棒旗をヒントに考案されたスティック状の製菓がポッキーであり、棒旗遊戯の緊張感を再現したゲームがポッキーゲームであることは言うまでもない。

民明書房刊『古代中国の護身術とその起源』より

 

 

「さすがは守形様。棒旗遊戯についてよくご存知ですわね」

 月乃は守形の説明に対して頷いてみせた。

「しかし棒旗遊戯とは……鳳凰院家は皇帝を気取るのか?」

「そうではありませんわ。社会福祉です」

「社会福祉だと?」

「優勝者への褒美は鳳凰院家が。そして大会収入で得た利益の大半は空美町や福岡の道路改善やお年寄りや子供の使う施設の改善に使わせて頂いてますわ」

「どうせその工事を受諾するのは鳳凰院家関連企業なのだろう?」

「福祉効果を最大限に上げるための最善の方法ですわ。無駄なお金が1円も出ませんから」

 アストレアには2人が何を喋っているのかまるで分からない。

「このようなイベントを空美町で開いたら五月田根家が黙っていないだろう」

「それに関しては協定が存在しますわ。相互不可侵協定が」

「なるほど。だから、美香子が主催するイベントには鳳凰院家は絡まないのだな」

「ええ。両家が揃ってしまいますといつぞやの音楽対決の様に町を二分した大掛かりな争いになってしまいますので」

 アストレアにはやはり何の話なのか分からない。分からない。けれど……。

「はいは~い」

 質問をしてみることにした。

 

「何ですの、アストレア様?」

「その棒旗遊戯で優勝すれば食べ物を沢山もらえるんですか?」

「棒旗遊戯の優勝者には望みの品が何でも与えられます。アストレア様が食事をご希望なら勿論可能ですわ」

「ご飯を1年間毎日でも?」

「ええ。1年間どころか100年でも問題ありませんわ」

「よっしゃ~~っ!!」

 アストレアはやる気が漲ってきた。

「私、棒旗遊戯に出るっ!」 

 気合の溢れるままに大声で宣言する。

「アストレア様が出て頂けるのなら大会は大いに盛り上がりますわ」

 月乃がアストレアの参加を承認する。

「大会はいつなの?」

「今日の3時からですわ」

「そう。なら、私が餓死する前に決着をつけられるわ」

 大会開催が今日なのはアストレアにとっては幸運だった。明日以降の開催なら出場前に死んでいたのは間違いないのだから。

 

「守形様はどうされますの?」

「そうだな……」

 守形はしばらく考え込んで

「大会を可能な限り平和裏に終わらせるには俺も出た方が良いだろう。アストレアのように食料も手に入れたいしな」

 月乃の提案を受け入れた。

「これで大会はより面白くなることが決定しましたわ。わたくしが立派に大会運営を出来ることを智樹様にも見て頂かなくては。おっほっほっほっほ」

「そういう裏か」

「まあ、エロい2人に比べたら可愛いですけどね」

 こうしてアストレアと守形は棒旗遊戯に参加することになった。

 

 

 

幕間

 

「日和。今日はポッキーの日だ。だから俺とポッキーゲームしないか?」

「えっ? 急にどうしたんですか、桜井くん?」

「いいから。さあ、こっちのチョコの塗られた端を咥えるんだ」

「はっ、はい」

「じゃあ、始めるぞ。途中で折れたら罰としてキスするからな。最後まで言ったらご褒美にキスが待ってるからな」

「そっ、それじゃあどうやっても結果が同じなんじゃ……」

「よ~し。じゃあ、始めるぞ」

「はっ、はい。分かりました」

「ほ~ら。段々ポッキーが短くなっていくぞ~。3cm、2cm、1cm……日和の唇、いただきだぜ♪」

「あっ? ……桜井くん、強引すぎます。この責任……一生掛けて取ってもらいますよ。ポッ」

「取る取る。取るに決まってるさ。それじゃあ早速、夫婦としての第一歩を。ぎょっひゃっひゃっひゃ」

「桜井くん……あなたったら気が早いんだから。ポッ。最初の子供は男の子がいいです」

「さあ、日和。まずはもう1度その可憐な唇を……うん? ニンフとそはらじゃねえか。一体どうしたんだ?」

 

「パラダイス・ソング~~~~っ!!」

「殺人チョップ・エクスカリバー~~~~っ!!」

 

「うわらばぁあああああああああぁっ!?!?」

「あなたぁあああああああああぁっ!! プロポーズ早々、未亡人になってしまいました。グスン、です」

 

幕間 完

 

 

 

「ええっ!? 智樹様が銀河鉄道に乗って2度と帰ってこない旅に出てしまわれたですって? そんなぁ~~っ」

 会場に到着するや否や、智樹の不参加を知った月乃はガックリとうな垂れた。

「智樹……逝ったのか」 

 守形が空を見上げる。アストレアもつられて空を見る。

 桜井智樹が空美町の大空からエロい瞳で地上の女性達を見守っていた。

「ばかっ」

 アストレアは目を硬く瞑った。

「でも、今日の大会に優勝して食べ物をたくさんもらわないと明日には私が智樹と同じ位置に行くことになる」 

 瞳を炎で燃やしながらアストレアが目を開いた。

「だから私は絶対に負けないっ!」

 そんなアストレアの決意に同調したのが月乃だった。

「そうですわ。せっかく智樹様が空から見守っていてくださるのです。この大会を何としてでも成功させてみせますわ!」

 月乃は雄々しく立ち上がった。

 

「うふふふふ~。アストレアちゃんも月乃ちゃんも立派よ~。そうでなくっちゃ~お祭りごとは楽しくないわ~」

 石の仮面をかぶった空美学園の制服を着た女性が2人を褒め称えながら去っていく。

「今の方は?」

「参加者の1人のマスク・ド・Mikakoさんですの。ですが、お名前以外は経歴が全く不明の方ですわ」

「へぇ~。世の中には不思議な方もいるもんですねぇ」

「いや、どう見ても美香子が変装して参加しているだけだろうが」

 守形のツッコミは2人の耳に届かなかった。

 

「……BLでないマスターが死んだ所で何の問題もありません。むしろ、BLなクローンマスターを本物のマスターとして据えられる分、良いことだらけです」

 続いて3人の前にやって来たのは戦闘服姿のイカロス。しかも何気にver.2モード。やたら高い戦闘力を漲らせている。

「イカロス先輩も出るんですか?」

 アストレアは顔を引き攣らせた。

「……はい。優勝して空美町の男をみんなBLにします。そしてクローン培養したBLマスターを沢山この町に解き放ち、マスター総受け天国を実現いたします」

 イカロスはごく済ました表情でそう述べた。

「イカロス先輩には……負けられません」

「……死にかけの小娘がいきがりますね」

 イカロスは微笑んだ。

 死を予感させる笑みで。

「……アストレアは私が直々に引き裂いてあげます。だから、ちゃんと勝ち残ってくださいね」

 イカロスは去っていった。

 

「もっ、もう、イカロス先輩みたいな強敵はいませんよね?」

「あ~。アストレアお姉さまだ~」

 カオスがアストレアを見つけて満面の笑みを浮かべながら近寄ってきた。

「もしかして、カオスも出るの?」

「うん♪」

 あっさりと承諾してみせるカオス。

 アストレアの顔が青ざめる。

「イカロス先輩にカオスまで出場するなんて……もしかして、これは厳しいってやつですか」

 アストレアが落ち込んでいく。

「アストレア様。私のことをお忘れになられては困りますね」

「オレガノっ! アンタまで!?」

 アストレアの背後にはミニイカロスことオレガノが着物姿で立っていた。

「コンブが出場しないのは残念ですが……」

 オレガノは守形をジッと見た。

「智樹様亡き以上、守形様をいただくまでです。ジュル」

 オレガノはよだれを啜った。

「自分の師の悪知恵と能力を過小評価しない方が良いぞ」

 守形は他人事のようにいった。

「フッ。今日という日を過ぎればもう五月田根と縁のない女となるので心配は不要です」

「大した自信だな」

 オレガノは軽く会釈をするとアストレア達の前から姿を消した。

 

「どうやらこの戦い。予想以上に手練が参加するようだな」

「でも、負けられないっ!」

 アストレアは自身のお腹を見ながら強く語った。

 後、9時間ちょっとで自身は死んでしまうことを十分に意識しながら。

 

 

「お集まりいただきました皆さま。それではこれより鳳凰院家主催、第1回棒旗遊戯を開催いたしますわ~」

 午後3時。月乃の宣言と共に大会の開催が宣言された。

 会場となった私立空美中学には数百人に及ぶ参加者とその数倍に及ぶ観客たちが集まっていた。

 日曜日なので暇だった。

「ルールについて、もう1度説明しますと、参加者の皆さまにはポッキーを1本ずつ持って頂きます。ポッキーは必ず体のどこかに身につけていてもらい、そのポッキーを攻撃や不注意で折られたら失格となります。最後までポッキーを折られずに残った1人が優勝となりますわ~」

 月乃のルール説明を聞いて守形が考え込んでいた。

「随分と抜け道を用意できてしまうルールを設定したものだな」

 守形はマスク・ド・Mikakoとオレガノの方を見ながらため息を吐いた。

「やはりこの決戦。最も警戒すべきは五月田根家のようだな」

「誰が相手だろうと、優勝しなければ私は死ぬんです。だから、勝つだけです」

 アストレアの手には主催者側から配られたピンク色のポッキーが握られていた。

「それでは皆さん、優勝目指して頑張ってください。空美町の外に出ては失格となりますからご注意ですわ」

 試合開始が間近に迫ってアストレアの瞳が細く厳しいものに変わる。

「棒旗遊戯…………開始っ、ですわっ!」

 

 

 空美町の大空から桜井智樹が見守る中、アストレアの生存を賭けた戦いが始まりを告げたのだった。

 

 

 つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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