夜天の主とともに 32.拳士VS狙撃手その③
気温は暑く見渡す限り砂漠。
そんな中、健一とザフィーラは上空のある一点をにらんでいた。その視線の先にいるのはナリン・ノーグルとフェイト・テスタロッサの使い魔、アルフだった。
「お久しぶりやな。」
「……お前の魔力はもらった。こっちに用はない。」
「でもこっちにはありありなんやなこれが。」
お互いににらみを利かせているとナリンの横にいたアルフが前に出た。
「使い魔のほうは私に任せておきな。」
「アルフ……。」
「私としちゃフェイトを守りたいんだけどあの子はあの子で決着つけたいみたいだからね。それはあんたも同じだろ?」
「さんきゅーな、アルフ。」
アルフは親指をグッと立てるとザフィーラに突進を仕掛けた。
「ぬっ!」
「使い魔同士決着つけよーじゃないか!!」
反応が遅れたザフィーラは突進の勢いのまま違う場所へとアルフとともに飛ばされた。そしてその場には健一とナリンの二人だけとなった。
「決着はついたと思うが。」
「そうやな、あん時の勝負はワイの完敗やな。やけど今のワイを前と一緒と思っとるなら痛い目遭うで。思ってなくても遭わせるけどな。」
その言葉に健一は拳を持って語ることとした。ナリンはそれにいち早く気づきガンモードで健一を撃ち狙った。そのどれもが健一に当ることなく辺りの砂へと着弾した。それを訝しみながらも健一は一気にナリンとの距離を詰めた。
その距離はすでに防御魔法が間に合わない距離で健一は確信とともにその凶暴な拳をぶつけた。いや、ぶつけたと思った。なぜならその拳がナリンに届く前に健一の腹に何かが突き刺ったのだ。
「ごふっ!?」
予想していなかった衝撃と痛みに健一は何十メートルも吹っ飛ばされた。
「っしゃ、命中♪」
健一は口から出た血をぬぐいながらも状況を整理した。まず自分の腹を見た。そこには直径5センチぐらいの焼け焦げた穴がバリアジャケットにあいていた。その奥の素肌にも打撲痕が残っていた。
次にナリンを見た。するとさっきまでの彼とは少々違うものになっていた。それはデバイスだった。双銃だったのが今では杖になっていた。なのはとはまた違うただの棒のようにも見えた。
「どやっ!これが近接戦闘用のロッドモードや。強度が段違いにあがっとるし、いろいろ応用も効くんやで!!」
そういった直後杖の先に炎の渦のようなもの渦巻それをそのまま健一へと放った。健一も黙って食らうわけもなくすぐに上空へと回避した。
「そこや!カートリッジロード!!」
〈Flame bullet.〉
しかしそれを狙っていたかのようにナリンは上空へ逃げた健一を狙い撃った。すでに回避行動をとっていた健一はそれを防ぐしなく眼前に障壁を張った。カートリッジに加え、以前とは魔法そのものが強化されているナリンの射撃は以前は心もとなかったが健一の障壁を破るとまではいかなくても地に落とすことに成功した。
そのまま地に落下した健一は大の字になって空を見ていた。そして次第に健一は口端が吊り上るのを感じた。そして抑えきれずに大声で笑った。
「ははははははっ!」
「な、なんや。」
(シグナムは戦いは楽しいものだって言ってて前は意味わかんなかったけど……確かにこれはいい!)
「すまない!していたつもりはなかったけど油断してたみたいだ。だからこっちもいくぞ!」
そう言うと健一は再びナリンへと向かっていた。それに対し近づけまいとするナリンはガンモードへ瞬時に変え撃った。今度は全て防ぐのではなく舞うかのように避けてものすごい勢いで突進した。そしてそのまま拳で殴るのではなく右足を突出して突っ込んだ。
「うぉっ!?」
直感でぎりぎり避けたがそれを許さず健一はそのまま回し蹴りを放った。ナリンは杖を蹴りが来る方向へ縦にするようにして防ごうとした。
「脚は腕の三倍の力があるって知ってたか?」
「ぐはっ!」
ナリンはそれを防ぐことができたがさしもの衝撃ばかりは無理で吹き飛ばされた。追い打ちを仕掛けるため迫った。当然ナリンもそれを予想しすぐに態勢を立て直し双銃に切り替え向けると、
「いない、どこへ……上か!!」
そこにはすでにかかと落としの態勢に入った健一がいてその足を一気に振り落した。これならば杖でも折れなくても地面にたたきつけれると踏んだからだった。
「なめるなっ!!」
健一の予想通りナリンは杖へと戻し防御しようとして……杖が真ん中で二つに分かれクロスするようにしてそのかかと落としを防いだ。
「足より手のほうが器用って知っとったか?」
クロスさせて防いだ杖で足を絡め捕りそのまま遠くへと投げ飛ばした。ゴロゴロと地面を転がりながらも態勢を立て直した健一はもう一度向かおうとしたがそこで周りに変化があった。
健一の周りが紅く光出しそこからナリンのものと思われる魔力弾が無数に現れた。其れはとても避けてどうにかなるものでもなかった。
(こんなものいつのまに…………まさかっ!)
健一の脳内では戦闘直後にナリンから放たれた見当違いの場所へ放たれた魔力弾が思い出されていた。
「言い忘れとったけど……罠張るんも得意なんや。」
その言葉とともに漂っていたすべての魔力弾が健一へと向かった。轟音とともにその場に大きな砂煙が立ち込めた。
「今度こそやったか!」
〈そういうの言わない、マスター。言ってると‥〉
突如あれほど大きかった砂煙がすさまじい突風が吹き荒れた。まるで竜巻のようだった。その竜巻が消えるとそこにはところどころかすり傷はあったが、しかし戦意を失わず立っている健一がいた。
よく見ると健一の姿が変わっていた。まず手首まで隠すような袖は消え去り肩のところで消え素肌をさらしていた。
次にジェナに変化があった。ジェナの噴出機構から漆黒の魔力刃が伸びていたのだ。右腕のナックルは右側面、左腕のナックルは左側面の噴出機構からである。キャリバーにも同じように魔力刃が伸びていた。
健一の足下には健一自身がその場で回った形跡があり竜巻もそのせいだった。
〈Edge Form.〉
「はぁはぁ……。」
〈マスター!大丈夫ですか!〉
「なん…とかな。」
「まだ隠し玉あったんかいな。」
〈油断禁物、マスター。〉
「あいよ。」
健一は魔力刃がついた両拳を構えながら、ナリンは双銃を構えながらにらみ合った。
「ジェナ!!」
〈Wind cutter.〉
「ヴィトル!!」
〈Flame bullet.〉
お互いにカートリッジを1個排出して発動した。タイミングはナリンのほうが一瞬早く出したが両拳から切り離した健一の風の刃はナリンの大量の魔力弾を切り裂きながらしかもなお威力が衰えぬまま迫っていった。
それを杖で砕きもう一度前へ向き直るとすでに健一が新たに魔力刃を腕に生成し斬りかかっていた。それを薄皮一枚で避ける。しかしその軌道を読んでいた健一は右足を軸にし回転しそのつま先を今度こそナリンへぶち込んだ。
「おごっ!」
ヴィトルの封印が解かれ防御力が多少上がったとはいえ健一の攻撃は重く響き何度か地面をバウンドしながら吹き飛ばされた。
そこからは二人ともまさに拮抗状態であった。魔力弾が切り裂かれる音、魔力刃が砕かれる音、デバイス同士がぶつかり合う金属音と勝負が時を進むにつれて苛烈になりまともに攻撃が当たることはなくとも、両者の体に少しずつかすり傷が増えていった。。
そしてナリンが健一から大きく距離を取った時にその流れが変わろうとしていた。
「こんだけ距離離せば……。ヴィトルいくで!!!」
〈Cartridge Load.〉
双銃へ切り替え2発ロードすると両手に持つヴィトルを前方へ向け銃口から螺旋付加の魔方陣を展開した。魔法陣はどんどん回転する速度を速めていき今か今かと炎がちらちらと見えていた。銃口には魔力を溜めはじめて、ただでさえ熱い当たりの温度がさらに上がったかのようだった。
健一もそれを見て中距離砲撃が来ると判断し回避は不可能とみると防ぐのではなく迎撃することにした。
「ジェナ!!こっちもだ!!」
〈jawol!Explosion!〉
健一は両指を絡めして前に突き出した。すると左右から伸びる魔力刃が約3倍ほどまでに伸びそして分離、そして魔力刃同士で結合し三日月状にへとなった。全長約6メートルほどになったそれはその場で高速回転し、あまりの速さでそれがとてつもなく大きな緑色の丸い盾の様になった。辺りに風が吹き荒れそれを左手でかざすようにして制御した。そして右拳を後ろへ引き絞った。
「ヴォルテックスファイアー!!」
「スパイラルエッジ!!」
巨大な炎の渦が出現しその渦の中を朱色の砲撃が一緒に一直線に放たれ、反対からは風をまき散らしながらその暴風の砲撃が放たれた。そして二つが衝突した瞬間魔力爆発が起きた。
とてつもない轟音とともに二つの砲撃の魔力が混じりあい天へと上った。健一もナリンも今のでだいぶ消耗したのか肩で息をしながら佇んでいた。
そしてすぐに両者はデバイスを構え再び戦おうとしたその時だった。
「ガハッ!!」
健一が突如口から大量の血を吐いたのだった。それに一番驚いたのは健一ではなくナリンだった。あまりにも突然すぎたためだった。
〈マスター!!気を確かに!!〉
「おいどうしたんや?お、「近寄るな!!」うぉっ!?」
戦っていることを忘れ健一へ歩み寄ろうとした瞬間遠くで戦っていたはずのザフィーラが割って入るようにして現れた。
「ウォォォォ、鋼の軛!!!」
白銀の棘とも刃ともいえる巨大なそれが地面からいくつも出現しナリンの視界を遮りしかも真下にも出てくるのを感知し回避行動をとらざるおえなくなったナリンはその場から大きく後退したそして鋼の軛が消えるとそこにはすでに姿はないのであった。
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A's編っす