読んでみた手紙には、まずこうあった。
「ひっかかったな」
ほっとけ。
初っ端からイラつかせやがる。
続きを読んでみる。
「別に儂は騙してはいないからの。お主が勝手にあのどす黒く大きな穴を、『地獄の入口』
だと勘違いしたんじゃ。ネタバレをしようかの。あの穴をはな、『転生穴』
と言って、転生する為に必ず飛び込む穴じゃ。お前さんは勘違いして自分でそれに
飛び込んだ、というわけじゃ」
チクショウ、やっぱりか。
「まぁ、これでお前さんは望まない新たな人生を生きることになったわけじゃ。
ガブリエルの策が見事成功したわけじゃ。めでたし、めでたし、じゃな」
全然めでたくねぇよ。めでたいのはそっちだけだろ。
ボーッと、事態を未だ飲み込めずにいる僕を尻目にゼウスさんの手紙が続く。
「さて、これでお前さんは新しい人生を生きることになったわけじゃが、まずどんな世界なのか
教えておくかの」
一拍おいてゼウスさんは言う。
「その世界はの。『恋姫無双』の世界じゃ」
と言った。
『恋姫無双』って・・・。よくは知らないんだが、クラスメートの男子達が最高って、
騒いでたやつだっけ。
なんでも、女性化した三国志の武将達とイチャイチャするエロゲーだとか。
その頃の僕は、そういうものに全く興味が持てなかったので聞き流してたんだけど・・・・・・。
まさか僕までその世界に行くとは・・・・・・。
「ちなみにお前さんには、儂の加護がついておるから、その斧で自殺しようとしてもむだじゃ」
クソッ。読まれてるか・・・・・・。
「ま、覚悟を決めてその世界を生きてみぃ。そしたら、人を信じることもできるかもしれんぞ?」
それは。
それだけは。
絶対ないと。
僕は思った。
もう何を言っても手遅れだと諦めた僕は、とりあえず箱の中に入っていた道具を取り出して、
衣服を着替える。
この斧、本当にどうしよう。一応刃止めをしたけど・・・。
「はぁ・・・・・・、不幸だ」
どこかの幻想殺し持ちの少年のセリフっぽいが、気にしない。
僕の方がよっぽど不幸だ。
もう、生きたくないのに。
もう、死にたいのに。
もう、裏切られたくないのに。
もう、信じたくないのに。
「これから、どうなることやら」
僕は溜め息とともに。
宿(僕がいたのは宿の一室らしい)の扉を開け。
一歩。
外に足を踏み出した。
次回からやっと始まります。
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第八話です。