第九十四技 気付く想い
シリカSide
35層『ミーシェ』の街に戻ってきたあたしとヴァル君は、今は宿屋の部屋にいます。
「ごめんね、シリカ。囮のような事をさせちゃって…」
「ううん。ヴァル君はあたしの事を守ってくれたから……大丈夫だよ」
本当ならあたしの側にいなくても良かったのに、彼はあたしの側にいて守ってくれた。
それが嬉しくて堪らなかった。だから…、だからこそ……。
「やっぱり、行っちゃうんだ…」
「うん、前線から離れちゃったからね。早く戻ってみんなに協力しないと…」
彼は最前線に戻ってしまう。別れが辛くて、一緒に行きたいと思う。だけどあたしじゃ…。
「すごいね、攻略組なんて…。あたしなんかじゃ、何年掛かってもなれないよ…」
あたし、なにを言ってるんだろう。こんな事を言ったって…。
「シリカ…。僕に…ピナを紹介してくれないかな?」
「え?」
ヴァル君の言葉にあたしは首を傾げた。
「シリカは友達だから、ピナもね…」
「ぁ…うん!」
ヴァル君はやっぱり綺麗な笑顔で嬉しい事を言ってくれる。だからあたしも笑顔で答えた。
あたしはアイテム欄から≪ピナの心≫を取り出し、続いて≪プネウマの花≫を持ってピナの心に近づけた。
すると花から雫が流れ落ちてピナの心に降りかかり、光り輝いて小さな形を取っていく。
そして…、
「きゅ…。きゅう~」
「ピ…ナ…。っ、ピナ!」
蘇生したピナはあたしに気付いて飛び込んできた。
あたしは嬉しく涙が堪えきれなくなって、泣き出してしまう。あたしは何度も何度もピナの名前を呼んだ。
ピナもあたしに頬擦りをしてくれた。
しばらくして泣き止んだあたしはピナにヴァル君を紹介することを思い出した。
「(グス)ピナ…。この人がピナを助けてくれたんだよ…」
「きゅ?」
ピナは首を傾げてからヴァル君を見つめている。
「初めまして、ピナ」
「きゅっ。きゅう~」
ピナはあたしの腕の中から飛び立つとヴァル君の肩に留まり、そして…。
「きゅう~(ペロ)」
「あ、はは。くすぐったいよ、ピナ。ふふ、ありがとう…」
ピナはヴァル君に凄く懐いていた。
よかった~……でも、いいなぁピナ。ヴァル君にあんな………あれ?
あたし、今ピナに嫉妬したの? ピナと仲良くしているヴァル君にじゃなくて?
そ、それって……/////////
「シリカ、どうかしたの? 顔が赤いけど」
「え、や、その…なんでもないよ///! あ、そうだ。もう夕方だから、夕食は一緒にできないかな?」
あたし、何を言って!? これじゃあ一緒に居たいって言ってるようなものだよ~///
「う~ん。それじゃあ、ご一緒しようかな」
「あ……うん///」
「っ//////!?」
ヴァル君がOKを出したので、あたしが笑って答えると彼の顔が赤くなった気がした。夕陽のせいかな?
このあと、あたしとヴァル君は夕食をとってからピナと遊んだりして過ごしました。
あたしはとにかく明日の別れを惜しむように楽しみました。
「ヴァル君。本当に、何から何までありがとう!」
「きゅ~」
「こちらこそ、シリカとピナと一緒で凄く楽しかったよ」
あたしはピナと一緒にヴァル君を見送る為に転移門広場に来ています。
「あ、あの、ヴァル君…///」
「どうしたの?」
「よ、よかったら、フレンドリストに登録してくれないかな///?」
い、言っちゃった。断られないかな…。
「(クス)喜んで…」
「あ、ありがとう///!」
あたしはウインドウを開くとフレンド登録の申し込みをして、ヴァル君が承諾した。
「それじゃあ行くよ」
「う…うん」
これで彼は前線に戻ってしまう。思わずあたしは落ち込んでしまうけど、
「シリカ、またね!」
「あ…。またね、ヴァル君!」
この言葉と笑顔であたしも笑顔になれた。こうしてあたしとヴァル君は出会ったのだ。
~現在~
あの時、別れる前になってようやく彼の事が好きなのに気が付いた。
結局あの後も、何回も会う事があったのに告白することが出来なかった。
だからこそ、明日は告白すると決めた。明日は絶対に…。
「よし、寝よう!」
あたしは明日に備えて布団を被り、眠りについた。
シリカSide Out
To be continued……
後書きです。
「黒き閃光編」終了です。
次回からは元の時間軸で進みます。
シリカの恋の行方はどうなるのでしょうか・・・?
ではまた・・・。
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第四十九話です。
今回で「黒き閃光編」はおしまいです。本来の時間軸に戻ります。
では、どうぞ・・・。