今回の出来事は、ある一言から始まった。
「仮面ライダーの決め台詞ってどうすればいいのかな?」
高町家のリビングで、士樹がこぼした言葉だ。
「なかなかかっこいいのが思いつかないんだよねぇ」
「俺も気にしてはいた。翔兄も含めて決め台詞があるライダーはけっこう多いからな」
「いくつか候補は有るんだけど、なんかこうビシッとした感じがしない」
「同感だな」
2人は同時にため息をついた。
「この学園には、いろんな奴がいるだろ。そいつらの所へ相談に行くのはどうだ?」
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「で、俺の所へ来たというわけか?」
「そういうこと」
喫茶店で士樹達を出迎えたのは、剣崎だった。
「決め台詞かぁ。今まで気にしたことなかったな」
剣崎は背伸びをしながら答えた。
「正史だけでなく、外史のライダーでさえ決め台詞やポーズを持っている奴がいる」
「そういうのが無くていいのか、たびたび気になるんだよね」
「気にしすぎじゃないか。真司や渡も決め台詞とかはないけど、ピンピンしてるぞ」
「しゅっちゅう失敗しては落ち込んでいるイメージが強いけどね、2人とも」
「分かる分かる。特に、渡は目標が高いからな」
「……話に着いていけない」
士樹と剣崎が盛り上がる中、じゃっかん疎外感を感じていた。
★★★★★
「そんな物に意味はないな」
続けて訪れたミスリルの格納庫では、宗介に一刀両断された。
「戦場では、一瞬の油断が命取りだ。そんなことをしている間に命を失うぞ」
「ずいぶんバッサリ切ってくるな」
「君らしい答えだね、宗介」
「つれないことを言うなよ、宗介。わざわざアドバイスを聞きにきたんだぜ、2人は」
別の所で作業をしていたクルツが刹那と士樹のフォローに入る。
「先輩達がかっこよく決めてるんだ。後輩もそれに倣おうとするのは当然じゃないか」
「仮面ライダーとて決め台詞で価値を計るわけではなかろう。あくまで、その行動と結果が重要なはずだ」
「宗介……」
宗介の率直だが、筋の通った答えは2人の心に響いた。
★★★★★
「なるほど、そんなことで悩んでいるのか」
ミスリルを出た後、士樹と刹那はACE学園の屋上で読書をしているルルーシュに会っていた。
「俺も宗介に同意見だな。そこまでこだわるようなことじゃない」
ルルーシュは本のページをめくりながらあっさりと言いのける。
「仮面ライダーとは、記号にすぎない。その中身が1番重要だ」
「力があっても、使いこなせなければ意味はない……そういうことか」
「いくら見てくれがよくても、肝心の中身が伴ってなければ意味がないということだ」
「精神が強く影響する僕達のD2システムではなおさらのことだね」
士樹が右手に持ったアクエリアスドライバーを見ながら呟く。
「言葉など、行動していれば勝手についてくる。あまり考えすぎるな。さて、俺はそろそろ帰らせてもらう」
そう言うと、ルルーシュは校舎の中へ入っていった。
「なんとなく分かる気はするが、しっくり来ないなぁ」
「他の人にも聞いてみるか」
★★★★★
「決め台詞か……。考えたことなかったね」
高町なのはは翠屋のテーブルでコーヒーをかき混ぜながら答えた。
「なのはさんってそういうことしてるイメージがけっこう強いんですけど」
「そんなことないよ。管理局の白い悪魔とかエース・オブ・エースは全て他人が付けた2つ名だしね」
「いったい何をしたら、そんな呼ばれ方をするんですか?」
刹那が疑問を素直にぶつける。しかし、当の本人は首を傾げていた。
「分からないなぁ。私はただ空を飛んでいたかっただけだし」
「なのはさん、確かに暇さえあれば空を飛んでるよね」
「にゃはははは。そのせいで、シャマル先生にもドクターストップをかけられているしね」
なのはは苦笑いしていた。
「でも、私は後悔していない」
なのはは力強い声ではっきりと言った。
「私は自分のやりたいように生きた。とても清々しい気分だよ」
★★★★★
なのはと話し終わった後、士樹と刹那は海鳴公園に来ていた。
「結局、決め台詞は決まらなかったね」
「言いたいことは分かるが、それなら既に出来ていてもおかしくはない」
「僕達には何が足りないのかな?」
2人が悩んでいると、ジャージ姿でランニングしていたアインハルトが側を通りがかった。
「アインハルト……」
「お2人とも、ここで何をしているんですか?」
「仮面ライダーとしての決め台詞をどうしようか考えていたんだよ」
「未だに中身は決まってないがな」
それを聞いたアインハルトは静かに構えを取り始める。
「私たち格闘家は基本的に拳で相手と語りあいます。ヴィヴィオさんともそれで仲良くなりました」
アインハルトは右手で正拳突きを放ち、話を続ける。
「どれだけ綺麗事を並べても、その人が放つ技には、怒り、憎しみ、喜びなどの感情が反映されます。それを誤魔化すことはできません」
士樹と刹那はアインハルトの話に静かに耳を傾けていた。
「語る言葉が見つからないなら、その技で語ってください。そうすれば、あなたたちの言いたいことは伝わります」
その言葉で、2人の胸につかえが取れた。
「言葉で語れないぶん背中で語れってことか」
「愚直なまでに行動で語り続ける……それも、剣士の性か」
「もう夕方だし、そろそろ帰るか」
「そうだな。リインとイカロスが心配する」
士樹とアインハルトが見送る中、刹那は自宅へと帰っていった。
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[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
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