第六話 「涙」
水銀燈 「んぅ・・・眩しいわぁ・・・」
カバンを開けるとそこには水銀燈の姿
---ジーーッ---
俺は表情を硬くしたままカバンを閉じる。
まてまてまて、今のはなんだ?
落ち着けもしかしたら見間違いかもしれないだろ?
そうだ、寝不足だから変な幻覚を見るんだ。
J 「すぅぅぅぅ・・・・・・はぁぁぁぁ・・・・・・」
深呼吸をしてもう一度カバンを開ける
水銀燈 「ちょっとぉ、さっきから眩しいわよ」
----ジッ---
今度は勢い良くカバンを閉める
そしてカバンを持ったまま俺はホームルーム中にもかかわらず走り出す
梅岡 「ちょっとどうしたんだい!?」
J 「便所ッス、すぐ戻ります!」
そう言って俺は教室を飛び出した
岡田 「なんで便所にカバン持って行ってんだあいつ」
俺は校舎裏の焼却炉へたどり着いた
----ぽいっ---
そしてそこへカバンを投げ捨てる
J 「ふー、やれやれ驚いたぜ」
汗を拭って教室へ戻ろうとしたその時
水銀燈 「ちょっと待ちなさいよぉ!!」
焼却炉から這い出てくる水銀燈
ちっ、火がついていなかったか
水銀燈 「いきなり捨てるなんてひどいじゃない!」
J 「やかましい、勝手にカバンの中に入ってたお前が悪い」
水銀燈 「ついてきたっていいじゃない、ケチ!」
ケチとかそういう問題じゃないわボケ!
J 「いいか?朝も言ったがお前が見つかるとすごい騒ぎになるだろうが」
水銀燈 「それはわかってるわぁ」
J 「じゃあなんで」
水銀燈 「見つからなければ大丈夫」
腕を組んでなぜか誇らしげに言う
だめだ、こいつになに言っても無駄だ
J 「わかった、もう好きにしなさい、おじさんの負けです。」
水銀燈 「ほんと!?」
J 「おうよ、武士に二言はないよ。ただし、他の生徒に見つかったら
即、東京湾に沈めるからな」
水銀燈 「え、ええ、わかったわぁ」
俺は水銀燈が見つからないことを神に祈りながら、その場を後にした
俺が戻るともうすでに授業が始まっていた
教師A 「何してたんだ、早く席に着きなさい」
J 「すんませーん、便所行ってました」
そして席について俺は窓の外を眺めた
ああ~、いい天気だな、なんか心休まるぜ
グラウンドでは他のクラスが体育をやっていた。
走ってる男子に鉄棒をしてる女子、それを見てる教師に、空中で旋回している黒い物体
その向こうには犬と散歩してる老人、平和だな~・・・
・・・・・・・・・?
あれ?何か今見てはいけないものが飛んでたような・・・
目を擦ってもう一度見るとそこには
SUIGINTOU!
J 「いやぁぁぁぁぁ!!!!」
立ち上がり絶叫する俺
教師A 「ど、どうした!?」
J 「すんません、便所行って来ます!!」
そう言うと俺は掃除箱からモップを取り出すと廊下に飛び出す
岡田 「用を足すのにモップはいらないだろ」
水銀燈 「やっぱり外はいいわぁ♪」
空を泳ぐように飛んでいる水銀燈、その時
----スパカーンッ!!---
俺の投げたモップが見事に水銀燈の頭に命中した
そのままモップと一緒に屋上へ墜落する水銀燈
水銀燈 「いったぁい、いったい何よぉ」
水銀燈は頭を押さえて起き上がる
J 「いったぁい、じゃねぇよ!」
このアホガラスめ、このままコンクリート詰めにして
東京湾宛に送ってやろうか
水銀燈 「何すんのよいきなり!」
俺は無視して水銀燈にビシッと指差す
J 「空飛ぶの禁止!!」
水銀燈 「なんでよぉ!?」
J 「うっさいボケ、このまま家に強制送還してやろうか?」
水銀燈 「ぶー、わかったわよぉ」
しぶしぶうなずく水銀燈
まったく、いきなり心臓に悪いことしやがって
次の時間は体育か
まぁ寝てればいいか
体育館への移動中、廊下の反対側から二足歩行の猿が歩いてきた
秀吉 「あ~、俺はなんで保健室で寝てたんだ?」
まずい、もう生き返りやがったか!
J 「秀吉!後ろに裸の女がッ!!」
秀吉 「ウキッ!?」
光の速度でエロ顔丸出しの猿が振り返る
その隙に手近にあった消火器を掴んで秀吉に投げつける
−−−−ゴチッ−−−
声を立てずにその場に倒れる秀吉
なんかやばい感じに当たったけど・・・
まぁ秀吉だし別にいいよね♪
ピクリとも動かない秀吉をロッカーに詰め込んで
俺は体育館へ向かった
数十分後
J 「あ~、疲れた~、まったく、無駄な体力使わせやがって」
体育で組体操などというくだらないことをやらされたおかげで体中が痛てぇ
岡田 「なかなか面白かったぞ」
俺の体はデリケートなんだよ。現代っ子舐めんな
そう考えながら教室のドアを開けるとそこには
水銀燈 「このお弁当なかなかおいしいわねぇ」
他人の弁当を漁ってる水銀燈
----バタンッ---
俺は勢い良くドアを閉める
生徒D 「いってぇー!!」
後ろではそのせいで顔をぶつけた生徒の声が聞こえる
ダッシュで水銀燈に近づき頭を掴む
水銀燈 「ほえ?」
そしてそのまま窓の外へ投げつけた
水銀燈 「んきゃあああぁぁぁぁ!!!」
それと同時に後ろでドアが開いた
生徒D 「いきなりなにすんだよ!」
鼻を押さえながら俺に抗議してくる同級生
J 「ん?風で閉じたんじゃないか?」
岡田 「引き戸だぞこれ」
その後もあのアホっ子は俺の周りをうろちょろしまくってた
休み時間中教室で休んでたら、窓の隙間からちらちら見てくるし
音楽室へ行くと音楽家達の肖像画を見て怯えてたり
数学の授業中、外を見たら烏に追い掛け回されて泣きながら逃げてたりしてた
お昼
生徒G 「あ~、俺の弁当が空だー!!」
弁当を開けて絶叫する同級生
ごめん、多分それ水銀燈の仕業。
心の中で謝りながら俺は昼飯を食いに食堂へ向った
J 「よーし、食堂一番乗りだ」
俺が食堂のドアを開けると、そこには
水銀燈 「焼きそばひとつ頂けるかしらぁ?」
普通に食堂で注文している水銀燈
おいおい、食券買えよ・・・・・・じゃなくて!
生徒α 「今日はなに食べるかな~」
後ろから近づいてくる生徒達の足音
どうする、今窓は閉まってる投げる場所はどこにもない
・・・・・・仕方ない
俺はダッシュで水銀燈に近づくき急いで上着の中に詰め込んだ
水銀燈 「ちょっ、何するのよ人間!」
見た目かなり不自然だし、腹から足が出てるが仕方あるまい
J 「動くな!しゃべるな!噛み付くなー!!他の奴にばれるから
じっとしてろ。後でヤクルトかってやるから、な?」
そう言うと水銀燈はおとなしくなった
水銀燈 「約束よぉ」
J 「ああ、わかった」
これで一安心だな
おばちゃん 「あれ?さっき女の子が焼きそば頼まなかったかい?」
J 「それ俺です。お湯をかぶったら男になっちゃいました」
おばちゃん 「はぁ!?」
我ながらナイスな言い訳だな、うん
おばちゃん 「じゃ、じゃあ・・・はい、ちゃんと後で食券買いなさいよ」
J 「すんませーん」
何とか誤魔化して俺が席に着くころには食堂はにぎわい始めていた
岡田 「もう来てたのか」
そう言って正面に座った岡田は俺の腹を見て固まる
岡田 「お前、なんかお腹膨れてないか?」
J 「食べすぎだ」
岡田 「しかも少し動いてるし」
J 「目の錯覚だろ」
俺はそう言うとお腹を叩く
服の中では水銀燈がお返しに俺の腹にパンチを入れている
数分後
水銀燈 「・・・お腹すいたわぁ」
小声でそうつぶやくと水銀燈は服の間から手を伸ばして
俺が追加で注文したチャーハンをつまんで食べていた
素手で食べるな、はしたない
すると岡田が目を擦ってもう一度こちらを見た。
岡田 「今、お前の腹から手が出てなかったか?」
J 「なにを言っているのですか岡田様、そんなわけないではありませんか」
岡田 「なぜ敬語になる」
冷や汗を流しながら否定する俺に疑いの目を向ける
と、その時急に違和感を感じた。
服の中でしがみ付いてた水銀燈がいきなり動かなくなったのだ
J 「?」
気になり軽く叩いたり揉んだりしたが無反応
J 「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」
俺はお腹を押さえて立ち上がり走ってトイレの個室へ駆け込んだ
服から水銀燈を出して声をかける
J 「おーい、おきろー」
しかし眠っているように反応がない
なんか変なもんでも食ったのか?
俺は動かない水銀燈を揺すったり逆さまにしてみたりする
そんなことをしてると穴が目にはいった
別にエロい穴じゃねぇぞ
背中にある穴だ
そうか、ゼンマイが切れたのか
俺はポケットからゼンマイを取り出した
J 「あいつが常に持ってろって言ったのはこのためか」
そしてゼンマイを差し込んで巻くと
水銀燈 「ん、ううぅ・・・あん?」
エロい声を出すな
J 「起きたか?」
巻きながら聞くと水銀燈はムッとした顔をする
水銀燈 「早く気づきなさいよぉ、変態」
J 「誰が変態じゃ、今度お前の穴にボンド流し込んで
巻けなくしてやろうか?」
水銀燈 「なによぉ、本当のことじゃない。大体・・・・・・」
言葉の途中で急に何かを考え出す水銀燈
J 「どうした?」
水銀燈 「いい事思いついたわぁ(アニメ『ローゼンメイデン』参照)」
そう言うと水銀燈はクスクス笑い出した。
J 「えーっと・・・水銀燈?」
水銀燈 「人間、私もう帰るわね」
そう言うと水銀燈はトイレの窓から出て行ってしまった。
J 「気をつけて帰れよー」
なんかよくわからんが帰るならそれでよし
トイレから出ると遠巻きに俺の事を見ている同級生たち
同級生 「個室に入ってなに、穴とかボンドとか叫んでるんだ?」
その目には完全に怯えた目だった
水銀燈さん、後でお仕置きさせてください
放課後
J 「あ~、終わった~。なんかやけに長い一日だった・・・」
岡田 「お前の奇行、結構噂になったぞ」
J 「まぢか」
岡田 「そんなことより秀吉はどうなったんだ?朝見ただけで
あれ以来帰ってこなかったしな」
あっ、忘れてた、生きてっかなあいつ
まさかあのまま果てたとか・・・まっ、いっか
岡田 「それにとしあきのやつも今日来なかったな」
J 「まぁ、あいつはよく休む奴だからな」
ちなみに、としあきと言うのは・・・いずれ話そう
その時、教室のドアがゆっくり開いた
秀吉 「おはー」
岡田 「もう放課後だぞ」
朝と変わりない様子で姿を現したのは件(くだん)の秀吉
岡田 「それにしてもずいぶん寝てたな」
秀吉 「なんか夢の中で花畑や川や昨年死んだばーちゃんや
ダンディー坂野やらを見たような」
奇跡の黄泉帰りおめでとうMy friend
それとダンディー坂野はまだ生きてると思うぞ
家に帰ると不機嫌な水銀燈がヤクルトをやけ飲みしていた
水銀燈 「私だってミーディアムがいれば絶対に負けないんだからぁ」
よくわからないが悔しがってるらしい。
J 「ただいま」
そう言ってリビングに入ると水銀燈がものすごい睨みをしてきた
水銀燈 「おかえりっ」
うーん、めっさ怒ってるな
気は進まんが何か機嫌のよくなるものでも与えてみるか
そんなことを考えて冷蔵庫を漁っていると
水銀燈 「ねぇ、人間」
後ろから水銀燈が現れた
J 「どした?」
水銀燈 「えっとね、私とそのけいy・・・ううん、なんでもないわぁ」
J 「変なやつだな、言いたいことがあるならハッキリ言えよ」
水銀燈 「なんでもないって言ってるでしょ」
そう言うとそのままどこかへ行ってしまった
うーん、あいつと俺の間には目に見えない壁があるようだ
その日の夜
J 「おい」
水銀燈 「Zzzz・・・」
J 「おい!」
水銀燈 「Zzzz・・・うるさいわねぇ」
目を擦りながら起きる水銀燈、もちろん寝巻き姿
別にそれはどうでもいい問題はその場所は俺のベットということだ
J 「何で俺のベットで寝てるのか4文字以内に言いなさい」
水銀燈 「めんどい」
そう言うと枕に顔をうずめて再び眠りにつく水銀燈
お前の感想じゃねぇよ
仕方ないここは優しく聞いてみるか
J 「4文字でなくていいからできれば答えてくれないかな?」
するとめんどくさそうにこっちを見てしゃべる
水銀燈 「昨日の夜、ここで寝たら寝心地良かったから」
まさかこいつ、俺からベットを奪う気か
J 「じゃあ俺はどこで寝ればいいんだ?」
水銀燈 「床」
もはや答えるのも面倒といった感じで答える水銀燈
J 「アホか!昨日それやって風邪ひきかけたわ!」
すると水銀燈はゆっくりと起き上がると
水銀燈 「う~ん・・・」
頭をポリポリかきながら
何かを考えているかのように唸る
そして、のろのろと動き出す
ようやく空け渡す気になったか
と、思ったのもつかの間
少し横に動いただけで再びベットに横になる
水銀燈 「Zzzz・・・」
J 「おーい、寝るなー」
すると目を閉じたまま、彼女が横にずれて空いた部分をポンポンと叩く
そこで寝ろというのか
ていうか一緒のベットで寝ろと
その後の展開を思春期特有の妄想に変換してしまい元気になる我が息子
そしてそれを拳で戒める俺
J 「落ち着け俺、相手は人形だぞ。しかも面白ギミック満載の呪い人形
確かに美人だし愛嬌もたまにあって胸も少し大きいけど・・・」
水銀燈 「なに正座してブツブツ言ってるのよぉ
早く寝なさぁい」
そうだ、俺はただ寝るだけだ
何もやましいことなんかひとつもない
俺にとってこれは何の変哲もない睡眠だ
J 「よ、よろしくお願いします」
水銀燈 「なに言ってるのよぉ」
そして俺はベットに横になった
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、
われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、
わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、
政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、
ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、
その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、
その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、
この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、
これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。(日本国憲法より)
俺はその晩、ひたすら日本国憲法を頭の中に浮かべて
自分の中の強敵と戦い続けた。
ま、負けたら人として終わる・・・
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アニメ「ローゼンメイデン」のサイドストーリー的なものです
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