No.497154

IS x 龍騎〜鏡の戦士達 Vent 5: ゲーム

i-pod男さん

セシリアのいつもの口上です。今回はログアウトさせようかと思いましたが、思いとどまりました。では、どうぞ。

2012-10-17 11:32:26 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2652   閲覧ユーザー数:2516

異を唱えたのはセシリアであった。

 

「そこの方は別としても、男が代表等、良い恥曝しですわ!私はISの事を学びに来たのであって、極東の猿のサーカスを見に来た訳ではありません事よ!大体、文化的にも後進的な」

 

ピシュン!

 

突如、セシリアの言葉が途切れた。何故なら、彼女の体にはよく見なければ分からないが、細いワイヤーが幾つも巻き付いているのだ。そのワイヤーの持ち主は・・・・

 

「森次、そのままその阿呆を押さえてろ。」

 

そう、いつの間にか教室の一番後ろにいた三緑森次の指輪から十本のワイヤーが伸びており、セシリアを捕縛していた。

 

「随分と勝手な事をのたまってくれるな、おい。言って置くが、ISが無ければお前は血と肉の通った男と変わらない人間である事を忘れるな。今ちょっとでもその場から動けば、腕か足、または首が落ちるぞ。」

 

ジャキン!

 

コートで隠していたビームマグナムは一夏が構え、自身はISをショットガンに変形させて彼女の顔に突き付ける。

 

「もし、今この状況をISを起動する事無く脱出する事が出来れば、考えは改めるが、出来ないだろう?世界で重要なのは、何が出来て、何が出来ないかだ。俺が今出来る事は、お前をこのまま殺して海に放り込んで、魚の餌にする事が出来る。だが、そんな寝覚めの悪い事はしたくない。政府のお尋ね者になるのはゴメンだ。それに他の奴らに迷惑だし、生のスプラッタはトラウマ物だからな。お前が出来る事は、今この場でその発言を詫びるか、詫びずにこの場で死ぬか。」

 

だが、セシリアは何も出来ない。

 

「後、言って置くがお前の今の発言は、国を潰しかねない『爆弾』だ。」

 

ショットガンを腰に戻し、代わりに携帯を引っ張り出すと、今の彼女の発言を録音している事を証明した。

 

「このボタン一つでこれはイギリス政府に送信される。これを聞けばお前の国はお前と共に潰れる。ここで選ばせてやるよ。今の発言を取り消して謝罪するか、国諸共破滅するか。あ、後今この場で死ぬか、って選択肢もあるな。恐らく選ばないだろうけど。」

 

それを聞き、セシリアの表情は苦痛と驚愕の入り交じった顔になる。千冬はその手際の良さに思わず目を見開いた。だが、すぐに我に返る。

 

「御鏡、それをしまえ。そいつにもワイヤーを納める様に言え。そもそも誰なんだ?」

 

「諜報員兼ボディーガードって所かな。森次、もう良いよ?」

 

無言で頷くと、ワイヤーはまるで生きているかの様に元の指輪に戻り、束縛を解いた。

 

「後、君の政府は俺に大きな借りがあるって発言を気にしてたみたいだけど、この際言って置こう。ISのテロ組織、ファントム・タスクは、俺の会社が潰した。お前の持ってるISの姉妹機、『サイレント・ゼフィルス』も謝礼の前金代わりに貰ったのさ。」

 

「そんなまさか!あり得ませんわ!そんな事聞いた事もありません!」

 

「言う筈無いだろう?代表候補は極端な話テストパイロットと変わらない。実験機のモルモットだ。そんな下請け仕事をしている下っ端に国のトップシークレットを言う筈も無いだろうが?だが、ツケはまだかさんでるんでな。政府ってのはある程度顔が利けばかなり便利なカードになる。俺の言葉一つでお前程度吹けば飛ぶ、と言う事を忘れるな。代表候補はお前一人じゃないからな。」

 

「なんて卑怯な・・・・!!所詮は男ですわね。そんな小細工に頼らなければ何も出来ない等・・・・」

 

彼女の前で携帯をヒラヒラと見せる司狼にセシリアは怯みながらも挑発する。

 

「戦いに於いて小細工なんて物は日常茶飯事だ。お前は互いに命懸けで戦っている相手に同じ事が言えるのか?戦いに於いては卑怯も糞も無い。全てが立派な戦術だ。戦いに於いては実用性が全て。使える物は全て使う。それが戦いだ。戦争に赴いた事も無い奴が綺麗事をほざくな。浅はかさが余計に目立つ。」

 

一夏はセシリアを睨み付けながらもそう言い放つ。

 

「それにアラスカ条約自体も意味が無い。軍事転用するなと言う取り決めなのに、ヨーロッパ、特にドイツやアメリカでは既に軍用ISなる物も出来てるしな。世も末だよ。」

 

「け・・・・決闘ですわ!貴方の様な礼儀知らずには一度格の差と言う物をキッチリ分からせた方が良さそうですわね。」

 

「面白い。じゃあ、勝ち抜き戦と行こう。まず一夏とお前。その勝者がマドカと戦う。その勝者が最後に俺が戦う。どう思いますか?織斑先生?」

 

「あ、ああ。良いだろう。では、決闘は来週の月曜。アリーナの申請は私がしておく。それまで各自準備する様に。尚、織斑には政府から専用機が」

 

「ああ、それならもう貰いました。倉持技研、でしたっけ?(もう会社(ウチ)が買収したからな。)」

 

一夏はコートの右の袖を捲り、蝙蝠の羽の装飾がある二の腕を覆うアームウォーマーの様な黒い篭手を見せた。

 

「コイツじゃなくても、量産機でお前を倒す自信が俺にはある。まあ、精々五分で倒せるだろうな。」

 

「織斑君、それ本気で言ってる?」

 

「コイツならやれるな。入試のISバトルで私が相手をした。負けはしたが、シールドエネルギーを半分程持って行かれた。今この教室で、織斑に勝てる奴はいないと見て間違い無いだろう。」

 

そう質問した女子生徒に、千冬はそう言うと、直ぐに黙った。

 

 

 

 

そして昼休み、一夏はマドカと司狼と共に食事をとっていた。

 

「あんな事になったが、大丈夫だよな。」

 

「ああ言う奴は意表を突けば簡単に落とせる。ブルーティアーズのデータはもう取ってある。何しろ、サイレント・ゼフィルスのパイロットがここにいるんだからな。」

 

エムは耳に付けているセシリアとは形状が異なるイヤーカフスをしていた。

 

「五分と言わず、一分以内に私が引導を渡してやる。ああ言う女は一番気に食わない。」

 

「一夏!」

 

「おお、箒か。」

 

「お前・・・・どうするつもりだ?!決闘等と・・・・勝てる筈が無いだろう?代表候補だぞ?!」

 

「いや、勝てる。慢心と焦燥は視野を狭める。そんな相手に負けはしない。それに、俺がお前に会っていない六年間、只遊んでいただけだと思うのか?」

 

大盛りの麻婆丼を摘みながら箒を見る。

 

「まあ、見ていろ。白式の・・・・いや、白式が新しく生まれ変わった俺のIS、ウィングナイトの力を。」

 

(ああ、楽しくなりそうだ。ゲーム開始が待ち遠しい。)

 

司狼はアイスコーヒーを飲みながら薄い笑みを浮かべ、自分のISを指で軽くトントンと叩いた。

 

 

 

 

 

 

一騒動の後、一夏は部屋の鍵を山田先生に渡された。荷物は既に送られていたので、後でまた空いている時間に戻って取りに行く必要は無い。

 

「1025、1025、と・・・・・ここか・・・・」

 

だが、シャワーの音が聞こえていたので、入るのは遠慮した。うっかりルームメイトが出て来てしまったらシャレにならない。やがて水の音が止み、衣の擦れる音がする。そこでノックをする。

 

「あー、誰だか知らないけど、ルームメイトの織斑一夏だ。着替え終わったらで良いから返事してくれ。」

 

十秒後きっかりに扉が開いた。道着姿の箒が立っている。

 

「い、一夏・・・・!?」

 

「よう。どう言う訳かこの部屋に行く様に言われた。よろしくな。」

 

「お、お前が希望したのか?」

 

「いや、勝手に決められたらしい。まあ、赤の他人の方が良いと言ったら嘘になるがな。箒の方が気が楽だ、お互い知らない仲でも無いし。それより、お前は奥のベッド使ってるのか?俺は別にどっちでも良いけど。」

 

「奥は私が使っている。」

 

「あ、そう。荷物はまだ届いてないのか・・・・ん?」

 

一夏はふとある物に目を止めた。黒い箱である。自分の荷物でない事は確かだったが、会社のロゴが入っていたので、直ぐに支給品である事を理解した。IDカード、指紋認証、網膜認証、そして暗証番号の入力でケースが開く。中身は分解されていた銃、そして隠し持ちが可能なワイヤー射出機だった。

 

「一夏、これは・・・?!」

 

「ああ。ほら、俺一応世界中でもイレギュラーの中の一人だろう?だから、司狼がISの待機状態で仕込まれてる武器以外でも自衛手段は持ってろってさ。まあ、俺もリクエストしたんだけど。剣だけじゃ心許無いし。それで」

 

一夏の言葉を携帯の着信音が遮った。

 

「はい。え?今から?分かった。直ぐにでも行く。」

 

携帯をジーンズのポケットに押し込み、ケースを閉じると、踵を返した。

 

「ど、どこに行くんだ?」

 

「司狼さんに呼び戻されてね。寮じゃなくて学園にあるAD・VeX7が作った施設に行く事になるらしい。度々ここに来る事になるだろうけど、基本はいないって事になる。それに万が一、って事もあるから。俺は出来る事ならここにいたいけど、無理らしい。そんじゃあな。また遊びに来るから。」

 

昔の一夏とは思えない様なその姿と言葉に呆然とする箒を尻目に、一夏は部屋を出た。


 
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